レシアのハッピーバースデー!?(ナイラーザ×レシア)
茹だる様な暑さが続く7月の終わり。

単調な二時間目の授業を終え、
購買部へと向かおうとしていた。

「すみません!
 ナイラーザさんちょっと
 時間ありますか?」

急に俺を呼びとめる声がした、
振り返ってみると
銀髪の女が立っていた。
ノーザニア出身のセトだ。

「何か用があるのか?」

「ここでは話しにくい事です!
 こちらへどうぞ!」



と指差すのは教室の隅の方。
あまり意味が無いと思うが……
と思った瞬間、
鋭利な視線が突き刺さる。

「うん、ここでは話しにくい事を
 たっぷりとした上でいつもの
 場所に来てね?」

オイ……
学校が火事になりそうなほどの熱気だぞ?
何を怒っているのか俺にはさっぱり分からなかった。

「ナイラーザさん!
 今プリプリ怒っている
 レシアさんの機嫌を直す、
 とっておきの情報があるんです!」

俺の予想ではお前がレシアの機嫌を
悪くしたように思えるのだが……

「とりあえず、聞いてみよう。」

「実は来週つまり
 8月7日はレシアさんの
 誕生日だそうですよ。
 ちょっと前に本人から
 聞いたんです。」

「はぁ……、それがどうかしたのか?」

「って、こんな素敵な
 情報をないがしろに
 する気なんですか?」

「彼女の誕生日ですよ、
 愛するハニーの誕生日。」

別に告白とかは
お互いにしていないんだが……

ノーザニア原住民の
お説教は数十分続いた……

レシアがカンカンになって
怒っているかもな……

ん?
何か大切な事を
忘れている様な気がする。


購買部で昼食を買い、屋上へと上がる。
今さらになって思うが屋上は暑い。
でも好きな場所だから別にいいのだが。
屋上の扉を勢いよく解き放つ。

「ナイラーザ君、遅いよ。
 私お腹すいちゃった。」

「わざわざ待っていてくれたのか、
 別に先に食べていてくれても
 構わないのに。」

「二人で食べるから楽しいのに。」

こんな些細な会話でも
嬉しく思うようになった。

「そういえば……」
「ナイラーザ君、」「レシア、」

「うにゃ?!なんでも無いよ!」
「俺も別に用があるわけではないが……」

奇妙なタイミングの一致、
お互いに何か話さなければ
ならない事があった。
しかも……うにゃって。

「よし、とりあえずお昼にしよ?」
「………そうだな。」

そして当たり前の様に
降臨するクリームパン。

少し見ているうちに
ヒマワリの種を詰め込んだ
ハムスターの出来上がり。

いつもの二倍くらいは
顔が膨張している。

「ハグハグッ♪モグモグッ♪」


誰も取ったりしないからゆっくりと
食べればいいんだぞ……傍らで
サンドイッチを食べつつこんな事を
思っていた。

ん?
やっぱり大切な事を
忘れている様な気がする。



いつも徒様に学校が終わり、
帰宅の途に着く。

今日、ノーザニア原住民に
こっぴどく言われた事を不意に思い出す。

「実は来週つまり8月7日は
 レシアさんの誕生日だそうですよ。」
 ちょっと前に本人から
 聞いたんです。」

「誕生日にプレゼントもらえたら
 レシアさん大喜びですよ!」

「しかもサプライズ効果もつけば
 もうチョベリグです!」

確かにな……、
今までプレゼントらしい
プレゼントはした事が無かった。

たまにはそういうのもいいだろう。

何かプレゼントを渡すのは決まった……
次の問題は「何を」プレゼントするか……

ふと香ばしい匂いが辺りを包む。
考え事をして歩いていたら、

ノーマ学院の近くのパン屋の近くに
来ていたのだった。

安くて美味しい
学生たちに人気のパン屋。

「………これだ!」






勇んでパン屋へと向かう、
そして店員に声をかける。

「すみません、
 ここでパン作りの修業を
 させてもらえませんか?」

「おっ?
 威勢の良いお兄ちゃんが
 来たもんだねぇ。」

声をかけた店員ではなく、
恰幅のいい男が応対してきた。

「良かったらパン作りの
 修業をしてみるかい?
 ちょっと位ならバイト代出すよ。」

「いえバイト代は結構です、
 大きなクリームパンを作って
 みたいんです!!」

「うむ……誰かへのプレゼントだね?
 良い目してるよ。まるで僕が
 若いころの様だ。」

「ただし……厳しいからね?」

「ハイ!
 精一杯やらせていただきます!!」

「よし!その意気だ!!」

この日から
俺のパン作り修業は始まった。

目指すは直径一mの巨大クリームパン。


「そこ!!
 もっと腰を入れてこねるんだ!!」

「クリームを包み込むように
 成形しなきゃ!!」

「駄目!!焼く時間が10秒長い!!」

体で物事を覚えるのは正直難しい、
でも不思議と爽快感や達成感が
感じられるようになってきた。

パン作りの修業もようやく終わりを迎え、
納得のいく巨大クリームパンを作れるまでになった。

「おお……完成したようだね。」

「すべては店長のご指導のおかげです、
 ありがとうございました。」

「ここまで丹精込めて作った
 クリームパンならきっと彼女も
 喜んでくれるだろう。」

「え???!あああ?うにゃ??
 彼女にプレぇンとするわけでも
 ないでございますわよ!」




大爆笑に包まれる閉店後の店内、
店長もガハハと腹を抱えて笑っている。



「いいかい、
 男が本当に必死になるのは
 自分の子供か大切な女性の為に
 って思ったときなんだよ。」

「はい……
 今までありがとうございました。」

「もう明日からは
 ウチの常連だよ……ね?」

ちゃっかりしている店長だ。
巨大クリームパンを大切に
抱えて家路に着く、
今日は8月6日。

一週間のパン作り修業を
終えた8月7日の朝。

今日は、レシアの誕生日と聞いた。

巨大クリームパンを
カバンにいれて家を出る。

一応断っておくが
俺は調理学部の学生じゃないぞ……


学校の校門をくぐったと同時に
下から声をかけられた。

「おはよ、ナイラーザ君。」

「おはよう、何か寝むそうだな?」

「昨日いろいろしてたから……
 よかったら今日の夜9時、
 中央公園に来てくれない?」

「ああ、分かった。」

二つ返事でレシアの誘いに乗る。
中央公園で何をするのかは知らないが……
そのタイミングでプレゼントを渡そう。


そして約束の時間を迎えた、
中央公園・夜9時。
人の姿が見えない薄明りの
公園で俺は待っていた。

「ごめん、待った?」

トコトコと歩いて来るレシア、
何か袋を抱えている。

「長引かせちゃうと
 恥ずかしいから勇気出して言うね?」

「ナイラーザ君、誕生日おめでとう。
 ささやかな私からのプレゼントです。」

といって手渡してくれたのは、
太陽をモチーフにしている様な
ペンダント。
いわゆるシルバーアクセサリーだ。

「そうか、
 今日は俺の誕生日だったんだ。」

「えーーーー!
 自分の誕生日すっかり
 忘れちゃってたのぉ?」

「ああ……すっかり忘れていた……」

「えーっと、うーんと
 ナイラーザ君って天然?」

「そうなのかもな。」
「それで片づけていいの?」

さすがにボケすぎているな……

「ところでこんなアクセサリーを
 よく作ってくれたな。とても綺麗だ。」

「中央公園の露天商さんに教えてもらって
 作り方を覚えていたの……
 ここ一週間くらい。」
 
「このペンダントと同じ素材で作ったの」

そう言いながら
胸元からペンダントを取りだす。
三日月をモチーフにした
銀色のペンダント。




「太陽と月はお互いを高めあい、
 支え合う。太陽の光を受けて月は
 輝きを放つ。」

「そんな意味を込めた
 ペンダントなの……」

「だから、
 私を一人にしないでください……
 私ひとりではもう頑張れません……」

「もちろんだ……いつでも傍に居たい。」

何時かの日の様に
空が俺たちの味方をしてくれた。
三日月の光が優しくレシアを照らす……


「……ところで、
 俺たち同じ日が誕生日なんだな。」

「え?一体何の事?」

「レシア……
 まさかお前も自分の
 誕生日を忘れているのか?」

「あ……、そうだった♪」


似た者同士である事を再確認した。

「よし、俺からもプレゼントだ。
 レシアが作ってくれたペンダント
 みたいに、綺麗な物ではないが……」

「うわっ?何このおっきいクリームパン」

「俺の手作りだよ……、
 ここ一週間くらいパン屋で作り方を
 教えてもらってた。」

「嬉しい!!!♪ 
 私の顔よりおっきいもん♪」


「早速いただきます!!!
 うわっ!もうクリームだ!え?何?
 生クリームとダブルのなの?」

今まで勝ってもらえなかった
おもちゃを買ってもらった
子供の様にはしゃぐ。

一生懸命に作ったパンを
本当においしそうに
食べてくれる……

何もかも満足だった。

「ごちそうさま!!!!
 最高の誕生日プレゼントだよ!!!」

「素敵なペンダントを有難う、
 一生大事にする。」

こんな良い雰囲気を台無しにする
レシアの口の周りについてクリーム。


「レシア……、
 いいムードを壊さないでくれ。」

「……そんなこと言うなら、
 ナイラーザ君がクリームを取ってよ。」

お前確信犯か、
仕方なく自分のハンカチを取り出す。

だがレシアが今までに
ない大人びた表情で俺を捉えた。




















「ナイラーザ君の舌で
 取ってくれなきゃイヤ……」





また一歩レシアとの
距離が近付いた夏のひと時だった。
刹那雪
2009/07/28(火)
16:49:09 公開
■この作品の著作権は刹那雪さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのコメント
はい、インデレ参謀の刹那雪です。

今回もラブっぷり全開
フルバーストです。(何

でもこのふたりは
とてもいいカップルだと思います。
お互いの誕生日ばかりを気にして、
自分の事を忘れちゃうほどお互いの事が‥

それでは、またノ。

この作品の感想をお寄せください。
意外な方から感想が‥‥
誠にありがとうございます。
ナイラーザだってツンデレ要素をたくさん持っているのです、
プリチーなのです、エレガントなのです(暴走

なにはともあれありがとうございました。
Name: 刹那雪
PASS
■2009-08-13 09:11
ID : 0YgQRQCk6a6
おうふwwww
なんというデレデレッ!!!!
ナイラーザがここまでかわいいやつに見えるとは・・・
ぐっじょぶです刹那雪さん!!
Name: アッシュもどき
PASS
■2009-08-12 22:26
ID : buXk8Ab0Uco
絶賛の嵐に鼻が高くなってしまいそうです、(何
けど感想をいただける嬉しさと作品を作る
楽しさを忘れずこれからも執筆してまいります。

インデレ同盟にこれからも
置いてやってください、
感想ありがとうございました。
Name: 刹那雪
PASS
■2009-07-28 19:44
ID : 0YgQRQCk6a6
刹那雪さん・・・・いや、我がインデレ参謀。
ア ナ タ は な ん で そ ん な に 素 晴 ら し い 物 が 書 け る ん だっ ! !
危うくバグる所だったじゃないか。ハァハァハァ(時、既に遅し
とにかく素晴らしいナイレシありがとう!!
Name: シャンベル
PASS
■2009-07-28 19:38
ID : M1.0HMHDDp.
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