私の目で、世界を見る




 ……暖かい。
 身体全体が、優しさにつつまれている。

 ただ、なぜか悲しい。


 誰かが泣いている……?


 あれ……? 見える。
 泣いている誰かが、見える。

 何が悲しいの?
 どうして、泣いているの……?


 ……………………。


 消えちゃう……。
 どうして泣いているのか、教えて?

 ねぇ……なんで消えちゃうの?
 待ってっ……!! 逝かないで……逝っちゃダメッ……!!


 誰かがいなくなるのは、もうイヤッ………………。





 +





 ……誰だろう。誰かが私を呼んでいる……。
 でもなんで……“様”って付けているんだろう。私はいつも“ちゃん”とか“さん”でしか呼ばれたことなかったんだけどなぁ。あ、お母さんとかは呼び捨てだけど。……あと、変な名前だったからすっごく覚えてる人も。

 ……ゴンベエお兄さん。あははっ、やっぱ変な名前だったなぁ……。

 また明日も、来てくれるかな。


『……ユ様、ウ……さ……』

 誰かが呼んでる……。起きたほうがいいかなぁ。
 なんか、身体が重い。瞼を閉じていても、外の光がすごく眩しい。

 ……ヒカリ?

『ウリユ様……』

 やっぱり、“様”って呼ばれている。それにこの声、私の知らない人の声……。知らないだけじゃない。なんだろう、人の声じゃない……。頭に響くし、何より……耳に入ってるような気がしない。
 外の光の眩しさに負けちゃだめだ……。って、何でヒカリが……。

『ウリユ様……。大丈夫ですか?』
「……あう?」

 えっ? えっ!? お、お母さんじゃない!? 思わず変な反応しちゃったよ……。

「はわわわっ!! ご、ごめんなさい……!!」
『え!? いえいえいえ!! ウリユ様は謝るようなこと全くしていませんよ!?』
「は、はわわ……。な、ならいいんですけど……」

 し、心臓バクバクしてて止まらないよぉ……。そ、そうだ! すごく心臓がバクバクしているときは、深呼吸するのがいいって、街の人達言ってたような気がする! 大きく息を吸って……。

「すうぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜……、はあぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜……」
『う、ウリユ様……?』
「すうぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜……、はあぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜……
 すうぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜……、ここどこですかあぁ!?」

 って、思いっきり聞いちゃった……!! な、なんか相手がすごくびっくりしているよっ。ど、どうしよう……!! あう……。
 相手の人は……竜、かな。綺麗な翠色している。

『こ、ここはっ…………えっと、ここって何処ですか?』
『え? ワタクシに聞かれても答えられませんよ!? く、クロウ!! ここ何処なんですか!?』
『わ、我に聞かれても……』

 あれ? なんか増えている……。鳥さんと、ワンちゃん、かな。
 ふぅ……。少しずつ、落ち着いてきたかな。でも、動物さんたちのほうが慌てているような……。

『……此処はシルフェイドの世界を一望できる場所だ。それ以外はなんとも説明しづらいが』
「シルフェイドを……?」

 シルフェイドって、私の住んでいるあのシルフェイドだよね……? 一望出来る場所なんてあったっけ?

『……ここはお前達が住んでいる所から、辿り着くことは出来ない場所だ』
「辿り着けない場所……? そこに、どうして私は居るの?」
『お前はリクレールに呼ばれたから、ここに居る』

 リクレールって、確か一番最初の勇者だった、っていうあの人のことかなぁ……。

『察しがいいな。その通りだ。リクレールは……お前に世界を救って欲しいから、と呼んだ』

 わ、私が、世界を救う……!? そんなこと、私には出来ないよっ!!
 ……なんか、ワンちゃんの声、最後の辺りだけ言いにくそうだったような……。

『リクレールにはもう力が無かった。それ故に代わりの存在としてある者に頼んだが、リクレールの願いも虚しく、世界を救う前に消えてしまった。
 ……だから、ウリユにその者の代わりに世界を救って欲しい』
「その人、消えちゃったの?」
『あぁ、死んだわけではない。だからその者が消えた“意識の海”へ呼びかければ、ウリユならもう一度蘇らせることも不可能ではない』

 何か難しいよ……。

『ウリユさんは、ゴンベエっていう旅人をご存知ですか?』
「ゴンベエお兄さん……のこと?」

 竜さんが聞いてきたゴンベエお兄さんって、あのゴンベエお兄さんっ!?

『知っているようですね。
 彼はリクレール様に造られた人です。今彼は“意識の海”へ還っている最中です。ウリユさんなら、彼を呼んでもう一度旅に出すことも出来ます』
「還っているって、ゴンベエお兄さん負けちゃったの!? 何で!? あの森を越えてきた人なのに……どうしてっ!!」

 久しぶりに、いっぱい面白い話出来た人で、いっぱい笑えた人で、いっぱい……いっぱい大好きなお兄さんだったのに……!!

「あああああぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」

 そんなっ、そんなこと……そんなの嘘だよ……!! だって、だってあの森を超えて、いっぱいお話して、また、また明日も来てねって……。見えなかったけど、けどちょっと笑って、こくん、ってうなづいているような気がして、それでお店出て行ったのに……!!
 泣くな、泣くな、泣かないでよ……。どうして涙止まらないの!? お兄さんは消えたわけじゃない。それにたったあれだけだよ、たった一時間しか話したことなかった……。なのにどうして、どうしてこんなに泣いちゃうのかなぁ。

『……リクレール様から、伝言があります。
 今日を含めない14日後に、シルフェイドで災いが起こります。それはとても大きなことで、世界全体にも影響を起こすほどだと、そういっていました。ただ、どんなことが起こるのかわかりません。
 ……今のウリユさんに頼もうという気持ちは、私たちにありません。ただ、もしシルフェイドを救っていただけるなら、あなたにやってもらいたいことがあるのです』
「私に……私にできることって言ったら、予言かなぁ……。目は見えていないし、それだから動けないし、他にできることなんてっ……」
『フフッ。あなたは予知を通して私たちを見ているんですか?』

 ……あ、あれ……? そ、そういえば、こんなこと予知していないし、何か、久々に目で見ているって言うか……。

『あなたの目、見えていますよ。しっかりと』

 今までぽろぽろと零れていた涙の生ぬるさが、手の甲に感じる……。同時に、それを見ている。
 私、目が見えるようになった……?

「えっ、どう、して……?」
『リクレール様は、あなたに光を授けました。“こんな運命に巻き込んでしまって、ごめんなさい”、と』

 ……ばかぁ。目が見えるのと引き換えに、ゴンベエお兄さん取らないでよぉ……。
 でも、決めた。

「ありがとう、ございますっ」

 涙は拭いた。肌に触れる服が冷たい。
 ぎゅっと、握りこぶしをつくる。

「私やりますっ。……ゴンベエお兄さんが出来なかったことだし、今まで何もしなかったから自分ができるとは思えないけど……。
 でも、光をくれたリクレールさんに、せめてものお礼でっ、私は……私にできることで守ってみせます!!」

 本当だったら大好きなシルフェイドを守るために、って言ってみたかったけど、なんかくすぐったいからやめちゃった。
 今まで死神だとか悪魔だとか、今はそんなことないけど、でも今度は守ってみたい!! みんなを、自分の手で守ってみたい!!

『……リクレール様が今此処にいませんので……私からですが、ありがとうございます』

 丁寧にお礼を言ってくれている。でも、本当に頑張れる気がする。目が見えたから勇気が出た、って言うのもあるかもしれないけど。
 私は……ゴンベエお兄さんが見た世界を、私の目で見てみたい。今まで狭かった視野が、何処まで広がるのか、試してみたい!!



『まったく〜、スケイルさんは良いとこ取りですねぇ。ワタクシなんて何も喋っていませんよっ』
『うーん。なにかかける言葉があれば、今かければいいじゃないですか〜?』
『今!? 今かける言葉って全部言われましたよ!! スケイルさんに!!』

 あは、アハハッ!! なんか、さっきまで泣いていたのが嘘みたい……。目の下がちょっと腫れているけど、此処の皆に癒されちゃう。面白くて……。

『アーッ!! ウリユさんまで笑わないでくださいよー!!』
「あははっ……ご、ごめんなさいぃっ、アハハハハッ……」

 あわわ、笑いが止まらないよぉ……。

『では本題に入る。
 感覚でわかると思うが、我々はただの動物ではない。トーテムという“獣の力”だ。それを人が自分の身に宿すことにより、常人では考えられない力を取得することができる。簡単に言うと強くなる、という事だ』

 トーテムは、確かリクレールさんが昔の人に授けた力で、今も何人の人が持っているっていう力だったかな。
 その、トーテム……なのか。ほえぇ……。

『世界に降りて戦うこともある。それ故にウリユにもトーテムを宿したほうがいいと思う』
『ですねぇ。といっても、流石にワタクシたち全員を宿すなんてやっていたら、体もたなくなっちゃいますから、誰かでしょうね』
『あぁ、そうだ』

 誰か一人……というか一匹、か。
 ……喋っている相手なのに一匹って数えるの変な感じ。

『……此処でウリユに選んでもらうのもいいが、多分全く発言していないフェザーを哀れだと感じて選ぶだろうからそれはやめようと思う』
『エーッ!?』
『ですね!! ウリユさんは優しいから選びそうです!! でもそれはずるいです!!』
『酷い言われようじゃないですかーっ!?』

 思わず笑っちゃうけど、耐えないと……耐えないとー!!

『ウリユさん〜!! 私を選んでください〜!!』
「……ごめんね?」

 って、ちょっとからかってみたかったの。

『ガーン』

 あはは……っっ。本当に、面白いなぁみんな。
 トーテムか……。その獣の能力が自分に宿る、っていうんだよね。私は肉体的にも精神的にも弱くて……。だから、そんな私でも何とかなる、そんな能力がほしいっ。

「あのっ……私自分で決めますっ。でも、みんなの能力がわからなくて……」
『確かにそうだな。我はクロウという名だ。戦術を重視するため肉弾戦では戦いやすいかもしれないが、回復などのフォースが取得しにくい』

 クロウさんは戦うことには困らない、ってことかな。でも回復が大変そう。回復だったらお母さんのお店で何とかなるかなぁ。

『ワタクシはフェザーです。何かに偏っていないので、戦術もフォースもバランスよく使えますよ。あと、他のトーテムと違ってワタクシの場合高速で移動できるので、時間の関係で悩んでいたらおすすめですよー!』

 バランスが良いのと時間の関係はいいかも。うーん、まだ旅出ていないから時間が良くわからないけど、戦闘面がちょっと怖いかも。

『私はスケイルといいます。今回はトーテムとして宿らないほうがいいかもしれませんが。
 肉弾戦が苦手ですがフォースを取得することを得意とします。あと水中移動もできますので、川や湖も移動できますから、移動に関しての心配も要りません』

 確かに、私の場合は戦うことに力入れたほうがいいかな。うーん、フォースもほしいと思うけど。
 ……どうしよう、ワンちゃんかフェザーさんか。

『今回は、色々な意味でウリユにはきついたびになるかもしれない。
 まだ時間はある。ゆっくり考えれば……』
「よし決めた!! ……ほえ?」

 あれ? 何かワンちゃん言っていたような……。

『え、あっ、早いな……』
『ぷぷっ、クロウは無視されましたね』

 や、やっぱり何か言っていたんだね……。ごめんワンちゃん。

「あ、あの、とりあえず私、クロウさんで旅することにします」
『……トーテム選びで勝ったからさっきのは気にしないぞ』
『エーッ!? 何でクロウなんですかー!!』
「え、えっと、一応治癒は持っているので、あとは肉弾戦を頑張ろうかなぁって」

 剣を持ったことないし、何かを殺したこともない。いつも逃げてばかりの自分を強くしたいから、私は、剣を持って戦う。
 頑張るから。絶対に、負けないっ!!

『わかった。
 では世界に降りよう。それから全て説明する』
「うんっ。よろしくお願いしますっ!!」

 ぺこり、と頭を下げた。





 ◆





 世界へ降りたって言う感覚が不思議だった。まだ夢じゃないかと疑っちゃうけど、感覚が生きているって私に語りかけてくる。……まぁ、勘みたいな感じかな。

「着いた……?」
『あぁ』

 さっき居た所で、無意識に目を開けていたけど、降りている最中はずっと閉じていた。
 ワンちゃんは私が目を閉じているのを、ただじっと見ていたと思う。

「……う、わぁ……」

 森だらけ。
 ちょ、ちょっと拍子抜けしちゃった……。街が見えるところだと思っていたから、森なのはびっくり。
 あっ。服装がお兄さんと一緒だ。うわぁ、お、お揃い……?

『服装は変えさせてもらった。流石にあの格好で旅するのには危険すぎるからな』
「うん。ありがとう」

 本格的に旅をするっていう自覚が出てきた。き、緊張する……。

『目的はさっき言ったとおり、災いを止めることだ。ウリユ自身の手で止めてもらう。多分、予知能力は残っているはずだ。はっきりと見えるのか見えないのかは我にはわからないが、感じるとは思う』
「うん。予知は出来るみたい。結果はわからないけど。
 災いの感覚は、多分感じていると思う。そう言う感覚はまだよく分からないし……」
『うむ。焦らなくていい。予知ができるならばどこへ行き、何をしたらいいのかは大体分かるだろう』

 うん、という前に足が一歩前に進む。
 が、体重に耐え切れず、がくりと膝を折ってへたり込んでしまった。

「あ……。しばらく歩いていなかったから、結構大変かも」
『……まぁ、14日ある。
 それと、ウリユはリクレールと同じ力を持っていたためか、一度だけ死んでも生き返れるチャンスがある』

 わ、ワンちゃん何言っているんだろう……。人が生き返るなんて、そんなことありえないのに……。

『リクレールはゴンベエに生命の結晶を15個持たせ、15回殺されても生き返るという身体にしていたのだ。しかしそれすら無駄にしてしまったがな』

 ……なんか、口調が嫌だ。ゴンベエお兄さんを悪く言うなんて、何かやだ!!

「う、うぅー……」
『な、なぜ泣く!? わ、我は何か悲しませること言ってしまったのか!?』

 鈍感ワン子め!!

「別になんでもない!! 何か説明していないこととかある!?」
『と、突然元気になられても困るが……まぁいい。ウリユはトーテムである我を宿している。
 トーテムの力を宿すことにより、様々な能力が備わる。
 我の場合は体力や攻撃力などが人よりも伸びるため、普通の兵士などが闘って敗れる相手であっても、ウリユにとっては軽いものだと思う』

 立つこともままならないけど……。
 腰にある剣を抜いて、杖代わりに立とうっと。よいしょっと。

『……剣は杖ではないが、とりあえず剣を持って戦ってみても平気か?』
「頑張る、しかないよね」
『そうだな……ん? ウリユ!! 野獣がこちらに走ってくるぞ!! 構えろ!!』

 え!? 野獣!? もう!?
 って、そんなこと考えているうちにどんどん近づいてくるっ!! け、剣はえっと、両手で持って構える!!

『それでいい!! 剣を振れ!!』

 こ、こんなおっきいのを……。って、野獣もおっきい……こ、怖い!!
 でもでも!! ちゃんと戦わないとダメ!! 私の膝、動けえええ!!!

『よし、そのまま振れ!!』

 えええいい!! ……す、すごく気持ち悪い感じが伝わってきた。斬っている、っていう気持ち悪さ……。でも、ちゃんと当たったと思う。
 こ、怖くて逃げちゃった……。

『大丈夫だ!! こいつなら倒せる!! 剣を握って前を見ろ!!』

 前……前見ないと!! 進まない!! もう一回、振って……ええええいい!!!!
 鈍い音と、叫び声が聞こえる。さっきは聞こえていなかったけど、ちゃんと聞こえた叫び声。そして、横に倒れる音。

『よくやった。戦闘は軽くなどない。命を消してしまうものだ。
 しかし、自分を守らなければいけないのもある。そして強くなっていく』
「……うん」

 自分の足で動いて、自分の手で殺す。
 ……こんなに、こんなに怖いものだと思わなかった。でも、私はこの世界を守りたいから、守る!!

『早く森を抜けたほうがいいだろう。森以外で襲ってくることは滅多にないからな。街へ行こう』
「街……。あっ、シイルの街!!」

 そうだ!! ここ、私の住んでいるシルフェイドなんだ!! シイルの街に、お母さんがいる!!

『……残念だが、橋が壊れている。我の場合には水の中に入ることは出来ないから、森を抜けるか橋ができるまで待たなければ、シイルにはいけないだろう』
「あ、そうだった……」

 お母さんに会って、目が見えるようになったとか、旅しているっていう報告したい。まだまだだけど、多分会えるときには強くなったんだよ!! って言える自分になっているといいなぁ。
 って、まず街に行ったほうがいいんだった……。

「街って、この森からは近い?」
『近いな。早く行って、今の情報を入手しよう』
「うんっ!!」

 うんっていったけど、本当はお母さんと簡単に会えるって思っていてうきうきしちゃっている。でも、今まで自分の目で見たことがなかった街に行って、色々知るっていう事に対してもうきうきしてる。
 ……あまり戦いたくないけど、戦わないと強くならないかな。この臆病な心は、まだまだ全然弱いから、頑張って強くならないと!! でもやっぱり、無駄な殺生は避けないとね。


 本当に、街は近かった。
 確か、この街はサーショだったかな。記憶が確かなら、太陽の剣を作ったガランって言う人が作った鍛冶屋が有名だったかな。

『サーショの街に来るのは初めてか?』
「うん。小さい頃はあまり出かけなかったし、予知も出来なかったから、本で読むくらいでしか知らないの」

 入り口の近くにいる兵士さんに聞いてみようかなぁ。色々と。

「あの……」
「旅の方、サーショの街へようこそ! 今は魔物が増えて危ないから、旅の人に無料でいくらか薬を配ってるんだ!!」

 あれ……なんか話聞かない人だなぁ。まぁ、いっか。そういえば私、旅人だった!!

「薬あるんですか?」
「あまり多くはないけど、君も薬が欲しかったら、遠慮なく言ってくれよ!!」

 元気だなぁ。
 薬は家でも売っていたけど、無料なら貰っちゃおうっと。

「全部ください!」
『全部!?』
「はいよっ。気をつけてなっ!」

 優しい兵士さんだなぁ〜っ。

『街の人のことは考えなかったのか……』
「はっ!? 忘れてた!!」
「ん? 忘れてたってなんだい?」

 あれ、ワンちゃんの声って私にしか聞こえないのかな。

『トーテム能力者だけが我の声を聞き取れる。別に言わずとも心の中でつぶやけば通じるぞ』
「あ、あわわ!! そうだったのか!!」

 って、また喋っちゃった!! あわわわわ!! 兵士さんが訝しげな顔してる!!
 ワンちゃん、それは早く言ってよ〜〜!!

『ワンちゃんじゃない、クロウだ』
「ワンちゃんのほうが呼びやすいの!! じゃなかった、すみませんなんでもないですっ!!」

 き、気をつけて喋らないと……。
 でも、まだ兵士さんには聞きたいこととかあるしっ!!

『その前に、まず転移石のところに行ってもらいたい』

 あっ、そっか。転移する場所記憶しておくと、転移するときに役立つからね。

『うむ。まぁ我々にはあまり縁がないとは思うが、一応覚えておこう』

 転移石転移石……。あっ、あったあった。あの青い奴。すっごい綺麗……。
 なんていうか、すごく吸い込まれるような色をしている。……おかげでどうやって覚えたのかわからないや。えへへ。

『後は自由に回ってみよう。この街にいる間は安心だからな』
「うん」

 って、ちゃんと口で言わないようにしないと。お口チャック!!
 この街の人はとても明るくて、シイルの街から来た人もいた。ちょっと冷たかったけど。元気のいい街だなぁって言うのが印象的かな。あとあと! 武器はすごい!! 見たことないものばっかりだし、みんな高価だし……。私には買えなさそうだなぁ。うむー。
 そういえば、怪しいおばあさんが北東の洞窟に行けばいい、って言ってたけど、ちょっと怪しそう……。

『しかし、偽りだと決め付けるのも失礼だろう。強い魔物がいないという言葉を信じて、行ってみるのもいいと思うが』

 そっかぁ。強い魔物がいなければ、まださっきみたいに怖い思いしなくていいかも。
 よし、まず北東の洞窟に行ってみる!!

『うむ。森はできるだけ通らないようにしろよ』

 気をつけますっ。
 まだまだ頼りないけど、まず目標は北東の洞窟っ。よし、頑張ろう!
 剣を、強く握る。




六花
2007/06/07(木)
20:44:20 公開
■この作品の著作権は六花さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのコメント
新テキストBBSができましたので、ちょっとした小話を投稿させていただきます。長編ですが。
この話は主人公がウリユになった話です。何故ウリユがそういう決断をしたのか、なぜこんな状況になったのか、などをウリユ視点で書いていきますが、あまりテキストを書かないのでスピードが遅いです。
追ってくださる方がいたら幸いです。

レスをメモ代わりにして、何処まで読んだかをメモっておくのも構いません。
なお、テキストBBSのトップでカーソルを合わせたときに出てくる前書きで、話数を書いていきたいと思います。

ウリユが旅をする話にしただけなので、本編の引用が多いです。ごめんなさい。

この作品の感想をお寄せください。
こんなにコメントを頂けるとは思っていませんでした……。はじめまして、六花です。
面白いと感じてもらえたり楽しみにしてもらえたり、本当に、とても嬉しいです。
続きはまだいろいろと考察中の部分があり、少し遅くなってしまうかもしれません。
自分で納得できるものをお送りしたいと思っています。今後ともよろしくお願いします。
Name: 六花
PASS
■2007-06-16 00:14
ID : HaHdfsEIDUk
初めまして。
同じ世界でも違うキャラの視点だとまた別の側面が見えてきそうですね。
世界についてほとんど知らないウリユが新しいものに対してどう反応を見せるかが楽しみです。
続き頑張ってください!
Name: Tune
PASS
■2007-06-15 00:49
ID : d8l1MhGI.wI
どうも初めまして、mouseと申します。
偶然ここを覗いてみたところ、非常に興味を引かれたので拝見させていただきました。
ウリユの語りで繰り広げられるところに新鮮さと暖かさがあってとても良いです。
続きを楽しみにしていますね!頑張ってください!
Name: mouse
PASS
■2007-06-14 22:30
ID : d8l1MhGI.wI
はじめまして&ありがとうございます!
この作品を書かせて頂いている六花と申します。

感想もらえるとやはりほっとしますね。
新参者がいきなり連載物など投稿して大丈夫なのかと
内心ビクビクしておりました。
物語はまだ序盤、これから面白くなっていく予定なので
今後ともよろしくお願いします。
Name: 六花
PASS
■2007-06-10 22:48
ID : dIFbg8BhOAM
冬馬と申します。
読ませて頂きましたが・・・、ウリユ主人公の幻想譚、なかなか面白そうな感じですね。ウリユとクロウの掛け合いの部分など、ちょっとにやにやしながら読ませて頂きました。
まだまだ始まりという感じですが、この先各キャラとの絡みなど、すごく楽しみです。
続きの方、がんばって下さい。

それではまた・・・。
Name: 冬馬
PASS
■2007-06-10 21:39
ID : 6QUXOs3D7WM
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