ライン〜Rain〜
ライン。


人には超えられない壁、否、一線がある

能力的、人間関係上、立場、出身。
どれも皆、友情や、愛情、時には生きる時間をも阻むものである。しかし、もし、それをぶち壊せたら、のり超えられたらどんなに素晴しいだろうか。

叶うハズがないと解っていても、理解していてもほんの少しの可能性に賭けたいと
言い換えれば運命に抗いたい。と
誰もが、1度は思った事があると思う。どんな些細な事でも。


                




ここは、アクアフロート。
海に浮かぶ、人工的に作られた島だ。
その住宅街のある場所に村上家があった。
今日も、笑いが絶えない普通の家だった
彼女は村上 シイナ
この家の長女。はっきりいって弟の事が好きだ。弟としてではなく、男として
要は、ブラコンだ。
しかし、そんな彼女は憂鬱だ。なぜなら、大好きな弟、村上 シシトがいないからだ。
去年のクリスマスイヴ。彼は、なぜだかわからないが謎の巨大生物と戦い。行方不明なのだ。
当然、納得がいかない。そんな、あったかどうかも解らない。しかも、カメラにも映って無いそうなのだ。
しかし、弟、否、シシトの友人、担任の教師(彼女は副担なのだが)もそうだ。と言っているのだ。
認めるほか無い・・・
それは、彼女の母親も同じようだ・・・

「・・・よし。」

だめだ。気が滅入っていると思い、散歩に行こうとシイナは決めた。うまくいけば、シシトもみつかるかもと。そんな、淡い期待をよせてドアに手をかけた。



と。出かけたがいいが。シシトではないほかの男の子を見つけた。なんとなく似ている気がするのだが、やはり、弟ではない。
そして、彼は言うのだ。

「シ・・・シト。」

シイナは弟の友人かと思ったがなにやら違うようだ。ぼろぼろな上に、うわごとで言う名前の割には色気が無いというか・・・
まあ、あっちの趣味でもあれば話は別だが。
まあ、自分がいえるタチではない事も彼女は解っている。
とにかく、弟の情報が聞ける可能性があると考え連れ帰る事にした。もっとも、こんな状態の少年をほっておくつもりなどないが、期待しないわけにはいかなった。
弟の行方不明はもしかたら、村上 シイナの存在意義がなくなると同意義かもしれないのだから。


見つけた少年は、今は生きているかも解らない弟の部屋に置く事にした。
やはり、似ていた。髪の色や、身長それどころか、顔立ちだって違ったが、シイナが感じる独特の気配とでも言おうか。
それが、そっくりなのだ。恐ろしいまでに。多分彼女は今、後ろを見てしまったらシシトと。大声で叫んでしまうだろう


そんな、少年を見ていてフッと気がつく。
倒れていた少年は、白髪でよくはみえなかったがライトグリーンの瞳だったハズだ。
シシトは、黒髪で、同じライトグリーンの優しい目だ。
目の色は同じ・・・でも違う。そう思えるのが唯一の救いだった

「うっ・・・・ああ」
少年が起きてシシトではない声を聞いてシイナは落胆のような、救われたような複雑な気分になった。
「おきた?」
シイナは、できるだけ感情を押し殺して喋った。
「あ。・・・・あ?」
白髪の少年は、良く分からないという声をあげる。
「・・・どうしたの??」

「シーナ・・・セフライト??」
「シイナだけど、セフライトではないわ。」
冷静に答えた・・・
いや、答えれた。次は、彼女が質問するべきタイミングだ。
「あなたの名前は?それと、私の弟の名前をうわ言でいっていたけど」

白髪の少年はやけに安心したようになにかをつぶやき。答える
「俺は、浅月 空。それ以外は・・・・・・覚えていない・・・」
「・・・・っ!じゃあ、さっきのセフライトは」
「そんな気がした・・・多分、俺の・・・何かだ。大切な・・・いやでも、もっと大切な・・・・なにかがある・・・・ハズ・・・」

「そう。」
シイナは、落胆の色を見せた。
無理も無い。心境は、絶望という言葉が1番合うだろう・・・
それをしってか、しらずしてか。ソラはこんなことを言うのだ

「弟さんの名前を教えて欲しい。思い出せるかもしれない。よく、状況がわかんねぇけど・・・助けてもらった事は確かだ。力になりたい」

なんというか、絶望という言葉には程遠いほどやけに、意味もなく力の漲るような言葉だった





ガチャ・・・
ドアの開く音がした。
シイナの母親、スズナだ。
「あら、シシトにそっくりなのね。」

「シシト・・・?」
「私の弟の名前よ。なにか思い出せる?」
シイナは、先ほどの質問と親の言葉の説明をし、あまり、可能性は高くないが思い出せるか確認するが

「・・いや、多分、知ってはいる。だが、深くは。」

「・・・そう、」
彼は、記憶喪失だ。彼はシシトの・・・・
そう考えかけて、スズナが場の空気をぶち壊すのをスルーしてしまった。
「で、今日はお持ち帰り?やーねーシイナ」





               「・・・」

「ソラ君?だっけ?散歩でも行こうか。」
軽く、ソラをうながし
「へ?・・・・・ああ、別にいいけど。」
ソラも、拒否はしなかった
こうして、2人は町を案内がてら歩く事にした。
季節は8月。
蒸し暑い季節だが、シイナは相変わらず半そでのYシャツに青のネクタイ。黒いミニスカートという代わり映えの無いファッションだった。
本人いわく、結構キメてきているらしい

一方、ソラは暑いにも関わらず、ALL長袖という殺人的ともいえる服装だったためか。おそらくだが、母の性格を考えしばらく滞在するであろう事を考え、まず、服を買う為に商店街に行くことにした。

「ねぇ?ソラ君はどんなコがすきなの?」
シイナは内心自分はバカだろうとおもったが、記憶集めの手伝いと。自分をごまかした
「んー・・・・なんか変なトコうるさくてでも、何気繊細で、たまに意味わかんなくて・・・・んな感じかな?満足か?アイナ?」

「・・・・・・アイナ?」

商店街のアーケードの中で立ちすくむ2人。
シイナの名前ではなく。違う誰かの名前を・・・・
「え、あ?あれ・・・今、俺アイナ・・・って・・・・誰だ???」

彼は、汗だくになりそのまま頭から倒れた。
無論、救急車が来た。医者が診ているということはアクアフロートの市民IDは持っているようだ。
祖父が偽装したという可能性もあるが・・・
あの、長い栗毛のメガネをかけた・・・なかなかきれいな顔立ちの若い医者が隠してくれたのか。
いや、その線が高いだろう。シイナとすれ違いざまに医者は
「気をつけたほうがいいと。」
つぶやいたからだ。
そのとき、なにか鳥のようなハネが見えたが・・・すぐに消えてしまった。ソラもそうだった。なにか、黒い鎌のような・・・

考えるのはよした方がよさそうだった。
シイナは、ソラが倒れたのはあのカッコの所為だと思い夏服を買ってきた。
自分が女性の好みを聞いたからというのもあるのだろうが・・・・
とにかく、シイナのセンスで、服をえらんだ




のだが。しばらく村上家に滞在する事が決まり病院から戻ってきたソラがそれを身に着けると・・・


「・・・・・ぃぃかも・・・」

シイナはきれいに、ゆでだこになるのだった
黒い数多の鎖が装飾として作られているジーパンに黒い半袖Yシャツ。
全身真っ黒だったが、髪の色が白なのでかえってよかった。

ピンポーンっ

ガチャッ。
誰かが、ドアを開ける前に先に来客がドアをあけたようだった
ここまでくれば、弟の後輩。
クリスマスの1件以来家族がらみの付き合いをしている犬山セトしかいない。

「こんにちわです。シイナさん」

「ドライエル・・・って誰だ・・・」
ソラは反射的に物をいうがやはりその意味はわからない

シイナは考える
私のときと同じだ。ソラ君は私を見てセフライト。犬山さんを見てドライエル
ドライエルはたしか犬山さんのおじいさんの名前
じゃあ、私のセフライトは??私の・・・なに?
「・・・ナさ・・・・シ・・・」

母に聞けば何かわかるかもしれない。
父は、たしか・・・
「シイナ!!」

「へ?」
長らくぼーっとしていたようでソラに肩をつかまれながら呼び捨てで・・・・

ユデダコ再来。
弟の帰りはおそくなりそうだ




「で、シシトに良く似た女の子がきたと」

「はい。外見は・・・違うんですけど。気配のようなもの・・・オーラですかね。」
セトは散歩にでたところ倒れていた黒髪灼眼の少女をひろった。と

「おなじね。ソラ君と」
「え?私もセトさんと同じ流れで彼を見つけた。そのコ、記憶ないでしょ?」

二人の男女、黒髪と白髪、いや銀髪
倒れていた。
もし、そのコに記憶がない。
となれば、偶然ではないだろう。このアクアフロートに何かあったと見ていいだろう
しかし。

「え・・記憶はありますよ?名前は黒燈 藍那っていうんですよ〜笑。」


「っ!!藍那・・・?アイナ?・・・あい・・・・なっ」
小刻みに震える肩。割れるような頭。ソラは一瞬のうちに、獣と戦っている浮遊大陸の映像、誰かもわからない友人と正確には思い出せない親友と笑っている映像。それらが一気に・・・・あふれかえって・・・

「そう・・・なの。同じなのね。この前のコと。」
シイナは、確信した。
先ほど浅月 空が口走った『アイナ』と、犬山セトが言った『黒燈 藍那』がおそらく同じ、同一人物であると。
そして多分おそらく、シシトの事もわかるハズ。

「黒燈さんにあわせて!!セトさん!ソラ君をつれてくわ!!」

「ぇええ!?ソ、ソラさん。い、行きまょう」
「・・・うあ、、、、ああ。」
セトは何も知らない。解っていない。今の状況すらわからない。だが、止まってはいけない。そうおもった。

少年は近づいてゆく。2つの記憶と。二人の自分に。
どちらが、本物なのか。両方本物なのか。または両方偽りの記憶なのか。
そして、それらを持ち合わせた自らの運命の待ち人に・・・今からあえる。確かめられる
彼の。浅月 空の生きていた軌跡が。
しかし、その結末がHappy ENDかどうか
それは、誰も知りえないのだ。
でも彼は、どこかの誰かと約束したハズだった。

絶対に忘れない。と



ダッダッダッ、、、

「・・・ついた。」
村上家から走って5分
案外、近い場所に犬山家がある。
「ここに、ソラ君の・・・シシトの手がかりが。」
「シイナさーん。」
あとから、走ってきた。セトと、ソラ。
セトは息切れしていたが、ソラは息切れどころか息一つ乱していない・・・

おかしい、私はもとよりセトは学年一の才色兼備。または文武両道を果たした天才少女。
そのセトさんよりも・・・体力がある?
それも圧倒的に差がある
いくら、男の子とはいえありえない。

「シイナさん。いきましょう?藍那さんにあうんですよね??」

セトに促され3人はセトの部屋にはいった。そこには、黒髪灼眼の信じられないという顔をした少女がそこに居た。
しかも、その少女は。

「ソラぁああ!!!!会いたかった!!」

などと言ってソラに飛び掛ってくるのだから、彼は状況が整理できない

だが、思い出すものはあった

アイナが夜店のど真ん中で四つん這いになり花火が上がり、ソラは花火の光にてらされるアイナに・・・・

「アイ・・ナ・・・なのか?アイナ・・・・だよな。」

「・・・そうだよ。ソ・ラ。」

あの時は・・・俺からだった・・・よな。
こんどはこいつからか・・・

思い出せてよかったよ・・・・アイナ


ふいに思い出す。
いつかの遠い記憶を。

「いいですか。皆さん。今から皆さんの存在自体を魔力に変えます。かくごしてください」
銀色の角が頭から生えた女性が声を張る。

そして、目の前に居る少女は今にも消えそうになってつぶやく。

「約束だからね。忘れたらダメだよ。あたしが迎えにいくんだから・・・だから、あんたは!!絶対、死なないで。あたしの事忘れないで。」
黒髪の灼い目の女の子が自分に必死に語りかける。コレはアイナだ

あれは村上 シイナ??
・・・でも、まだ、幼いな。誰だ?

「エシュター君!絶対だからね!!絶対この学校に帰ってきて!!お願いだから」

「約束するよ。シーナ。」

っ!!!

エシュターと呼ばれたあの男・・・今日の医者に似てるっつーか同じだろ顔が・・・

「先輩・・・・」
「セト・・・・」
セトさん!??!に、シイナの男版!??!
・・・・アレが・・・シシト。俺の友達であった。いや、今もそうだ。
「セト。姉さんに謝っておいて・・・頼むよ。」
「シイナさんにですか??」
「うん。たのむよ・・・」

このセトは、同じだ。さっき会ったセトと・・・だったら、シシトは魔力に・・・でも。俺は・・・アイナは・・・



そうしているうちにソラの体は・・・薄くなっていって、同様に薄くなっているアイナの笑顔が眩しくて・・・

「忘れたくても忘れられねぇよ・・・・忘れたくねぇ。」


最後の自分の言葉で・・・・きえた



そして今、銀髪の少年は、1つの記憶と自分を取り戻した。友人達との、淡くも、愉快な青春を。その中でであった異例なる物もソラは見えるようになった。
少年は信じるであろう。これからもずっとあのときの約束を・・・。




しかし、シイナは神妙な赴きで、2人を・・・いや、黒燈 藍那を。

「シイナさん。話が・・・」
セトがシイナに声をかける。

「・・・なに?」
シイナはワンテンポ遅れて返事をする。

「えっと・・・私の部屋で・・・」

「・・・・(なにやら、意外なところから情報はくるものね)」

そんな、姿をソラとアイナははたから見ていたわけで・・・

アイナは切り出す。ありえない構図をたたきだす
「まさか、2人って・・・・そんな関係・・・・」


・・・・・しばらくの沈黙の後


「っうおい!」

駆け出したアイナをとめるソラ。

「だって、気になるじゃん!!っていうか、とめないと!!」

「い、いやいやいや!!!ヤメトコ!!」
「いくっ!!!」
「やめっ、、、とけ!!お前もあっち側にいくぞ!!!」


ソラは、必死に止めるが聞くようすなし
彼は、必死に止める方法を考えるが・・・
「花火・・・夏祭り・・・・いやっ!!ダメだ!!!」


「えー・・・じゃ行くよ?」
アイナは不気味な笑いを浮かべまるで何かを待ってるようだった。


「くっ・・・こいつ・・・」

ここで、どうするか。そこで、漢ソラ アカツキ(何故か英名)の真価が問われるわけで。

俺は・・・・どうすればいい??

彼が・・・だした答えは。


「アーアレだよ。愛の形はジユウデース!!YOU ARE FREADOM!!!あの部屋はワタシタチが土足で踏み込んでいい場所じゃアリ〜マセ〜ン
今の二人は恋する男女アダムとイヴ。つか、イブとイヴって感じネ。だから、よりいっそう輝きをます二人はもう、ある意味神話だYO!」

「へへぇー・・・じゃあ、あたしたちは本物のアダムとイヴ?」
ある意味獣である彼女は何かを・・・まっていた



「い、や。お前・・・・が言うなら」



「・・・」

「・・・」





一方、シイナ達は



「すいません・・・・先輩は・・・先輩はぁ!!!」
犬山セトは無垢な泣き声で。
               1人の少年の。
間違いなき最後を。
               伝えた


村上 シイナは、何かを失ったような声で。
泣き叫ぶ。
子供のように。
「シシトぉおぉ!!・・・なん・・で、あのこがあぁ、あのこがぁあ!!」

騒ぎをききつけ、やってきた2人。
そして、アイナはまだ、記憶が鮮明でないため、状況が飲み込めないソラを置いてゆき
1人の勇者たる面影をみせ、偉大にかつ壮大に1つの言葉を紡いだ


「あたし、シシト君を生き返せるよ。」

2人には、英雄か、勇者にみえたろう。

だが、しかし

ソラは、なんだかアイナが消えそうな顔している気がした。
そう、まるで、あの、約束の時の顔のように

アイナは、自分の腹の中に手をつっこみ、輝く結晶のようなものを取り出した。
シイナは、驚いていたがセトやソラはなぜかやけに落ち着いた。
まるで、あたかも「それが普通だ」といわんばかりに。

「確か、生命の結晶というものです。あたしの中に7つ。ソラの中には8つあったんですが、いまは、7つですね。」

アイナは、手を震わせそれを、シイナに手渡した
「あなたが、弟さんの事を考えてください。思い出でも何でもいいです。想いのつよさによって、蘇生率はあがります。あなたがもてば成功率は90は下回らないと思います。」

アイナのできるだけ、震えを隠した声にシイナは戸惑った。

信じられないのだ。

私の弟はいない。だが、目の前にいる彼女の何かを犠牲にして弟は、おそらく生き返るだろう

だが、本当に巧くいくだろうか?
       現実ではない、科学で証明できない

そんなものでシシトを・・・弟を助けられるの??


シイナは、セトのほうを見やる。セトは、重い顔を下に向け、なにかを考えているようだった。
だが、アイナも、セトも嘘をついている目ではなかった。

彼女は目をそっとつぶり、結晶を握り締めた。大丈夫。信じられる。いや、信じなきゃダメだよね・・・シシト。


淡い結晶が砕け、その欠片が瞬き、彼女の想うように、そう、どうしても会いたくてそのためには手段も選らば無いくらいに夢にまで見た少年が、たった今、目の前に倒れていた。

シイナは、自分の目から涙が出ている事が解らなくなっていた。
奇跡が起きた。と。神様は、まだ見ていてくれた。と





しかし、残酷にも現実という名の死神は想い人の代償を。ことごとく奪っていくのである。





うつぶせに倒れている黒髪の赤き目の持ち主であろう少女。アイナだ。
「・・・はは。アイナ??・・・おい、アイナ!!!おい!!!・・・・アイナぁああ!!!!!」

ソラの叫びが木霊する。

「ん・・・あ。」

「アイナ!!・・・よかった」
しかし、やっと目がさめた彼女の第一声は。
「君は・・・誰??」


彼にとっての存在、生きている証の否定。
自分は、まだ、記憶の欠片しか持っていない。その記憶が本物かどうかわからない。
疑う。そう、自分の記憶を。
つまり、自分の中の恋人との記憶が思い出が消える。

1人では愛された記憶さえ、儚くて虚しく切ないだけ。
運命となくした永遠。
こんなとき、自分はどうすればいいのか。

この、記憶をなくした彼女になんと言えばいいのか


「泣いてるの?」

アイナはソラに声をかける。
ソラは気づいてなかった。じぶんが泣いているという事実に。



私が、奪った。2人の関係を。
私が、奪った。2人を繋ぐ記憶という絆を。
私が・・・奪った。シシトを生き返すために。彼女の記憶と引き換えにシシトがほしかったから

気づいてたんだ。私は。こうなるって。
アイナさんの中の結晶7/7つ。ソラ君の中の結晶7/8。
ソラ君は記憶喪失。アイナさんは平然と記憶を持っている。
相違点と、現状、彼女の台詞を考えればソラ君はかつて誰かを生き返し、記憶をなくした。人をいき返せば記憶、またはそれに相当する何かをうしなうと。

それでも、シシトを助けたかった。


だから、私は・・・もう、壊れたのだろう


シイナは、その場にシシトのそばでひざをつきそのまま、意識は闇に堕ちていった







取り残されたソラの抜け殻にセトは、

「ソラさん、思い出してください。昔のあなたが、どんな事をしてのけたか。あなたとアイナさんにしかできないことを。思い出してください。」


そう、言い残して、壊れてしまったシイナをつれ、ベットに休ませた。


その日は、月が隠れ屋根に雨が当たっているのが解るほどの雨だった







翌日、犬山家のある部屋でアイナは、ソラと会話しソラと同じ運命にあっていた。


名前以外は思い出せない。直感で物を言い出すが、その意味が解らない。いまだに自分も、たまにその状態になる事もあるのだ。

記憶を取り戻すにはどうしたらいいか。
紛れもなく、自分という存在は必要。
しかし、すべての記憶を持っていたアイナ、または記憶をすべて持っていた自分ですら、記憶を失う事は避けられなかった。
何かものかの意図さえ見えた。

まるで、運命かのように


しかし、先ほど考えていた事は吹っ飛んだ

そんな運命なんざ、俺が壊してやると。堂々と言葉にできる気がした。


破壊なら憎悪を、癒しなら愛を。
魔力に思い込める。それが魔力の基本であると。

誰かがそんな事を言っていた。
なら、俺は今目の前にいる、少女の記憶を取り戻す。その想いを魔力に篭めよう。
それだけで、十分なハズだと。以前あった誰かならいうだろう。名前も思い出せない、親友ならば。

体から蒼いなにかが・・・あふれる気がした。これなら。アイナを。こんな事があった・・・気がした



シイナは、夢を見ていた。

白く何もない、まるで箱の中のような世界。
そこには、梟、悪魔、天使、蛇、狼、鳥、鷲、白虎、隼、そして、角のはえた少女が居たのだ。
そして、

梟は語る、
「わが主が、忠告したであろう。気をつけろ。と。」

悪魔は愚痴をこぼす、
「相棒を助けたのは礼を言うが自分の事しかかんがえてねぇのか?お前は。」

天使は痛々しく言葉を突きつける。
「あの子の記憶を奪ったのは真実を知らなかったから?それとも、見てみぬ振り?」

蛇は批判する
「私は、あなたの事を評価していましたよ。ですが、今回のことはらしくないです」

狼は狼慨する
「我が古の主を助けた事は評価しよう。だが貴様とて、解らなかった訳ではあるまい。」

鳥は愉快な声の中に怒りを添わす
「いやー、派手にやってくれましたねぇ♪端的に言いますよ?怒らないでくださいね。ナナシ様に何してくれてんだよ。くちばしでてめぇの体に風穴あけるぞ。」

鷲は重々しい声を上げ。
「我が主は、貴様と同じ事をするだろう。だがな、我が主は、その責任もその業も背負うだろう」

白虎は、鷲とは違う威厳を放つ
「我が主は貴様のようなヘマはせぬ。よって、貴様に言う事はない」

隼は、白虎に同調する
「まったくそのとおり、貴様の、思慮の足りなさが。まねいた」
しかし、栗鼠はコレまでのどの動物とも、違う反応を示した。
「アリガトな。シイナちゃん、そこまでして、すべてを投げ打ってでも、シシトの事、助けようとしてくれて。」
その栗鼠の目にはうっすらと、涙が浮かんでいた。

最後に角のはえた少女は、用件を伝える

「あなたは、わかっていますね。自分が、何をすべきか。」

シイナは、俯いて答える。夢にしては、思慮が回るなと、ふと想っていた
「でも、わたしにはその力がない・・・」

「力なら私が与えます。ですから私たちの英雄たちを、救ってください。お願いします。ナナシさんと・・・ゴンベエ、いえアイナさんと、ソラさんを。」

角のはえた少女は言葉をきってかえし、
「今、宿主が不在な者は。」
返事をしたのは蛇、狼、鳥、白虎、隼だった。しかし、鳥は、
「お前にだけには宿りたくない。」
といった。
少女は、なにやら、呪文を唱え始め、
それと同時に、蛇、狼、白虎、隼、鳥はシイナに取り込まれていった。まるで、1体になるように。
そして、少女はいう。力の使い方は彼らが教えてくれます。と。

そういった瞬間、鳥の「ヤメローーーーー」という叫びとともに
意識は現実へと戻されていった。




シイナが、目が覚めたときには犬山家のどこか。自分の家にはいないことはわかっていた。
だが、自分には、夢で出会った動物たちが見えている事、さっきの夢はただの夢ではない、もしかしたら、夢ですらないのかもしれない。
それだけではない。この張り詰めた、空気、隣の部屋のものだった。


クロウ《いいからゆくぞ。われの名は銀狼のクロウ。力を司るものなり。》
※以後は、トーテムのみ名前が表示されます

クルス《我が名は白虎のクルス。空間を司るもの。》

カルム《俺の名は、カルム。通り名はない。あらゆる事象を司る。》

フェザー「あーわたくしの名はフェザー。いじょうー」


スケイル《そして、私の名は、水竜スケイル。隣の部屋で、ソラさんがアイナさんの精神に何らかの干渉をおこなっています。止めましょう!!!》


「いいえ!!逆よ!!!」
シイナにはにわか信じがたいが感覚が非常に鋭敏になっていたせいか、思考もよく働くようになっていた。

スケイル《え、ええぇ!?!?何でですか?意味が・・・》
「信じてるからよぉおおお!!!!!!」

シイナは部屋のドア蹴飛ばし、隣の部屋の
ドアを開け放ち、そして言うのだ。


「こうまでして!!!全力で!!!自分の存在すら賭けてまで!!!私の願いを!!かなえてくれた!!!シシトの命を助けてくれた!!あの二人は絶対に何かで繋がってて、それは運命くらい簡単にぶっ千切るって!!!」


開け放った、ドアの向こうにはソラが蒼い何かを放ち、それをアイナの中の戸棚の中から大切なものを探すようにふり注いでいる。


クルス《まずい、時空がゆがんでいる。魔力が中途半端だ!》
カルム《シイナ!!お前が全力であの方に魔力を注げ!!!それなら間に合うかもしれん!!》


シイナは、戸惑う。
「そんな事、やり方がっ・・・」

スケイル《大切なのは想いです。》

「・・・・想い・・・・か。」


シイナは、気付く。自分の周りに翠の何かがある。多分、コレが魔力だ。
扱い方なんてしらない。それどころか、はじめてみる代物だ
ソラ君の色は、きれいな蒼・・・か。
私だってお世辞にも綺麗とはいえない
でも、救いたい。その想いは・・・誰にも負けはしないっ!!!!!


爆発音とも取れる音を発し、シイナの魔力があふれ、満ちる。そして、満ちても尚、シイナは扱い方の解らない魔力を放出する。

スケイル《・・・これは・・・この力はリクレール様・・・。まさか。》


部屋の中の魔力の飽和状態が続くと、どうなるか。自然環境が変わる。または、入りきらない魔力が、「部屋の中にある別の違う器」に魔力が入る。つまり、ソラにシイナの扱いきれない魔力が入る。それも、半無限に。

その魔力を使い、ソラはアイナの記憶を見つけようとする。



そして、ついに赤い色を放つ何かを。
おそらく、アイナの記憶であろう物を手に入れた





アイナの記憶の中



白。
白。シロ。しろ。白
全てがまっしろの世界。何もない。何も覚えていない。誰も居ない。

そんな場所に。私は・・・クロアカリアイナはいるんだ。
きっと、誰も来ない。誰も助けに来ない。この何もない。世界に。
でも、約束は・・・なんとなく覚えている。忘れない事・・・・・だったと思う。
何を忘れないのかは覚えていない。でも、忘れたくないなにかがあったはず。

無理だ。
何かが・・・鎖か何かが邪魔する。
・・・取れない・・・どう・・・して?
私は、思い出せない。
「あんた」みたいに簡単にいかないみたいだよ??




「アイナアアアアアァァァァアアアアァぁああああおあああおああおあ!!」


「あんた」は誰??なの??思い・・・だせない・・・なんで、この何もない世界に・・・


「約束したハズだろ!!!!忘れないって!!」


でも、思い出せない。ここには何もない。記憶も、建物も、友人も。大切なものも・・・なにも・・・ない


「うっせぇえええ!!!んなもん、全部俺が作ってやる!!!!!おれが記憶も大切なもんも全部取り戻してやるよ!!!」

でも、何かが邪魔する。


「じゃあ、俺がそのクソみてぇな運命ひきちぎってやるよぉおおおぉおぉ!!!!」

っ・・・・そ・・・ら?







目は自然と覚めた。
体中に重りをつけているような錯覚をおぼえるほど体が重い

それもそのはずだ。

「私」はソラに抱きしめられていた。







問題は、そこからだ。
ソラは私を抱いている。
それは至極当然のこと。疑問はない。むしろ、大歓迎welcomeなのだが・・・←欲求不満

「うーん・・・」



シイナさんがソラを抱いてるのは何故かなぁあああぁぁぁぁああ?!?!?!!?!


アレ?ソラって私と一緒だよね??記憶ない内に2人は恋に落ちた。とかそういうんじゃないよねぇぇぇぇぇぇ?????ソラぁああああああ!!!!

「うーん・・・・あ・・・」←ソラは、シイナを振りほどいて上にのっかってきた



NOOOOOOOOOOOOOOOOOぉおおぉおお!!!

いや、でも良く考えたらソラを1人占め?しゃあああああ!!!どうだ!シイナさーん。勝った!

「うー・・・シイナさん」








・・・・・
もういいよー・・・っていうか、私のソラはどこへー?
どーせ、私とシイナさーんを勘違いして夢の中で楽しんでるんでしょ???
もう・・・・私は、どうでもいいんでs

「やめ、ろシイナさん。アイナだけは・・・・・・・・・・逃げろ。」

真相「やめ、ろシイナさん。アイナだけは鞭打ちの刑は・・・アイナ逃げろ。」




・・・・っ
勘違い・・・だったんだ・・・(いろんな意味で)
ごめんね。ソラ。
私はソラを抱きしめ無理やり体勢を代え、2人の世界にはいる。変な気になってしまいそうだが、悪くはない世界に入る・・・・予定だったんですけど。



私の視界には、セトさーんがはいってるんですけど。
セトさーんはあろうこともか私のソラにくっつき始めた・・・・

やばい。泣きそう。

ばかっ。ソラのばーかっ。シイナサーンだけじゃなくセトさーんまで・・・・・
くっ・・・・そうといえば昔からそうだけど!!!もう・・・いいよね。

私は、ソラに顔を近づけ・・・


悪魔《・・・オマエ。またか。何度目の夜這いならぬ朝這いだ?》

「っつつっつ!??!?oh!AKUMA!!」
↑パニック


「うーん・・・・?・・・アイナ?顔近っつつ?!!?!?」

ヤバイ。どうしよう。きっと、もうみんな起きるし。ヤバイ。起きたら、きっとソラへの朝のキッス大合戦(ありえない上に謎)が始まるっつ!!!そうなる前に・・・




チュ・・・





やっちゃいました。
なかなか、ソラも離してくれませんでした。(嘘)


その後、部屋から1本の縄が見つかった事とソラの体に縄の後が見つかった。
mujina
2008/02/11(月)
09:32:00 公開
■この作品の著作権はmujinaさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのコメント
・・・どーも、Mujinaです。
この話には、話という物がありません
場面、視点を変えることはあるとおもいますが。話とか章という概念は作りません。
うん。ぶっちゃけ意味わかんねぇデスネ
こんなのつくるならむこうも・・・
という意見もわかりますが・・・どうか、大海原のような方。許してください。
少しの方々しかわからないと思いますが白髪の運命をこえる勇者と黒髪の同行者が登場します。
一応、主人公は、シイナです。

いまさらデスガ、このお話はこの平穏な毎日のANOTHER STORYです。ちょっと、というか、大分話がわかりずらいです。話読んでる事前提で進む話なんて・・・・

シイナ姉さんはお話上、素質では最凶で最強?ですが・・・
情緒不安定+経験不足で、実力は大体2番くらいです。しかも、トーテムを複数宿しているので力の加減を間違えると一般人は即ひき肉です。
皆!おねえさんにだけは逆らわないようにしよう。

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