シルフェイド交換録

 +0+

 さぁ。と雨が静かに音を奏でる。
 ぱたぱたと二つの傘が雨を受けるその中を、僕はシーナと共に歩く。

「――それじゃあ、エシュター君、気をつけて……」

 シーナの綺麗な声が、静かに響く。僕はうん。頷き言葉を返す。
「シーナも気をつけて。無理をしないようにね」
 食中毒が相当長引いているらしく、今日もトイレへと駆け込んだシーナが少し不安だ。ちなみに僕は今日女子トイレには入っていない。
「うん。ありがとう。じゃあ、また明日」
「ああ。また明日」
 僕もシーナも手を振り、互いの家への道を歩く。

 また明日。この一言は、結構大切なものなのかもしれない。
 だって、この願いが叶わないことだってあるのだから――。

「もう、エシュター君ってば、家に上がり込んじゃえば良かったのにぃ☆」
 僕はいつの間にか目の前を漂っていたテストの妖精をぶん投げた。

 きっともう、星になって、帰って来ない。……多分。



 ――シルフェイド見聞録・幻想譚二次創作テキスト――
               シルフェイド交換録




 +1+

 僕はそっと目を開ける。
 まあ夜、いつもの布団の中に入ったので寝相が凄くない限りはいつのも天井が見える。はず。
 でも僕が見る、いつもの天井ではないことに違和感を感じた。
「……さん?」
 まだ小さな、子どもの声。
「おかあさん?」
 へ? ……お母さん?
 その声の方へと僕は顔を向ける。
 そこには小さくなった僕がいた。
「……お母さん? ご飯できたよ?」
 ご飯? ……ああ。朝ご飯か。
 僕は布団から外に出る。布団かと思っていたらベッドだったので起き上がったとき少し驚いた。
 あきらかに、あの、おじさんが経営している本屋の奥にある僕の部屋じゃない。
「顔、洗ってくる」
 そういう僕の声はなんだか高い。
 ここはどこだろう? 僕の住んでいる所はこんなところだったけ? 僕はひとまず
洗面所だと思う方向に行くと子どもは不思議そうな声で言う。
「……お母さん、洗面所はそっちじゃないよ。あっちだよ?」
 さっきからお母さんお母さんといわれるが僕は男だ。にしてもなんだか服が昨晩着たはずのパジャマではなく、水色のだぼっとした服を着ているのはなぜだろう。僕は子どもが指を指した方へ行くと確かに洗面所があった。
 しかし、洗面所の鏡に映っているのは一人の女性だった。髪は茶色のロングヘア。緑色
の瞳にすっとした唇に白い肌。
 そう。まるであのとき女装した感じとまさにそっくりだ。鏡の向こうの女性は目を見開
き、驚いている。
 まさか。と思い、僕はそっと胸に自身の手を置いてみる。ふにゃり。とした柔らかな感
触が手のひらに伝わる。
 まさか。と思い、僕は洗面所の隣のお手洗いへとはいる。
 あるべきはずのものが、無かった。
 おかしい。何かおかしい。僕はなぜ、女の人の体になってしまったんだ? 再び僕は洗
面所の鏡の自分とにらめっこをする。
「おや。イシュテナ。おはよう。……どうしたんだい?」
「……イシュテナ? それは誰のことなんだ?」
 振り向くと僕よりも年をとっていそうな、男の人。

「――僕、僕はエシュターのはずなんだけど……」

 ここは一体、どこなんだ?

 +2+

『シイルの街の予言者に会いな。そうすりゃ道は開けるさ。』
 リーリル=サーショのワープで1時間。サーショにいる占い師のおばあさんに会うと、ひっひっひと笑い、そう言われた。
 ここに来た理由。それは僕、エシュターの精神がイシュテナという女性の体に入り込ん
でしまった。どうしようかと相談していたらイシュテナさんの夫(らしい)クラートさん
が。
『サーショで占いをやってるおばあさんが居るんだ。ひとまず占って貰ったらどうだい?』
 と、言うことで僕は来てみた。
『それだけですか?』
『ああ。それだけだよ。何故かって?ここで言ったらつまらないだろう?ひっひっひ……』
 一応知ってはいるみたいだけど無理矢理聞くのはご老体にはきついだろうと思ったので
止めた。
 ひとまず僕はリーリルの街へ戻り、再びクラートさん達の住居に戻る。
『それだったらサーショの東側の橋を渡っていくと良いよ』
 にっこりとクラートさんは笑う。しかし、
『お父さん。確かそこは今破壊されてて通れないんだよ?』
 クラートさんがおもしろい感じの顔でがーんとしている。僕も内心ショックだ。できれ
ばクラートさんも息子のセシル君も元の母親の精神に戻って欲しいそうだ。僕も元にいた
自分の世界に帰りたい。
 あの、みんなが居る世界に。
『それだったらぐるりと回っていくしかないね……』
『どれくらいかかるんですか?』
『う〜ん……。歩き方にもよるからねえ。あちこち寄り道ばっかりしているから何日とは
断定できない』
『そうですか』
 そんなこんなで約2日間、やっとの事でシイルにたどり着いた。シイルの街は結構静か
だ。特に特産物は無いみたいだけど目的の『予言者』が居るのは本当らしい。看板にそう
書いてある。
 僕は看板の通りに街の少し奥の方にはいると『ユーミス堂』の看板を見つけた。すみま
せ〜ん。そう僕はいい、小さなお店の中に入る。中にはいくつかの液体の入った瓶が置か
れていた。
「いらっしゃいませ。予言を聞きに来たのですよね?」
 そう奥の部屋から女性がやってくる。きっとお店の店員さんだ。
 はい。そうです。と、僕が答えると彼女は心良さそうに僕を奥に手招きした。
 そこには一人の女の子が居た。その子はベットの上に座ってこちらを向いている。まる
で僕が来るのを待っていたかのように。
「こんにちは。」
 女の子はすっと微笑む。僕もこんにちは。と返し彼女に近づく。
「えっと……私はウリユって言うの。お姉さんは?」
 そう言われて僕はぎくりとした。どちらの名前を答えればいいのだろう?僕は一応イシ
ュテナと答える。イシュテナさんの体だし。
 イシュテナ。と僕は声を絞るように言う。
「えっと、予言を聞きに来たんだよね?」
 僕はこくりと頷く。
「うん。えっとね―――――――」
 彼女はじっと僕を見つめる。その目は僕の目と全然合わない。目、見えないのかな?僕
はそう思いながら彼女が口を開くのを待つ。

「えっとね、ムーの街に行ってね、救世主と言われる人に会うの」

 +3+

 今日はこのあたりで休もうかな……。僕はそう思い、どこか野宿が出来るところはない
かと少し辺りを探し回る。
 僕は今、ムーへと向かうべく南西へと向かっている最中だ。このまま歩き続けると夜が
明けてしまいそうだった。少しは体を休めないと、体が持たない。それに何かあったらイシュテナさんに迷惑が掛かってしまう。
 あ。なんかちょうどよさそう。そう思って僕は小さな古びた民家? に近寄る。どうや
ら昔何かあったようで家はほとんど壊れていて人はいない。
 使っても……。よさそう。だよね。と、僕は思い、僕は古びた民家の屋根がある場所に
入り込む。
 あたりは暗くなっていて空にはオリオンの星座が輝いている。そう言えば、ここって冬、
あるのかなあ。と僕はそんなことを思いながら木を拾ってきてそれを屋根の外でくべ、と
小さめにフォース、火炎を発動させると木に火がついてたちまちぱちぱちと木が焼けるに
おいと音、赤やオレンジに輝き、暖かく、僕の五感に染み込んでいく。念のために、と、
クラートさんにフォースと言うものを教えてもらっておいて良かった。と僕は思いながら暖を取り
ぼんやりする。
 イシュテナさんの体。詳しくは解らないけどトーテムが居るようだけど、僕の体に宿っていた梟と大分違うものらしく、何も話してくれない。そのことに少し寂しさを感じ、それがじわりと広がっていく。
 これから僕は、どうなってしまうのだろう。
 アルバートが、ガゼルが、クリスや、セルリア先生や……シーナとは、再び逢えるのだろうか。
 僕は一生イシュテナさんのままだろうか。僕の体はどうなっているのだろうか。
 がさがさと茂みが分かれて何か近づいてくる音に、僕ははっとなり思考を中断する。魔物かな? そう僕は思い、念のために身構える。
「あ、身構えなくても大丈夫ですよ」
 そう言って茂みから出てきたのは結構美形な感じの紺色のマントを羽織った男の人。と、
竜のような額に赤い宝石のようなものを持つ半透明の生物……。多分、トーテム。僕(イ
シュテナさん)にトーテムはいるみたいだけど僕に姿を現してくれないし、話してくれな
い。そう言えばフクロウはどうしているんだろう……。再び思いがぶり返す。ほかのみんなも、僕が変わってしまってとまどっているのではないかと思うと不安な気分になる。……いや。考えてはいけない。それならば一日でも早く向こうに戻れるように努力するべきだ。新しくできた思考に、うん。と心の中で頷く。
「……すみません。」
「はっはい! 何ですか!?」
 急に現実に戻された気がして僕は少しびっくりしながらあわてて答える。
「すみません。女性にこのような願いを申し出るのは少し申し訳ないのですが……。今宵
はともに火を囲ませていただけないでしょうか?」
「え…………ああ。かまいませんよ。どうぞ」
 僕がそう言うと(そういえばこの体女の人だった)男の人はふっと微笑み、火の方へと
近づき、早速炎に手をかざしている。
「あ、そう言えば名乗るのを忘れていましたね。俺はゴンベエと言います。よろしく」
「あ! エシュげふんげふん。…………イシュテナと申します」
 僕は名前を間違えかけながらも(危ない危ない)僕は挨拶を交える。
 共に火を囲み、軽く夜食を食べていると、ゴンベエさんは僕をじっと見てきた。
「……なんでしょうか?」
 僕は必死に女の人を演じる。
「……いえ。美しいお方だと思いまして。少し見とれていました」
「……そ、そうですか」
 中身が男だと解ったら、どうするんだろう。少し鳥肌が立ちつつ、僕らは就寝した。

 +4+

 僕はそっと目を開ける。
 目を覚ましたところは、昨日眠った廃屋の中。
 ああ。やっぱりこの体なのか。と、僕は目をこすりながら辺りを見回す。
「目、覚めたみたいですね。おはようございます」
 穏やかな青年の声が聞こえてくる。昨日あったゴンベエさんの声だ。
「はい。おはようございます」
 そういって僕は微笑んだ。ふと何かを焼いている匂いを僕は感じた。その方向を見ているとぱちぱちと赤い炎とともに何かを焼いている。
「朝の運動としてついでに野犬を取ってきたんですよ。食べますか?」
「………食べません」
 さすがに朝からそんなもの食べたくは無いと感じた。
「そうですか。ま、無理は言いませんよ」
 と言うゴンベエさんの隣で昨日紹介してもらったトーテムのスケイルさんが焼いている
野犬に目を輝かせているのは気のせいではないと思う。
 朝食をとり、僕はゴンベエさんとさよならの挨拶の握手をして立ち去ろうとした。
「待って下さい。これを差し上げます」
 そう言われてゴンベエさんが差し出してきたのは3つの指輪だった。僕の――イシュテ
ナさんの指にはまるのもあればぶかぶかのもの、少しきついものとがある。
「翻訳指輪です。友情の証にどうぞ」
 そう言いゴンベエさんは僕の目的地とする方向ームーの村とは逆の方向へと去っていった。

 +5+

 後もう少しかな……。と、巨大ミミズを倒してから僕は思った。
 イシュテナさんの体に宿るトーテムは、主に理力と知力に優れているようで、フォース「火炎」でも一撃で並大抵の敵は倒せる。もとの世界で鍛えていてのこともあるだろうけどおかげで戦闘はかなり楽だ。
 だけどやはり地図があっても始めてくる地というのは結構とまどうもので、今迷子にな
りかけている。
 この方向であってる――――はずだよね。そう思いながら僕はムーの村の方の空を見つ
める。
 そのときだった。ムーの村の方向に空から急に真っ直ぐな光の線が走って消えた。その
光景を僕は唖然と見つめながらひとまずこの方向であっているんだなと思いながら、僕は
その方向へと急いだ。
 ムーの村に着くと人混みが出来ているところがあった。僕はそちらに向かい始める。
「救世主が来たー!!」
「キター!!」
「これで世界は救われるんだー!!」
 等々、様々な声と人をかき分け、なんとか前に行く。
 そこにいたのは黒い眼帯を付けたすらっとした顔立ち、紫色の長い髪、そして革のマン
トの男性だった。
 ……どこかで見た顔だなぁ。
 その男性は周りが騒いでいるのを不思議そうに見つめている。
 男性が辺りに目を見回す。
 その男性と、僕は目が合う。
 その男性は、僕を見て、驚きの表情と共に頬を赤らめた。
「――アルバート……」
「――」
 僕は彼の名前を呼ぶ。アルバートは口を開く。僕はアルバートの声を待つ。
「ー○※%#$”☆◎×!?」
「……は?」
 僕は思わず声を漏らす。周りの声が大きいから聞き取れない。多分それはないはずだ。
イシュテナさんのトーテムは五感もよくしてくれているようで、声ははっきりと聞き取れ
る。
 ――言葉が違う。
 僕はそう直感的に思った。
 例えば凄い早い英語を言われたらきっと意味が分からないだろう。リスニングの才能や
意味を知らなければそれは良くわからない・・・宇宙語みたいな感じになる。
 どうしよう。と僕は感じながら何か策は無いかと思考を巡らせる。
『翻訳指輪です。友情の証にどうぞ』
「――あ」
 そうだ。と、僕は今朝貰った指輪を取り出す。実際に効果があるかは怪しいところなの
で早速付けてみよう。そう僕は思ったがあることが僕の脳裏によぎった。
 あの汚れたTシャツを着たときのことだ。そういえば消えてしまったけど効果はあるのだろうか。もしこれが翻訳指輪でなく不吉な指輪だった
ら――。
 いや。考え出したらきりがない。僕はすっぱりと思いを断ち切り、右手の人差し指に中
ぐらいの大きさの指輪をはめてみる。
『もしかして俺の声は誰にも判らないのか? ううむ。周りの奴らは何語なのだ。エシュ
ターの電波語か』
「僕はそんな電波発してません」
 アルバートの独り言に突っ込みを入れてみる。
『ううむ。ここはどこなのだ? それに目の前の女性は以前も見たあの人だ! どうする
アルバートっ! 1,まずは逃げる! 2,挨拶をする! 3,初めましての――』
「おーい。聞こえてるんだけど?」
 そう僕が言ってもアルバートには聞こえていないらしい。
 これ、もしかして相手にも付けて貰わないと駄目なのかなあ……。
 そう思って僕は大きいサイズの指輪を取り出す。
 さて、どうやって付けさせたら良いんだろうなあ……。
 僕はそんな思考に入る。
 ――直接はめるようにジェスチャーでもしてみるか……。
 そう思い至った僕はアルバートの肩をぽんと叩く。周りを見回していたアルバートはび
くりと体を震わせ、こちらに向く。そして顔を真っ赤にさせ硬直される。
『なっ何ですかあのときのお、お姉さん!』
「えーと……」
 ひとまず僕は無理矢理アルバートの手に指輪を握らせる。
『こっこれは!?』
 かなりアルバートの声が上がっている。僕はその指輪をはめてくれと頑張ってジェスチ
ャーを取る。
『だっ大胆なことをするんですね……』
 そう言いながらアルバートはまじまじとその指輪を見ながら何故か左手の薬指に着け始
める。
「――結婚指輪じゃないんだからそこに着けなくてもいいだろー!!!」
 そう僕が大声で怒鳴るとびくりとアルバートは体を震わせる。
『な……違うんですか…………』
「違うに決まってるだろう! 誰が君なんかと結婚するか! (男同士だから)無理に決
まってるだろうがー!!」
『がーんっ!』
 アルバートは石化し、強い風に粉々になって飛んでいった。

「……って飛んでったらまずいだろ」

 +6+

「……あいつってあんなに足早かったっけ?」
 僕は息を切らしながら森の中を走り続ける。
 アルバートはあの後何故か顔を真っ赤にさせて走り出し、ムーの村を出ていってしまっ
た。
 僕は慌ててその後を追う。初めの内はあの紫色の髪の毛や足音、気配を感じ取ったりし
ながら追いかけていたがとうとう判らなくなってしまった。
 体力落ちたかな……。って。男と女の体力差はあるに決まっているんだ。忘れかけてい
たが僕は今女なんだ。イシュテナさんという人の体なんだ。彼女の体にはトーテムが宿っ
ているらしくてそれで僕はこうして一人旅をしているわけで、一般人よりは頑丈だけど・・・。
そう言えばトーテム喋らないなあ。喋らないトーテムなんだろうか。
 僕は途中から他の方向の思考に入りながらもほとんど勘でアルバートを追い続ける――。
 追い続けると洞窟があった。ここに隠れたかもしれない。僕はその勘をたよりに洞窟へともぐった。

 +7+

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! あっち行けぇぇぇぇぇぇ!」
 僕は再び走り出す。もうはっきり言って体力は限界に近い。僕は洞窟の中を必死に走り
続ける。
 後ろからは、大蜘蛛の大群。
 普段なら『火炎』で焼き払うところだけど、使えない。
 僕は息を乱しながらも少しずつ歩調をゆるめる。大蜘蛛が追ってくる気配は、……無い。
「――何でフォースが使えないんだよ……。」
 僕はそうぽつりと呟いた。その声はかすかに洞窟の中でこだまし、そして僕の息使いだ
けが周りに響く。
 ――どうしよう。迷った。
 大蜘蛛に追われてかなり走ったというのは判っているんだけどどれだけどのぐらい走っ
たのかは判らない。
 下手をすれば、ここで喰われてしまうかもしれない。
 そんな思考が、僕の頭の中を埋め尽くそうとしていた。
 そうなったら僕はどうなるのだろう。イシュテナさんの精神は、僕の精神は、互いの肉
体は、どうなってしまうんだろう。
 死んだら、もとの世界に戻れないかな。おじさんも心配してるだろうし、ノーマ学院の
人たちにも心配をかけるだろう。(一部の人には心配されたくない気もする。教頭とか教頭
とか教頭とか……。)
 そんな思考は閉ざされた。一匹の大蜘蛛と、目があった気がしたからだ。
 そいつはこっちによってきて、僕に一本の手を振りかざしてきた。
 逃げようとしたけど、僕は気付いた。周りはすでに大蜘蛛の大群に囲まれていることに。
 そいつらはじりじりと僕に近づいてくる。
「……るな。」
 何匹かの大蜘蛛は、僕に向けて糸を吐き出し、何匹かの大蜘蛛は、口を大きく開けて―
―。

「来るなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」







 +8+



 ――僕はどうしたんだっけ?

 ああ。そうだ。確かアルバートを追いかけてムーの村の北西の洞窟へ行って、蜘蛛に喰
われたんだ。
 それじゃあここはどこだろう。天国? 地獄? それとも――。
 僕は閉じられたままだった目をそっと開ける。
 そこは真っ白な世界。
 右も、左も判らない。いや。あるんだ。あるけど、そこは果てしなく続く真っ白な世界。
 下も、上も、限りない白。その中に、僕はただ一人いる。
 天国か、地獄か、全く判らない。いや。地獄なら真っ暗なんじゃないか?
 でも、そんなの誰が決めたんだろう。
 天国? 地獄? そんなところが本当にあるかなんて誰が知っている?
 天国も地獄もない。そうだとしたらここはどこだろう。
「――目が、覚めましたか。」
 そんな女性の声が聞こえてきた。その方向へと向くと――
 
 ふにゃふにゃとした裸の天使。

 しかも、そいつには見覚えがある。
「あっはー☆ 全然僕だと判らなかったでしょ? エシュターく〜ん」
 スマイル一杯にしながらその天使は答える。
 次の瞬間ゴスリというそいつの腹に見事に握り拳がヒットした音がした。
「や〜んエシュター君ひど〜い……」
 そして少しずつ薄くなって消えていった。
「……結局ここはどこなんだろう」
 僕は思わず口にした。
「ここは生命の海。ここから人が生まれていくのです」
 先ほどと同じ声。僕は疑い半分にそちらへと顔を向ける。
 そこには不思議な女性がいた。
 額に角が生えており、耳は明らかに人ではない何か。
 白い衣をまとったその女性が最も不思議に感じる原因は雰囲気だろうと僕は感じる。今
までに会った人よりも強い――独特な何かを感じる。きっと神秘的という奴だと僕はなん
となく納得する。
「私の名はリクレール。この世界の――」
「エシュターくぅぅぅん☆」
 リクレールと名乗った女性の声を遮って、先ほどの変な物体じゃない声がした。
 すどどどどど、と何かがこちらに走って来る音。
 それは――
「んもう。やっと目を覚ましたのね。ロベルト心配しちゃったぞ☆」
 頬を赤らめたセーラー服姿(+@すごいミニスカート)の教頭先生だった。彼は僕の方に突進しようとするかのような勢いで僕の方に走ってくる。

 僕は慌てて逃げる。でも、間に合わない。追いつかれる。

 これが夢なら、覚めてくれ。
「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」





 +9+

「う、うわぁぁぁぁぁっ!!」
 がばりと身を起こすと空気を胸一杯に吸い込んで、吐く。吸い込んで、吐くを何度か繰
り返した。
 呼吸が落ち着いてくると周りを観察する余裕が少し出来た。
 辺りを見回すとどうやらどこかの家らしく、洞窟のような暗さはない。
 でも掃除がされていないらしく、少し埃っぽい。
「よう。目が覚めたか」
 そう男らしい低い声の男性が僕(だと思う)に声を掛けてきた。
 その人はどこか、以前会った医者と似ている気がする。でも、その医者よりも目の前に
いる人はもっと筋肉質でごつい気がする。
「理力使いのあんたにゃあの洞窟は無謀すぎたぞ」
 ――理力使い。そんな簡単に判るものなのだろうか。と僕は思った。その人をじっと見てい
ると何かが見えた気がした。トーテムかな。
 僕は女性を演じようとおずおずという。
「すみません……あの、ここは?」
「リーリルから南東の所にある家だ。ムーの街に行っても良かったんだが生憎任務中だ。
前は封印が施されていたけど開いてたからな。誰もいないし借りたんだ」
「そう……ですか。あの、僕、あ、わたすぃ、あ」
「……ちょっと落ち着けや」
「エージス隊長、女の人起きましたか?」
 僕が混乱してあわあわしていると一人の兵士さんがやってきた。
「おう。大丈夫そうだ。こいつがあんたを見つけてくれたんだ」
「わあ、ありがとうございます」
 僕は兵士さんにお辞儀をするとその人は頬を赤らめた。
「いっ、いえ。悲鳴のような声が聞こえたと思って、行ってみたら眼帯した男の人が蜘蛛
と戦ってて、それで蜘蛛を追い払った後、その人は去っていってしまったんです……」
 眼帯の人。アルバートだ。と僕は直感的に感じた。
「その人、どこ行きました!?」
「さ、さあ。どこかは判らないけど、もうムーから北西の洞窟には居ないと思いますけど
……」
「そうですか……」
 僕はがっくりとうなだれた。
 でも、エージスと呼ばれた男の人が、こういった。
「――俺の感では、トーテムの感では、太陽の神殿に居る気がするな」
「え?」
「一瞬だが何かを感じてな。そいつかどうかはわかんねぇがトーテムは持っていると思う
ぞ」
 太陽の神殿。そんなところがあるのか。と僕は少し呆然としながら訊ねる。
「それってどこに有るんですか?」
「ああ、ここから東に行って――」
 僕は場所を聞くとベットから出た。
「ありがとうございます。早速行ってみます」
「体、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。寝てたせいか少し楽になった気がするので……」
 僕は頑張って笑顔を作った。
「行くならこれをもってけや。俺達じゃほとんど効果がなかったけど理力使いにはかなり
使えると思うぞ」
 エージスさんがそう言って渡してくれたのは、一見変哲もない篭手だった。
「震うとフォースの『火炎』が出てくるようなんだが……お前さんなら使えるんじゃねぇ
か?」
「わぁ……ありがとうございます!」
「おう。っと、お前さん、名前は?」
 僕はそう聞かれてなるべく自然に答えるように頑張った。
「イシュテナです」
「そうか。イシュテナさん。検討を祈る」

 +10+

 僕はシイルの町へ行く途中の森を洞窟に行かず東に突き進む。
 日が傾きかけてきているのでなるべく移動できるところまで移動しておきたいな……そう
思いながら僕は早足で歩き続ける。
 少し歩くと大きな蛇と戦闘。そんなことを何度も繰り返していると一番星がオレンジと
紺色のグラデーションの空に輝き始めていた。
 と、がさがさと木の茂みが動いた。良く出るな。と思いながら僕はクリムゾンクロウ
を構えた。扱いやすいし疲れにくいのでエージスさんに感謝しつつ使用している。
 がさりと出てきたのは骸骨。しかもマントを付けて剣を構えている。
 なんでこんなところに。そう思いながらじりじりと僕は後退して間を開ける。
 かたかたと骸骨は意外と俊敏に僕に斬りかかってきた。はっきり言って気味が悪い。
 後ろに下がってよけると骸骨は剣を前に突き出してきた。わっ!? 僕は思わず叫んで
しゃがんでよけて横に転がる。土の感触を手に感じて小石が少し痛い。のどに剣先がかす
ったらしく、少し熱い。試しに触ってみるとぴりっと痛みが走って血が少し出ているのが
確認できた。
 僕は起きあがってクリムゾンクロウを振りかざす。炎が生まれ、骸骨を襲う。
 ぎっ。と骸骨が悲鳴らしきモノをあげる。一応効いてるみたいだ。それでもまだまだ体
力があるらしく再び剣を振りかざしてきた。何とか再び転がってよけるが今度は腕がかす
った。
 防戦一方じゃ負ける。そう思いながら僕は必死にクリムゾンクロウで骸骨の体力をじり
じり削る。骸骨は僕にどんどん傷跡を付けていく。
 このままじゃやばいかな。あちこちが熱くて痛い体を何とか木で支えながら立ち上がる。
 でもそれが一杯一杯で、反撃できない。
 何も映さない骸骨の黒い穴が僕を見ている。もう駄目だ。そう思った瞬間、骸骨の剣が、妙に大きく、鋭く見えた。


 +11+

「もうっ。ゴンベエ様ったら。いきなりなんて大胆なんですか「静かに」」
 そう俺は言いながらスケイルの口をふさぐ。むぅっと小さく声を漏らし、恥ずかしそう
に頬を赤らませてこちらを見ている。
 俺はスケイルを抱きしめ木の陰から気絶したイシュテナさんと森や砦でであったトガゲ
の副隊長らしきトカゲに視線を送る。近くには動く骸骨の残骸が有る。
 この位置では何を話しているのか判らないな。そう思いながら周りに気配を巡らせる。
トカゲの副隊長とその部下が数人、イシュテナさん以外は何も居ないようだ。こっちに気
づいた気配はない。
「スケイル、なるべく気配を消してこの場を去るぞ。イシュテナさんはあの様子だと大丈
夫だろう」
 俺はスケイルの耳元でささやいた。こくりとうなずくスケイルを横目にトカゲ兵から手
当を受けさせられているイシュテナさんを見る。
「急ぐぞ。時間がない」
 そう。時間がない。


 ウリユさんの予言では、シイルの町はあと5時間後に滅びる。


 俺は太陽の剣を握りしめ、再び歩き出した。

 +12+

「――――あれ?」
 僕が目を覚ますと真っ暗な森の中だった。わずかな木々の隙間から涙のように星があふ
れている。
 あれ?僕、生きてる……?
 そうぼんやりとした思考の中で思っていると、体のあちこちがずきずきして、包帯にくるまれているの
に気が付いた。
 治癒をかけつつ手を何となく地面にはわせていると何かにこつりとあたった。それに目をこらすと骸骨
というのが判ってきゃっと僕は小さな声を上げた。しばらくしても骸骨は動かない。おそ
るおそる突っついてみても動かないので僕ははぁっとため息を吐いた。
 何故かは判らないけどどうやら助かったみたいだなぁ。そう僕は思いながら辺りを再度
見回した。ある程度闇に慣れた目でもうっすらとしか木の輪郭が見えない。うかつに動け
ない。
 しょうがないからこのまま野宿かな。そう思っていたらくぅ。と小さくお腹の虫が弱々
しい悲鳴を上げた。

 +13+

「すまぬがお嬢さん。ここにはもう生活用品以外何も無いんじゃ……」
「いえ。それはかまいません。眼帯をした髪の毛が紫色の青年を見かけませんでしたか?」
 僕は唇を軽く拭い言う。
 太陽の神殿と言うらしいそこに付くと居たのは一人の老人と一匹の犬。やって来たとき
犬が『このじじぃよくはぁはぁ息切らしてるけどよく死なないなぁ』とぼそりと呟いたの
は指輪のせいだろうか。それにしてもけっこう肥えてるよなこの犬。食料はまだ有るんだ
けど量的に不安な部分があるので普段より少なめに食べただけで終わった。
 ……野犬定食って聞いたこと有るなぁ。
 何となく犬を見ていたら「お嬢さん、腹が減っておるのか?」と、老人に訊ねられた。
犬が怯えて震えているのに対し僕の目が異様に輝いていたそうだ。確かに空腹で先日ゴンベエさんの焼いていた野犬を思い出してはいたが、決して目の前の犬を食べたかったわけではない。
 そんなことがあって有り難くご飯を頂いた僕は探し人を訊ねる。
「そいつは知らないがのぅ。色素の薄い短髪の青マントの青年ならここに来て、太陽の剣
を授かっていった」
「太陽の剣?」
「おお。知らないかね?」
 僕は少し考えてから頷く。
「ぶっちゃけて言うと伝説の剣じゃ」
 ぶっちゃけすぎかと。
「昔世界に現れた魔王を倒すのに使われた剣でのぅ。儂はそれと太陽の紋章を――むむ?」
 太陽の紋章? と、僕は聞きかけたところで止める。老人は顔を青くしてポケットを漁
る。
「むむ? むむむむ? む? ……むーーっ!?」
 懐に手を入れたところで声が大きくなる。
 そこから現れたのは輝かしい太陽の印が刻まれた石のようなものだった。あれが太陽の
紋章かな。
「あの青年に渡すのを忘れておったぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーあ!」
 よく息が続くなぁと思いながら老人を見つめる。最後の音を要に、はぁはぁと呼吸を乱
し始めた。そりゃあきついだろうなぁ……。
「だ、大丈夫ですか?」
「だ…………大丈夫……じゃ?」
 いや疑問系で言われても。はぁはぁと老人は苦しそうにしながら僕をすがるような目で
見てきた。
「頼む……お嬢さん……これを……………」
 老人は石を差し出してきたので僕はそれを受け取る。
「これを、先ほど言っていた色素の薄い短髪の青いマントの青年に渡せば良いんですね?」
「よく……解っておるのぅ……。お願い、できるかぇ?」
 どういうものか解らないけど大切なものらしい。僕はこくりと頷く。
 またあの青年に、会えると信じて。

 +14+

 スケイルが派手に吹っ飛んだ。
 それでも彼女は冷たい雨に濡れた大地に叩きつけられても何とか立ち上がり、雷光を放
ちトカゲ達の頭領らしき白きトカゲを俺の側から引きはがす。
 俺は素早く波動を放ち、太陽の剣を握りしめ走り出す。エネルギーの固まりが、トガゲ
に当たる。それを認識したとたん体に強力な電流が流れる。ああっ!! スケイルの悲鳴。
トカゲは雷光を放った。続いて波動を放ってきて、俺に俺に直撃し軽く吹き飛び、地面に
叩きつけられ、俺の手の中から太陽の剣が離れ、後方の地面に叩きつけられる。
 体に激痛が走る。ばしゃり。ばしゃりと水を吸った大地を踏みしめ敵がこちらに近づく
音がする。激痛に耐えつつ無理矢理立ち上がると冷たい雨の中にかすかに暖かい、雨癒が
降り注ぎ、激痛が収まる。先ほどからこのスケイルの雨癒のおかげで何とか戦うことが出
来ているがフォースの力は限界まで近づいているだろう。これ以上戦いが長引けば、今以
上に厳しい状況で戦う羽目になる。そうなることは避けたい。冷静に考えながら後ずさり、
太陽の剣を拾い上げ、ようとした。
「――ゴンベエさまぁーっ!!」
 いつの間に背後に回られていたのだろう。背中にもろに、波動を喰らった。
 向こうのフォースもすり減っているとは思われる。波動の威力は初めに受けたモノより
も幾分か威力が弱いのだろうが、脊髄に一瞬、電撃のような激痛が走った。
 ぶつんと何かが一瞬切れる。激痛のあまりに瞬間的に気絶したようだ。
「く、あぁぁぁぁーーーーーっ!!!」
 倒れ込む力前力を振り絞り足を踏ん張り剣を握り、振るう。ぐぅっ。っと鈍い声と共に、
堅い皮膚が切れる感覚。
 やった。っと思ったら頭上からの衝撃。今度は頭に、波動を喰らった。
 さらにと言わんばかりに今度は腹に波動をくらい、ふわりと宙に浮く感覚。
 そして背中を地面に叩きつけられる。ゴンベエ様っ!! くらくらとする頭にスケイル
の声が響く。スケイルの雷光の音。ごすりと鈍い音と共にスケイルの苦しそうな声。ぼん
やりとした思考の中、それが頭にこだました。
 地面の冷たさが体の芯に染みこんでいく。
 先ほどの攻撃で、力を使い果たしたらしく、身体は動いてくれない。
 灰色の空が視界に広がり、雨は容赦なく俺に降りかかる。
 そして、白いトカゲが拾い上げた太陽の剣も、俺に降りかかって―――――。
 俺はゆっくり目をつぶる。そして、自分の弱さを恨んだ。
 シイルの人々を、救えない自分を呪う。



 もう少しすれば、白い世界と、リクレールが待っているだろう。












 しかし、いつまで経っても、衝撃は来ない。

 ぐぅ。と目の前で白いトカゲが悲鳴をあげる。それにともない飛びかけた意識が戻ってきて無理矢理立ち上がり、理力をかき集め叫ぶ。

「――雷光っ!!」

 雨の中鮮烈な光が、白いトカゲを貫いた。

 +15+

 僕はぬるぬるぐちゃぐちゃぐちゃの地面を踏みしめ、シイルにたどり着いた。
 昨日三股の洞窟で一晩過ごしている間に雨が降り出したらしい。あちこちにに水溜りができていて少し気持ち悪い。
 それにしてもなぜだろう。以前来た時よりもすこしシイルはにぎやかになった気がした。
 不思議に思ったけどそれよりももう少し体を休めたくて宿屋へ行く。部屋がいっぱいで相部屋になると言われたが構わず指定された部屋に入る。
 そこには鼻に真っ赤になったティッシュを詰めたアルバートらしき人が居た。顔が真っ赤で、布団の中でうんうんうめいている。
「だ、大丈夫ですか……?」
 声をかけても返事が無い。どうしようと思考にふけり、詰められたティッシュが端の端まで赤くなった頃、かちゃりとドアを開ける音がした。
「あれ、イシュテナさんではないですか」
「え……だ、誰?」
 僕がそういうと目の前に現れた女性にっこりと微笑んだ。赤い瞳と同様に額に宝石を持ち、魚のひれのような耳を持つ、緑の髪の毛をふわりと泳がせた人だ。持っている洗面器の中には氷水に浸ったタオルがあった。 
「スケイルですよ」
「スケイル……って、ゴンベエさんの、トーテムじゃ……」
「うふふ。神秘ですわ」
 神秘って……。少し僕が混乱しているとこんこん。と、ドアが叩かれる
「スケイル、彼の様子は?」
 色素の薄い短髪の青マントの青年が現れ、僕と目が合う。
「おや。イシュテナさん。またお会いしましたね」
 にっこりと微笑むゴンベエさんに、僕は同じように私もです。と微笑み返す。
「彼はまだ無理そうですね」
 スケイルさんは冷たいタオルを絞りアルバートの額にそれを乗せ、鼻のティッシュを詰め替える。直ぐに根元が赤く染まる。
「あの……アルバート、さん、何があったんですか?」
「……ちょっとスケイルがね」
 僕が尋ねるとゴンベエさんが苦虫を噛み潰したような顔でスケイルを見る。
「だって……ゴンベエ様からかっても面白くなかったのがいけないんですよぅ」
「俺に罪を擦り付けるな。大体なんでそんな物買ったんだよ」
「ゴンベエ様に来てもらうために決まってるじゃないですか」
「嫌だねそんな羞恥プレイ」
「あ、あの……何を?」
 僕が口を挟むとスケイルさんは隣の部屋に行き、少しすると戻ってきた。……体にタオルを巻いて。
「こ、これは……!?」
 僕は顔を真っ赤にさせてできるだけ目を向けないようにして尋ねる。
「ふふん。馬鹿には見えない服。ですよ。お馬鹿さんたちのために下にタオルを巻くのがポイントですよ」
「あれを着だすスケイルのほうが馬鹿だと思うんだがどう思う?」
「ぼ……私に言われても判断に困りますわ」
 自慢げに胸を張るスケイルさんに僕らは困惑しつつ相談する。
「敵を倒すのに協力してくださったのでと思ってちょっとからかってみたらあの有様で……ぜんぜん収まりそうにないんですよね」
「それお礼じゃなくてからかいたかっただけだよな」
「あら。ばれました?」
 ……可哀想にアルバート。

――続く?――
慶(けい)
2009/04/18(土)
20:59:15 公開
■この作品の著作権は慶(けい)さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのコメント
 え〜と……こんにちは。おひさしぶりです。初めましての方、初めましてです。
 前回の更新から1年と1ヶ月近くたってしまいました。申し訳ないです。
 相変わらずゆるゆると生きてます。現在進行形です。
 相変わらずの下手くそですが、かすかにいろいろ弄ってみました。下手くそなりに完成出来ると良いなと思ってますが大分先になりそうです。他にもやりたいことが沢山あって、それすら中途半端な駄目野郎です。
 やっとかこの野郎。でもなんだ新しいところ少ししか無いじゃないか。と思っている人も、居るかも知れません。
 それでも読んで下さり、ありがとうございました。
 また気長に待って頂けると幸いです。今度は少し早めに。を目指します。目指せ俺。
 4月18日。慶。

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>風柳様へ。 
 お久しぶりです〜。
 たまに入れてみるいたずら半分に書いている所に笑ってくれて有難うございます♪これからもちまちま入れていく予定です〜。
 次の展開、どうなるんでしょうねぇ?考えてたら色々思いついたり思いつかなかったりです(汗)。
 続きを期待してくれて有難うございます〜。期待に応えられるかどうかはわかりませんが、頑張らせて頂きます♪
 では、失礼致しました〜。
Name: 慶(けい)
PASS
■2007-09-23 15:03
ID : riLUhLxOWJ2
どうもお久しぶりです、風柳です。
交換録、最新話まで読ませていただきました。
いろんな人に助けられながら旅を進めてゆくエシュターinイシュテナ、相変わらずどこか微笑ましいですね。
ところどころに挿まれるギャグもクスリとさせられるものが多く、いい感じに私好みです(笑)

かと思えば今回はこれまでとは一転して骸骨兵との緊迫の戦闘シーン。
はたしてエシュテナは無事骸骨兵をやり過ごすことができるのか!
はたまた再びリクレールの世話になるのか!
続きも期待していますね。
ではでは。
Name: 風柳
PASS
■2007-09-20 00:03
ID : mm3gb4lIP8Y
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