#真説・幻影帳異聞 第七章「決着」 前編 このレポートは機密レベルSSにつき、 十三剣及びそれに準ずる権限を持つ者のみ 閲覧可能とする。 尚、安全を考慮し 作成者名はイニシャルでの記載とする。 !bgmサスペンス タナトス討伐に関する調査報告                       S.M. その存在を知った時、 私が一番最初に疑問を持ったのは 「タナトスとはなんであるか?」という点だ。 当初、私は神の一種と考えていた。 負の力により生じた邪神、魔神を自称する輩は、 多数存在する。ヤツもその一角であると。 だが、実際に対峙することでその認識は変わった。 【生命】を司る女神様の対存在でありながら、 タナトスは神とは全く異質な何かである。 神は世界の運行と深いつながりを持つが、 かの存在はそんなものになど全く興味を示さず、 ただいたずらに死を振りまくだけ。 死を司っていながら、 タナトスは冥界とは一切の関わりを持たない。 \sそれどころか冥府の神に嫌悪されているほどだ。 信念、理想、野望。 \sそのどれとも無縁な彼の者を突き動かすのは、 恐らくは負の極大として生まれた故の本能。 先の大戦時の行動にしても、 我々に絶望を与えるだけではなく、 自身の破滅さえも楽しんでいるように見えた。 タナトスに理はない。 \sあったとしてそれは死の強制と破滅への享楽。 \sあらゆる生物と相容れないのも当たり前である。 故に、真性の【化け物】なのだ。 \s程度の差はあれ秩序を持つ神や魔王とは違う。 私は以前からこの世界に生きるもので 無意味な存在など一つもないと考えていたが それは間違いだと思い知らされた。 まさか、これほどまでに 未来へと生命を紡ぎ、動いていく世界と 反発する者がいるとは想像していなかったのだ。 断言しよう。 \sタナトスは必ず倒さなければならない。 生命が存在する限り負の情念はなくならない。 タナトスを完璧に倒す方法は存在しない。 倒せても、 いつかは相当するモノが誕生するだろう。 だが、今ここにある危機を乗り越えるためには、 手をこまねいているわけにはいかない。 では、如何にして倒すかだが、 これがまた厄介な問題である。 私なりに幾つか手を考えてはみた。 1.女神リクレールの手での撃滅 討伐という一点においては 最も可能性の高い方法ではあるが、 互いの力の反発により守るべき世界そのものを 崩壊させかねないため、実現不可能。 また、リクレール様はタナトスを取り込んで、 その存在を実質的に滅するという 荒唐無稽な手を考えられた。 確かに、同等の力を持つリクレール様ならば、 タナトスの吸収も不可能ではないだろう。 だが、この方法はリスクが高すぎる。 \s最悪の場合、正と負を超越した 更なる化物を生みだしてしまうかもしれない。 他にもリクレール様の力を借りる方法を考えたが、 結局、スケイルを介しての助力や神器による 戦闘補助以上の手は考えつかなかった。 2.他世界に助力を請う タナトスは全ての世界の敵である。 それを逆手に取り、天界、魔界、冥界など 他の世界の神や魔王らと共同戦線を張る。 現実的な案ではあるのだが、 同時に実現も極めて困難である。 分かりやすく言えば、 彼らはとばっちりを恐れている。 タナトスが最も生命力に溢れる この世界に目をつけている限り、 他世界への侵攻はないからだ。 昔から交渉は行われてきたが、実りは少ない。 \s冥界はある程度の協力を約束してくれているが、 属性の関係上、タナトスとは戦えない。 この世界が終われば 次の世界が狙われるというのに 神々も愚かなものだとは思う。 もっとも、アレと対峙したくない気持ちは 分からなくもない。 3.第三の極大を利用 この世界には正と負と対等の力を持つ 【中庸】の極大が存在すると言われている。 その力をコチラに引き込めれば 戦局は大きく有利になる。 魔力を用いる魔法とは縁が薄いが、 気や霊力を使う術と関わりが深いらしい。 厄介なことに、現代ではこの手の術の 本物の使い手は極めて少ないだけでなく、 極端な秘密主義でもある。 調査中も、何度も偽者に当たり、 空振りを繰り返したが、半年後に ようやく本物の知識を持つ人物に辿り着いた。 彼が言うには、【中庸】の極大とは 大地の力の塊であり、気脈そのもの。 意思を持たない無尽蔵のエネルギーらしい。 自我がないのであれば利用できるのではないか? そう私は尋ねたが、こう切り返された。 「傲慢な考えだな。」 大地の力とはつまり地球の力そのもの。 人間ごときにどうこうできるわけがないし、 していいわけもない。 幾度も過ちが繰り返されたから、 中庸の極大の情報は極めて少ないのだろう。 その力を利用しようとする者がでないように、 心ある先人たちが封印したのではないだろうか? もしくは今も術者たちにより秘匿されているか。 \sどちらにせよ、我々にはその\r[術,すべ]はない。 私は自らを恥じた。 \s超常を操る魔道士であるがゆえに、 驕りがあったのだろう。 4.強大な力による滅殺 私が、なぜ中庸の極大という 実在が不確かなモノを探したのか? それは、タナトスを存在ごと塗りつぶせるほどの 莫大なエネルギーが必要だったからだ。 私は中庸の極大の持つエネルギーを利用し、 タナトスをまるごと滅殺しようと考えていた。 今現在、タナトスは肉体を失っている。 不完全な状態ならば倒すことも不可能ではない。 だが、それでも化け物であることに変わりはない。 ヤツを滅ぼすには、大きなエネルギーが必要。 実を言うとこのプランは かなり早い段階で考えついていた。 エネルギーを生み出す方法ももちろんある。 \sだが、私はその手を出来れば使いたくない。 私の親友の忘れ形見を 今以上の地獄に叩き落としかねないからだ。 だから私は代替エネルギーを求めたのだが、 結局、他に方法は見つからなかった。 その案とは・・・ 強大な正と負の力をスパークさせることで 万物必滅のエネルギーを生み出す消滅魔法を 参考にしたものである。 複数の意味で危険である上に、 実践者がいない机上の空論に近い魔法だが 構成理論は間違っていない。 つまりは・・・ !bgm ・・・ここでレポートは終わっている。 \sページが抜き取られているようだ。 !wait40 @1 十二月二十三日  決戦前夜。 !bgm(タクミ)戦闘訓練 !mvマジカルパレス !se(Action)爆発音 @1 スケイルの形成した仮想空間に爆発音が響く。 \s爆心地には焼け焦げた標的らしきものがあった。 ハッキリとではないがまだ形は残っている。 @134 ふー・・・。 @1 手をかざしたままシシトは深呼吸をする。 @133 こおおおおッ!! !se(Action)跳ね @1 一転、ためた空気を吐き出しながら駆ける。 !se(Action)ミス !wait10 !se(Action)ドゴン 標的にたどり着くと爪で裂くように 右拳を繰り出し、手のひらが密着する形になる。 !se(Action)爆発音 刹那。再び爆発音が響いた。 強烈な爆撃に晒された標的は今度こそ 跡形もなく破壊されてしまった。 @132 うわっちっちっち・・・! @131 くっそ、やっぱり多少ダメージは残るな。 @830 \c[4]あの魔法を至近距離ではなって その程度のダメージで済むなら上出来だ。 \c[4]これくらいなら、 我がいくらでもフォローできる。 @130 ありがとう。 頼りにしてるよ。 @830 \c[4]うむ、任せろ。 !bgmタイトル画面 !se(Action)学内歩き !v37=1 @813 お疲れ様でした、シシトさん。 @1 パチパチと拍手をしながらスケイルが近づく。 @811 正直、たった一月で ここまで上達するとは予想外でした。 @121 あんまり褒めるんじゃない、と言いたいけど、 今回ばかりは感心したわ。 @120 よく私達二人のシゴキに耐えたものね。 @134 辛かった・・・本当に辛かったよ。 う・・・うう・・・! @132 うわあああああああああ!! @701 おいおい、マジ泣きしてるぞ? !se(Action)シュイーン @833 それはそうだろう。 \s学校以外の時間は全て特訓か 魔導の知識の詰め込み学習だ。 ここまで正気を保っていられたのが 不思議なくらいだ。 @1 クロウはシシトから離れ 心底同情する口調で話す。 @701 ちょっとしたプライベートな時間も スケイルちゃんに監視されてたけどな。 @811 うふふふふ・・・。 @131 もうリアクションするのも辛いよ。 @121 魔法の習得に関しては 自分で厳しくしたようなもんだけどね。 まさか基本すっとばして \r[アレ,・・]を覚えようとするとは思わなかったわ。 @810 でも、シシトさんの強大な魔力を考えれば 選択としては間違っていないと思いますよ? 基本の攻撃魔法では 虚を突くことしかできませんが アレならば十分な戦力になります。 @134 ・・・それに、この魔法なら、 僕は絶対に覚えられる。 そう確信してたんだ。 @130 痛い目を見てると覚えが早い・・・ってね。 @121 ドMか、あんたは。 @132 その切り返しは酷くないですか!? @810 とりあえず、これで特訓は終了です。 @813 後は、明日の決戦に向けて 体をゆっくり休めてください。 シシトさんだけでなく、みなさんも。 @134 ・・・分かったよ。 @121 明日・・・か。 \s一月なんてあっという間ね。 @701 な、なあ、真面目な話よ。 おれ、足手まといだよな? @830 来たくないならそれでも構わん。 今回ばかりは誰も強制はできん。 お前がどうしたいか、だ。 @701 ・・・。 @700 いくぜ、おれもあいつらには頭にきてる。 なにもしないで黙ってるのは嫌だ。 @705 いざとなったら 必殺のホールドを決めてやるぜッ! @833 いや、それはやめておけ。 \s特にゲングには使うなよ。 間違っても使うなよ。 @811 ゲングは最強のドッペルゲンガーですから、 面倒くさいことになりますからね。 @709 それは使えという振りと見た! @831 違う!死にたいのかお前は!? @705 墓石には 「リスくんは最後まで男でした!」と 刻んでおいてくれ! @810 分かりました。 アイスの棒に「オスでした」と 書いておきますね。 @704 意味はあってるけど、イメージが違う!? @830 大体間違ってはいないだろう。 @131 ・・・二人はリスくんのこと知ってるんだね。 @120 何騒いでるのか知らないけど、 そんなことより、リョウヘイくんの様子はどう? @130 雰囲気が重いのは相変わらずだけど、 たぶん大丈夫だよ。 @131 リョウヘイは嘘もつくし、 他人をおちょくりもするけどさ。 @134 信じて裏切られたことはないんだ。 @120 ・・・そう。 \sあんたには勿体無い親友ね。 @130 ねえ、明日の昼間、 ミキのお見舞いに行っていいかな? @131 結局一度も行く機会なかったしさ。 @120 ええ、そうね。 行ってくるといいわ。 @121 ただし、疲れるようなことはしちゃだめよ。 @130 うん、分かってるよ。 @810 では、早めに休みましょう。 @811 今日は観察しませんから 安心してくださいね\wh @131 不安しかない。 どうしようクロウさん? @833 我に聞かれても困る。 @701 お前の中では クロウの方が好感度高いんだな。 @811 むう、鬼教官ゆえの悲しい評価ですね。 @121 素行の問題だと思うわよ? @813 ちょっとお風呂を覗いたり、 ベッドに潜り込んだだけじゃないですか! @831 それが大問題なんだろうが!? @130 ツッコミ代わりにしてくれるしね。 @701 そういうことかよ。 @810 では、そろそろ戻りましょうか? !bgm !se(Action)ミス !wait10 !se(Action)バリア音 @1 スケイルは杖の末端で地面に突く。 !v5=1 !se(System)遭遇 !mvシシトの部屋 !bgm夜の静けさ @1 程なく空間が元に戻る。 その後、思い思いに 僅かな余暇を過ごすこととなった。 @134 すー・・・すー・・・。 @833 変身したまま眠るとは、 余程疲れていたのだろうな。 @700 学校も休みに入って特訓続きだったからな。 疲れるのも当然だろうよ。 @830 スケイル、分かっているだろうが・・・ @833 ん、どこへいった? @700 時間ができたから本を読むって、 居間に降りてったぜ。 @830 さすがに今夜ばかりは 妙なちょっかいはださんか。 !mv自宅 !se(Action)ページをめくる @810 ・・・ほう、そうきますか。 @1 スケイルは先日、 アクアフロートで買った推理小説を読んでいた。 @811 ふふふ、私の予想を越えるとは この国の物語もバカにできませんね。 !se(Action)ページをめくる では、犯人は・・・ @1 ページをめくろうとした手が止まる。 @810 ・・・\sやめておきますか。 \s明後日、また読みましょう。 @811 その方がきっと、 心置きなく楽しめますから。 !se(Action)学内歩き @1 本を閉じ、客間へと向かうスケイル。 \s居間を通る際にシイナが庭にいるのが見えた。 !mv住宅地 @121 そう。 \sやっぱり魔物の発生件数は 上がってるのね? @120 一応事前対策はしてたんだ。 あんたにしては用意がいいじゃない。 @121 ・・・なんだ、フェザーたちが仕込んでたの。 感心して損したわ。 @1 携帯電話を片手に誰かと会話をしている。 \s軽い皮肉を交えていることから 親しい間柄なのだろう。 @120 冗談。 \sあんたが上に行ったのが悪いんでしょ? 前線向きなんだからやめとけって 忠告したじゃない。 @121 ま、タナトスにはあんたの分まで 私がぶちかましておいてあげるから、 心配しなくていいわよ。 @120 ・・・そう簡単に死んだりしないわ。 私は父さんの分も長生きするつもりだからね。 あんたこそ雑魚に 寝首かかれるんじゃないわよ? じゃ、国際電話は料金高いから、 そろそろ切るわね。 @121 つもる話は・・・またいずれ。 !se(System)ピッ @1 電話を切るとシイナは夜空を見上げる。 \sそこには無数の星々がきらめいていた。 @120 ・・・明日か。 @121 ヤツと戦うのは復讐のためじゃない。 キッチリと気持ちにケリを付けるために。 \sこれ以上家族を失わないために。 @120 私は・・・戦う。 !se(Action)学内歩き @1 昔から変わらぬ決意を言葉にすると シイナは家へと入っていった。 !mvnil そして・・・ !wait20 !mv自宅 @530 ・・・なるほどね。 \s何考えてんのかと思ってたが、 そういうことだったのかよ。 お前はいつから そんな嫌な手を考えるようになったんだ? \s昔はもっと爽やかな奴だったはずだがな。 @570 失礼な言い草ですね。 私は今でも風の様に爽やかですよ。 と言いたい所ですが、あの瞬間から 私の時は止まったままです。 空気は留まれば淀むだけ。 \s吹き抜ける風に戻るには・・・ 越えなければいけない壁がある。 リョウヘイくんとさして変わりません。 \s私には今の彼に掛けられる言葉がない。 @530 だからって、全部俺にぶん投げんなよな。 俺はプランの基本しか聞いてなかったぜ? @570 仕方がないでしょう。 ことが動けば計画は修正されますし、 今のあなたは一応部外者扱いですから。 @530 の割りにはあいつ、プランが決定した時、 お茶飲み感覚で話しに来たぞ。 さすがの俺も面食らった。 @570 雷壁の魔女と呼ばれた彼女に ものの道理なんか通用しないのは、 戦友である貴方もよく知ってるでしょう? @530 ああ、よーく知ってるよ。 あいつと一緒に動くと事後処理が 死ぬほど面倒くさかった。 @570 ただ、彼女なりに代替案を模索はしてました。 私も出来る限りの協力はしましたが、 結局他に手はなかったんですよ。 彼女が十三剣を辞めたのも、 代替案絡みだったようですが・・・ 詳細は教えてくれませんでした。 @530 みなまで言うな。 \s頭使うことに関しちゃ、 お前やあいつの方が俺よりずっと上だ。 お前らが探して他に手がないなら、 俺も信じるしかねえだろ。 ま、どっちにしても今のままなら・・・ \sやらなきゃならねえことに変わりはない。 @1 とぼけた親父の雰囲気が一瞬消え、 冷徹な戦士の眼光を見せる。 @570 私としても心苦しいですよ。 順調に行けば、あなたの役目は もう終わっていたはずなんです。 \sこんな最終手段を取らなくてもよかった。 ミキさんのことは・・・ 後手に回ったとしか言い様がない。 申し開きもできません。 @530 親が子供を育てんのは当たり前だろ。 別に役目とかは関係ねえよ。 それに、なんもかんも予定通りに進むほど 連中が甘い相手じゃないのは 俺が一番良く知ってるさ。 可哀想なのは、その嬢ちゃんだ。 つくづくむかっ腹が立つやり方しやがる。 @570 私達でさえこれです。 リョウヘイくんの怒りが収まらないのも 分かりますよ。 だからこそ、勝算があるんです。 彼の心の根本には この十年で培った多くの絆の楔がある。 \sあなたが良い育て方をした証です。 @530 お陰様ですっかりバカに育っちまったがな。 ま、いいさ。 お前が来た時から覚悟はもう決めてる。 \s親の責任。果たしてやろうじゃねえか。 @570 お願いします。 では、明日の夕刻すぎに。 !se(Action)シュイーン @1 そう一言言い残すと フェザーは転移して姿を消した。 @530 夕暮れ時・・・黄昏か。\s憂鬱だねぇ。 !se(Action)ドア開け !wait20 !se(Action)ドア閉め @1 エイジがボソリと呟くと玄関が開く音がした。 !se(Action)学内歩き !v28=1 @200 ただいま。 @530 おお、遅かったじゃねえか。 \sまたミキって子のところか? 様子はどうなんだ? @202 なんにも変わってねえよ。 急に目覚めるかもしれないし、 一生このままかもしれない。 @530 そうか。 @200 ・・・\sさっきまでフェザーがいただろ? @530 分かんのか? @200 ああ、魔力が少し残ってる。 @530 驚いたな。 \s魔力感知は結構高等な技術だ。 誰にも教わらずに、 たった一月で身につけるとはな。 さすが母さんの子だ。 @200 タナトスの野郎のせいだろ。 さもなきゃ、オレにこんなことできるわけねえ。 @530 卑屈になるな。 言っただろ、これは\r[技術,・・]だ。 修練なしで身につく代物じゃねえ。 経緯はどうあれ、 身につけた技能まで 悪く言うもんじゃねえぞ。 @202 ・・・。 @200 ・・・俺はもう寝る。 明日は忙しいからな。 @530 そうだな。\r[明日は忙しい,・・・・・・]。 今夜は早めに休んでおけよ。 @202 ・・・おやすみ。 !se(Action)学内歩き !wait20 !se(Action)ドア開け !mvシシトの部屋 !wait20 !se(Action)ドア閉め !bgm @200 ・・・\s結局、奴らを見つけられなかった。 だが、まあいい。 \sお陰でオレは強くなれた。 \s\c[2]もうあんな無様は晒さねえ。 \c[2]お前らの目的をぶち壊しにして、 絶対に殺してやる。 @1 リョウヘイは窓の外を眺めながらそう独りごちた。 !mvnil @1 それぞれの想いと決意を乗せて時は過ぎ去り 運命の日はついに訪れる。 十二月二十四日 午前十時三十四分 ミキの病室にて。 !wait30 !v5=0 !v35=1 !v36=1 !v27=1 !bgm安らぎ !mv保健室 @1 リョウヘイはミキの枕元で 椅子に腰掛け、彼女の顔を見ている。 この一ヶ月、もはや定位置となった場所。 ここに来る度に後悔と哀しみが心を支配する。 だが、今日は少しだけ違っていた。 @200 ・・・ミキ。 \s今夜、\r[決着,ケリ]つけて来る。 必ずお前の仇を討つ。 \sだから、代わりと言っちゃなんだけどよ。 目をさましてくれ・・・な。 @1 悲しみを帯びているが 強く優しい口調でそう語りかける。 @102 その言い方だと まるで一人で行くみたいだね。 @100 約束、忘れたとは言わせないよ? @1 隣に座っていたシシトが口を挟んだ。 @202 いちいち揚げ足とんなよ。 言葉のあやだろ。 @100 大丈夫だよ、ミキ。 心配しなくてもリョウヘイの手綱は 僕達が握っておくからさ。 @202 オレは馬かなんかかよ。 @200 で、お前の方はどうなんだ? @100 出来る限りのことはしたさ。 切り札もちゃんと覚えてきた。 足手まといにはならないつもりだよ。 @200 お前を足手まといだなんて 思ったことはねえよ。 こう見えて、頼りにしてんだぜ? @102 その言葉が今は一番嬉しいよ。 @101 この一ヶ月!毎日毎日毎日・・・! \s暇さえあれば罵られ、殴られ、怒鳴られて! \s心が休まる時なんか全くなかった!! @202 ・・・一体どんな訓練したんだ。 @102 徹夜で三日三晩 語りつくせる自信があるけど聞くかい? @202 そりゃあ一生聞かねえだろうな。 !se(Action)ドア開け @1 二人が雑談していると病室のドアが開く。 @250 む、もう来ていたのか。 @412 こんにちは〜。 @402 あれ、シシト先輩も一緒でしたか。 !se(Action)ドア閉め @1 入ってきたのはアルバートたちだった。 @250 お前が来ているとは珍しいな。 大事な用事があると言って、 今まで見舞いに来なかったというのに。 @100 うん、その用事は昨日で終わったんだ。 @102 で、今夜全部片がつくと思う。 @402 資格の勉強でもしてるんですか? @102 ・・・似たようなものだよ。 @412 へー、シシトくんすごいね。 世間はクリスマスでお祭りムードなのに。 @202 せっかくのクリスマスに 付き添い頼んじまって悪かったな。 オレも・・・今夜だけは どうしても外せない用事があるんだ。 @400 特に予定があったわけでもないので 私は構いませんよ。 @250 友人に頭を下げられて断るほど 冷たい人間のつもりはないぞ。 @412 うんうん、それに見てこれ! @413 じゃーん、クリスマスの飾り付けセットです! 病院でもクリスマスを満喫できちゃうよ! @402 何を持ってきたのかと思えば、 そんなもの飾って大丈夫なんですか? @412 大丈夫大丈夫。 病室中に飾り付ける気なんてないから。 ミキさんのベッド周りだけだよ。 大目に見てくれるよ。\sきっと。\sたぶん。 @402 確証はないんですね。 @403 ま、いざとなったら またアルバートさんのせいにしますか。 @252 なぜそうなる!? @102 ははは、ちゃっかりしてるねセト。 @413 バッチリケーキも買って来ました! @412 やっぱりクリスマスだからー。 ロウソクに火はつけないとなーと思って。 @402 うわ、ホールで用意したんですか。 \s食べきれるんですか、これ? @413 大丈夫!いざとなったら アルバートくんが全部平らげてくれるよ! @250 それは願ったり叶ったりだ。 食費が浮く。 @413 パンがないなら ケーキを食べればいいじゃない! @402 それを本当にやる人なんか 今まで見たことありません。 @200 ・・・本当にありがとうな。 \s冬村、セト、アルバート。 @202 こいつさ・・・ こう見えて寂しがり屋だから、 きっと喜んでると思うぜ。 @402 ・・・岸先輩。 @413 よし! じゃあ、さっさと飾っちゃおう! @412 二人ともまだいるんだよね? @200 おう、手早くやっちまおうぜ。 @102 体力温存しとけって言わたけど、 これくらいなら大丈夫だよね。 @251 現場指揮は俺に任せろ! 的確な判断をくだしてやろう! @413 何を!リーダーは私よ! アルバートくんに女の子向けのセンスが あるとは思えないわ! @251 何を言う! こう見えても俺は草食系男子だぞ!? \r[漢女,オトメ]チック炸裂だ! @102 アルバートは変態系男子でしょ。 @252 お前だけには言われたくないわッ! !se(Action)ドア開け @1 「うおっほん!!  \s君たち、これで何度目かしら?」 「会話が廊下まで聞こえてるわよ。」 @402 すみません。 悪いのは包帯の人です。 \s本名はアルバート・ウェスタリスです。 @252 もはや直球か!? @1 「・・・それは分かったから  もう少し静かにしてなさい。」 「飾り付けは見逃してあげるように  他の看護師たちにも言っておくから。」 @200 ありがとうございます。 @1 「ミキさんはいい友だちが沢山いて幸せね。」 「それじゃ、くれぐれも静かにね。」 !se(Action)ドア閉め @402 ・・・いい看護師さんですね。 @250 うむ、ではこれ以上迷惑をかけないように。 @413 ひそひそ会話でいきましょう〜・・・。 @402 それは極端すぎますよ。 @200 普通にやってりゃ問題無いだろ。 さ、始めようぜ。 !bgm @1 五人は手分けして病室を飾り付ける。 出来上がった装飾は本格的ではなかったが、 想いやりと優しさに満ちていた。 !mvnil @1 そして、ほんのひと時の心安らぐ時間は過ぎ。 リョウヘイとシシトは一度自宅に戻り、 最後の準備を整える。 やがて太陽が落ち、夜の闇が舞い降りた。 多くの人々は知らないだろう。 この闇が二度と明けることがないものになるか、 またいつも通りの日々がやってくるか。 今夜・・・全てが決まる。 !wait30 !mvマジカルパレス !bgm神秘 !se(Action)ジュゴー @710 ・・・。 !se(Action)ジュゴー !wait5 !se(Action)ジュゴー !wait5 !se(Action)ジュゴー !wait40 !se(Action)バリア音 ・・・\s完成しました。 @1 女神リクレールは肩で息をしながらそう呟く。 手には一振りの蒼白い輝きを放つ【剣】があった。 @710 太陽の剣と対をなす神器 【聖なる月の剣】。 私の力を十年凝縮して注ぎ込んだ この剣ならば、必ずタナトスを・・・。 @1 聖なる月の剣を見つめながら 万感の思いを込めて語るリクレール。 !se(Action)重いドア開け その時、女神の間の扉が開いた。 @570 失礼します。 @710 フェザー・・・剣なら今完成しました。 @570 ええ、強力な力を感じましたので ご無礼を承知でこちらから参りました。 リクレール様、日本では夕刻は過ぎ 夜に入っております。 @710 ・・・!! すみません、私の計算ミスです。 宝玉への最後の仕上げに手間取りました。 @570 いえ、まだ連中も動いてはいません。 十分間に合うでしょう。 聖なる月の剣をお渡しください。 @710 ええ、お願いします。 @1 そう言うとリクレールはフェザーに剣を渡す。 @570 では、エイジさんの元に届けます。 その後、私はシイナさんたちの フォローに回ります。 @710 ・・・賭けの結果は見ないのですか? @570 親子の関係に部外者が首を突っ込むのは 無粋というものでしょう。 見ようが見まいが結果は同じなら、 私は少しでも事を有利に運ぶために 動くだけです。 @710 ・・・分かりました。 \sよろしくお願いします。 @570 御意。 !se(Action)シュイーン @1 深々と礼をするとフェザーは転移する。 @710 歯がゆいですね。 自分の手で直接助けてあげられないなんて。 でも、私は信じています。 あの子たちなら・・・必ずやり遂げると。 !bgm @1 リクレールが祈りを込めて語る。 あの子たちが、明日を掴むのを信じて。 その時だ。 \s女神の間に設置されているスピーカーから、 切迫した声が発せられた。 !bgm緊迫状況 「女神様!魔道士たちから緊急連絡!  各国で監視していたゲートが  一斉に開きつつある模様!」 「ユーラシア方面に配備されていた  セントマリア隊は既に戦闘を開始しています!」 @710 計ったようなタイミングですね・・・! @1 「ヨーロッパ北部、オーストラリア、南アメリカ、  次々とゲートが解放されています!!」 @710 十年準備していたのは向こうも同じ。 陽動だとは分かっていても、 これだけの規模になると放置はできない! !se(Action)学内歩き @1 リクレールは、 スピーカーの脇にあるマイクを手に取る。 @710 慌てれば連中の思う壺です。 \s落ち着いて対処しなさい。 この時のために 各国にも話は付けてあります。 多少派手にやっても問題ありません。 戦闘経験の少ない未熟な者には 後方での支援に専念させなさい。 また、状況は刻一刻と変わります。 重要なのは指示のスピードと柔軟さです。 本営よりも、現場リーダーの判断を優先。 あたり前のことですが・・・\s 民間人の犠牲者は絶対に出さないように! @1 「は、はいッ!そう伝えます!!」 @710 頼みましたよ。 @1 凛とした雰囲気から一転し 穏やかな口調で語りかけた。 「・・・\sはい、女神さま提案があります。」 先ほどの人物とは違う。 軽い感じの女性の声が聞こえた。 「柔軟かつスピーディーな判断。  一般人への被害を考慮しまして。」 「私も前線に出た方がいいと思いまーす。」 @710 そこにいたんですか。 @1 「通信室は  一番ホットな情報が手に入りますからね。」 「お茶も出るし、私のお気に入りスポットです\wh」 @710 それは上司に気を使ってるだけですよ。 あまりみんなを困らせない様にね。 @1 「ま、冗談はさておきとしまして。」 「実際、敵さんの動きは予想より早いです。  \sこのままだと対応が間に合わない  地区がでてきますよ。」 「戦える人員を遊ばせておく余裕は  今のウチにはありませんよ。」 @710 ・・・あなたの言うことも一理ありますね。 分かりました。 コチラの指揮は私が直接します。 貴女は遊撃隊として対応にあたってください。 @1 「その言葉を待ってました!」 @710 隊とは言っても一人です。 \s今の状況で、貴女のレベルについて行ける 魔道士はここにはいません。 @1 「身軽で結構じゃないですか。」 @710 ・・・本当は貴女も タナトス打倒に向かいたかったでしょう? @1 「不満がないって言えば嘘ですけど、  そっちはシイナに任せたんで問題ないですよ。」 「その分、これから一晩中、  溜まったモノを吐き出しちゃいますから。」  スピーカーの向こうで手を鳴らしているのか ボキボキと小気味のいい音が聞こえる。 @710 ・・・頼りにしていますよ。 \s\r[壊す拳,ブロークンフィスト]のブリューナク。 @1 「あらー、そう言われちゃ  頑張らない訳にはいかないですね。」 「お姉さん、思いっきりサービスしてきます\wh」 !se(Action)跳ね そう言うと声の主が通信室から 飛び出す音が聞こえた。 @710 ・・・。 !bgm タナトス。 \sそう何度もあなたの好きにはさせません。 \s世界はいつまでもあなたの玩具ではない。 !mvnil @1 「今夜こそ、人間達の想いが、\s強さが、  \s\r[タナトス,死]を乗り越えるのです。」 !wait30 真説・\r[幻影帳,シルエットノート]異聞 第七章「決着」 !wait20 日本時刻二十二時五十分 !bgm夜の静けさ !v5=1 !mv自宅 @530 ・・・来たか。 !se(Action)シュイーン @1 エイジが椅子に座ったまま呟くと同時。 フェザーが転移してきた。 @570 すいません、遅くなりました。 @530 こちとら夕方から 今か今かって待ってたんだぜ? @1 多少皮肉めいた口調で言うが、 フェザーが持つ聖なる月の剣を見ると エイジの目の色が変わった。 @530 そいつが聖なる月の剣か・・・! これはすげえな。 まるで女神様そのものじゃねえか。 時間がかかったのも頷けるぜ。 太陽の剣も名剣だったが、 コイツはそれ以上だな。 @570 それだけ正の力がこもっていなければ 役割を果たせませんからね。 さて、もう時間はないようです。 聖なる月の剣はあなたに預けます。 !se(Action)跳ね @1 そう言うとフェザーは聖なる月の剣を エイジに手渡した。 @570 リョウヘイくんはどうしています? @530 昼過ぎに帰ってきて部屋で寝てるはずだ。 そろそろ嫌でも目を覚ますだろうさ。 @570 そうですか。 少々無責任だとは思いますが・・・ 後はお任せします。 @530 ・・・はっ、勘違いすんな。 ちょっと命がけの親子げんかするだけだ。 気に病むことはねえよ。 お前はシイナ嬢ちゃんたちを 助けてやってくれ。 @570 そのつもりです。 @530 そんじゃ、出来れば 明日の朝以降の再会を願うぜ。 @570 ・・・エイジさん。 \s私は以前から寿司に興味がありましてね。 @530 なんだよ、藪から棒に。 @570 明後日の夜、エイジさんの寿司屋に 予約を入れたいのですが構いませんか? @530 ・・・へっ、うちには予約なんて 小洒落たシステムはねえよ。 だが、今回は特別だ。 \s明後日は貸切にしておいてやるよ。 とびきり新鮮なネタを食わせてやるぜ。 だからよ・・・死ぬんじゃねえぜ。 @570 ええ、お互いに。 !se(Action)シュイーン @1 フェザーはエイジに背を向けて転移する。 @530 さて・・・そろそろか。 !bgm @1 エイジは時計の針を見ながら独りごちた。 針はまもなく夜十一時をさそうとしていた。 !wait30 !mvnil !bgm恐怖 @1 \c[2]「・・・お前はどうしても戦うつもりか。」 ・・・あの時からずっと黙ってたくせに 急に話しかけてきたと思ったら くだらねえことを聞いてくるな。 \c[2]「悪い事は言わん。  \s今のお前ではヤツには絶対に勝てん。  ここから逃げるのだ。」 ふざけるなッ!! \sオレはこの時が来るのを待っていたんだ! \s確実に奴らと戦える今を!! 大体テメエだって、タナトスの一部だろうが!? \c[2]「お前は・・・我を最初に自覚した時、  我が言った言葉を忘れたのか?」 はっ、覚えてねえな。 \sテメエは信用ならねえと言った記憶はあるがな。 \c[2]「やはりダメだ。  今のお前ではヤツに勝てん。  強くはなったが、それだけでは戦いにもならん。」 \c[2]「・・・とばっちりを受けるのは御免被る。  いざとなれば我にも考えがあるぞ。」 なんだと・・・? !bgm そう言ったきり、声は再び沈黙し リョウヘイは闇の中に一人取り残された。 !se(Action)ジュゴー 暗い暗い深淵の闇。 それすらも切り裂くような強烈な悪意を感じる。 一月感じ続けた死の感覚だ。 !mvシシトの部屋 !se(Action)跳ね @1 タナトスの気配に起こされ リョウヘイは勢い良くベッドから跳ね起きた。 @202 もう夜か! 少し寝過ごしちまった!! !bgm緊迫状況 @200 野郎はどこだ・・・! ・・・中央公園の方か。 待ってやがれ!! 必ず、\s\c[2]必ずこの手でぶち殺す!! !se(Action)ドア開け @1 そう叫ぶとリョウヘイは部屋の扉に手をかけ 勢い良く開いた。 !mv自宅 !bgmサスペンス @530 ・・・。 @1 一階への階段の前でエイジが立ちはだかる。 \sその手には蒼白い剣が握られているが、 今のリョウヘイにはどうでもいいことだった。 @202 親父どけッ! @530 話がある。 @202 そんな暇はねえよ!! 親父だって気づいてんだろう!? あいつらが動き出したんだよ!! やっと・・・やっとオレは 母さんの、ミキの\c[2]仇を討てるんだ!! @530 事ここに至って、まだそんなことを言うか。 !se(Action)跳ね @1 エイジはリョウヘイの肩に触れる。 その手には強く力がこもっていた。 @530 ・・・転移。 @202 なッ・・・! !se(Action)シュイーン !mv海岸公園 @202 なにすんだよ!? @1 リョウヘイはエイジより 僅かに離れた位置に飛ばされた。 @530 久々だったから少し座標が狂ったか。 まあ、いいさ。 @202 良くねえよ!! オレは今すぐ中央公園に行くんだ! 親父と話をしている暇はねえ!! @530 いいから黙って聞きやがれッ!! @202 !!? @1 エイジの有無を言わさぬ迫力に 思わず萎縮してしまう。 @530 ・・・\sリョウヘイ。 お前は今、憎悪と怒りに囚われている。 そんな状態でタナトスの所にいけば 確実に奴に乗っ取られる。 @202 親父もそんなこと言うのかよ。 オレは強くなったんだ。 あんな野郎のいいようにはならねえ。 @530 強くなっただ? 笑わせるな。 \s怒りに目が曇り、憎悪で思考が飛ぶ。 持っている絆を忘れ、感情のまま突っ込む。 そういう野郎はな、強くなったとは言わねえ。 \sどんぞこまで弱くなったってんだ。 @202 なんだと・・・! @530 ・・・禁呪のことは覚えているな? @202 何の話だよ!時間がねえんだ! もったいぶるのはやめろ!! @530 あの禁呪は 宿主が成長すれば効力が弱まる。 いつか必ずお前は力を目覚めさせるだろう。 だが、もしも正しい心で力を使えれば 大きな切り札となりえる。 @202 ・・・\sそういうことかよ。 この前、フェザーが マリオンとの戦いの時から オレを監視してたって言ってた。 あいつは学校中の人間が操られたってのに 手助け一つしやがらなかった! つまりはなんだ!! \s親父達はオレに力をつけさせるために、 わざと放っておいたってことか!? @530 言い訳はしねえよ。 連中がお前に いつか手を出すのは分かっていたんだ。 そう思われても仕方ねえ。 予想より早く動かれたせいで ゲングの策を利用する形になったのも 間違いない。 だが、俺はなにがあっても お前が歪まないように育てたつもりだった。 \sそれが今はこのザマだ。 こうなったら俺は、 もう一つの条件を守るしかねえ。 @202 もう一つ・・・? @530 あの時、俺は権限の剥奪が 禁呪使用の条件だって話したが、 本当はもう一つ条件があったんだよ。 万が一、そう万が一だ・・・。 \sお前が怒りと憎しみに囚われた場合は、 \s俺の手でお前を殺す事。 それが条件だ。 @202 !! @530 今ならタナトスを倒す事も不可能ではない。 \sだが、力を増したお前が乗っ取られれば ますます手が付けられなくなる。 世界と一人の命。 天秤にかけりゃあどっちが重いか何か 考えるまでもねえ。 だから今、この聖なる月の剣で・・・ !bgm お前を殺す。 !se(Action)ミス @1 エイジは鞘から聖なる月の剣を抜き、 リョウヘイに向けてかざす。 その刀身は濡れたように薄く、 月の光を反射させているのか剣全体が 蒼白く発光していた。 その中でも特に柄に収まっている 宝玉が強く輝いていた。 @202 おや・・・じ? !mvnil @1 あまりにも突然に放たれた死の宣告に、 リョウヘイは呆然と呟くことしか出来なかった。 !wait30 !mv自宅 !bgm夜の静けさ @131 ・・・静かだね。 @134 これから世界の命運をかけた 戦いが起こるなんて嘘みたいだよ。 @121 大きな戦いの前っていうのは 得てしてそういうものよ。 @120 とは言っても、世界の命運なんて 今まで考えたこともないけどね。 正直、重すぎて実感わかないし、 それ自体はどうでもいいかな。 @131 どうでもいいって・・・。 @121 出来る限りのことをやる。 守るべきものを守るために戦う。 @120 やることは結局それだけでしょ? それとも世界を背負う 勇者にでもなったつもり? @131 \r[魂の旅人,エトランゼ]って人じゃあるまいし、 そんなつもりは毛頭ないよ。 @811 シシトさんなんとなく 雰囲気似てますけどね。 @130 え? @705 まさかのシシト勇者説浮上!? 魔力の謎がまた深まったな!! @833 今、それはどうでもいいだろう。 @120 スケイルは\r[魂の旅人,エトランゼ]に 会ったことあるのよね? @810 ええ、三百年前に。 強さも含めて規格外な方でしたよ。 そもそもが概念に近い存在でして、 意識の海という・・・ !bgm緊迫状況 @1 「スケイル・・・スケイル。聞こえますか?」 @813 ッ!! @130 スケイルさん? @813 リクレールさま!? @131 リクレール? @121 女神さまの本名よ。 @830 女神さまから直通のテレパシーのようだな。 @131 本社って確かシカゴでしょ? そこからテレパシー送ってるんだ。 @701 バカ野郎、仮にも女神さまだぞ。 これくらい朝飯前だっつーの。 その気になったら 世界中の見たい場所をすぐに見れる 千里眼だってあるんだぞ? @130 だからリスくんはビクビクしてるんだ。 @701 怒るとおっかねえんだよ、女神さま。 @813 急にテレパシーなんてどうなされました? @1 「各国で監視していたゲートが開き始めました。  今、魔道士たちを対応に当たらせています。」 「そちらもそろそろ動きがあるでしょう。」 @813 ・・・分かりました。 戦況の方はどうでしょうか? @1 「人員不足はセントマリアたちや、  \r[壊す拳,ブロークンフィスト]が転戦して補ってくれています。」 「コチラの心配はいりません。」 @811 結局前線に出ましたか。 @121 ・・・あいつの話みたいね。 @830 らしいと言えばらしいな。 @131 なんのこと? @701 知らねえよ。 @1 「聖なる月の剣はフェザーに託しました。  後はエイジさんがどうするか・・・です。」 @813 ・・・分かりました。 来るのがどちらであっても、 私達も役目を果たします。 @1 「お願いします。」 !bgm 「皆さんに伝えてください。  \s必ず勝って明日の朝日を見て、と。」 !bgmサスペンス @813 はい! @120 どうやら動き始めたみたいね。 @813 とりあえず確実に言えることは、 増援はまずないということです。 @811 そして、必ず勝って・・・ 明日の朝日を見て欲しい、と。 @134 ・・・。 @701 ・・・。 @121 ・・・怖い? @131 怖いさ。 あの化け物と戦うのかと思うと 寒気がするよ。 @133 けど、それでも僕は戦う! これ以上あいつに言い様にさせない! @121 その意気よ。 @120 未熟者の分際で恐怖がないなんて言ったら ぶっ叩くところだったわ。 @131 ある意味もっと怖い人達知ってるしね。 @811 誰のことでしょうね? @121 全く覚えがないわね。 @132 嘘つくなよ!? @701 な、なあ、例の剣はどうなったんだよ? @813 剣はフェザーに預けたそうです。 @121 ・・・気になってたんだけど、 誰に使わせる気? @120 私の知る限り、 剣の神器を扱える実力を持つ人なんて 今のマジカルパレスにはいない。 外部も含めても 思い当たるのは一人だけ。 @811 その人になるかもしれませんね。 @813 でも、私はそうならないことを祈ります。 @121 機密事項ってこと? @811 はい、事が終わったら説明しますよ。 @830 ふう、この件はそればかりだな。 やれやれこれでは 職場に不信感を抱いてしまう。 @120 怪しいのは今に始まったことじゃないけどね。 @131 動物が喋ってる時点で怪しさMAXだよね。 @701 ネコミミのオカ魔女っ子にだけは 言われたくねえ・・・\sよッ!? !bgm緊迫状況 !se(Action)ジュゴー @704 来た!来たぞ!! バカでかい魔力を 中央公園の方から感じる! \s間違いねえ、タナトスだ!! @830 ・・・そのようだな。 @120 スケイル、転移で飛べる? @813 もちろんです! アクアフロートの主要な場所は 全て記憶しておきました!! みなさん私に触れてください。 @133 うん、行こう! 僕たちは・・・勝つんだッ!! 女神さまの言うとおり、 明日も皆と生きるためにッ!! @811 ふふ、シシトさん立派になりましたね。 @701 おい、スケイルちゃんがお前を見る目、 最近なんか変わってねえか? @131 最初から変だったよ。 @833 いささか違うような気がするが。 @133 そんなことより急ごう! \sきっとリョウヘイも向かってる!! 僕は約束したんだ、一緒に戦おうって! @811 ・・・はい、そうですね。 @120 クロウ、向こうで すぐ戦闘に入るかもしれないわ。 今のうちにトーテム化して シシトと融合しておいて。 @830 分かった。 @133 アレを使う時のフォローよろしくね。 @830 任せておけ。 !se(Action)ジュゴー @1 応えるとクロウはシシトと融合する。 @813 準備はいいですね? !bgm では・・・転移!! !se(Action)シュイーン !mvnil !wait10                                  後編に続く.....