#雨のち晴れと、私の家族byりんご !mvnil !bgs(環境)雨 !v5=1 !mvアルバートの部屋 @410 !v36=1 あー…。 今日も雨かぁ。 @410 !v36=1 …最近は嫌な天気が続くなぁ。 \sこれじゃあ、洗濯物も乾かないや。 @410 …はぁー。 \s憂鬱だなぁ。 @1 私がアクアフロートに来てから数日。 ようやく、ここの生活にも慣れてきた。 @1 本州からの引っ越しは骨が折れたけど、 案外、一人暮らしも悪くないかも。 @1 ……………… ……………… ……………… @1 …でも、 \sこの時期になると、嫌でも思い出す…。 \s父さんと姉さんが殺された時の事…。 !bgs !mvnil !bgm別れ @0 沙雪!遅いわ。 姉さん、先に学校行っちゃうわよ。 @0 ちょ…ちょっと! 姉さん待ってよ。 @1 厳しいけれど、 しっかり者で、いつも私に優しかった姉さん。 @0 沙雪、父さん今日も頑張るからな。 \s…いい子にお留守番するんだぞ。 @0 うん!お仕事頑張ってねお父さん! @1 私の事をいつも大事にしてくれた父さん。 \s私は、二人の事が大好きだった……。 @1 私の家には、お母さんがいない。 \s…私を生んだ時に、亡くなったらしい。 @1 今にして思えば、父や姉にとって 私は、大事な存在だったのだと思う。 @0 ねぇ沙雪、 今日姉さん、父さんに村上君を 紹介しようと思うの。 @0 凄いね! 姉さん、村上君と結婚するんだ〜。 @0 こら、変な事言うんじゃありません。 \sそれじゃ、行ってくるわね。 @0 父さんも、サエの彼氏が どんな奴なのかを確認しないとな。 \s…夕方までには戻る。 @0 うん。二人とも行ってらっしゃい! @1 それが、私が姉と父を見た 最後の姿…だった。 @1 \s姉さん、父さん。 \sどうして…… \sどうして、帰って来なかったの…。 !bgm !bgs(環境)雨 !mv七影霊園 @0 \c[6] 銃撃事件ですって… \c[6]\s怖いわねぇ… \c[6]\s日本は安全だと思っていたのに…    @0 \c[6]あの子、養子に出されるんですってねぇ… \c[6]\s…まだ子供なのに… \c[6]\s…本当に気の毒ねぇ… @0 \c[6]\sひどいよ、二人とも… \c[6]\s私を…一人にしないでよ…     @0 \c[6]\s夕方までに戻るって、 \c[6]\s約束…したじゃない… !mvnil !bgmサスペンス !bgs @0 「0814フォックス銃撃事件」 @1 それは平和な日本国内において、 類を見ない、拳銃によって一般市民が 殺傷されるという痛ましい事件だった。 @1 その事件の被害者は、 私の父である笹原コウイチと 姉の笹原サエ。そして友人の村上シシト。 @1 私は、事件の後養子に出された事で、 「笹原沙雪」から、 「冬村沙雪」になった。 @1 苗字が変わっただけなのに、 二人とはもう、家族じゃないみたいだね…。 @1 \s…事件が起きてから数年後に、 私は奨学金を借りながら、 公立の女子高に通う事になった。 @1 里親は私の身を気遣い、 日本において最も治安が良いと評される、 ここ「アクアフロート」に私を住ませてくれた。 @1 \s例えそれが、 体の良い、「厄介払い」だと 私が感づいていても…。 !bgm !bgs(環境)雨 !mvマンション街 @410 \sふう、嫌な事思い出しちゃった。 @410 雨だけど、気晴らしもしたいし、 久しぶりにゲームセンターにでも行こうかな。 @410 ええっと、鍵とお財布は… @412 \sよし、あった。 @410 準備もできたし、 \s…行こう。 !se(Action)ドア開け !se(Action)ドア閉め !mvnil !mvゲームセンター !bgmゲームセンター !bgs @412 !v36=1 よし、着いた。 @1 アクアフロートのショッピング街にある ゲームセンター「ナインスター」 @1 本州の大型店舗に比べれば規模は 小さいながらも、昔ながらのゲームを 置いている事で、人気がある。 @1 私がここに来る理由は、ただ一つ。 @410 !v36=1 (姉さん…) !mvnil !bgm別れ @0 沙雪、このゲーム面白いわよ! \s「シルフドラグーン」ってゲームなんだけど、 \sどう?一緒にやってみない? @0 ええ、嫌だよ…。 私ゲームなんてやったことないし、 目が悪くなるから駄目だよ…。 @0 いいからいいから。 ちょっとだけでも! @0 あ!姉さん! \sもう…仕方ないなぁ…。 !se(Shooting)ショット !wait3 !se(Shooting)ショット !wait3 !se(Shooting)ショット !wait3 !se(Shooting)ショット !wait3 !se(Shooting)撃破B !wait3 !se(Shooting)撃破B !wait3 !se(Shooting)レベルアップ !wait3 !se(Shooting)レベルアップ @0 あ、結構面白いかも、これ…。 @0 沙雪!貴方すごいじゃない! これ、中々の高得点よ! @0 流石は私の妹!ゲーマーの素質があるわ。 \s沙雪…今度は二人でやりましょう。 @1 ………。 \s私は元々、ゲームには興味が無かった。 @1 だけど…。 \sこれの楽しみを教えてくれたのは、 \s姉さん、あなたのおかげです。 !mvゲームセンター !bgmゲームセンター @410 !v36=1 …………。 @1 私は、目の前の古ぼけたゲーム台を見る。 \s「シルフドラグーン」 \s昔姉さんと一緒にプレイしたゲームだ。 @412 !v36=1 姉さんと遊んでいた頃を思い出すなぁ… \sちょっとだけ、やってみようかな。 @1 私はイスに座り、財布から取り出した ICカードを、挿入口に差し込む。 @1 ここアクアフロートでは、 犯罪防止の為か、通貨の代わりに ICカードが使用されている。 @1 それが防犯に役立つのかはさておき、 アクアフロートの住人が基本、 現金を持つ事はない。 @1 故に、ゲームセンターのゲームは、 どんなに古いモデルの物でも、 ICカードを読み取れるようになっている。 @410 !v36=1 (あ…なんだか懐かしい。  この画面、あの時のままだ。) @1 ゲームを起動し、 「シルフドラグーン」の タイトル画面を見る。 @1 私は、かつて姉とプレイした事がある、 アーケードモードを選択した。 @1 3… @1 2… @1 1… !se(Action)ジュゴー @1 ゲーム開始のBGMと共に、 画面を埋め尽くすほどの 大量の敵が現れる。 @1 私は、不慣れな手つきながらも、 敵の攻撃を避け、順調に倒していく。 @1 殆どゲーム経験のない私でも、 流石に昔プレイしたゲームというのは、 体が覚えているものらしい。 @410 !v36=1 (…姉さん。覚えてる? 昔こうやって遊んだこと。) @410 !v36=1 あ…。 !se(Action)爆発音 @1 考え込んでいたせいで、 つい、やられてしまった。 @1 画面に映るのは、 「GAMEOVER」の文字と…  \s\r[「High Score」,ハイスコア]の文字。 @410 ……………… @410 (ああ、そうか。  ねえ、姉さん。) @410 (姉さんは、ここにいてくれたんだね。) @410 \s(…私の、思い出の中に) !bgm黄昏 !wait20 @410 \s(あれ、おかしいな。) @1 ぽつぽつと、冷たい何かが頬を流れる。 @1 これは…涙? @410 (あれ?あれ? \sどうしよう…涙が止まらない…) @413 !v36=1 \sぐすっ… \s…うううっ… @413 (……姉さん…父さん…。 \s………会いたいよ…。) @1 私は、暫くの間、 周囲に気付かれないように 声を殺して泣き続けた。 @1 今まで一度も超える事が出来なかった、 姉さんのハイスコア。 @1 その姉さんのスコアを超えた時、 \s「姉さんはもう、どこにもいない」 \sその事実を…私は改めて痛感した。 @410 (はぁ…) @1 それは寂しくもあったけど、 少しだけ、前に進めた様な気がする。 @410 (…姉さん、父さん。) @410 (私、二人との思い出は、 絶対に忘れない。) @410 \s(…私、きっと強くなるね。) !mvnil @1 だから、暫くの間だけ… \sさようなら、姉さん、父さん…。 !wait20 @1 …数日後 !bgm !v5=0 !mv住宅地 @100 !v27=2 … @410 (あれ、あの人は確か…) !mvnil !wait20 @1 村上…君? !wait20 @1 「シルエットノート」に続く…