#真説・幻影帳異聞 第三章「憎悪」前編 !bgm黄昏 あれは僕がまだ八歳のある日。 僕が小学校から帰ってすぐのことだった。 庭の手入れをしていた父さんの背中を見つけて 「ただいま!」と声をかけた。 父さんはいつも笑顔で「おかえり」と言ってくれた。 \s僕だけにじゃない。姉さんにも。母さんにも。 元々父さんは海外で仕事をしていて 家を留守にすることが多かった。 でも、ここ一年。 \s今まで働いた分たっぷり休みをもらった。 \sそう言ってずっと家にいたんだ。 僕はもしかして 父さんがクビになったんじゃないか? と聞いちゃったんだけど。 姉さんに頭を思いっきり叩かれてしまった。 我ながら可愛くない考え方をしていたと思う。 \sでも、その後、みんな大笑いしてた。 それ以来、父さんはずっと家にいて、 僕らを笑顔で迎えてくれた。 だから、僕はその日も父さんの返事を期待した。 \sでも、返事はかえってこなかった。 僕が不思議に思っていると父さんは 突然庭に倒れてしまった。 その後、父さんは救急車に運ばれて・・・ \sそのまま息を引き取った。 今思えば、最後の一年。 父さんはどこか弱々しかった。 いつも笑っていたけれど、 その目は何か悲しそうで。\s申し訳なさそうだった。 僕の転校生活が始まったのはそれからまもなくだ。 馴染みのあった友達と離れてやってきた 新しい学校で僕を待っていたのはいじめだった。 原因は僕が片親しかいない。たったそれだけだ。 子どもというのは残酷なもので 社会的に劣っていると感じるとすぐに迫害に走る。 もちろん全員そうだったわけじゃないけれど 誰も僕を助けてくれはしなかった。 父さんの死のこともあり。 当時の僕には反撃する気力もなかったんだ。 そんな日々が続いたある日。 学校の帰り道でいつも通りいじめにあう僕に 通りすがった子が味方してくれた。 話を聞いてみると その子も片親がいない子だった。 当然その子もいじめられていたが、 その子は僕とは違いいつも反発していた。 だからその子はいつも傷だらけ。 特に死んだお母さんのことをバカにされたら 相手が謝るまで絶対に許さなかった。 そんな彼と友達になったせいか 僕はいじめっ子達と戦った。 いじめっ子達にとってはただの遊びでも、 僕達にとっては本気の戦いだったんだ。 勝負はつき、 僕達はぼろぼろになりながらも勝った。 その後、いじめはなくなった。 これが僕達の初めての戦いだったのかもしれない。 それがリョウヘイと僕の出会いだった。 !v5=1 !bgm !wait60 !mv中央公園 @1 M県S市市民公園。 整備された木々。安全性を考慮した遊具。 散歩の合間に一息いれるには丁度いいベンチ。 子供と飼い犬が走り回るには十分な広場。 昼間は多くの市民に利用され 少し探せばどの街にも一つはある、 ごくごく日常的な公園。 だが、夜になってしまえば雰囲気は一変する。 \s昼間はなんてことはない小さな林が 深い深い暗闇の底にさえ見える。 そして・・・ \s今正に闇の口が開きはじめていた。 !bgmサスペンス !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き 「ハァハァハァ・・・!!」 少女が走る。 \s大人びた外見だが雰囲気はいささか幼い。 恐らくは15〜6くらいだろうか? 既に時刻は深夜0時を回っている。 この歳の少女が帰宅するには遅い時間だ。 遊びに時間を忘れてしまったのだろうか? \s今頃、両親は真っ赤になって怒っているだろう。 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き 「う・・・く・・・\sハァ!\sハァ!!」 ・・・\sいや、違う。\sどうも様子がおかしい。 少女は右腕を押さえ、足を庇うように走っている。 よく見れば押さえた腕からは血が流れていた。 @940 コッチだ!急げッ!! @1 少女よりわずかに前を走っていた黒猫が なんと声を発して少女を誘導する。 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き 「う、うん・・・!」 息を切らしながらも 黒猫の後を必死で追いかける少女。 少女は今、\r[何か,・・]から逃げていた。 @940 だから言っただろう! \s今回の件はお前じゃまだ無理なんだッ!! @1 「だ・・・だって・・・!」 泣き声に近い声で少女は反論しようとする。 @940 言い訳は後でいい!今は走れッ!! @1 やがて林を抜けて広場にでると 月明かりが少女の顔を照らした。 @441 ハァハァ・・・。 @1 私服というにはおかしな格好をした少女。 もちろんコスプレなどではない。 彼女はマジカルパレスの魔女っ子の一人だ。 この街の魔物退治を任されてはいるが、 まだ就任して半年も満たない駆け出しである。 今、この街では 一つ大きな事件が起きようとしていた。 @940 ここまで来れば一安心か。 @440 ・・・\sごめん。 @940 ん? @1 少女はパートナーに申し訳なさそうに謝る。 @440 あなたの言う通りだった。 コレは私がどうにかできる事件じゃない。 前にあいつらを 一、二体蹴散らしたからって 調子に乗ってた・・・。 ごめんなさい・・・。 @940 あー、もういい。 \sコッチの見通しも甘かったんだ。 @1 この街は普段それほど多くの魔物は発生しない。 ゆえに駆け出しの彼女一人で対応できていた。 そんな彼女がこの公園の林の中で 先日、大きな次元の歪みを発見した。 本部に報告したところ、 魔道士の出動が必要になるレベルの事件に 発展する可能性がある事が判明。 すぐに増援を要請したが、 今夜、次元の歪みが大きくなり 黒猫が魔物の出現を察知。 待機を命じられていた彼女はなりふり構わず パートナーの黒猫と共にココにきたのだ。 彼女が到着した直後、 次元の歪みは開ききりゲートとなって 魔物をコチラに呼び込んでしまった。 魔物が出現するとゲートは閉じた。 現れたのは以前彼女が倒したことがある魔物。 だが、その数は三十を超えていた。 一度に発生するには異常な数だ。 とてもではないが 彼女だけで対処するのは不可能だった。 @940 それに調子に乗ったんじゃないだろ? 増援が来るまで待てなかっただけだ。 \s違うか? @440 ・・・うん。 だって、その魔道士の人が来るまでに、 あいつらが誰かを襲ったりしたら・・・。 @1 せめて時間稼ぎだけでもできれば。 そんな気持ちで彼女はココにやってきたのだ。 決して増長していたわけではない。 @441 私はみんなを守るために 魔法使いになった。 だから・・・。 @940 お前のそういう 優しい所は気に入ってるんだけどな。 !bgm @1 だが、時に優しさは人を傷つける。 \s他人はもちろん。自分自身をも。 !se(Action)跳ね !wait5 !se(Action)跳ね !wait5 !se(Action)跳ね !wait5 !se(Action)跳ね !bgm緊迫状況 @441 えッ!? @940 しまったッ!! @1 いつの間にやら回り込んでいた魔物たちが 彼女たちの前に立ちふさがった。 @940 ちぃ、仕方ない! 林の中にもど・・・! !se(Action)跳ね !wait5 !se(Action)跳ね !wait5 !se(Action)跳ね !wait5 !se(Action)跳ね @1 いや、違う。\s回り込んできたのではない。 後ろにも魔物の群れがいた。 完全に囲まれてしまっている。 彼女はココに誘い込まれてしまったのだ。 @960 グルルゥゥゥゥ・・・。 @1 全身から熱気を放ち 少女を狙っているのは地獄の猟犬 ヘルハウンド。 一体程度なら 彼女の実力でも十分対応できるが 群れで来られてはとても勝ち目はない。 @441 ・・・。 @940 逃げ場は・・・ないか。 @1 諦めたように言う黒猫。 \sだが、当の少女は・・・ @441 逃げられないなら戦うしかないよ。 @940 何を言ってる!? @441 こいつらを放っておいたら 必ず傷つく人が出る!! 私はこの街が大好きなんだ! \sパパも、ママも、友達も、 大切な人がいっぱいいるこの街が! こんな奴らのために、 誰かが涙を流すのなんて見たくない!! @1 傷ついた体で健気にステッキを構える。 だが、気持ちはあっても 体力も、魔力ももうほとんど残っていない。 \s何より彼女には実力が足りない。 !se(Action)跳ね !wait5 !se(Action)跳ね !wait5 !se(Action)跳ね !wait5 !se(Action)跳ね @960 グルァァァァ!! @1 少女が弱っているのを理解しているのか ヘルハウンドたちは一斉に襲いかかる。 @441 くっ・・・!! @940 くそおおおお!! @1 爪で引き裂き、牙で噛み切り、 血を啜り、肉を喰む。 それはさも待ちわびた食事の時間のように。 \s哀れ、少女は彼らのエサとなる・・・ !mvnil !bgm !wait30 !se(Action)ジュゴー !mv中央公園 @440 ・・・え? @1 いつまで経っても少女は苦痛を感じない。 それどころかヘルハウンドは何かに弾き飛ばされ 彼女たちに近づくことも出来ない。 !se(Action)ジュゴー まるで彼女の周りに鉄壁の\r[盾,・]があるようだ。 @441 な、なにが起こってるの? @940 これは・・・\sまさかッ!? !bgm(タクミ)魔法少女戦 !se(Action)学内歩き @1 「・・・今の叫び。いいわね。」 「でも、貴女の命。  こんな奴らにくれてやることはないわ。」 少女たちの方向に右手をかざしながら 一人の女性が現れた。 いつのまにか月が雲に隠れたせいで その顔までは見ることが出来ない。 @441 だ・・・だれ? @1 「う〜〜ん、名乗るのって苦手なのよね。」 「それに悠長に  自己紹介してる暇もなさそうだし。」 女性がそう言うとヘルハウンドの群れが 少女を無視して、女性に向き直る !se(Action)跳ね @960 グググゥゥゥ・・・。 @1 低くうなるヘルハウンド。 少女たちを相手にした一方的な狩りとは 雰囲気が明らかに違う。 ヘルハウンドたちは この女性を食料などとは認識していない。 \s自分たちを害する脅威と判断していた。 「貴女たちはそこでじっとしていなさい。  \sすぐに片付けるから。」 女性は少女に優しい声で語りかけた。 @441 え・・・あ、でも!! @1 とはいえ多勢に無勢。 少女も加勢せんと女性に駆け寄ろうとする。 @940 やめとけ。邪魔にしかならん。 @1 パートナーがそれを遮った。 @441 だけど! @940 いいから、黙ってよーく見ておけ。 \s本物の魔道士の戦いぶりってのをな。 それもあの【最強の盾】だ。 そうそうお目にかかれるものじゃない。 @440 さいきょうの・・・たて? @1 パートナーの言葉の意味が分からず 首を傾げる少女。 だが、聞くまもなく 少女の視線は女性の方を向く。 !se(Action)爆発音 !wait5 !se(Action)爆発音 !wait5 !se(Action)爆発音 @960 グワアアアア!! @1 ヘルハウンドが炎のブレスで 女性のいた場所を焼き払い始めたのだ。 @441 ああ・・・!! @1 その地獄のような光景に絶句する少女。 \sあれでは女性はひとたまりもないだろう。 ・・・\sだが、女性はその場に立っていた。 まるでそよ風のごとく炎を物ともしない。 いや、まるで炎が 女性を避けているのかのように 左右に分かたれている。 @441 一体・・・あれは・・・。 @940 あれだけの炎を防ぎきるか。 \s噂に違わぬ実力だな。 @1 月は雲に隠れたままだが、 代わりに炎の灯りに照らされて 女性の顔が明らかになる。 歳はおそらく20代半ば。 \s黒い髪をポニーテールにまとめ 緑の瞳には強い意志を感じられる。 凛とした声で 女性・・・\s村上シイナは告げる。 @120 ・・・無駄よ。 この程度なら 私の盾を見せるまでもないわ。 !se(Action)跳ね @1 そのまま炎の中を疾駆し \sヘルハウンドに肉迫すると 右腕を扇ぐように横に振った。 !se(Action)ジュゴー !wait10 !se(Action)爆発音 @960 ギャワアアアア!! @1 すると気流に変化が起き、 強大な力で炎の軌道がねじ曲がり ヘルハウンドたちに襲いかかった。 @120 私も炎は得意なのよね。 火炎!! @1 間髪入れずに左手をかざして 魔力を集中し一気に解き放つ。 !se(Action)爆発音 @960 アギャワアアアア!! @1 二重の炎により起こった爆発が ヘルハウンドたちを薙ぎ払った。 @442 えええええ!? なんで炎であいつら倒せるの!? @940 元の威力が高いのもあるだろうが、 奴らの力を利用したんだ。 @440 え? @1 少女が驚くのも無理は無い。 \sヘルハウンドの耐火能力は高く、 並の火炎では通用しない。 だが、シイナは炎のブレスを弾き返し 自分の火炎で追撃することで威力を高め 耐火能力を越える炎を生み出したのだ。 @121 ぬるいわね。 地獄の猟犬が聞いて呆れるわ。 @1 髪をかき分けながら冷たく言い放つ。 @960 グワゥ!! @1 炎が効かないと見ると 残ったヘルハウンドたちが 己の爪と牙を持って襲いかかる。 @121 炎が効かないなら肉弾戦ってこと? \s魔物と言っても、所詮は獣ね。 @120 考えが足りないんじゃない? !se(Action)ジュゴー @1 そう言うとシイナは両手を握りしめる。 すると周囲の大気が揺れ動き拳に集中した。 !se(Action)ミス @120 ふっ! @1 襲いかかるヘルハウンドに拳を繰り出す。 !se(Shooting)撃破A @960 ギャウウ! @1 その拳は深々と突き刺さり 吹き飛ばされたヘルハウンドは そのまま絶命した。 !se(Action)ミス !wait2 !se(Action)ドゴン !wait2 !se(Action)ミス !wait2 !se(Action)ドゴン !wait2 !se(Action)ミス !wait2 !se(Action)ドゴン シイナは襲いかかるヘルハウンドを 次々と拳で迎撃していく。 本当なら泥臭い格闘戦のはずだが、 無駄のない洗練された動きは 美しささえも感じさせる。 @440 凄い・・・。 @440 さっきの魔法もそうだけど、 マジックアイテムを使わないで あんなに強いなんて・・・。 @1 少女はシイナの戦いぶりに見惚れながら マジカルステッキを握りしめる。 @940 いや、最初から使ってるぞ。 @441 ええ、でも素手だよ!? @1 シイナの姿をマジマジと見てみるが どこをどう見てもアイテムらしいものは 持っていない。 @940 今は見えてないだけさ。 あの人のマジックアイテムは 誰の周りにでも必ずあるモノが 大本になってるからな。 @440 ??? @1 黒猫の言ってる意味が分からず 首を傾げて不思議そうにする少女。 @940 魔道士用のアイテムと 見習い用のステッキじゃ 応用力の幅が違うってことだ。 @440 ふ、ふーん・・・。 @1 分かったのか分からないのか。 生返事を返す少女。 そうこうしている間にも ヘルハウンドはみるみる減っていく。 !se(Action)ミス !wait2 !se(Action)ドゴン @120 二十四・・・ !se(Action)ミス !wait2 !se(Action)ドゴン !wait2 !se(Action)ミス !wait2 !se(Action)ドゴン 二十五、二十六・・・ !se(Action)ミス !wait2 !se(Action)ドゴン !wait2 !se(Action)ミス !wait2 !se(Action)ドゴン !wait2 !se(Action)ミス !wait2 !se(Action)ドゴン 二十七、二十八、二十九・・・!! !se(Action)ミス @120 三十ッ!! !se(Shooting)撃破A @960 キャイイイイイ!! @1 結局ヘルハウンドたちは一匹も シイナに触れることさえ出来ずに 殴り飛ばされてしまった。 @120 さて、残るは・・・ @1 気がつけばヘルハウンドはほぼ全滅し、 一匹を残すのみとなっていた。 @960 グウウウウ・・・。 @1 これだけの力の差を見せつけられても 撤退の意思は見せずにシイナを睨む。 仲間を倒されて怒っているのだろうか? @960 ギャアアウウウウ!! !se(Action)跳ね @1 一度だけ吠えると ヘルハウンドは疾走りだした。 \sだが、シイナに向かってではない。 @441 こっちに来るッ! @940 ちッ! @1 報復行為のつもりなのだろう。 \sシイナに勝てないと判断したヘルハウンドは 仲間の恨みとばかりに少女を狙った。 !se(Action)跳ね @960 ギャワアアアア!! @441 一体くらいなら・・・! @1 ステッキを構えはするが 彼女の体力はまだ戻ってはいない。 \s今戦っても勝ち目はないだろう。 !se(Action)跳ね @960 グワアアアア!! @1 少女に爪を立てようとしたその時だ。 !se(Action)ジュゴー まるで何かに縛られたように ヘルハウンドが空中で制止した。 @121 前言撤回するわね。 \sやっぱり獣じゃなくて魔物ね。 @120 やることが薄汚いわ。 @1 シイナは左腕を引き、ちょうどリードで 獰猛な犬を力づくで抑えこむような 体勢をとっている。 @441 ええ・・・!? なに、なんでどうして!? @940 落ち着け。 これもアイテムの応用だ。 @442 そう言われても分からないよ! @1 少女は目の前で起こっていることが 理解できず、ひどく混乱する。 @960 ギャ・・・ギャァァァ? @1 もっともそれは ヘルハウンドも同じなのだが。 @121 残念だったわね。 \sその子の周りには まだ\r[盾,・]を設置したままだったの。 @120 怪我してる女の子を 無防備にするわけがないじゃない? !se(Action)跳ね @1 ニコリと笑顔で語ると左腕を思いきり引く。 同時に制止していたヘルハウンドが シイナの方に勢い良く引き寄せられた。 @960 ギャワアアアア!! @120 これで・・・\sラストッ! !se(Action)ミス @1 接近するヘルハウンドに合わせて 右の拳を突き出す。 !se(Shooting)撃破A @960 ギギャギャヤアア!! !wait20 !se(Action)シュイーン @1 回避もままならずシイナの拳を受け。 最後のヘルハウンドはそのまま消滅した。 !bgm夜の静けさ @121 ふう・・・。 @1 パンパンと埃を払うように手をはたくと、 シイナは少女たちの元に歩み寄った。 @120 大丈夫だった? @441 あ、は、はい。 @1 ドキッとしながら少女は答える。 \sシイナはその姿をじっと見ると 彼女に手をかざす。 @121 ちょっとだけ動かないでね。 @120 完治! !se(Event)アイテム入手A @440 あ、怪我が・・・。 @1 少女の腕と足の傷が塞がり出血が止まる。 @120 回復魔法はあまり得意じゃないけど、 少しはマシになったと思うわ。 @440 い、いえ、十分です。 \sありがとうございます! @1 少女はペコリと礼儀正しく頭を下げた。 @120 いいのよ。 遅くなった私が悪いんだし。 @940 いえ、命令無視をしたのはこっちです。 申し訳ありません。 @121 いいえ、あなた達が来たお陰で 魔物たちがココに留まったのよ。 もし分散されていたら、 すぐには片付けられなかったわ。 @120 だから、結果的にはこれでよかったの。 @121 でも、簡単に 命をかけるのは感心しないわ。 貴女が死んでも泣く人はいるんだから。 @1 あくまでも優しい口調で諭すシイナ。 @440 ・・・はい。 @120 素直でよろしい。 ところで、ゲートの方は? @940 ゲートは奴らが現れて消えました。 これ以上の魔物出現はないかと。 @120 そう。 \s魔物の気配はもう感じないし、 あれで本当に最後だったみたいね。 @121 情報部の計算だと ゲートが広がりきるまで もう少しかかるはずだったんだけど。 @940 自分もそう思ってました。 出現数といい異常です。 こんな事、前例を知りません。 @121 ・・・前例ね。 @1 何か引っかかると言った表情をする。 @120 念の為にゲートが開いた場所を 確認してくるわ。 あなた達は疲れたでしょうから もう帰って休みなさい。 @121 本当は送ってあげたいけど。 @441 いえ、大丈夫です! \sもう怪我も塞がりましたし! @1 少女は腕をブンブン振り回して 元気になったことをアピールする。 だが、傷は癒えても酷使した 体の疲労までは回復しきっておらず ビキッと痛みが走る。 @442 あたた・・・。 @940 何やってんだお前は・・・。 @121 ふふっ、無理しないようにね。 @120 それじゃ、 また縁があったら会いましょう。 !se(Action)学内歩き @1 それだけ告げて、シイナは 林の奥へと消えていった。 @440 ・・・凄い人だったね。 @940 ああ、実力もそうだが 本当ならゲートが開くのは 明日の深夜帯のはずだったんだ。 なのに一日早く到着するとは 行動も迅速だな。 おかげで命拾いできた。 @441 魔道士の人たちって みんなあんなにかっこいいの? @940 いやー、あの人は特別だ。 今のマジカルパレスでは 最高クラスの実力者だからな。 あの人と同格の魔道士なんか 片手で数えるくらいしかいないさ。 @440 そんなに凄い人なんだ・・・。 \sしかもクールなのに優しいし・・・。 @441 よし! \s私もあの人みたいになるッ! 大人のかっこいい女に!! @1 ピョンととび跳ねて、子供のように また腕をブンブン振り回す。 @442 あいたたたた! @1 当然、また痛みが走った。 @940 やれやれ・・・。 \sほれ、明日も学校だろう? 早く寝ないと朝起きれないぞ。 @441 あー! \s明日算数のテストがあるんだ! @442 ひー、勉強してないー!! @940 ははっ、大人の女になるには まだまだ先は長そうだな。 @1 呆れながらも優しい口調で 相棒を見つめる黒猫。 日常へと立ち返った少女は 明日の事で頭を抱えながら帰路へとついた。 !mvnil !bgm !wait30 !mv中央公園 !bgmサスペンス !se(Action)学内歩き @120 ・・・。 どうやらゲートは完全に消えたようね。 @121 ・・・\s前例がないか。 @1 先ほどの黒猫の言葉を思い出す。 \s実のところ、前例がないわけではない。 @120 ヘルハウンドは 地獄の猟犬の異名を持つ。 実体を持った魔物の中では 【死】の属性に極めて近い。 @1 シイナは知っている。 今回と似たような【死】に属する魔物が 大量発生した事件のことを。 !bgm @121 ・・・\s十年前のヤツとの戦い。 @1 苦虫を噛み潰したように言う。 よほど嫌な思い出があるのだろうか。 @120 さて、長居は無用ね。 @121 今からじゃどうしようもないから 明日一番の飛行機で帰りましょうか。 ふう、観光の一つもできないのは 残念だけどね・・・。 !se(Action)学内歩き !mvnil @1 シイナもまた帰路につく。 \sだが、その先にあるものは日常ではない。 彼女の戦いはこれから始まるのだから。 !wait40 真説・\r[幻影帳,シルエットノート]異聞 第三章「憎悪」 !wait20 !v5=0 !mv第4区駅 !bgmStation @120 ふー、やっと帰ってきたわねー。 @121 行きも帰りもエコノミーだったから 全身が凝って仕方ないわ。 @1 コキコキと肩をならすシイナ。 @120 さって、早く家に帰って・・・ @1 シイナがバッグを持ち直して 家路につこうとした時だ。 「ワンワンッ!!」 @121 ん? @1 駅の出口で彼女に向かって 吠える白い犬がいた。 !bgm @830 ワンワンワンッ!! @120 ・・・・・・。 @830 バウバウバウッ!! @120 ・・・・・・。 !se(System)ピッ !wait3 !se(System)ピッ !wait4 !se(System)ピッ @1 シイナは黙って携帯を取り出し おもむろにボタンを押し始めた。 @833 バウッ? !bgmちょっとマズい @121 あ、もしもし保健所さんですか? \s今、駅の前に獰猛な犬がいまして・・・ @831 キャイーン! @120 首輪ですか? \sあー、たぶん飼い主はいませんよ。 \sいても、相当いい加減な人だと思います。 @832 くう〜ん! @120 ああ、今正にその牙で犠牲者が・・・! @833 バウバウッ!! @121 なんてね。冗談よ。 @833 バウバウバウッ!! @120 ごめんごめん。 \s久しぶりだからからかってみただけよ。 !bgm で、\r[今回,・・]のご主人様はどこにいるのかしら? @830 ワンッ! !se(Action)学内歩き @1 一度だけ吠えると犬は シイナを誘導するように歩きはじめた。 @121 やれやれ、休む暇もないわね。 !mvnil !se(Action)学内歩き @1 何の疑いも持たずシイナは犬の後を歩く。 !wait30 !mvショッピング街 !bgmサスペンス 案内された場所はショッピング街の裏路地。 \s先日、拉致事件が起こった場所だった。 !se(Action)学内歩き @120 ひと目もないし そろそろいいんじゃない? なんでアナタがここにいるの、 クロウ。 @830 我もこれからそれを聞くところだ。 @1 クロウと呼ばれた 白い犬は当然のように喋り出した。 @120 ふーん、電話連絡じゃなくて わざわざ口頭で説明ね。 ざっくばらんなウチにしては 珍しいくらいの秘密主義・・・。 今回の\r[ご主人様,いらいぬし]はアイツね。 !se(Action)跳ね @1 「鋭いのは結構ですが、  その言い方はどうにかなりませんかね?」 「人聞きが悪いですよ?」 どこからともなく誰かが姿を現す。 アイツとはこの人物のことだ。 @121 会社の人使いが荒いんだから 少しくらい八つ当たりしたって いいじゃない。 @833 我も思いっきりとばっちりを受けてたが。 @120 昔のパートナーのよしみで許して。 @831 扱い悪すぎるだろッ! @1 「コチラとしても休ませてあげたいところですが、  状況が状況ですのでそうも言ってられません。」 @120 アナタが出てきている時点で、 普通じゃないことは分かるわ。 @1 「やれやれ行く先々で言われますね。  私も随分物騒な扱いになったものですよ。」 軽く頭を押さえながら語る。 @830 密偵という立場上仕方ないだろう。 扱う機密のレベルが違いすぎる。 @1 「そうですけどね。」 「ま、今回は少々物騒の度合いが違いますが。」 軽口から一転して真面目な口調に切り替わる。 「シイナさんは確か、シシトくんが  拉致された翌日から出張してたんですよね?」 @120 そうだけど、それがどうかしたの? @1 「では、一昨日の事件のことから話しますか。」 @120 一昨日の事件って、 あの子またなにかやらかしたの? @1 「いえ、違いますよ。  \sどちらかという巻き込まれた形ですね。」 @121 なんだ。いつも通りじゃない。 @833 ひどい言い様だな・・・。 @1 「かいつまんで説明します。  \sマリオンが薙島高校を占拠しました。」 @120 なッ・・・!? @833 マリオンだとッ!? @1 「ああ、ご安心ください。  マリオンは倒されましたから。  シシトくんも学校も無事ですよ。」 @831 倒されたッ!? @121 どっちかって言うと そっちの方がびっくりするわね。 @120 でも、どうやって? @121 正直、シシトの実力で アイツを倒せるとはとても思えないわ。 @120 いえ、正攻法でいったら 私だって勝てるかどうか。 @1 「ご謙遜を。  今のアナタなら勝てますよ。  マリオンとは相性が良いですからね。」 「ま、シシトくんが勝てたのは  マリオンが彼を舐めていたからでしょうね。」 @121 ・・・ふーん。 @1 まったく納得していない風に返事をするが、 それ以上の追求はしない。 @830 それにしても何故 一般の高校などを襲ったのだ。 @1 「そこが今回の件の肝ですよ。」 「マリオンとゲング。  ヤツの側近であるこの二体の目的は  一つしかありません。」 @120 ヤツの復活でしょ? @830 だが、そんなことは不可能だろう。 \sヤツの封印は女神さまが施した 大封印術と聞いた。 確か、マジカルパレスの最深部に 厳重に封印したとか・・・。 @1 「・・・その話なんですがね。」 「ヤツの力を削ぎ、無力化には成功しましたが、  予定通りの封印はできなかったんですよ。」 @833 なんだとッ!? @120 ・・・。 @833 バカなッ! そんな話は聞いたこともないぞッ!? @1 「さっきアナタ自身が言ってたじゃないですか。  私の仕事は扱う機密のレベルが高い、と。」 @833 う・・・。 @1 「それにヤツとは実際に戦いましたからね。  事の顛末はほとんど知ってます。」 @121 ほとんどねぇ。 @1 「終盤は死にかけてましたからね。  現場を見たわけではないんですよ。」 「お陰で今はこの有様です。」 特に異常があるようには見えないが 自分の体を見ながらそう言った。 @833 話は分かったが、それと 高校を襲うのと何の関係がある? @1 「ヤツの封印を解く鍵がそこにあったからです。」 @830 ますます分からん! \sただの高校にヤツの封印の鍵がある!? この人工都市は十年前にはなかったんだぞ! @120 ・・・\sそれで? 結局、私達になにをさせたいの? @830 待て、シイナ。 もっと詳しく話を聞かねば・・・! @120 無駄よ。 \s全部話せっていっても はぐらかすに決まってるわ。 @121 今の話も大事な所は伏せてたもの。 @1 「やれやれ、敵いませんね。」 「今はまだその時ではないですが、  いずれお話しますよ。」 @120 期待しないで待ってるわね。 @121 ま、今の話だけでも 一つ疑問が消えたけど。 @120 私が外で片付けた ヘルハウンドの異常発生。 \sこれはヤツの力の影響ね。 @1 「そのようですね。」 「日本に限らず、他国でもリッチーのような  強力な死霊の出現を確認しています。」 「十年前のヤツの出現予兆に近い現象です。」 @121 しばらく特別対応班みたいな 遊撃隊は忙しくなるでしょうねぇ。 @830 何を他人事のように言っている。 我らもその遊撃隊じゃないか。 @120 いいのよ。 \sどうせコッチの方が大変だろうから。 @1 「ご名答・・・ですかね。」 「それで、お二人に頼みたいこととは、  シシトくんのサポートです。」 @120 シシトの? @1 「彼は今回の件の中心に近い位置にいます。  望むと望まざると必ず巻き込まれるでしょう。」 「やり方はそちらにお任せしますが、  出来る限り彼とその\r[周り,・・]に  気取られないようにしてください。」 @121 つまり、シシトを見張っていれば ヤツらが姿を現す。 @120 そういうことね。 @830 それは彼を囮にする・・・ということか? @1 「そう取ってもらっても構いませんよ。」 @830 何を言っているッ! まだ見習い同然の彼をこんな大事に 巻き込むつもりなのかッ!? ヤツが生命ある者にとって どれほど危険な存在なのかは お前もよく知っているはずだろう!? @120 分かったわ。 @830 シイナ!! @121 マリオンと関わった時点で もうそういう次元の話じゃないのよ。 @120 シシトはもう巻き込まれている。 なら、私達のやるべきことは一つしかない。 そこに誰のどんな思惑があったとしてもね。 @833 むう・・・。 @120 行くわよ、クロウ。 !se(Action)学内歩き @1 ふいっと背を向けるとシイナは歩き始める。 「では、よろしくお願いします。」 @830 ・・・。 @1 だが、クロウはすぐには追わなかった。 「どうしましたか?」 @830 これがお前の役目なのは分かっている。 \sだが、隠し事のしすぎは信用をなくすぞ。 さすがに今回ばかりは 我もお前のことを信用しきれん。 言いたいことはそれだけだ。 !se(Action)学内歩き !bgm @1 「・・・\sふう。損な役割ですね。」 「本当の事を話さずに友人を動かすのは  さすがに心が痛みますよ。」 そう言うと空を仰ぎ見る。 その瞳には憧憬の色があった。 「早く元の体に戻って以前のように・・・」 かつての自分を思い返して手を空に伸ばす。 \s在りし日のあの子と戯れた思い出も蘇る。 もはや二度と戻らぬ日々を。 !mvnil !wait20 !v5=1 !mv住宅地 !bgm夜の静けさ @602 それじゃあ、これからはくれぐれも 誤解を招く行動はしないように! @102 はい・・・。 @600 では、私はこれで。 !se(環境)サイレン @1 ファンファンファン! @102 事件がないときは サイレン鳴らさないんじゃ? !bgmちょっとマズい @610 拉致監禁と破壊活動を行った 凶悪犯(仮)が帰宅したぞー! 気をつけろーッ! とそういうことじゃないかね? @104 だから誤解だって言ってるでしょ!? @610 上は君を泳がせておいて、 背後にいる秘密結社ごと潰そう。 \sとか思ってるかもしれん! @102 僕の背後探したって出てくるのは 動物の毛だけだと思いますがね。 @610 なにッ!? \s動物愛護が行きすぎた 過激派団体がバックにいるのか! @102 それはないですね。 \s愛護の精神は欠片もないです。 @610 むう、となるとだ・・・。 @102 それよりなんで 警部がここにいるんです? \s狐狩さんに置いてかれたんですか? @610 普通に帰宅途中だが、 それがどうかしたかな? @102 うそーん。 @610 残念ながら、これは本当だ。 !bgm夜の静けさ ところで、例の屋上でのことだが。 @102 もう警察署で 散々話したじゃないですか。 二日間も缶詰にされるとは 思ってませんでしたよ。 @610 仕方ないだろう。 カメラから少し目を離していた間に 薙島高校の屋上が急に破壊されたのだ。 先日の拉致事件といい、 近頃は物騒になってきているからな 署内もピリピリしているんだよ。 @102 だからって二日も 裸で取り調べしないでくださいよ。 @610 いや、服くらい用意しようとはしたが、 君の母親が・・・ @111 \f[42]全裸でオッケー! @610 と満面の笑みで言うからついな。 @104 なにやってんだ母さん!! ってか、従うなよ国家権力ッ!? @610 ま、あまり疑われるようなことは しないことだな。 世の中には 足を踏み入れてはいけない世界もある。 一度や二度運良く無事に済んでも、 次もそう上手くいくとは限らんからな。 !se(Action)学内歩き では、またな。 @100 ああ、はい。 @102 最後だけ妙にシリアスだったなぁ。 \s御大警部もよくわからない人だ。 @100 さて、僕も家に入るかな。 !se(Action)学内歩き !wait10 !se(Action)ドア開け !wait10 !mv自宅 !se(Action)ドア閉め !wait10 !se(Action)学内歩き @102 ただいま〜。 @111 きゃー! 全裸の凶悪犯が出たわッ! 今すぐ警察呼ばないとッ!! @101 帰宅早々に警察署に とんぼ返りさせる気かァァァ!! @111 冗談よ。おかえりなさい。 @102 冗談で、息子を全裸のまま 警察に差し出さないでください。 @111 なんのことかしら〜♪ !se(Action)学内歩き @120 あら、おかえり。 @100 あれ、姉さん。 出張じゃなかったっけ? @120 今日帰ってきたのよ。 はい、お土産のかまぼこ。 @103 わーい!食べ物だーッ! @121 もう空っぽだけどね。 @104 上げて落とすッ! @111 実の弟が拉致された翌日に 平然と出張するんだから シイナもやるわよねー。 @121 別に今さら 驚くことでもないでしょ? @102 驚いてくださいよ。 @110 で、結局なんで取り調べされたの? @102 知らなかったんですか。 @111 ええ、どうでも良かったから! @104 あんたは本当に母親かッ!? !se(Action)ミス @121 話し進まないから、 さっさと教えなさい。 @102 分かったから そのかまぼこを切ったと思しき 包丁をしまってください。 えっと、誘拐容疑に 後は建造物等損壊罪の疑い・・・かな? @120 誘拐? @100 セトと冬村さん・・・ 薙島女子の友達を誘拐したって 誤解されたんだよ。 @110 ・・・。 @120 ・・・。 @100 ・・・。 !bgmコミカル @111 拉致監禁? @101 僕はアルバートじゃない!! !mvアルバートの部屋 @1 「ハックション!!」 @253 むう、風邪でもひいたか? 一昨日はなぜか 学校の廊下で寝てしまったからな。 しかし、なぜ廊下で? @254 ぬお!!鼻血がくしゃみで 飛び散って部屋が殺人現場のように!! @1 「うおおおお!!取れん!!!」 !mv自宅 @102 なにか今叫び声が聞こえたような? @111 自宅で鼻血が壁に引っ付いて 困ってるアルバート君の声なんか 聞こえなかったわよ。 @101 詳しいなッ!? @120 シシト・・・!! @102 なに? @120 妹が増えるのは 姉さん的には全然OKよ。 @101 OKだされても困る!! @110 話はわかったから とりあえずご飯食べちゃいなさい。 @102 先に服を着たいんですが? @111 片付けが終わらないから駄目。 @102 服を着ないで ご飯食べる人なんて、 そんなにいないだろうな・・・。 @121 アンタしかいないでしょ? @102 ・・・だろうね。 @100 じゃあ、いただきます。 @102 ていうか、ご飯あるなら かまぼこ取っておいて欲しかった。 @111 美味しかったわよー\wh @120 ほら、デザートに いちご大福もあるわよ? @103 おお・・・! デザートなんか何年ぶりだろう!? @121 やっぱり空だけどね。 @104 分かってたよッ! 分かってたよド畜生ッ!! !bgm !mvnil !wait30 !mv自宅 !bgm夜の静けさ @100 ごちそうさま。 @111 はい。お粗末さま! @100 じゃ、僕は部屋にいるから。 !se(Action)学内歩き @111 はいはい。 \s久しぶりにシャバに出たんだから ゆっくり休むといいわ! @102 刑務所入ってたわけじゃないから。 @120 ・・・・・。 !se(Action)学内歩き !wait10 !se(Action)ドア開け !wait10 !mvシシトの部屋 !se(Action)ドア閉め @102 ふう。 @705 おう!シシトお帰り!! @709 お勤めご苦労様でしたッ!! @830 おかえり。 @102 だから人を犯罪者みたいに 言わないでくれないかな。 @700 今回は結構長かったな。 @830 アクアフロートでの事件という 稀有な状況を考えると まだ早い方かもしれん。 @700 あー、それもそうか? とりあえず服着ろよ。 @701 つーか、お前 この二日間ずっと裸だったのかよ。 @102 もうその話はいいよ・・・。 十一月に二日間も裸でいて 風邪ひかない僕ってすごい。 @705 なんとかは 風邪ひかないっていうしな!! @102 リス君に言われたくはないなぁ。 @701 余計なお世話だ。 @106 ヴン! @107 ヴヴン!! !v27=1 @100 ふう、やっと一息つけるよ。 @833 なんだ今の動きは!? @705 キレッキレの動きだったなッ!! @831 そんなことを言ってるんじゃないッ!? @700 そういやよ。 あの後大変だったんだぜ。 @830 あの後? @700 マリオン倒した後だよ。 @100 なにかあったの? @700 実はなぁ・・・ @102 待った。 @700 なんだよ? @100 さっきから気になってたんだけど。 !bgmサブコミカル @102 その犬はどちら様? @701 なんだ気づいてたのか。 @833 我もこのまま流されたら どうしようかと思ってたぞ。 @100 スルーしようかなーとは思ったけど 大きさ的に無理があるからね。 @705 おれと違って 無駄にでかいからなコイツ! @831 でかい言うなッ! @100 で、その犬は? @700 こいつはおれのダチのクロウだ。 @830 クロウ三世だ。よろしく。 @100 その九狼山静さんがなんでここに? @833 誰だそれはッ!? @705 「くろやま しずか」 かもしれねえぜッ!! @831 なおのこと誰だッ!? @833 クロウでいい、クロウで!! @700 こないだのマリオンの件で、 ここいらの危険度が上がったから クロウが派遣されたんだと。 @705 コイツ、特別対応班っていう 遊撃隊のエリートなんだぜッ! だから良いもん食って こんなにぶくぶく太ってんだッ!! @831 失礼なことを言うなッ!! !bgm夜の静けさ @833 お、おほんッ! @830 出現したのが 危険度S級の魔物だからな。 また何が起こるか分からない。 念の為の保険というところだ。 @100 ・・・ふ〜〜ん。 @700 なんだよそのやる気のない返事は? @102 別に。 @100 ・・・。 @833 (確実に疑われているな。) @830 (だが、仕方あるまい。) !v5=0 !mv住宅地 !bgm安らぎ @830 それでシイナ。 どうするつもりなんだ? @120 シシトをどうサポートするかってこと? @830 そうだ。 やり方は任せるとは言われたが 二人とも隠れているわけにもいくまい。 いざという時対応が遅れかねん。 @121 そうねぇ。 @120 じゃあ、こうしましょう。 アナタは適当に話をでっち上げて シシトたちに直接接触。 何か起こったら協力してあげて。 私は影から援護に回るから。 @830 いいのか? @120 なにが? @830 守る役目が我で。 @120 私が直接守るより、 アナタの能力でシシトの力を \r[底上げ,・・・]した方が生存率は上がる。 @121 それに自分で言うのも何だけど 私が表立って動いたら連中に気取られる 可能性が高くなるわ。 @830 そうか。 \s今のお前は十三剣の一人だったな。 @121 何の得にもならない称号よ。 \sいずれアナタも任命されるでしょうけど、 本当に価値ないわよ、これ。 @120 給料変わらないし。 @833 生々しい話をするな。 @830 だが、分かった。 その案でいくとしよう。 @120 ・・・弟をよろしくね。 @830 任せておけ。 !v5=1 !mvシシトの部屋 !bgm夜の静けさ @833 (とはいえさすがにシイナの弟、  簡単には騙されてはくれないか。) @100 ジーーーーーーーー @833 ・・・。 @100 ジーーーーーーーー @833 ・・・。 @100 クロウさんさあ。 @833 な、なんだ? @102 昔、姉さんと遊んでた 白い犬に似てるね。 @831 ビクーーーンッ!! @833 (い、いかん!  確かに、シイナと組んでいた時に  数回顔を合わせた事がある!) (子供の頃の話だから  忘れていると思っていた!) (それ以前に犬の見た目など  人間にはそう変わらんはず!!) (なんという観察眼だッ!!) !bgmサブコミカル @705 なんだシシト! クロウに惚れたか!! @104 はいッ!? @833 な、なんだと!! @700 さっきから クロウをじっと見つめてるじゃん!! @705 しかもお前 「昔会ったことない?」とか ナンパの常套句だぜッ!! @101 なんで犬に惚れなきゃいけないんだ!! @705 だってクロウはメス犬だぜ!! @831 メス犬言うな!! @701 とうとう犬にまで手を出すとは・・・ @705 この変態が!! @101 ちがううう!! @833 (なにはともあれ誤魔化せたようだな) @830 (礼を言うぞリス) !bgm夜の静けさ @100 話が脱線しちゃったけど、 あの後なにかあったの? @700 おう、それそれ。 実はあの後、リョウヘイがぶっ倒れてよ。 @103 リョウヘイが!! @701 サユキちゃん達が人呼んで 保健室まで運んでくれたんだけど、 なかなか気が付かなくてな。 @100 ・・・。 @700 しばらくしたら目覚ましたんだけど、 念の為に検査入院ってことになってな。 で、特に異常もなかったから、 明日退院するとか言ってたぜ? @100 ・・・そっか。 @102 もったいぶるから もっと大変なことになってるかと思ったよ。 @700 ま、大したことなくてよかったよな。 !bgmサスペンス @830 だといいのだがな。 @100 え? @830 そのリョウヘイと言う少年は 魔力を拳に乗せて爆砕させたと言ったな。 \sあのマリオンを倒す程の威力で。 @100 なんで知ってるの? @705 おれが話した!! @102 ああ、そう。 @830 我は似たようなことができる 魔道士を一人だけ知っている。 だが、その人物も マジックアイテムを使用していないと 反動で肉体が壊れると言っていた。 魔力制御と肉体強化の鍛錬を ひたすら繰り返した者でさえ、だ。 @100 ・・・。 @701 気絶したのはそのせいかよ。 @830 その少年の話を聞くと かなり特殊な事例ではあるが、 恐らくは間違いないだろう。 訓練も受けず、何の補助もなく リスクもなしでそんな事ができれば それはもはや魔物の\r[業,わざ]だ。 @100 魔物の・・・。 @830 悪い事はいわん。 \s今後なにかあっても その少年には戦わせない事だ。 @700 でも、リョウヘイ 変身したシシトより強いぜ? @830 生兵法は怪我の元だ。 それ以前に如何に力があろうと その少年は一般人ではないか。 @701 あー、そういやそうだな。 @100 ・・・わかった。 今後なにかあっても リョウヘイには戦わせない。 @830 懸命な判断だ。 @700 いいのかよ? @100 ・・・うん。 @700 けどよ・・・ @100 ん? @700 リョウヘイの性格だと、 また何かあったら戦うと思うぜ? それはお前の方が分かってんだろ? @100 ・・・うん、わかってる。 !bgm それでも僕は もうリョウヘイを戦わせない。 @1 「僕が・・・戦う。」 !mvnil !wait30 ・・・あー。またココかよ。 !bgm恐怖 \c[2]「ふっ、お前も少しは慣れてきたか。」 うるせえな。 二度も三度も同じ事があったら 嫌でも慣れもするぜ。 \c[2]「そう邪険にするな。  我はココに十年も一人でいたのだ。」 \c[2]「案外悪い場所ではないだろう?」 ・・・嘘つけ。 さっさとココから出たがってたくせによ。 \c[2]「くくっ、やはり分かってきているな。」 テメエのことなんか分かりたくねえよ。 あー、でもこないだの礼はしとくぜ。 お陰であの野郎をぶっ飛ばせたし、 シシトたちを助けられた。 ありがとよ。 \c[2]「ふん、礼には及ばん。  お前が望んだから力をくれてやっただけだ。  \sだが、あまり迂闊なことはしてくれるな。」 迂闊なこと? \c[2]「最後にお前が出した技だ。  \sあのような魔力を物理攻撃へと変換する技は  お前にはまだ早い。」 ああ、あれか・・・ 勝手に出ちまったんだから仕方ねえだろ? \c[2]「いずれは自在に使えるようになるだろう。  だが、しばらくは使うな。」 \c[2]「まだ死にたくなければな。」 わっかんねえなぁ。 \c[2]「何がだ?」 オレが死んだほうが テメエには都合がいいんじゃねえのか? オレがいなくなればこないだみたいに お前が出てこれるんじゃねえのかよ。 お前はオレにされた\r[何か,・・]なんだろう? \c[2]「・・・そう簡単な話なら苦労はせんのだがな。」 \c[2]「それよりも少し身の回りに気をつけろ。」 おいおい、なんだよ今回は? 随分と過保護じゃねえかよ。 \c[2]「ハッキリとは分からんが、  お前の近くに我と同じ者がいる。」 \c[2]「それも強い憎悪の塊となってな。」 一体なんのことだよ? !bgm \c[2]「ゆめゆめ油断せぬことだ。  \sお前はもう戻れぬ所まで来ているのだからな。」 お、おい待てよ! ちゃんと教えていけッ!! !wait30 !v5=0 !mv保健室 !v28=1 !se(Action)跳ね @202 ・・・待てよッ!? @1 リョウヘイはベッドから跳ね起き 近くにあった何かを掴む。 細く、しなやかで温かさを感じる。 !bgmけだるい午後 @430 うわッ!びっくりしたッ!? いきなり目さまさないでよッ! @1 リョウヘイが掴んだのはミキの腕だった。 @202 あ・・・ミキ? \sなんでココに・・・? @430 なんでもなにも。 \sアンタが倒れて入院したって聞いたから お見舞いに来てあげたんじゃないか。 @202 入院した・・・? @430 ちょっとちょっと大丈夫? @202 ・・・あー、思い出した。 こないだぶっ倒れた後、 検査入院してたんだっけ。 @430 今日退院だって聞いてたけど、 あんまり調子よくなさそうだね。 ・・・\sでさ、 そろそろ離してくれないかな? ちょっと痛いよ。 @202 あ、わりぃ。 @430 ま、いいんだけどさ・・・。 @1 ミキは僅かに顔を俯ける。 頬が少し赤くなっているように見えた。 @202 ・・・あー・・・。 @430 ・・・え・・・っと。 @1 二人の間に気まずい空気が漂った。 !wait10 !bgmちょっとマズい !v35=1 !v36=1 !se(Action)爆発音 @413 \f[32]なんだー! このラブコメみたいな展開はッ! @401 ちょちょちょ! 冬村さんここ病院ですからッ! @412 あ、ごめん。 ついリビドーが爆発しちゃって。 @201 お前ら、いつからいたんだよッ!! @250 具体的に言うと お前がうなされていた時からだな。 @202 最初からいたんなら 黙って見てるんじゃねえよ。 @250 お前が気づかなかっただけだろう。 @430 アタシがここ来て すぐにみんなも来たんだよ。 いやー、びっくりしたよー。 アタシと坊主以外に友達いたんだね。 @202 お前はオレをなんだと思ってるんだ。 @430 年がら年中ゲーセンに居る 彼女もいない寂しい男子高校生。 @202 お前も人のこと言えねえだろうが。 @430 何をおっしゃる! このミキさんは街を歩けば 引く手数多ですよ! アンタと一緒にされるのは心外ですなー。 @200 けっ、言ってろ。 !bgmけだるい午後 あれ、そういやシシトは・・・ @202 まさかまだ警察か? @250 昨日出所したそうだぞ。 さっきメールしたが 後から来ると言っていた。 @402 出所って・・・刑務所 はいってたんじゃないんですから。 @430 ちなみに坊主はしばらく 宗派の本山で会合かなにかが あるんだってさ。 階位?を上げるために 長期間修行するとか言ってたけど。 @200 ・・・。 @430 どしたの? @202 いや、物凄くまともな理由だったから 軽く固まっちまっただけだ。 坊主って本当に坊主だったのか・・・。 @200 そういやお前ら学校どうしたんだよ? @400 今日は第二土曜日だからお休みですよ。 @200 ああ、そういやそうだな。 @202 入院してると曜日の感覚が 分からなくなるんだよな。 @410 それでね。 岸くんの快気祝いと シシトくんの出所祝いに みんなで遊びに行こうかなーって。 @402 だから、出所って・・・。 @202 やめとけ、突っ込むだけ無駄だ。 @430 そうそう、 アタシもさっきその話聞いてさ。 便乗しようかなーって思ったんだ。 初対面なのに図々しいかな? @412 私はミキさんのこと よく知ってるけどね。 \f[18]ガンシューティングの ランキング常連だし。 @430 へ? @410 あ、ううん。コッチの話。 特に気にしないよね、犬山さん? @400 断る理由ないですからね。 @250 おい、何故俺には聞かない? @413 アルバートくんは反対なの! そんなの酷いよッ!! この冷血漢ッ! @252 別に反対とは言ってないッ!! @430 あははは! \sシシトもそうだけど アンタの友達ってやっぱ変だね! @202 お前もその一人だっつの。 てか、セト。 @400 はい? @202 冬村、テンション高くないか? あいつ、ああいうキャラだっけ? @402 あー・・・たぶんですけど、 岸先輩がいまいち本調子じゃないから だと思いますよ? @400 人の気持ちの浮き沈みに敏感なので どうにか元気づけようとして ああなることがあるんです。 @402 若干空回ってますけど。 @200 そっか。 ・・・うじうじしてるのは らしくねえよな。 !se(Action)跳ね うっしゃ、んじゃ久しぶりに パーッと遊ぶとするかッ! @430 おー、気合はいってるねー。 @200 まあな。 この十日間バタバタしてて 遊ぶ暇もなかったしな。 ここらでストレス発散しとかねえと やってられねえよ。 @412 うんうん。 @250 それで、 遊ぶにしてもどこに行くんだ? @430 そりゃあもう!! 決まってるじゃないッ!! @200 ゲーセンは鉄板だろうな。 @430 うあー、先に言われたー。 @202 セトと冬村には少し酷か? @400 岸先輩の快気祝いですし、 私はどこでも構いませんよ。 @412 私もオッケーだよ。 \sふふ・・・うふふふ。 @430 うわ、どうしたの? えっと・・・サユキ? @412 え、ううん。 なんでもないなんでもない。 @250 俺の意見は聞かないのか? @200 お前は どこか遊べるとこ知ってるのかよ? @250 いや、全く知らん。 日々の生活で精一杯だからな。 @200 なら問題ないだろ。 @250 シシトはどうする? @200 んなもん強制参加に決まってるだろ? @413 シシトくんの 出所祝いでもあるからね! @401 だから出所じゃないですって! @430 このまま直行する? @200 いや、一応荷物あるからな。 オレは一度家に戻るわ。 その間にシシトにも連絡しとくから 先に行っててくれよ。 @430 オッケー。 @250 一人で大丈夫か? @200 大した荷物はないから問題ねえよ。 ありがとな。 !se(Action)学内歩き @402 それじゃあ、先に行ってますね? !se(Action)学内歩き @412 主賓なんだから早く来てねー。 !se(Action)学内歩き @250 では、また後でな。 @200 おう、あとでなー。 !bgm !se(Action)ドア開け !wait10 !se(Action)学内歩き @430 ・・・。 @1 ミキは開け放たれたドアの前で立ち止まり リョウヘイの方を見た。 @200 ん、どうかしたか? @430 ねえ、リョー・・・。 @1 ミキは、今までとは違う真剣な それでいてどこか暗い雰囲気を感じさせ 口どもる。 @200 なんだよ、らしくねえな。 言いたいことあるならハッキリ言えよ? @430 ・・・。 あーー・・・いいや。 また今度で。 じゃあね!早く来るんだよッ! !se(Action)ドア閉め !wait10 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き @1 いつもの調子に戻ると そう言い残しミキはサユキたちを追う。 @202 ・・・なんだ? @1 一人残されたリョウヘイは 何か引っかかるものを感じた。 だが、すぐに気を取り直して荷物をまとめ、 医師や看護師たちに挨拶すると病院を後にした。 !mvnil !wait10 後編に続く.....