#真説・幻影帳異聞 第五章「真相」後編 !v28=1 !mvnil !mv警察署コンピュータ室 !bgmサスペンス @1 ギシリと椅子に体重がかかり軋む音がする。 一人の男が椅子に腰掛け、もう一人はその前で 直立不動の姿勢になっている。 @910 次はどの様に動きましょうか? @620 お前のことだ。 お膳立ては済んでいるのだろう? @910 はい。 儀式の準備はもちろん、 マジカルパレスへの牽制のために この十年で歪みも用意しておきました。 幾つかはゲートとなって 開いてしまったようですが。 計画に支障はないかと。 @620 となるとだ。 やることは一つだけだな。 岸リョウヘイの力の解放。 素材としては一級品だが、 あのままでは吸収しても意味がない。 多少キッカケを与えたほうがいいか。 @910 では、もう一度揺さぶりを? @620 いや、【扉】を開くまでは 連中に干渉はせん。 ミキ以上に岸リョウヘイの心を 動かせる者はいなかろうしな。 直接動かずとも 奴に芽生え始めている暗い憎悪を 利用するという手がある。 @910 と申されますと? @620 奴は我らを死に物狂いで探すだろうな。 己の怒りを吐き尽くすために。 だが、我らは見つからん。 どれだけ気配を感じても、努力してもな。 憎い我らに後一歩で到達できない。 その一歩が幻にすぎないとしても、だ。 @1 ニイッと嬉しそうに笑みを浮かべる。 @620 そして、はけ口を知らぬ 怒りと憎しみは時をかけて熟成され その心は歪んだ黒一色へと染まる。 奴自身が負に落ちれば、\r[誰が邪魔,・・・・]しようと 力は自然と噴き出すだろう。 @910 なるほど、そういうことですか。 @1 その言葉から主の考えを察する。 @620 なによりだ・・・ 達成できぬ目標に向かい 必死に足掻く者を眺めるのは 実に\r[快楽,けらく]よ。 @1 暗い室内により深い闇が現れる。 その暗黒は嘲るように笑った様に見えた。 !bgm !mvnil !wait20 @1 翌朝 !v5=0 !mvシシトの部屋 @1 11月13日 6:23 !bgm安らぎ @134 ・・・。 @131 ふぁぁ・・・。 @130 朝か。 !se(Action)跳ね @1 シシトはベッドから身を起こす。 あの後、帰宅してすぐに疲労のせいか 眠ってしまったのだ。 目の下には少しクマができている。 熟睡というわけにもいかなかったようだ。 @700 よ、起きたか。 @830 具合の方はどうだ? @130 ん、全快とまではいかないけど、 問題はないかな? @1 グリグリと体を動かしてみるが、 特に異常は見られない。 @830 大した回復力だな。 @131 さて、問題は どうやって変身を解くかなんだけど。 @700 ・・・試しにそのままやってみろよ。 @130 でも、魔物に触ってもいないよ? @700 いいから。 @131 ・・・うん。 @1 着替えを取り出してベッドに突っ込むと 自身も布団を被る。 「変身解除!!」 「・・・あれ?」 !se(Action)跳ね !v27=1 @102 解除できたんですけど? @830 ・・・。 @701 本当に魔物判定なのかよ。 @100 ・・・もしかして、ミキのこと? @1 昨晩、変身して殴ったのはミキだけだ。 明言されなくても察しはつく。 @830 お前は気絶していたから 詳しい話を知らないんだったな。 実は・・・ @1 ・・・ @102 そんなことがあったんだ。 @700 写真に写らないから 魔物と同じ扱いになったんだろ。 だから、変身解除できたんだろうよ。 けどよ・・・ @701 それじゃ、 ミキちゃんが可哀想だぜ・・・。 @100 ・・・\s姉さんは? @830 シイナなら リョウヘイと一緒に下にいるぞ。 @100 そっか。 !se(Action)学内歩き @1 返事をするとシシトは立ち上がり、 扉に向かった。 @830 気持ちは分かるが焦るな。 二人ともあれから一睡もしていない。 質問はフェザーが来てからするのだ。 @100 分かってるよ。 @830 (親友と友人の状況。  更に姉と父親のこと) (平静を装ってはいるが、  混乱しているのはシシトも同じか) @700 何ボーっとしてんだよ。 おれらも行こうぜ。 @830 ・・・うむ。 !se(Action)ドア開け !wait20 !mv自宅 !se(Action)ドア閉め !wait10 !se(Action)学内歩き @100 姉さん、おはよう。 @120 あら、随分早いじゃない。 @1 一階に降りると台所にシイナがいた。 コーヒーが入ったコップを二つ持っている。 @120 今日は日曜なんだから もう少し休んでてもいいのよ? @102 昨日はいつまでも寝てるなって 言ってたくせに。 @121 状況によるでしょ。 @200 ・・・よう。 @100 ああ、リョウヘイもおはよう。 @1 リョウヘイはイスに座り 力なくシシトに声をかける。 目の下にはくっきりと隈ができていた。 @100 そう言えば母さんは? @120 ん。 @1 両手がふさがっているせいか シイナは顎でテーブルの上の紙切れを指す。 !se(Action)ページをめくる @102 えーっと・・・? !se(Action)殴打 @111 \f[43]フランスパーンチ!! @121 あんたが寝た後に見つけたのよ。 結局一晩中帰って来なかったわ。 @102 若干いつもと違いますが、 いつも通りってことですね。 @120 うちの母さんはマイペースだからね。 !se(Action)学内歩き @1 そう言うとシイナは居間に向かう。 @120 はい、リョウヘイくん。 @202 あ、ども。 @121 インスタントだから あまり美味しくはないけどね。 @100 姉さん、僕には? @120 セルフでどうぞ。 @102 ケチめ。 @100 ・・・あの後、連絡あった? @121 ミキさんのことかしら? @120 さっきフェザーから電話が来たわ。 一命は取り留めたそうよ。 @100 そっか。よかった。 !bgm @121 ただ・・・ !bgmサスペンス @202 ・・・意識が戻るかは分からねえとさ。 下手すりゃ一生そのままだとよ。 @1 コップを握る手に力が入り、 コーヒーに波紋ができ、消えていく。 @121 ごめんなさい。 私がもう少し早くついていれば、 こんな事にはならなかったかもしれない。 @202 シイナさんが悪いわけじゃないですよ。 @200 悪いのは・・・許せねえのは あのクズどもだ。 @1 ほんの一瞬ズッとリョウヘイの体から ドス黒い影が出たように見えた。 @100 ・・・。 @701 リョウヘイ・・・。 !bgm安らぎ !se(Action)ドア開け @1 「おーっす、邪魔するぜー。」 @102 え? @121 誰かしら? @202 この声は・・・。 !se(Action)ドア閉め !wait20 !se(Action)学内歩き @530 よっ、そこで知り合いと会ったからな。 ついでに俺も来たぜ。 @202 親父・・・! @120 エイジさん。 @570 道のど真ん中で待ち構えていたくせに 偶然を装わないでください。 @530 おいおい、そういうことは 気を利かせて黙っておくもんだぜ。 @570 どうでもいいことには口が軽いもので。 @830 フェザーも一緒か。 @530 久しぶりだなシイナ嬢ちゃん。 すっかり美人になったじゃねえか。 @121 おだてても何もでませんよ。 @530 はは、お世辞じゃねえさ。 クロウも久々じゃねえか。 どうだ、二世の跡目はつげそうか? @830 いや、まだ叔父には追いつけそうもない。 @530 はっ、相変わらずお固いねぇ。 なんにしても、 うちのバカ息子が 世話になったみたいだな。 @701 え、リョウヘイの親父さん? なんでこんな親しげなんだよ? @102 僕に聞かれても困るよ。 @830 そうか。 お前たちは知らなかったのだな。 岸エイジ。 彼は十年前までマジカルパレスの 魔法戦士だったのだ。 かつてのタナトス討伐でも、 太陽の剣を使い前線に立った人物だ。 @704 えええええ!? @102 魔法戦士ってなに? @701 そっち気にするのかよ。 @700 魔道士は特性に応じて、 役職名が変わることもあるんだ。 そのまま魔道士なのもいれば、 近接戦闘が得意な魔法戦士、 銃使いの魔銃士とか、な。 @830 あくまで区別のための名称にすぎん。 広義で言えば魔道士に変わりはない。 @100 案外色々あるもんなんだね。 知らなかったよ。 @833 リスが説明をしなさすぎなのだ。 @701 面目ございません。 @530 今はどこにでもある寿司屋の大将さ。 !bgm にしてもだ・・・ !se(Action)学内歩き ひっでえ面してんなリョウヘイ。 十六年育ててきた中で一番ひでえ顔だ。 @202 ・・・。 @530 喜怒哀楽に該当するんなら どんな面したって構いやしねえ。 それが人間ってもんだ。 だがな、 お前の今の面は人間のものじゃねえ。 \sまるで鬼の顔だぜ。 @202 ・・・。 @530 反論する元気もねえ、か。 !bgmサスペンス 仕方ねえか。 俺も母さんが連中に殺された時は 今のお前と同じようなもんだった。 血は争えねえな。 @202 !? !se(Action)跳ね 親父! それはどういう事だ!? @1 エイジの発言に勢いよく席を立つ。 コップが揺れコーヒーがこぼれそうになる。 @530 慌てなくても全部説明してやる。 だから、黙って座ってろ。 せっかくのコーヒーがこぼれちまうだろ。 @202 これが落ち着いていられるか!? ミキは言い様に利用されて! オレは化け物の体を持ってて!! 挙句、あいつらが母さんを殺した!? こないだから 訳わかんねえことばっかりだ! 一体なんだって言うんだよ!? @1 半ばヤケクソにまくしたてる。 @530 ・・・だからだ。 !se(Action)跳ね 黙って聞け。 @202 ぐ・・・! @1 エイジはリョウヘイの頭を押さえ 力尽くで座らせた。 @530 ギャーギャーがなりたてたら、 説明しづらいだろうが。 @202 けど・・・!! @100 リョウヘイ、気持ちは分かるけど、 エイジさんの言うとおりだよ。 @202 く・・・分かったよ。 @530 へっ、さすがは村上のせがれだな。 あいつに似て落ち着いてやがる。 @121 図に乗るから褒めないでください。 虚勢張ってるだけですから。 @120 もちろん、私もですけどね。 当時から事情を知っていた私でさえ 聞かされていた話を覆された。 リョウヘイくんやシシトが 苛立ちを覚えるのも無理はないですよ。 @830 昨日の今日で 真実を教えろというのも可笑しな話だが、 事態は一気に動き出した。 我々は知らねばならぬ。 十年前に何があったのかをな。 @530 だってよ、フェザー。 俺は洗いざらいぶちまけるつもりだが、 密偵としてはどうすんだ? @570 ええ、私もそのつもりですよ。 でなければココに来たりしません。 これ以上誤魔化したら 本格的に信用を失うでしょうからね。 @705 おうよ!早く教えやがれ! @570 あなたは聞く資格、 特にないんですけどね。 @704 ここまで来て おれだけ仲間はずれかよッ!? @570 半分は冗談ですよ。 関わった以上、説明はします。 @530 んじゃ、【タナトス】の野郎が 何者なのかってとこから始めるか。 @700 十年前に出現した魔王級の魔物だろ? @570 公的にはそうなってますが、 そんな可愛げのあるものじゃありません。 @701 魔王が可愛いって・・・。 @530 野郎が今の姿で出現したのは十年前。 だが、実際の所は世界の始まり。 まだ生命や物質が形をなす前。 全てが泥のような混沌の海だった時代。 なんらかの原因によって 世界が連なり始め、形をなす時に 幾つかの理が生み出された。 その中でも単純であるがゆえに 最も強力だった相対する二つの理。 【正】と【負】の意識。 善意、愛、正義、信頼、生命は正。 \s悪意、憎悪、憤怒、疑念、死は負。 本来どっちが良い悪いでもねえが、 多くの情念が集まり始めた。 正は大小さまざまな神々やその使いに。 負は魔物や妖魔の類へと姿を変えた。 タナトスはその【負】の力の 極大だと伝えられている。 @570 【正】の極大である 私たちの女神さまの対存在。 魔神と言っても差支えはないでしょう。 @102 気が遠くなるような話ですね。 @530 実のところ 野郎の出自は正確なことは分からねえ。 この世界と隣り合う幻想世界の竜神が 倒された時に行き場をなくした 滅びの呪いが実体化しただとか。 終末を招く魔物だとか。 世界を生み出した神以上の何かに 生み出された化け物だとか。 色んな説がありすぎるんだ。 しかも、どれも信ぴょう性が薄い。 たぶん、本人も知らないんじゃねえか? ま、俺たちにはそんなことは どうでもいいことだ。 野郎がそこにいるだけで 全ての生命にとって害悪である。 それだけは間違いない。 @100 魔物の神さまだからですか? @121 違うわ。 あいつはそんなものじゃない。 @120 ほとんどの魔物にとっても タナトスは敵でしかないのよ。 @530 それも追々説明するさ。 野郎との初めての戦いは 確か三百年前だったか? @570 小競り合いはあったそうですが、 大きな戦はその時と聞いています。 当時のマジカルパレスが総力をあげて タナトスを弱体化させ。 女神さまの力を分け与えた神器である 太陽の剣、大地の鎧、大気の盾を纏った 一人の勇者が撃退したと。 @830 \r[魂の旅人,エトランゼ]の伝説だな。 異界から現れ、世界を救い去っていく。 強き意思を持つ魂・・・だったか。 @700 あー、おれも知ってるぜ。 時間も世界の境界も超える勇者だろ? 御伽話じゃなかったのか、あれ。 @570 ええ、実話だそうですよ。 幻想世界で竜神を倒したのも かの人物と聞きますが。 @121 話しそれてるわよ。 @570 おっと、すみません。 それからは姿を見せませんでしたが、 十年前に魔界に現れた竜の魔王の体を 乗っ取り、力を増して復活しました。 そして、再びこの世界に姿を現した。 ゲングとマリオンという側近を連れて。 @570 その復活を察知した女神さまは 当時の魔道士達を対応に当たらせました。 ですが・・・ @530 結果は敗北だった。 @100 どうしてですか? @570 タナトスはもちろん、 二人の側近の力が想定以上に 強かったせいです。 @530 マリオンは人間を自在に操る上に 潜在能力まで引き出す。 しかも、相手は只の人間だ。 まともに戦うわけにもいかねえ。 躊躇したせいで、 隙を突かれて斬殺された魔道士は 数多くいたのさ・・・。 @570 戦ったあなた方なら分かるでしょう? @100 ・・・うん。 @570 ゲングはそれ以上に厄介です。 一般的なドッペルゲンガーは 死体をコピーするだけで無害に近い。 ゲングにはその縛りがない。 相手の能力にもよりますが、 観察さえすればコピーできます。 見た目、雰囲気、記憶、能力、人格 魂の質や色さえも当然ゲングのままで。 その上、コピーした相手の技能は 姿を変えずともいつでも使えます。 例えば、リスをコピーして、 その後シシトくんをコピーすると リスの魔法を使えるシシトくんになれます。 @102 微妙な例えですね。 @701 おれもそう思う。 @570 ようするにコピーした相手の能力は 永久に忘れない上にいつでも その人に化けられるんです。 @102 それはやばすぎますね。 @570 付け加えて言うなら、 ゲングにコピーされた者は 例外なく死ぬか、殺されています。 @120 ドッペルゲンガー。 自分と瓜二つの人間を見たら死ぬ。 @121 奴の本能かどうか知らないけど、 人の物を取るだけ取って命まで奪う。 むなくそ悪い話よ。 @570 さすがに神クラスの能力の持ち主や 特別強力な加護を受けている者には 化けられませんけどね。 この二体は 直接タナトスが生み出した存在で 通常の魔物とは一線を画します。 量のマリオンと質のゲングと 覚えていればいいでしょう。 @530 で、肝心のタナトスだが。 その姿を見ただけで弱者、 いや普通の人間なら自ら死を選ぶ。 そういうヤツだ。 @830 あの時のリスの奇行がそれだ。 気構えなくしてヤツと相対すれば、 ああなってもおかしい事はない。 @100 なるほどね。 @701 おれ・・・なんかしたのか? @102 入水自殺しようとしてた。 @704 マジか!? @530 強い奴でも弱気になればそうなるぜ、 初戦では自殺した奴が半数を上回った。 @704 半数!? @530 野郎には本来名前はねえんだが、 その様から死の衝動を駆り立てる者。 【タナトス】と呼ばれるようになった。 ヤツは【負】の要素の中でも 最も生物が遠ざけたがる【死】の化身。 魔物も嫌うってのはそのせいだ。 他の負の要素は生きてりゃついて回るが、 死だけは例外だからな。 野郎に素直に従うのは 【死】の属性に近い魔物か 怨霊やら死霊くらいだろうぜ。 @121 この世界にいる事自体が 根本的に異質な存在ということね。 @530 ま、ここまでが野郎の性質だ。 能力に関しては説明するのも嫌になる。 無尽蔵に近い魔力。 その魔力による自動防御。 構築術式の違う魔法の掛け合わせ。 異常に強力な身体能力。 自己再生能力などなど、 途方も無い能力を持っている。 その上、負の極大らしく 生物のあらゆる悪意を取り込んで、 力を増すことができるのさ。 結局、最初の討伐で生き残ったのは 俺と村上だけだった。 @100 父さんが・・・。 @530 ああ、そういや知らないんだったな。 お前の親父さんは 【最強の盾】と呼ばれた 歴戦の魔道士だったんだよ。 俺は【最強の剣】なんて言われてたが ハッキリ言って実力は俺より上だった。 @102 あんまり想像つかないですね。 僕の知ってる父さんはのほほんとした 物静かな人だったし。 @121 余計なことで 私達に心配をかけさせたくなかった。 @120 優しい人だったのよ、父さんは。 @100 ・・・うん。 @530 本当にいい奴だった。 \sだからか知らねえが、 俺より先に逝っちまった・・・。 @570 話を続けましょう。 @570 以前の戦いのこともあり女神さまは 現状ではタナトスを倒すのは 不可能だと判断しました。 そこでヤツの力を 【肉体】【魔力】【精神】に分断し、 封印することにしたのです。 @830 そこまでは我も知っているが、 どう封印するつもりだったのだ? @570 三つに分断した力を 神獣に封印させる手筈でした。 @830 なるほど・・・ それでは叔父がいなければ 話にならんな。 @100 えっと、神獣って? @530 女神さまが 最初に生み出した特別な魔法生物。 正確に言えばその血筋だな。 @830 我の叔父クロウ二世。 @570 私、フェザー二世。 @530 そして、スケイルが戦いに駆り出された。 @100 スケイル・・・? @570 彼女は女神さまの補佐役なので 半分神みたいなものです。 唯一代替わりしていない神獣ですね。 @701 あの人ってそんなに偉かったのか? @102 何かあったの? @701 ・・・いや、聞くな。うん。 @833 あいつは色々逸話があるからな。 @530 フェザーが【精神】 クロウが【肉体】 スケイルが【魔力】 分断したタナトスの一部を それぞれ封印するはず・・・だった。 @570 女神様は自らの力で作り上げた かつてタナトスを撃退した三神器を エイジさんと村上さんに与えました。 @530 俺は太陽の剣。 村上には大気の盾と大地の鎧。 @100 すいません。 ちょっといいですか? @530 お、なんだ? @100 その神器を使った・・・えっと、 勇者さんは来てくれなかったんですか? @530 あー・・・呼ぼうとはしたらしいけど、 来れなかったんだよな? @570 私も詳しい事情は知りませんが、 「この世界にはもう魂を固定できない」 と言っていたそうです。 魂だけとはいえ世界移動は繊細かつ特殊、 いえ、異質といってもいいほどの能力です。 私達には分からない理由があるのでしょう。 彼の人も安易に頼ってはいけない存在。 ということでしょうね。 @100 分かりました。 話の腰を折ってすいません。 @530 いや、いいさ。 作戦はこうだった。 まず、マリオンとその軍勢を 他の魔道士達で足止めする。 その間に、俺と村上、 クロウ、スケイル、フェザー、 雷壁の魔女と呼ばれた魔道士。 そして・・・ 俺の嫁がタナトスと直接戦闘を行う。 @202 ・・・母さんが? @530 母さんは歴代最強ともいえる 結界魔法の使い手だった。 @570 ・・・幻視結界という 特殊な魔法を生み出し。 魔法を特別な処理を施した 宝石などに込めてアイテムとして 使えるようにした才女でした。 タナトスを封印するための玉も 元を正せば彼女が作ったものです。 @100 幻視結界って・・・。 @701 なんかきな臭くなってきたぞ・・・。 @530 当時の最強メンバー。 少数精鋭で当たったわけだ。 クロウを宿した村上が守りに徹し フェザーを宿した俺が戦う。 のこりの二人は魔法で援護。 @570 私の本来の力は クロウと同じトーテム化です。 スピードの方が上がりますけどね。 @530 その間に女神さまとシンクロした スケイルが魔力を最大に練って 神器【母なる海の杖】で分断する。 女神さまが直接やれればいいんだが、 タナトスとは対になる極大だからな。 力の反発で周囲を崩壊させちまう。 二人が全力で直接戦闘をしたら、 この世界そのものが滅びかねん。 @570 しかも、双方ほぼ不滅の存在。 戦いは永遠に続きます。 @530 だから、スケイルを介して 力の一部を貸し与えたわけだ。 村上たちの援護のお陰で、 俺が奴に深手を負わせはしたんだが 太陽の剣も破壊されちまった。 @570 クロウ二世は村上さんを庇って戦死。 村上さんは大気の盾と大地の鎧のお陰で、 死は免れましたが再起不能に。 空気を媒介にする 大気の盾は破損で済みましたが 大地の鎧も大破してしまいました。 @530 ・・・フェザーも俺を助けて 瀕死の重症を負って、 今は人形の体を使っている。 @570 あの子をこれ以上 悲しませたくなかっただけですよ。 それでもスケイルさんが 全力を尽くしたお陰で 分断には成功しました。 @530 だが、魔力を封じた青の輝玉、 精神を封じた赤の輝玉は ゲングとマリオンに奪われちまった。 @570 唯一残った肉体を封じた白の輝玉は 封印の役目を果たすはずだった クロウさんが死亡してしまいました。 @120 一つ聞いてもいい? @570 なんですか? @120 なんでそこまでの事態になったの? フェザー、クロウの二人は なにがなんでも生き延びなければ いけなかったはずよ。 @530 そうだな。 優先すべきことを考えたら 普通はそうなる。 @120 当時の最高メンバーが 正常な判断を下せなくなる程の 大きな原因があるはず。 @570 ・・・問題はそこなんですよ。 @530 もっと早く気が付くべきだったんだ。 @570 ゲングが見当たらなかったんです。 @120 ゲングが? @530 ああ、あまりにもあっさりと タナトスの所にたどり着けた。 @530 俺たちはそれを幸運だと勘違いしちまった。 @570 マリオンと共に行動しているのだと 安易に考えてしまったのです。 @530 まったくの逆だった。 連中、俺らの作戦を知ってたんだよ。 リョウヘイ。 ここからがお前が一番知りたいことだ。 お前を十年苦しませてきた原因。 よく聞け。 @200 ・・・。 @530 ゲングはな・・・\s \r[母さん,・・・]に化けて お前を戦場に連れてきたんだ。 @202 なんだよ・・・それ? @530 連中、俺らの作戦を知ってたんだよ。 @570 ゲングの能力を甘く見ていました。 ゲングはこちらの魔道士・・・ エイジさんの奥さんの部下に化けて 作戦を知ったのです。 @530 余程長期間潜入してやがったのか、 超一流の結界魔道士のあいつにも 化けれる様になってやがった。 @121 岸のおばさんに・・・ \sつくづく腹が立つわね。 @120 でも、それなら作戦を 起す前につぶせばいいじゃない? @570 シイナさん。 その答えは貴女自身が昨夜言ってます。 @120 は? @570 タナトスが去った後 貴女は何と言いました? @120 ・・・えっと。 @830 完全に遊ばれている。 お前はそう言っていた。 @121 なるほど。 私達が足掻くほど楽しい。 そういう事。 @120 \r[巫山戯,ふざけ]てくれるわ。 @530 まったくだ。 悪趣味にもほどがあるぜ。 野郎はわざと俺らに勝機を見せて その後に絶望を叩きつけたんだ。 絶望、怒り、憎悪。 負の感情を自らの餌にするためにな。 @570 あれは、本当にいいタイミングでした。 私達にとっては最悪の。 @530 俺が太陽の剣で深手を負わせた直後。 勝てると思った瞬間に・・・ \sそこに\r[居るはずのない,・・・・・・・] リョウヘイを連れてきやがった。 @202 ・・・。 @530 そして、戦場が本当に混乱したのは・・・ あいつの顔のままでゲングが 六歳のリョウヘイに魔法を撃ってからだ。 @202 ・・・嘘だろ? それじゃまるであの夢そのままだ。 @530 内容までは知らないが、 昔から悪夢にうなされてたのは知ってる。 恐らくはほとんど事実だろう。 お前からしてみたら 実の母親に殺されそうになったんだ。 ハッキリと覚えてないのも無理はねえ。 @202 ・・・。 @530 お前が撃たれた直後。 あいつは持ち場を離れて なりふり構わずお前を助けに走った。 母さんはな。 世界の運命よりもお前を取ったんだ。 @202 母さんが・・・ @570 ・・・彼女が リョウヘイくんを抱き寄せた瞬間。 ゲングは彼女を撃ちました。 元々体の強い方ではなかった彼女に 接近戦で戦える力はなく・・・\s 致命傷を受けていました。 守りの要を失い拮抗していた戦場は 一気に崩れました。 @530 かろうじて戦いは終わり、 分断も成功し白の輝玉は守れたが、 被害は甚大だった。 @570 そして、【肉体】の封印について 議論が始まりました。 肉体さえ封印できれば、 魔力や精神は宿るものがなく、 本来の力を発揮できません。 ですが、三神獣の中で 無事だったスケイルさんは 肉体の封印にはむいていない。 私は瀕死。 クロウの次代は決まっていない。 @530 こうなった以上。 方法は一つしかなかった。 @121 ・・・封印の禁呪。 @570 知ってましたか。 @120 随分前だけど、 マジカルパレスの図書館で読んだのよ。 @121 気に入らない内容だったけど、 だからか頭に残ったのよね。 @120 憎しみも怒りもまだ知らない 無垢な子供に魔物を封印する禁呪。 限りなく正に近い器であるが故に、 負の存在には極めて堅牢な封印となる。 @121 その力は限定的ではあるが、 神の封印にも匹敵する。 @120 しかし、幼い子供を使う 非人道的な術のため外法とされた。 @570 その通りです。 @121 こんな手を使うほどに、 なりふり構ってられなかったのね。 @530 放って置けば肉体は 白の輝玉からあふれ出る。 そうなる前に・・・ \s俺たちは瀕死のリョウヘイに 【肉体】を封印した。 @202 なッ!? @103 なんてことを・・・ッ! @704 うえ!! @530 正確に言えば同化だ。 ゲングの攻撃で欠損した リョウヘイの体をタナトスの体で 補って生命を繋いだんだ。 @570 奴らがリョウヘイくんを 【器】と呼ぶのはそのせいですよ。 いずれタナトスが入るべき【器】とね。 @121 ・・・。 @830 仕方がないとはいえ、 納得しかねるな・・・。 @530 勘違いしないで欲しいんだが、 外法の使用を進言したのは俺だ。 女神さまは俺の願いを聞いただけだ。 あの人は何も悪くねえよ。 タナトスの封印もそうだが、 リョウヘイの命を救う方法は もう他になかったんだ。 皮肉なもんだぜ。 俺達を苦しめた野郎の再生能力が、 お前の命を救ったんだ。 @202 ・・・。 @530 ま、禁呪を使う条件として 俺はいままでの役職や権限を 剥奪されちまったがな。 @570 まさか、禁じている 女神さま本人が外法を使ったなんて 言える訳がないですからね。 いくら機密にしているとはいえ 後の事を考えればお咎めなしでは 示しもつきませんから。 @120 急に辞めたって聞いたけど、 そんな理由があったんですね。 @530 いわゆるスケープゴートだな。 @701 大人って汚い・・・。 @102 寿命五年の四歳が何を言う。 @704 やかましい!! @530 どうでもいいさ。 あいつの最後の願いだけは 絶対に叶えてやりたかったからな。 嫁に死なれて、 息子にまで先立たれたら さすがの俺も生きてられねえよ。 権限も、功績も、 全部喜んで捨ててやる。 @202 親父・・・。 @530 これが十年前の事件の真相だ。 @100 ・・・納得しましたよ。 マリオンと戦った時、 なにかおかしいと思ったんだ。 あいつはリョウヘイに固執していた。 だから、隙をつくことができた。 本当なら僕なんか 簡単に殺せたはずなのに。 苦しめるだけだった。 学校の皆や、冬村さん、セト。 そして、ミキのことも。 あいつらの行動は全部・・・ @570 なかなか察しがいいですね。 シシトくんの言う通り、 連中の目的はリョウヘイくんに 憎悪を芽生えさせることにあった。 学校では友人を操り襲わせ、 長い付き合いの友人に裏切らせる。 さらにその友人・・・ミキさんが 情に流されるのを知っていて、 リョウヘイくんと戦わせ・・・ その命を奪おうとした。 @530 それだけされて怒らねえ奴はいねえよ。 俺だって話聞いただけでも頭に来てんだ。 連中のやり口は昔から変わらねえ。 平気で人をおもちゃみたいに扱いやがる。 @570 ・・・そうですね。 @121 人間はずっと無垢ではいられない。 あの外法は子供の成長と共に、 封印が弱まる。 @570 【肉体】が完全に同化しているために、 引き剥がすのは不可能です。 だから、リョウヘイくんを憎悪に染め 力を解放させてタナトスと同質とし、 乗っ取るつもりなんですよ。 私の役目は 影ながらリョウヘイくんを護衛し、 それを阻止することでした。 シイナさんたちに 情報を伏せて指示を出したのは 私の存在を気取られないためです。 @121 一番重要なのはリョウヘイくんが タナトスに乗っ取られないこと、ね。 @830 一応合点はいく・・・か。 @200 ・・・。 !bgm安らぎ @102 父さんのことも含めて 何があったのかは分かりましたけど、 正直途方もない話ですね。 @530 お前も災難だよなぁ。 最近見習いになったばかりだろ? @100 騒動に巻き込まれるのは 慣れっこですけどね。 @530 はっ、肝も据わってるじゃねえか。 リョウヘイに見習わせてえぜ。 @121 そうかしらねぇ・・・? @102 半分はこの姉のせいです。 @120 失礼な。三分の一くらいよ。 @102 自覚はあるんですか。 @701 けどよう・・・ どうすりゃいいんだよ? あんな化け物どうしようもねえぞ? @570 いえ、そうでもありません。 ヤツは力を行使するために 最も重要な肉体が欠けています。 不完全な今なら倒すことも 不可能ではないはずです。 女神さまはその為に 十年かけて【剣】を錬成しています。 @704 マジで!! @830 時折姿が見えなかったのはそのせいか。 @833 我はてっきりサボってるのかと。 @121 ああ、たぶんそれもあるわよ。 ウィンドウショッピングしてるの見たし。 !v38=1 @734 「私は正の極大にして  生命の営みを見守る女神です!!」 @737 「だから、まずは私が  人生を謳歌しないといけません!」 @121 実にいい笑顔してたわ。 \s公の場だと顔あんまり見せないのに。 @831 なにやってるのあの人!? @102 一体どんな女神なんですか。 @530 ははは、俺なんか そういう人間臭いとこが気に入って あの人に付いたんだけどな。 それで【剣】は完成しそうなのか? @570 連中が動くのが十二月二十四日。 どうにか間に合うはずです。 @530 となると問題は・・・ @202 ・・・なんだよ? @530 いや、なんでもねえ。 まぁ、今はあってなきに等しい。 そんな雲を掴むような可能性だ。 希望を失うことはねえが、 変にすがったりはするな。 @701 ってもなぁ・・・ !bgm @705 そうだ! !bgmバトル01 魔導十三剣だ! @102 十三剣? @709 マジカルパレス最強の魔道士 十三人に与えられる称号だ! この人達に来てもらえばいいんだ! おれやシシトみたいな見習いより 勝率あがんだろ!? @705 うっひょーい! おれって賢い!! !bgmちょっとマズい @121 ・・・。 @833 ・・・。 @570 ・・・はぁ。 @102 リスくん、呆れられてるよ? @704 なんでだよ!? おれ間違ってねえだろ! @530 なんだ十三剣全員揃ってんのか? \s昔は俺含めて九人しかいなかったろ? @701 へ? @570 だから貴方は成績最下位なんですよ。 今の十三剣は五名しかいません。 残りは空席です。 第一、十三剣が揃っていたのは マジカルパレス創立時だけです。 これは講習で習うはずですよ。 @704 なんだってー!? @570 ついでに、十三剣の内訳は 三神獣と実働部隊十人ですよ。 @701 え、つまりお前がその一人? @570 そうです。 本体の修復中で、 人形の器に入っている 本当の力を使えない私です。 @701 えっと・・・残りは? @121 私。 @100 姉さん、偉いんだ? @121 ぜんっぜん。 特に意味のない称号よ。 @120 社食の割引すらないし。 @833 だから、生々しい話をするな。 @701 えーー・・・ ということは・・・? @830 さっきも言ったが、 我はまだ叔父の後を継いでいない。 残りはスケイルとあと二人だ。 @530 俺の頃もそうだったけどよ。 一人はあの\r[魂の旅人,エトランゼ]だろ? 空席も同然じゃねえか。 あとはブリューナクの爺さんか? @570 いえ、さすがに歳には勝てないと仰って、 七年前に引退していますよ。 @530 けっ、もう二百越えてるくせに、 歳もクソもねえだろうがよ。 @570 日常生活をする分にはまだお元気ですが、 戦闘方法が格闘主体ですからね。 以前のような力は もう出せないということで 今は養子の方が引き継いでいます。 @705 じゃあ、その最後の一人に希望をかける! @121 無理。 @720 一瞬で切り捨てられた。 @570 彼女は司令クラスですからね。 他の魔道士への指揮もありますから、 迂闊に動けないんですよ。 @121 例のゲート多発の件もあるし、 救援に来る可能性は低いわね。 @570 十年前の事件のせいで、 人員不足ですからね。 十三剣以外でも有能な人はいますが、 指揮系統の問題もありますから、 経験豊富な人物ほど動かしづらい。 @120 今頃、慣れない指揮で ヒーヒー言ってるんじゃないかしら? @121 性格も能力も 前線向きなのに上に行くから こういうことになるのよ。 @570 来てくれれば頼もしい人なんですがね。 @121 否定はしないけど、あいつにだけは 借りを作りたくないのよね。 @570 やれやれ・・・。 ということですよ。 スケイルさんは来てくれるはずですが、 他の魔道士の援護は期待薄ですね。 !bgm @701 わっかりました・・・。 !bgmサスペンス @202 ・・・親父。 @530 なんだ? @202 連中・・・何が目的なんだ? オレを取り込むとか そんなのは途中経過なんだろ。 連中の最後の目的は一体何だ。 こんだけ好き放題やって・・・! あいつらは何をしようとしてやがる! @530 ああ、そういや教えてなかったな。 @120 タナトスが去る前に言った通りよ。 全ての命を根絶して、世界を終わらせる。 @102 なんとまぁ、分かりやすいね。 @121 本質が死のあいつに 他に目的なんかないわ。 @830 だが、我らも具体的な方法は知らん。 一体どうやって滅ぼす気なのだ? @570 ヤツほどの力があれば、 強引に滅ぼすこともできるでしょうが、 方法は昔から変わってませんよ。 死界・・・あの世への 【扉】を開くつもりなんです。 @700 それってやべえのか? @530 ちょっとした扉くらいなら、 自然にも存在はしてるんだ。 この国なら確か・・・ 出雲にあったはずだな。 だが、野郎が開こうとしているのは 偶然できる規模のものじゃねえ。 扉が開ききると同時に、 この世とあの世がごっちゃになって、 死と生の境界がなくなるんだ。 仮にだが、目の前に 事故で死んだ肉親が現れたら、 お前らはどう思う? @100 驚くか、喜ぶか・・・かな。 @121 状況にもよるけど、 怯える事も考えられるわ。 @530 大体そんなとこだろうな。 だが、実際やりとりしてみれば、 かつての肉親と何ら変わらない。 生者はいずれ受け入れる。 死者も嬉々として 親しい人間のもとに行くだろうよ。 @530 だが、実際は死人に変わりはない。 死人は知らぬ間に生気を奪う。 \sそして、まもなく死に至る。 @570 ですが、世界に境界はなく、 生も死も関係ないことになる。 考えてもみてください。 生きてる人が死ぬ事はあっても 死んでる人が生き返ることはない。 @530 ねずみ算式に死者が増え、 生まれ来る者はゼロになり やがて世界は死者であふれる。 例え生きてると・・・ いや、肉体のくびきがなくなり、 それ以上に楽だとしてもだ。 そんな世界は滅んだも同然だ。 美味い酒も飲めねえ、飯も食えねえ。 惰眠を貪ることもできねえ。 俺は御免被るね。 !se(Action)飲む @121 ・・・\s苦い。 @120 まずいコーヒーだけど。 こんな味も分からなくなるものね。 @530 そういうこったな。 @570 今のは想定された一つの例です。 最悪なのは扉が完全に開いた瞬間に、 瘴気の放出で、世界が一気に滅ぶこと。 死界の扉をタナトスの強大な力で開いたら、 どう転んでも世界滅亡級の被害が出ます。 @530 世界そのものの死。 それが奴ら・・・タナトスの目的だ。 それを世界的にお祭りムードの 聖夜にやろうってんだから 性格悪すぎるよな。 @570 ま、クリスマスイブは 幸せな人ばかりでもないですから。 !bgmサブコミカル @705 もてない男どもの嫉妬パワーか!! @121 ・・・そういう物なの? @570 まぁ、一部はありそうですけど・・・。 @102 リスくん。 なんで余計なこと言うのさ。 @701 いや、あまりにも雰囲気が真面目だから。 !bgm @200 ・・・そうか。 奴らの目的はそんなことか。 !bgmサスペンス 結局は何も変わらねえな。 十二月二十四日までに、 連中を倒せばいいんだろ・・・? @530 お前・・・ちゃんと話聞いてたのか? @200 聞いてたさ・・・ミキだけじゃねえ。 母さんも奴らが殺したんだろ? 世界だのどうだのは知らねえ。 そんなのはどうでもいいんだ。 二人の仇は絶対に討つ。 親父の分もオレがあいつらをぶちのめす。 \s\c[2]必ず殺してやる。 @530 バカ野郎! 誰がそんな事して欲しいって言った!? @200 ・・・もういいだろ? シイナさん。 コーヒーごちそうさまでした。 @120 え・・・? !se(Action)学内歩き @1 全く手を付けていないコップを置き リョウヘイは居間を出ようとする。 @704 ちょ・・・! 待てよ、リョウヘイ!? @833 どこにいくつもりだ!? @200 心配ねえよ。 ここでジッとしてても 気が滅入るから散歩するだけだ。 ・・・フェザーだっけ? @570 ええ、何か用ですか? @200 後でミキの見舞いがしたいんだ。 どこの病院に連れて行ったんだ? @570 貴方が検査入院していた病院ですが、 今は面会謝絶になっています。 後日改めた方がいいですよ。 @202 そっか・・・分かった。 @200 そんじゃな、シシト。 また学校で会おうぜ。 !se(Action)学内歩き !wait20 !se(Action)ドア開け !wait30 !se(Action)ドア閉め @103 リョウヘイッ! @530 ちっ、ほっとけ。 どうせ今は何もできやしねえんだ。 タナトスの野郎も 自分で時間を与えた以上、 直接手を出してはこねえよ。 @570 そういう所だけは律儀ですからね。 遊びに本気ってことでしょうか。 @121 ・・・ふぅ。 なんだか気持ちだけ先走ってた 昔の自分を見てるみたい。 @120 心配だわ。 @100 ・・・。 @530 ったく、あの馬鹿息子が。 @570 エイジさん。 @530 分かってるよ。 \r[もう一つの条件,・・・・・・・]は守るさ。 @570 いえ、そうではなくて、 私は今後も彼の護衛を継続しますが 構いませんか? @530 ああ、そっちか。 今のあいつが鬱陶しくないなら、 コッチからお願いするぜ。 @570 私情は関係ありませんよ。 彼の護衛が私の任務ですから。 では、失礼します。 !se(Action)シュイーン @701 って、転移で追いかけんなよ。 @830 短距離転移はフェザーの十八番だからな。 おそらくアクアフロートの至るところに 目印を作って飛べるようにしているだろう。 スケイルも目視範囲なら可能だが、 フェザーほど細かく座標は決められまい。 @530 他人の家に無断侵入もお手のもんだろうよ。 @121 いよいよ信用できなくなるわね。 @833 いくらなんでも難癖じゃないか? @530 ま、フェザーが付いてりゃ そうそう問題も起きねえだろうよ。 !bgm安らぎ んじゃ、俺も帰るぜ。 !se(Action)学内歩き @120 わざわざありがとうございました。 @530 いいさ。 黙ってたこっちが悪いんだ。 ああ、そうだ。 シシト。 @100 はい? @530 時間はある。 焦らずに自分を磨いておけ。 リョウヘイと違って お前にはちょうどいい先輩がいるからな。 @102 ・・・姉さんのことです? @121 不服そうね。 @530 ははは、導いてくれる人がいる分いいさ。 ・・・リョウヘイは 全部自分で乗り越えなきゃいけねえ。 タナトスの力は俺達には未知の領域だ。 誰も助けちゃやれねえんだよ。 @100 ・・・分かりました。 僕も強くなります。 リョウヘイを戦わせなくてもいいくらい。 @530 へっ、そうだな。 頼んだぜ、現役の正義の味方さんよ。 じゃ、またな。 !se(Action)学内歩き !wait20 !se(Action)ドア開け !wait30 !se(Action)ドア閉め @102 みんな行っちゃったね。 @120 そうね。 \sま、二人の話で大体納得はできたわ。 @100 姉さん、僕は・・・ @121 言いたいことは分かるわ。 訓練して欲しいってことでしょ? @120 でも、まだだめよ。 数日は体を休めなさい。 @100 いや、大丈夫だよ。 @830 我もシイナに賛成だ。 お前の回復力には感心するが、 本当なら入院しなければいけないほど ダメージを負っていたのも事実だ。 日常生活ならいざ知らず 訓練をするにはまだ早いだろう。 @100 ・・・。 @121 エイジさんも 焦るなって言ってたでしょ? @120 その代わり、回復したら 思いっきりしごいてあげるから 覚悟していなさい。 @100 ・・・分かったよ。 @120 よろしい。 @701 てか、シシトの場合は まずMP0をどうにかしねえとな。 @830 うーむ、その話なのだが どうも腑に落ちんのだ。 お前に聞いた話では、その・・・ 男物パンツをアクアフロート中から 消し去ったのだろう? おそらく強制転移だろうが、 内容はともかくそんなことができるなら 魔力がないとは思えんのだが。 @121 なに? あの事件ってあんたの仕業だったの? @102 思いつきで言ったらなっちゃいました。 悪気は全くありません。 @120 ふーん、まあいいわ。 @830 それにだ。 タナトスが妙なことを言っていたな。 @120 魔力の源泉が二つあるだっけ? @830 ヤツの言うことなど信じたくはないが、 あの場面で嘘をつく理由もあるまい。 @700 けど、それおかしいだろ? 魔力は生命エネルギーの一種だぜ。 二つも大元があるってことは 魂が二つあるようなもんじゃねえか。 @100 やっぱり サエちゃんの分じゃないかな? 僕の心臓は彼女から貰ったものだ。 その命が宿ってるのかもしれない。 @120 ちょっとロマンチックすぎるけど、 他に思い当たる理由はないか。 @830 好意的に考えればシシトは 二人分の魔力を秘めていることになる。 これは大きなアドバンテージになるぞ。 @121 問題は魔力をどう引き出すか、ね。 @120 私は昔から普通に使えたから、 そっち方面あまり詳しくないのよね。 @121 しょうがない。 どうせ後で来るなら、 早い内に呼び出しておいてもいいかな。 @102 呼び出す? @833 ・・・おい、まさか。 @120 今後の方針も決まったことだし、 あんたは適当になんか食べてから おとなしく休んでなさい。 @102 何か食べるものあるんですか? @121 知らないわよ。 冷蔵庫でもあさってきたら? @102 はいはい・・・。 @705 おれもハラ減ったから行くぜ! !se(Action)学内歩き !bgm @120 ・・・。 @121 ねえ、クロウ。 @830 どうかしたか? @120 きっちり話はしてもらったけど、 まだ引っかかる所があるのよ。 @830 奇遇だな。我もそうだ。 今回の件で一番重要なのは リョウヘイの体をタナトスに 奪われないことだ。 彼を守ることだけが目的ならば あんな周りくどい指示を出す意味は薄い。 @121 シシトのサポートをすれば、 リョウヘイくんが出てくる。 私たちは一般人の彼を守ろうとする。 結果的には同じことではあるわ。 @830 だが、それでも 彼の重要性を伏せる理由はない。 @120 私だって人間よ。 私情に流されないとは言い切れない。 @121 これじゃまるで・・・ !mvnil @1 「リョウヘイくんをわざと苦難に晒してるみたい。」 !wait20 !mv海岸公園 !se(Action)学内歩き !bgs(環境)波の音 @200 ・・・。 @1 シシトの家を出た後。 リョウヘイは海岸公園に来ていた。 気分転換の散歩のつもりだったが、 簡単には気持ちを切り替えられるない。 意識したわけではないのだが、 自然と足がココへと向いていた。 @202 夜はよくわかんなかったけど、 こりゃひでえな。 @1 少し遠目から公園の様子を見る。 視線の先にあるのは昨夜の戦いの跡地。 破壊された場所には 進入禁止のテープが貼られ、 何人かの警察らしき人物がいた。 周囲には主婦を中心とした野次馬が集まり、 報道陣も見られる。 更に奥に目をやると、血が見えた。 位置的にミキのものだろう。 @202 ・・・。 @1 拳をグッと握り締める。 守るつもりが何も出来なかった自分が 不甲斐ないのだろう。 @200 ・・・\s\c[2]殺してやる。 @1 小さな声だが、ハッキリと憎悪を込めて呟く。 !bgmけだるい午後 @601 あらら? 聞き捨てならない言葉が聞こえたわね? @202 あ・・・刑事さん。 @1 いつのまにやら背後に狐狩ヨウコがいた。 腕にコンビニのビニール袋をさげている。 @600 狐狩ヨウコよ。 確か、シシトくんの友達の・・・ @601 リョウヘイくんだっけ? @200 ええ、そうです。 @600 そ、よろしくね。 @602 それはそうと、 誰に対してだか分からないけど 「殺す」なんて安易に口にしちゃダメよ? 言葉の心への影響力って 意外とバカにできないんだからね。 @202 はぁ・・・。 @600 仮に上司が横暴にも 「パン買ってこい」と命令してきても そこはグッと堪えて。 @602 豚の餌でも食ってろ、老害がッ! @601 くらいに抑えておかないと。 @202 いや、五十歩百歩じゃないすか? @600 実際に口には出してないから、 大丈夫よ。 @202 今、言ってましたよ。 @601 おっと、内緒にしておいてね。 @600 というわけで、私は老害・・・ @602 警部の所に戻るけど、 あまりココには近づかない方がいいわよ。 @600 見ての通り 新種のアスレチックか!ってくらい 穴ぼこだらけで危ないからね。 @200 ・・・これ、なんかあったんですか? @602 あんまり詳しい事は教えられないわ。 @600 と言いたいところだけど。 @601 正直、こっちが聞きたいくらいよ。 @600 ただでさえ相良一派の件で 署内もゴタゴタしてるのにたまらないわ。 @202 はぁ、大変ですね。 @601 おっと、愚痴みたいになっちゃったわね。 ごめんなさい。 @600 じゃ、私はこれで。 @602 さっきも言ったけど、 あまり乱暴な言葉を繰り返しちゃダメよ? 暗い言葉は気持ちまで ネガティブにしちゃうから。 @202 ・・・分かりました。 @600 それじゃあね。 !bgm !se(Action)学内歩き @1 軽く会釈すると 狐狩はテープの内側に入っていった。 !bgs(環境)波の音 @200 ・・・。 言葉は心に影響する、ね。 @1 ジッと自分の拳を見る。 あれだけ満ちていた力を今は全く感じない。 @200 ・・・負の力。 憎しみを持たせようとした、か。 @1 エイジたちに聞いた話を思い返す。 その時だ。 !bgs !se(Action)ジュゴー @202 ・・・!? !bgm緊迫状況 @1 僅かではあるがひどく嫌な何かを感じた。 無闇に不安を煽るような、そんな気配。 音もなく忍び寄る【死】の気配だ。 @200 あの野郎のッ! @1 それはタナトスのものによく似ていた。 @202 どこだ!! どこにいやがる・・・!! @1 思わず大声で叫ぶ。 幸い周りに人はいないが、 はたから見れば不審でしかないだろう。 @202 ・・・コッチか!? !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き !wait5 !se(Action)学内歩き @1 リョウヘイは 気配を感じる方角に向かい走りだした。 !mvnil \c[2]「・・・お前は父親の話を忘れたのか?」 ・・・。 \c[2]「ヤツの目的は我らを取り込むことだ。  今、先走れば・・・」 黙れッ!! テメエだってタナトスの一部だろうがッ! あの時、力を貸さなかったのも野郎に 安全にオレの体をくれてやるためだろうッ?! もうテメエの言うことは何も信じねえッ! \s\c[2]力だけ奪い取ってやるッ!! \c[2]「・・・。」 二度と出てくるんじゃねえッ!! !wait30 !se(Action)重いドア開け !mv倉庫内部 @202 ハァ・・・ハァッ!! @1 辿り着いた場所はあの日、 相良リュウゾウたちに拉致された倉庫。 @202 どこにいやがるッ!! 出てきやがれッ!! @1 だが、むなしく倉庫内に声が響くだけ。 【死】の気配は感じるが、 何者の息遣いもない。 @202 どうなってやがる・・・? !se(Action)学内歩き @1 気配を感じる場所まで歩を進める。 するとそこには一つの玉があった。 @202 こいつは・・・? @1 手にとってみるとハッキリ分かる。 【死】の気配はこれから発せられていた。 !bgm @200 ・・・。 @202 ハハハハ・・・ 舐めたことしてくれるじゃねえか? @1 自嘲するように独りごちる。 \sタナトスに踊らされたと気づいたからだ。 @202 これもあれか・・・? 母さんの技術で作ったってか・・・? @1 フェザーの言っていた話を思い出す。 宝石に魔法を込めてアイテムとして 使えるようにした、と。 おそらくゲングがタナトスの気配を 玉に閉じ込めて倉庫に置いたのだろう。 本来は弱き人々のために リョウヘイの母が編み出した技術を、 こんな風に使うなど、皮肉が篭っている。 これは明らかに リョウヘイ個人に対する挑発行為だった。 !bgmなんだこれは @202 くくくく・・・ \s\c[2]アーハッハッハッハッハ!! @1 ギリギリと玉を握りしめながら 狂ったように笑い出す。 玉にはヒビ一つはいらない。 鉱物を人間の握力で砕けるわけがない。 @202 ああ、刑事さんすんません・・・。 \s折角の助言だけど我慢できねえや。 オレは・・・\sオレは・・・!! あいつらを必ずブチ殺すッ!! \s殺してやる殺してやる殺してやるッ!! \s\c[2]絶対に殺してやる・・・!! !se(Shooting)撃破A @1 最後の叫びと共にリョウヘイの右腕から 赤い・・・いや、黒いオーラが溢れ始め、 握りしめた玉を一瞬で粉々に砕いた。 !bgm !mvnil 砕け散った玉の破片は突然発火し、 跡形もなく消え去ってしまった。 !wait20 !bgs(環境)波の音 !mv倉庫街 @570 ・・・。 @1 リョウヘイがいる倉庫の外壁に背を預け。 僅かに開いたドアから漏れる声で フェザーは状況を察する。 @570 ・・・五分五分から 分の悪い賭になってきましたか。 しっかりしてくださいよ、 リョウヘイくん。 君のご両親と女神さま。 \sそして、私が君に賭けた物は、 この世界の未来。 それはつまり・・・ !bgs !mvnil @1 「君たち自身の明日なのだから。」 !wait40 真説・\r[幻影帳,シルエットノート]異聞 第五章「真相」了 次回 真説・\r[幻影帳,シルエットノート]異聞 第六章「憤怒」