#真説・幻影帳異聞 第六章「憤怒」 前編 !bgm神秘 遥かな遠い昔。 それも気の遠くなるような太古。 人々の祈り、善意、優しさ。 数多の正の意思が集まり私は誕生した。 その中でも一際強かった情念が 生きようとする意思でした。 いかなる生命にも存在する その意志は時に正しく、時に間違っていた。 それは特に人間という生き物に顕著でした。 欲深く、酷く曲がった生き方をする者も 数多く見て来ました。 正直に言いましょう。 見限りたくなったこともあります。 それでも私が今こうして人々を守り、 生命の営みを見守っていられるのは、 また人間のおかげでもあります。 愚行を犯すかたわら溢れんばかりの輝きを持つ そんな人間も私は数多く知っています。 なんてことはありません。 どこにでもあるごく普通の生き方。 愛する者を守り、子を産み、育んでいく姿。 不変なる神々にはない輝きを 私は永久に守りぬこうと決めました。 故に・・・でしょうか。 この世界は私の対たるモノを生み出した。 いえ、遥か昔からその存在は感じていました。 私が強く生命を見守っていきたいと願った時。 彼の者はハッキリと形をなし始めた。 正が強くなれば、負もまた強くなる。 中庸たる世界はいつも、そうしてバランスを取る。 たとえ、多くの生命が消えようとも。 けれど、私は信じている。 人は決して負に屈する者だけではないと。 私は知っている。 連綿と繋がり続ける生命の絆があること。 それはもちろん、あの子たちにも・・・。 !bgm !bgs(環境)雨 !wait60 !v5=1 !mv中央公園 @1 \f[42]\c[2]おおおおおおぉぉぉぉ!! !se(Action)ジュゴー ざーざーとどしゃぶりの雨が降る夜。 中央公園に轟く獣のような咆哮。 !se(Action)爆発音 そのすぐ後、奥の林で一瞬何かが光ると、 僅か後に爆発音が鳴り響いた。 しばしの静寂。 !se(Action)学内歩き 程なく林の中から少年が姿を見せた。 !v28=1 @200 ・・・。 @1 岸リョウヘイ。 ついこの間まではただの高校生だった。 今、彼は世界の命運に 大きく関わる存在となっていた。 もっとも本人には大して興味のないことだろう。 @202 ・・・また外れか。 @200 ちっ、まあいい。 どれだけ逃げても必ず見つけてやる。 \r[嘲笑,わらっ]てられんのも今だけだ。 舐めた真似したことを後悔させてやる。 @1 自分の右手を見る。 \s雨に洗い流されていたが僅かに血がついていた。 先程までリョウヘイは、 魔物たちと一人で戦っていた。 これはその返り血だ。 @200 なんにも出来なかったあの時とは違う。 \s\c[2]また力を引き出せるようになってきた。 @1 あれからリョウヘイはタナトスの気配を追って、 連日走り回っていた。 最初こそ無害だったゲングが仕掛けた玉は 徐々に罠の効果も見せ始めた。 触れようとすると高重力がかけられる物、 バリアを張り近づくことも難しい物。 そして、今回は魔物を数体召喚した。 だが、力を自由に引き出せるようになりつつある リョウヘイには取るに足らない相手だった。 @200 もっとだ・・・もっと力を手に入れて \c[2]必ずあの野郎を見つけて殺してやる。 !se(Action)学内歩き @1 そう呟くと雨の中を去っていった。 ・・・通常、魔物は致命傷を受けると、 魔界へと強制送還され、そこで死を迎える。 この世に痕跡を残すことはそう多くはない。 マジカルパレスの魔道士もそれを知っているため 必要以上の深追いはしないのだ。 例外的に瞬時に苛烈な攻撃を受けた場合、 送還されることなく、その場で死に至る。 リョウヘイが出てきた林の奥には。 今も魔物の\r[残骸,・・]が残っていた。 まるで胴体を引きちぎられたような肉塊。 \s体から切り離された手足らしきモノ。 \sその全てが焼け焦げ、炭化していた。 ここまで破壊されてしまっては、 もはや魔界に戻ろうが戻るまいが関係ない。 !mvnil やがて激しい雨に打たれて形は崩れ始め、 魔物だった塊は消えさった。 !bgs !wait40 真説・\r[幻影帳,シルエットノート]異聞 第六章「憤怒」 !wait20 !mv保健室 !bgm別れ @200 ・・・。 @1 アクアフロートの病院。 ついこの間、自分が寝泊まりした病室。 リョウヘイは そこでパイプ椅子に座っていた。 その目は一点だけを見続けている。 視線の先にあるベッドには 一人の少女が横たわっていた。 「・・・・・・・・。」 穏やかに眠るように瞳を閉じている。 一見、異常は見られない。 @202 ミキ・・・、すまねえ・・・。 オレはお前を守ってやれなかった。 @1 昨夜の惨状を生み出した人物とは思えない それほどに弱々しい声でリョウヘイは語りかける。 !se(Action)ドア開け ふと病室のドアが開いた。 !v35=1 @402 失礼します。 @200 ・・・ん? !v36=1 @410 こんにちわ・・・。 @250 邪魔するぞ。 @200 ああ、お前らか・・・。 おい、ミキ。 みんなが来てくれたぞ。 @1 「・・・・・・。」 だが、その言葉に返答はない。 @402 あれから一度も目を覚ましませんか? @202 ・・・ああ。 @410 今でも信じられないよ。 皆で遊んだ一週間前のあの日の夜。 ミキさんが\r[事故,・・]にあって 意識不明になるなんて。 @413 勝負するって約束したのに・・・。 @250 そうだな。 \s俺も連絡を受けた時は驚いた。 まさかこんな事になるとはな・・・。 人生とは先が見えないものとはいえ、 やりきれんな。 @1 全員が悲痛な表情を浮かべる。 今日は十一月二十日。 あの夜から八日が過ぎていた。 @202 ・・・。 @402 岸先輩、疲れてませんか? @200 ん? ああ、大丈夫だ。 @250 さっき看護師に ここ一週間、夜中まで 付き添いをしていると聞いたぞ。 あまり根を詰めるな。 しばらくは俺たちが付いている。 お前は少し休んで来い。 @202 いや、本当にだいじょ・・・ !bgm !se(Action)ジュゴー @200 ッ!! @1 アルバートの申し出を断ろうとした時。 リョウヘイはここ一週間毎日感じていた あの気配を感じた。 悔恨と哀しみの篭っていた目が 一瞬殺意に満ちる。 !bgm別れ @410 ・・・岸くん? @200 いやいや、なんでもねえよ。 @1 友人たちに気づかれたくはないのか 慌てて取り繕い、いつもの調子に戻る。 @200 ・・・悪いな、みんな。 好意に甘えるとするわ。 !se(Action)学内歩き !wait10 !se(Action)ドア開け !wait30 !se(Action)ドア閉め @1 そう一言だけ言い残すと リョウヘイは病室を出て行った。 @410 岸くん。 様子がおかしかったね。 @402 ミキさんのこと、気にしてるんでしょうね。 付き合い長かったでしょうから。 @250 だが、いくらなんでも気にしすぎだ。 あいつのせいでもないだろうに。 @410 もしかして、 お母さんの事故と重ねてるのかな? @400 冬村さんも知ってたんですか? @410 犬山さんも? @402 はい、昔シシト先輩から聞きました。 @250 何の話だ? @402 実は・・・ !v5=0 !mvショッピング街 !bgm !se(Action)学内歩き @202 ・・・。 @200 ・・・どこだ? @1 リョウヘイは病院から出ると、 すぐに真剣な表情に切り替わり、 目を閉じて意識を集中させる、 !se(Action)ジュゴー すると僅かな死の気配を察知した。 @202 ・・・ッ!! !se(Action)跳ね @1 次の瞬間。 リョウヘイはそこ目指して疾駆する。 @200 あいつら・・・ \c[2]\s必ず殺してやるッ!! @1 怒りに染まった顔でそう呟く。 全身からは黒いオーラが発せられていた。 常人には捉えられない速度で 街を走り抜けるリョウヘイ。 すれ違った人々は風が通りすぎたくらいにしか 感じないことだろう。 だが、一人だけその後姿を見ている青年がいた。 @570 ・・・\sやれやれ。 !se(Action)学内歩き !mvnil @1 青年・・・フェザーは軽くため息をつくと リョウヘイの背中をゆっくりと追った。 !wait30 !mv自宅 !bgm安らぎ @1 その頃、村上家にて。 !v27=1 @100 ねえ、姉さん? @120 んー、どうしたのよ? @1 コーヒーカップを片手に気だるげに返事をする。 @102 一体いつになったら修行つけてくれるの? 数日どころか、あれから一週間だよ? !se(Action)飲む @121 ・・・\sどうもこうもねぇ。 @120 あいつが来ないことには、 私もどうしようもないのよね。 あんたの場合はまず魔力引き出せないと 話にならないんだもの。 格闘に関しては基礎できてるから、 今すぐ教えなきゃいけないことはないし。 @102 それは分かるんだけどさ・・・。 @100 まだ来ないようなら ミキのお見舞い行っていいかな? アルバートたちも行くって言ってたし、 僕も様子を見たいんだけど・・・。 @121 いいって言いたい所だけど、ダメよ。 @120 今日来るって約束になってるから、 入れ違いでもしたら面倒だわ。 @102 つまり待ちぼうけてろ、と。 @120 そういうこと。 焦ることはないわよ。 @121 訓練が始まったら 地獄を見ることになるんだから。 @102 冗談ではないんだよね? @121 当たり前でしょ? @1 シシトとシイナが話している傍ら。 部屋の隅にクロウとリスがいた。 !bgm @700 ・・・。 !bgmサスペンス (おい、クロウ) @830 (ん、どうした?) @701 (気づいてるか、またリョウヘイが・・・) @830 (分かっている。  シシトに聞こえたらことだ。  あまりこのことは喋るな) @700 (だから耳打ちしてんだろうが) (シイナちゃんは気づいてるのか?) @830 (分からんな。  我らほどではないが  シイナも魔力感知はできる) (だが、リョウヘイの気配は強大な力の塊。  その力に隠れているのか魔力は  かすかにしか感じられん) (我らでも気を張らねば感じ取れんのだ  シイナでも感知は難しいだろう)  @701 (あいつの力が魔力とは違うのは、  おれもわかってんだけどよ) (屋上の時とも、初めての時とも違うんだ。  炎みたいに熱い力だったのに、  今はどす黒いっていうか・・・) @830 (少なくともミキと戦った時の  清々しささえ感じた力ではない) (タナトスの影響が出ているのかもしれん) @700 (フェザーの野郎。  一体何を考えてんだよ) @701 (こんなんほっといていいのかよ?) @830 (あいつの考えることなど分からん) (だが、リョウヘイのことは  フェザーに一任されている以上、  我らは手を出せん) @1 一週間前の十年前の真相を話した夜。 改めてフェザーが村上家を訪れた。 「一応念を押しておきますが、  あなた達に出した指令はシシトくんのサポート。  今でもそれは変わりません。」 「リョウヘイくんに関しては私に任せてもらいます。  女神さまも了承済みです。」 シシト以外にそう告げるとさっさと去ってしまった。 その翌日から 異質な魔力のような力を感じ始めた。 最初はごく弱いものだったが 日に日に強大になっていき、昨晩ようやく リスがリョウヘイのものだと気づいたのだ。 一緒にいたクロウにすぐに話し、 慌ててシシトとシイナに教えようとしたのだが、 計ったようなタイミングでフェザーが転移してきた。 「他言無用です。  あなたたちはシシトくんの成長にだけ  気を使ってください。」 有無を言わさぬ迫力で それだけ言うと再び転移してしまった。 @701 (本当に不法侵入してきやがったし) @833 (あいつの神出鬼没は  今に始まったことではないが・・・) @830 (これではシイナの言うとおり、  まるでリョウヘイをわざと  苦しめているようではないか) (一体フェザーは・・・  女神さまは何をお考えなのだ?) @700 (リョウヘイなぁ。  学校で見ただけだと普通なんだけどよ) (それが逆に演技くさくてなぁ・・・。  見てらんねえんだよ) @701 (このままフェザーに任せてて  大丈夫なのかよ?) @830 (・・・何があろうがフェザーが  リョウヘイを見捨てるとは考えづらい) (フェザーはリョウヘイの母親の・・・) @1 クロウがリスに何かを教えようとした時。 !bgm \f[42]ピンポーン !bgm安らぎ @830 む? @1 来訪を告げるチャイムの音が会話を遮った。 @120 お、やっと来たかしら? !se(Action)ドア開け @1 \c[3]「開いてるようですが、  勝手におじゃましてよろしいでしょうかー?」 @121 いいわよー。 遠慮せず入りなさーい。 !se(Action)ドア閉め @1 \c[3]「では、お言葉に甘えまして。」 @100 女の人の声・・・? @120 ああ、あんたには教えてなかったわね。 !se(Action)学内歩き !v37=1 @810 こんにちは。 お久しぶりですね、シイナさん。 @120 ええ、久しぶりね。 紹介するわ。 私と同じ十三剣で神獣の一人。 でもって、女神補佐役のスケイルよ。 @121 色々役目もってるから偉そうだけど、 実際は生みの親みたいにサボり魔だから そんなに立派じゃないわ。 @813 むッ!それは聞き捨てなりませんね! 来るの遅れたのはお仕事してたからですよ! 今立て込んでて面倒なんですから! 事務処理だって大変なんですよ!! @120 あはは、ごめんごめん。 久しぶりだからからかっちゃったわ。 @833 お前は久しぶりに会った知人は からかわないと気がすまないのか。 @813 まったくですよ! 読みたい本が沢山あるのに、 サボりたくてもサボれないんですからね! @831 結局サボってるのかッ!? @121 相変わらずねぇ。 @701 やっぱ威厳ねえよ、この人。 @102 あー、はじめまして。 @810 はい、はじめまして。 村上シィットさんですね? @101 違いますッ! 今更そのネタ使うの!? @811 あれ、違いましたっけ? @121 なんなら今から改名申請してくるけど? @104 いらんところで行動力見せるなッ!? @810 冗談ですよ。 村上シシトさん。 @102 ・・・なんだか これからが一層不安になった。 @833 それは間違いではないと思うぞ。 @120 一見そうは思えないけど、 マジカルパレスの創立メンバーよ。 こと魔法の知識に関して スケイルの右に出る者はいないわ。 @810 伊達に五百年以上生きてませんので、 お力になれると思います。 @102 五百年・・・ですか。 それは頼りになりそうですね。 @810 堅苦しいのはあまり好きではないので、 普段通りで構いませんよ。 @100 わかりま・・・分かったよ。 @810 それで聞いた話ですとMPが0だとか? @811 そのくせ男性物パンツは まとめて消しちゃった、と。 @102 はぁ・・・。 !se(Action)爆発音 @813 \f[28]ちょっと実演してもらえませんかッ!? 実例を見れば より正確なことが分かるかもしれません! @104 ええ!? @121 どういう理屈なのか 気にならないわけじゃないけど、 今はそれどころじゃないでしょ? @811 むう、残念です。 @102 (どういう人なの?) @701 (こういう人だよ) @833 (そのうち嫌でもわかる) @810 MP0でなぜか変な魔法は使えた。 けれど普通の魔法はからっきしと。 @120 そ、ありえないでしょ? @810 ありえないですね。 そもそも魔法の才能がない人に ステッキは使えませんから。 何かしらの理由があって、 魔力が解放できない状態にあるんでしょう。 そういう症例は稀にですが 見たことがあります。 @120 二人分の魔力の源泉っていうのは? @811 残念ながら、それは知りません。 念の為に女神さまにも尋ねてみましたが、 全く心当たりがないそうです。 @121 つくづく異例なのね、あんた。 @102 あはは・・・。 @810 なので実際に見た方が早いでしょう。 シシトさん、ちょっと失礼します。 !se(Action)跳ね @1 言うやいなや、 スケイルはシシトの胸に額を付けた。 @101 いきなりなんですかー!? @813 お静かに! 今からシシトさんの魔力の元を調べます。 @121 そういうことだからジッとしてなさい。 @102 いやこれ落ち着けって言われても・・・ @701 倦怠期のくせに何を言うか。 @705 羨ましいぞ、この野郎! @833 お前も黙っておけ。 !bgm @813 では・・・ !se(Action)ジュゴー @1 スケイルは目を閉じ意識を集中させた。 !mvnil !bgm[追加]祈り @1 \c[3]「魔力経路は一本道ですね。  ここまでは普通の魔道士と何も変わりません。」 \c[3]「・・・これは経路が二つに分かれている?」 \c[3]「片方、左側は普通・・・並程度の源泉。  右側は・・・\sッ!!」 \c[3]「深い、底が全く見えません。  その上、横の広がりも大きい・・・  これほどの魔力キャパシティ見たことがない。」 \c[3]「うーむ・・・」 !mv自宅 !se(Action)跳ね @811 ふう・・・。 @1 目を開くとスケイルはシシトから離れた。 @120 どうだった? @810 確かに、魔力の源泉は二つありました。 一つは一般的な魔道士と大差ありません。 ですが、もう一つ・・・ 肉体的には心臓に近い位置にある魔力は、 想像を絶しています。 魔力量だけなら、下手をすると 私よりも上かもしれません。 @833 知識と魔力を統べる神獣のお前よりか? @811 底が見えなかったので、 断言はできません。 @813 ですが、これは是非とも引き出すべきです。 これほどの才、埋もれさせるには惜しい。 @102 ・・・心臓に近いか。 @121 才能があったのは サエさんの方だったのかしらね。 @810 移植による変化というものは、 一般でもいくらか見られる話です。 特にシシトさんの体験は異例ですから それが影響しているのではないでしょうか? @811 幼馴染のサエさんが あなたの生命を救うために、 自身の魂を力に変えた・・・と。 そう根拠のない推論をしたくなるほどに、 もう一つの魔力は大きかったです。 @100 ・・・。 @121 そうね。 理由がわからないなら、 いい方に考えた方がいいかもね。 @830 (親が親だからという  可能性もあるが・・・今は無粋か) @120 それでその魔力を 引き出せない原因はなんだったの? @810 二つの魔力が経路の合流地点で ぶつかり合っていたせいですね。 衝突した魔力が結果的に、 経路に蓋をしてしまっていたんです。 理由がわかれば問題解決は可能です。 想定内のことでした。 @830 ほう、さすがだな。 @100 どうすればいいんですか? @810 魔力経路が狭いから引き出せないんです。 本来一つ分の経路に 二種の魔力が入ろうとするから、 せき止められる形になっているんです。 となれば答えは簡単です。 @120 経路を太くすれば良いのね。 @810 正解です。 @813 完全に二つ分にするには 時間が足りませんが十分な魔力を 引き出せるようにはなると思います。 @810 ということで、シシトさんこれどうぞ。 @1 スケイルは懐から飴のような物を取り出した。 @102 いきなりなんですか? @810 私が開発した 魔力経路を太くするための薬です。 これを食べてください。 @102 そんな安易な方法でいいんですか? @813 いいからッ! !se(Action)跳ね @104 うわ、無理やり突っ込まないで・・・! !se(Action)飲む @101 うッ・・・! @102 ・・・飲んじゃったんですけど。 @810 体内に入ればオッケーです。 @830 ・・・特に変化はないようだが? @700 だな、相変わらず魔力なしだぜ? @810 それはそうですよ。 飲んだだけでは効果ありませんから。 あれは、訓練効果を 促進させるための薬です。 @813 二週間以内に経路を太くするために、 すぐに訓練を始めますよ。 @102 二週間以内ですか? @810 はい。 !bgm !se(Action)爆発音 \f[38]期限をすぎると 副作用で死にますから。 !bgm緊急事態 @101 はぁぁぁぁぁぁ!? @831 お前、なんというものを飲ませたんだッ!? @813 当たり前じゃないですか! 本来、魔力経路の拡張は年単位の訓練が 必要なんですよ!? たった一月で使い物になるようにするには、 命をかけるしかないでしょう!? どうせ戦力にならなかったら、 やられちゃうんですから、死なば諸共です! @701 ひでえ・・・。 @121 ま、一理はあるわね。 @104 納得するな姉!? @120 飲んじゃったものは仕方ないんだから、 さっさと準備してきなさい。 @121 一分一秒にあんたの命がかかってるのよ? @101 鬼だッ! あんたたちは鬼だッ!! @833 と、とにかく準備をしようシシト。 このままではお前の身が危険だ。 @102 くそー、まさかここまでするとは。 @811 早くお願いしますねー。 !bgm !se(Action)学内歩き @1 シシトたちは一旦部屋へと戻った。 !bgm安らぎ @121 ・・・で、今の話は本当なの? @810 嘘に決まってるじゃないですか。 あんなの来る時に食べてきた ただの飴玉の残りですよ。 死に物狂いで やらなければいけないのは事実ですので、 プラシーボ効果を狙っただけです。 @121 魔力は精神の影響を受ける。 必死になった方が成長も早い・・・か。 @810 そういうことですね。 @813 仮に魔力を引き出せないようなら、 彼は戦線から外しますよ。 無駄に死にに行くことはありません。 @121 ・・・そうね。 @120 個人的には もう一人心配な子がいるんだけど。 @810 ・・・岸リョウヘイさんですか? @121 リョウヘイくんの方が辛いでしょうけど、 昔の私も気負ってた頃があるから、 ああいう時期が危ないのは分かるのよ。 @811 大気の盾を継承した頃のことですか。 確か、あの時は彼女と揉めて・・・ @120 ・・・あいつやっぱり来れなさそう? @810 無理ですね。 彼女までココに来たら、 指揮系統が滅茶苦茶になります。 @121 ・・・そ。 @120 どっちにしても リョウヘイくんのことは何も知らない私じゃ 力にはなれないわね。 @810 彼のことはフェザーに任せてあります。 きっと大丈夫ですよ。 @121 だから心配なんだけどね・・・。 @810 フェザーにはフェザーなりの考えがあります。 それに男の子は女性とは違いますからね。 多少荒波に揉まれたくらいがいいですよ。 @121 ・・・そういうものかしら。 @813 というわけで、私達もバッチリ揉みましょう! @120 弟には手加減する必要ないものね。 @1 二人がどこか嗜虐的な笑みを浮かべる。 今、ここにリスがいたら「ご愁傷様」と言うだろう。 !se(Action)ドア開け !wait20 !se(Action)ドア閉め !wait10 !se(Action)学内歩き @132 さあ、始めよう! 今すぐやろう!! @701 ちっと落ち着け。 @132 やかましい! コッチは命がかかってるんだ! 落ち着いていられるかぁぁ!! !se(Action)ミス @121 なら尚更落ち着け。 !se(Action)殴打 @132 痛いッ!? だから、蹴らないでよッ!! @120 必死になるのはいいけど、 冷静にならないと出来ることも 出来なくなるわよ? @830 シイナの言うことはもっともだ。 命がかかっているのは分かるが、 焦っては上達も遅れる。 @120 熱い感情は胸に閉まって、 頭は常に冷静さを保ちなさい。 @131 むう・・・。 @811 はぁ、それにしてもそっくりですねぇ。 @130 へ? @810 ステッキ使っていた頃のシイ・・・ !se(Action)爆発音 @120 \f[38]さあ、訓練始めるわよ! 時間がないんだから急げ! @704 うわ、びっくりしたッ!? @810 ・・・そうですね。 @131 一体なんだろう? @833 さ、さあな。 @810 では、訓練用の仮想空間を開きますね。 @130 仮想空間でやるんだ? @121 格闘ならともかく魔法絡みだからね。 さすがに外じゃできないわ。 @830 スケイルの仮想空間ならば、 派手にやっても問題あるまい。 @131 派手にやる予定があるんだ・・・。 @120 もちろんよ。 言ったでしょ? 地獄を見せてあげるって。 @1 シイナはニコリと微笑んだ。 思わず見惚れてししまような笑顔なのだが、 その背後には鬼が見える。 金棒を肩に担いで 今にも振り下ろしそうなほどにやる気満々の・・・。 @131 ・・・僕の命は二週間後まで持つのかな? @701 がんばれ。 !bgm !se(Action)ジュゴー @813 では、いきますよ! !se(Action)ミス !wait5 !se(Action)ミス !wait7 !se(Action)ミス !wait7 !se(Action)ミス !wait10 !se(Action)ミス @1 スケイルはどこからともなく 海のように蒼い杖を取り出して、 円を描くように振り回す。 !se(Action)ミス @813 えいッ! !se(Action)バリア音 @1 気合を入れ、杖の末端を床に叩きつける。 !se(System)遭遇 !mvマジカルパレス !bgmタイトル画面 @1 するとあっというまに周囲が一変した。 @810 ふむ、久しぶりに開きましたが、 特に問題はないようですね。 @830 鮮やかな手並みだな。 @120 よし、これなら思いっきりやれそうね。 @130 最初は何をすればいいのかな? @810 本来なら精神修練から始めるんですが、 時間もありませんから、荒療治でいきます。 @131 あの薬以上の? @811 いえいえ、 そんなに大したことじゃないですよ。 @810 ま、百聞は一見にしかずということで。 !se(Action)ミス @1 スケイルは杖の先端でシシトの胸に軽く触れる。 @130 ・・・? !se(Action)ジュゴー @811 では・・・。 @833 ッ!? !bgm いかん、シシト! 胸に意識を集中しろッ! @130 へ? !bgm(タクミ)戦闘訓練 @813 いきますよッ!! !se(Shooting)撃破A @1 クロウが叫んでまもなく スケイルは杖に魔力を集中させて、 シシトの胸に叩きつけた。 @132 ぐふぁぁぁ!? @1 瞬間、胸から体の芯に向かって激痛が走った。 !se(Action)跳ね @132 あが・・・うがあぁぁぁ!! @1 まるで体を根本から裂かれるような 不可思議な痛みに耐えかねて その場に座り込んでしまう。 @704 うわああ、シシトー!? @811 む、少しやりすぎましたかね? @833 バカモン!! シシトは魔法の基礎もできないのだぞ! いきなり魔力をぶつける奴があるか!? @121 なるほど、荒療治ね。 @120 今の魔力経路の許容量を越える 魔力を注ぎ込んで強引に広げるつもりね? @833 さっきの薬といい、 やり方が無茶苦茶すぎるぞッ!? @121 案外そうでもないわよ、クロウ。 @120 筋肉も破壊と超回復を繰り返すことで 強固になっていく、それと同じことよ。 @810 理屈としては近いですね。 それと魔力を意識的に使ったことのない シシトさんの場合、口頭で説明しても 効果は薄いでしょうから。 @813 知識は後から教えるとして、 まずは魔力を経路に通す方法を、 体に直接覚えさせるつもりです。 @833 だが、下手をすれば生命に関わるッ! 今のを肉体で言うならば、りんごを まるごと飲み込ませたようなものだぞ!? @813 無茶は承知のうえです。 一応手加減もしています。 一月後に何と戦おうとしているのかを 忘れないでください。 @833 う・・・。 @134 ぐ・・・う・・・。 @813 さあ、シシトさん立ってください。 今のはまだまだ序の口ですよ。 肉体の超回復と違って 魔力は精神の影響を受ける。 放っておいても治りはしますが、 そのスピードは肉体の自己治癒よりは ずっと遅い。 ですが、精神の強さによっては 凄まじい早さで回復することもできます。 @134 く・・・!! @813 あなたの意志力を見せて下さい! 強くなりたいと願ったあなたの志を!! できないのならば、 リス以下の足手まといです。 @701 い、いや、おれより足手まといは・・・ @813 魔力感知という一つの武器を持つあなたと 魔法を使えない魔法使い。 どっちが価値がありますか? @701 ほ、褒められてんのに嬉しくねえ・・・。 @813 格闘技術はシイナさんに劣り、 力ではリョウヘイさんの足元にも及ばない。 分かりますか? 今のあなたには何の武器もない! 何の切り札もないのです!! このままでは戦いの邪魔にしかなりません。 二週間後を待つまでもない。 \f[32]ここで死んでしまいなさいッ!! @1 厳しい口調で叱咤しながら 杖を座り込んでいるシシトに軽く向ける。 その先端には蒼く輝く魔力が集中されていた。 @833 お、おい・・・ @121 しっ。 @1 スケイルのあまりの言い様に 再びクロウが口を挟もうとするが、 シイナがそれを止める。 @134 はぁ・・・ふぅ・・・。 @813 今まであなたは何ができました!? いいえ、何もできてはいません!! ただ運がよかっただけです! 家族のためッ!\s親友のためッ! \s友人たちを守るためッ!! 言うだけなら誰でもできるッ! \s実際ことが起これば何もできやしない! \sあなたもそんな腰抜けの一人ですかッ!? @134 はぁ・・・はぁ・・・。 @813 悔しくありませんかッ!? 初対面の私にここまで言われてッ!! 見返してやろうとは思いませんかッ!? @134 ふぅぅぅぅ・・・。 @133 くぅ!! !se(Action)跳ね @1 まだ表情は優れないがシシトは立ち上がった。 @121 ・・・。 @833 おお・・・。 @704 シシト! @813 よろしい。 次からはもっと早く立ち直ってください。 \sさもなくば・・・本当に死にますよ? @131 はぁはぁ・・・スケイルさんって @134 つくづく鬼だね。 @813 必要とあれば鬼にでもなりますよ。 戦いとはそういうものなんです。 @134 これを乗り越えれば、 僕は強くなれるのかい? @813 強くなるための最初の土台ができます。 魔力を引き出せるようになれば あなたの可能性は広がる。 一つの技術を手に入れれば どれだけ戦い方の幅が広がるかは よーく分かっているはずです。 @134 ・・・そうだね。 @813 さ、無駄話はここまでです! 次いきますよ! @133 やってやるッ! これで強くなれるって言うならッ!! @811 ・・・いい度胸です。 @1 一瞬ニコリと微笑むと 再びシシトの胸に杖の先端を置く。 @133 こいッ! @704 そうだ、負けんなァァ! !se(Shooting)撃破A @1 「うわああああああああッ!!?」 シシトは絶叫するとのた打ち回った。 !bgmタイトル画面 @121 戦いに赴く者を生き残らせるためには、 必要以上に厳しく当たらねばならない。 @120 その為に指導者は鬼になることもある、ね。 @830 スケイルにはそんな意図があったのか。 @120 五百年生きてきたってことは それだけ多く仲間や友人の死を 体験してきたということよ。 だからこそあれだけ熱が入る。 早めに来てもらって正解だったわ。 @121 それに、シシトがここで潰れるなら、 最初から戦いには向いてなかっただけ。 他の道を生きた方がいいのよ。 @830 ・・・となるとさっきの薬の話は嘘か。 @121 思い込みを利用するんだって。 @830 ・・・我は少し浅はかだったのかもしれんな。 @120 あー、いいのよ。 なんだかんだ言っても、 鞭ばかりじゃやってられないしね。 ま、あの子、 昔から色々やらかしてきたから、 これくらいでへこたれはしないでしょうけど。 !bgm(タクミ)戦闘訓練 @813 復帰がさっきより三十秒も遅いッ! 一時間でも早く魔力を解放出来れば、 それだけあなたは沢山の事を知れるッ! 強くなれるのですッ! その為の時間を無駄にする気ですか!? @132 うううう、こなくそおおおお!! もういっちょ来いッ!! @813 言われるまでもありません!! !se(Shooting)撃破A @1 「うぐわああああああ!!」 !bgm @121 ・・・。 @120 がんばれ、シシト。 !se(Shooting)撃破A !mvnil @1 絶叫が繰り返し、繰り返し響く。 だが、その間隔は少しずつ確実に短くなる。 それはまだ入り口にも立っていない者の足掻き。 無様ではあるが、その一歩は大きい。 !wait20 !mvマンション街 @1 アクアフロート郊外。 再開発の煽りを受けて放棄され、 以後廃ビル郡と化した場所。 完成してまだ十年も経たなくとも、 人の営みがある以上、繁栄の裏には 必ず衰退があるものだ。 !se(Action)爆発音 人もなく静かなこの場所に場違いな音が響く。 \c[2]「ギャワアアアアア!!」 同時に獣のような声が聞こえた。 !bgmサスペンス @202 ・・・また外れかよ。 @1 爆発音の元はリョウヘイだった。 周囲には爆発で消し飛んだと思しき ヘルハウンドの屍が無数に転がっていた。 @960 ひ、ひいいいい!! た、頼む見逃してくれッ!! @1 たった一匹だけ生き残った 狼のような魔物は震えながら命乞いをする。 @960 人間には同じように見えるだろうが、 おれはこいつら、ヘルハウンドとは違う! 偶々ゲートの側にいただけだったんだ! @200 ・・・。 @960 頼む、殺さないでくれ! 頼むよッ! @1 人間で言えば土下座に近い プライドをかなぐり捨ててへりくだる。 !bgm恐怖 @200 ・・・\s\c[2]ダメだな。 @960 な・・・! @200 あの玉っころから出てきたってことは、 テメエもタナトスの野郎の手下なんだろ? @960 タ、タナトスゥ!?違う違う違う!! あ、あんな化け物に誰が従うかッ!? そりゃ中には脅されて従ってる奴もいるし、 こいつらみたいに【死】に属する奴らは、 簡単に尻尾を振るよ! でも、おれは違う!信じてくれ!! @1 必死に弁解するが、 リョウヘイは聞く耳を持たない。 !se(Action)跳ね リョウヘイは魔物の首根っこを掴み顔を近づける。 その瞳には魔界の深淵のごときドス黒い炎が 宿っていた。 @200 どっちにしても結局は魔物だ。 人間に危害を与えるつもりだったんだろ? \c[2]ああ、そうだ。そうに決まってる。 @960 ち、ちがううう!! 本当に偶然ここに来ただけだぁぁ! @200 \c[2]言い訳がましいな。 テメエら魔物の言うことなんて信じねえよ。 \c[2]大人しくくたばっちまえ・・・。 @960 はぎ、ぎいいいいいい!! @1 首を締める力が増し始める。 このままいけば魔物の首は胴体から ちぎれ飛んでしまうだろう。 @960 ぎゃああああ!! !bgm か、かあちゃーーーーん!! @202 ッ!? @1 その絶叫の瞬間、リョウヘイの手が止まる。 @202 母ちゃん・・・だと? @960 ひ、ひぐうう、頼むから助けてくれよぅ・・・。 人間に悪さなんかしたことねえよぅ・・・。 母ちゃんが病気で、 薬草摘みにきてただけなんだよぅ・・・。 そしたら突然ゲートが現れて、 気がついたらココにいただけなんだ・・・。 おれがいなくなったら、 母ちゃんが一人ぼっちになっちまうよぅ・・・。 @1 泣き落としではない。 その言葉には真実があった。 @202 ・・・くっ。 !se(Action)跳ね @1 葛藤しながらもリョウヘイの手の力は どんどん緩んでいく。 @202 ぐう・・・う・・・・。 @1 苦しそう悩み続ける リョウヘイの肩に誰かの手が乗った。 !bgmサスペンス @570 そこまでにしておきなさい。 この魔物は嘘は言ってませんよ。 @202 お前は・・・。 @570 魔物も全てが悪というわけではありません。 人間にも善人と悪人がいるように、 平和的な者もいます。 @202 ・・・お前らは 魔物を退治してるんじゃねえのかよ? @570 そうですよ。 危険な魔物は容赦なく倒します。 ですが、同時に 偶然魔界からコチラに来てしまった者を 送還するのも私達の役目です。 我らの女神は【生命】の化身。 無益な殺生は好みません。 @202 ・・・。 @570 もう一度言いますよ。 彼はあなたの敵ではない。 あなたは無抵抗かつ無実な者を その手にかけるつもりですか? @202 ・・・。 !se(Action)跳ね @1 茫然としたままリョウヘイは手を離した。 @960 う、げほげほッ! @570 大丈夫ですか? @960 あ、ああ・・・。 あんたはマジカルパレスの奴なのか・・・? @570 ええ、そうですよ。 怖がることはありません。 すぐに送還してさしあげます。 お母様もお待ちでしょうから。 @960 あ、ああ、ありがとうよ。 @202 ・・・。 @1 突っ立っているリョウヘイを魔物はチラッと見る。 @960 ・・・なあ、あの兄ちゃんよ。 @570 なんでしょう? @960 本当に人間か? 力がどうこうじゃない。 \sあの目・・・まるで死が形になったみたいだ。 あれじゃ、あいつ自身が・・・ @570 ・・・。 ここで見たことは忘れた方がいい。 @960 言われなくてもそうするよ・・・。 @570 では。 !se(Action)シュイーン @1 フェザーが魔物に触れるとまもなく この場から消えた。 @570 まったく、無作為に ゲートを開かないでもらいたいですね。 私が近場にいたからいいようなものの、 他の魔道士だったらいちいち本部に 連れて行かなければいけない所です。 @202 ・・・。 @570 本当に無計画ではないでしょうがね。 @202 なに? @570 ゲングはえげつないヤツなんですよ。 機械的かつ無感情に冷酷な手を使う。 残酷さだけならタナトスよりも上です。 昨日は手のものを差し向けて、 今日は一体だけ何の罪もない魔物を混ぜる。 さて、この意味が分かりますか リョウヘイくん? @202 ・・・わかんねえよ。 @570 嘘ですね。 あなたはそこまでバカではない。 分かっているはずですよ。 今、自分がタナトスと 同類になりかけていたことにね。 @202 ・・・ッ!! @570 相手がどのような存在でも 憎しみを吐き出すために力を振るう。 己の本能の赴くままに 暴虐の限りを尽くすヤツと 一体どこに違いがありますか? @202 テメェッ!! !se(Action)跳ね @1 リョウヘイはフェザーの胸ぐらを掴みあげ、 ギリギリと歯軋りをしながら睨みつける。 @202 オレは・・・!\s\c[2]オレは・・・!! @1 だが、その後が続かない。 フェザーの発言が何一つ間違っていないからだ。 @570 図星を突かれれば力づく。 \s子供そのものですよ? @202 うるせぇッ!! お前に・・・お前なんかに オレの気持ちがわかるかッ!? 知らない所で変な力を植え付けられて、 母さんを殺され、ミキを殺されかけて!! その上、あいつらは姿さえ見せやしねえ!! この一週間空振ってばかりだ!! 力だけあっても・・・! 何もできねえ気持ちがお前にわかるか!! @1 涙こそ流していないが 泣きじゃくるようにまくしたてる。 @570 ・・・\sはぁ。 ここでシイナさんやクロウなら、 優しい言葉をかけるところなんでしょうが。 すみませんが、私には 餓鬼の泣き言に付き合う趣味はありません。 !se(Action)跳ね @1 そう言うとフェザーはリョウヘイの足を払う。 !se(Action)跳ね @202 なっ・・・! @1 虚を付かれて力が抜けた瞬間、 フェザーに手を払い飛ばされ、 リョウヘイだけが転倒した。 !se(Action)ドゴン @202 ぐっ・・・! @570 感情だけに任せて行動していては、 せっかくの力も宝の持ち腐れですね。 私ごときに簡単に足元をすくわれる。 ゲングやタナトスが相手なら尚更でしょう。 @202 テメェ・・・! @570 「気持ちがわかるか。」と言いましたね。 \sでは、逆に問いましょうか。 実の妹のように思っていた人が 幸せの絶頂から叩き落されて殺された者の 気持ちが、あなたにわかりますか? @202 ・・・なにを言ってる。 @570 あなたが今感じている怒り、憎しみ。 それを十年抱え込んで生きてきた人が、 あなたのすぐ側にいるのを忘れてませんか? その人は あなたのような無様を晒してますか? @202 ・・・! @570 怒るな、憎むなとは言いませんよ。 私には言う資格は無い。 ですが、思い出してみてください。 あなたが力を引き出した時。 あなたが本気で怒った時。 一体あなたがどんな考えだったかを。 何が一番大事だったのかを。 @202 知ったふうな口を・・・! @570 知ってますよ。 マリオンとの戦い以降から あなたをずっと監視してましたからね。 ミキさんと戦った時のあなたは、 実に強く、勇ましい姿をしていた。 純粋に美しいと思いましたよ。 それが今では見る影もない。 @202 ・・・。 @570 私はこれ以上口は出しません。 あなたが嫌がろうが監視は続けますが、 後は好きにするといい。 奴らの策に乗るのもいいでしょう。 幸い、あなたの力を段階を持って 引き出そうとしてくれている。 利用するか、思いのままになるか。 どちらにするかはあなた次第です。 @202 ・・・。 @570 泣いても笑ってもあと一月で全てが決まる。 それまでの間、よく考えてみてください。 あなたの本当の力の根源が、 一体どこにあったのかをね。 !se(Action)跳ね @1 そう言い残してフェザーは姿を消した。 実際はどこかにいるのだろうが、 気配を全く感じられない。 !bgm @202 ・・・オレは。 オレは・・・どうすればいいんだ。 \sどうしたいんだ・・・。 !mvnil @1 大きな運命を背負わされた少年は 導き手もなく自問自答する。 世界の命運。己の運命。 答えに至るまで一ヶ月は短すぎる。 だが、否が応でもその時は来る。 彼は一体どの道を行くのだろうか・・・? \c[2]「・・・。」 彼の片割れは沈黙を続けるのみだった。 !mvnil !wait10 後編に続く.....