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私はシーナ=セフライト、ノーマ学院の生徒で十六歳。結構怖かった人が多いんだけど、面白く愉快な先生たちと、 病気の事を知っても普段どおりに話してくれるエシュター君(本当は知らないんじゃ・・・)と他の楽しい人達がいるおかげで、 楽しく学院生活を送れています。病気は怖いけど、これからも、何も無く楽しく普通に過ごせます様に・・・
シーナ初日の日記より
「えっと、あれにこれに・・・あれも買わなきゃ」
中央広場でメモを持ち、独り言を言いながら歩いているのは勿論私、シーナです。お母さんが洗濯物干し忘れてたから 代わりに夕飯のお買い物に来ています。今の時間は大体五時半くらい・・・かな。うん、多分そうだよね。
「あの、これ下さい」
魚屋さんの前でサンマを指差してそう言います。おじさんが少し微笑んでいるのが見えます。
「おう!いらっしゃい!サンマね、カルシウムは大事だよお嬢ちゃん」
「そうですね、カルシウムは骨の成長を助けるとも聞きますし」
「そうそう!いっぱい食べれば車に轢かれても無傷な体になるかもよ!」
「さ、流石にそれはない・・・かな」
おじさん、車に轢かれても一本も折れてないのは凄いと思いますよ。
「はい、毎度ありー!」
サンマを手提げ籠の中に入れたら、どうやったらあそこまで元気になれるんでしょうか?明日少し聞きに行ってみようかな、 と思うのでした。次に買うのはお米だったかな、確認しとこう。確か手提げ籠の中にあったよね。
「・・・あっ!」
急に吹いた少し大きな風、そして風にさらわれたメモ、結構な量の買い物を任せられていたので、まだ全部は見ていませんし、 違う物を買ってお母さんを困らせたくないと思って、メモを拾うため走りました。幸い直ぐに地面に落ちて、直ぐに拾えました。 でも、拾いに行ったのが間違いでした。私の視界に急に空が見えました。私は首を動かしていないので、おかしいです。 そして、体に凄い衝撃が走りました。やっぱり、おかしいです。私は動いてもいないのに、地面が見えています。 まるで地面にうつ伏せ倒れている様に。今なんでこんな感じなのか、直ぐにわかりました。車と壁のぶつかる音、人の叫び声、 周りを取り囲む人達。私はメモを拾いに行って、事故に遭ったのでした。少しの間、何も言えず、動けませんでした。 でも、うっすらと意識が消えかかった時に、人と人を掻き分けて直ぐ側に来た人がいました。もう意識が朦朧として、 目もぼやけて来ていて、誰なのか、わかりません。私はその人が何かを言っている言葉を聞けず、意識は完全に闇に消えました。
意識の海に漂う、そこのあなた・・・・・・私の声が聞こえますか・・・・・・・・・?
聞こえる女性の声に目を覚まして、目を開きました。目の前に広がるのは、無限に続くかのような闇の中に、光の球体の様な物が、 無数に浮いている神秘的な空間でした。ですが、さっきの声の人と思える方は見当たりませんでした。さっきの言葉では、多分、 私に聞かれていると思って、首を縦に振ります。
私はリクレール・・・・・・トーテムに呼び覚まれし生命を導く者です・・・・・・
「トーテムって、あのノーザニアの原住民の一部が使う事の出来る、動物の様な能力の事ですよね」
良くご存知ですね、その通りです・・・・・・。私はそのトーテムを統べる者と言っても過言ではないかも知れません・・・・・・
「は、はぁ・・・」
あなたがこの世界に降り立つ前に、いくつか聞きたい事があります・・・・・・
「あの、すみません、いまいち話がわからないんですけど・・・」
ほんの少し小さく手を上げて言いました。見えているかは知りませんが・・・
そうなんですけど、それはまた地上でお話しましょう・・・・・・。まず、あなたの性別を教えてください・・・・・・
「私は女性です」
あなたは、女性なのですね・・・・・・次に、名前を教えてください・・・・・・
「シーナ=セフライトです」
あなたの名前はシーナというのですね・・・・・・。ではシーナさん、次の質問です・・・・・・ 「はい、どうぞ」
これから始まる旅では、多くの戦いを切り抜けなければなりません・・・・・・
「私が、戦いを・・・」
それで、これからの旅を乗り切るために、あなたを導く神獣『トーテム』の力を一つだけ授けましょう・・・・・・。 あなたの求めるトーテムは、次の内どれに当たりますか・・・・・・?
そのリクレールさんの言葉と同時に、目の前に出てくるのは、大型の狼、鳥、そして蛇のようなトーテム達三匹でした。 それぞれに、狼は力が強い印象があり、鳥は素早い印象がありますけど、蛇のようなトーテムは頭の賢そうな印象が感じれました。 でもあまり迷わず、直ぐに狼の所に行きました。
「君が良い、かな…」
【ム、我か?他のトーテムの話、説明は聞かぬのか?】
「うん、私は君が良いな・・・」
【そうか、我の名はクロウ、力を司りしトーテム】
かなり知能が高い狼のクロウさんは犬で言う所お座りをして言っています。
分かりました・・・・・。あなたのトーテムはクロウですね・・・・・・これで質問は終わりです・・・・・
「あ、そうなんですか」
残りの必要な説明は、あなたが世界に降りてからにいたしましょう・・・・・・
リクレールさんがそういうと、私の周りを眩しい光が包み込んで、またリクレールさんの言葉が聞こえました。
さあ、シルフェイドの世界へと降り立つ時が来ましたよ・・・・・
数秒の間、光が私を包み込むようになって、光が無くなる時には私は森の中に立っていました。ほんの少し見回して、 森の中である事を再確認していたら、また光に包まれました。そして、目の前に浮いている人がいました。 伝説上の動物、ユニコーンのような角を持ち、犬の様な耳がありますが、その容姿は正に”女神様”でした。
「・・・・・・シーナさん、見えますか?私です、リクレールです・・・・・・」
目の前の人はリクレールさん。さっきまで話していた人とは全然思えません。その姿に、ただ見惚れていました。
「まず最初に、シルフェイドの世界にようこそ・・・・・・。ここは私の作った名も無き天空大陸。 人々が平和に暮らせる世界・・・・・・のつもりでした」
「つもり、ですか?」
思わずリクレールさんの言葉にそう聞くように呟きました。そして、返答をしてくれます。
「ですが間もなく、この島に悪いことが起きようとしています・・・・・・。この島のすべての人々にかかわる、 とても大きな『災い』が起きようとしているのです・・・・・・」
「災いの正体はどうなんですか?」
ここまで来ちゃったから、もうやるしかないよね、と思いながら私は聞きました。
「・・・・・・『災い』の正体は分かりません。ただ、十五日後にそれが起こる、ということだけが、 私には分かるのです・・・・・・」
やっぱり女神様だから特殊な力があるんだ、と内心で呟きながらリクレールさんの話を何も言わずに聞いていました。
「・・・・・・そこであなたにお願いがあります」
「何でしょうか、リクレールさん」
「あなたに、どんな災いが起ころうとしているのかを、どうか見つけ出して欲しいのです・・・・・・。・・・・・・そのために、 あなたに三つの力を授けましょう・・・・・・」
三つの力、他に何か貰えるのかな、とほんの少し期待してしまう私でした。
「一つ目の力は、トーテムの力・・・・・・。あなたは、その身に宿るトーテムにより普通の人間とは比べものにならない 力をを身につける事ができるでしょう・・・・・・。二つ目の力は、十五個の命・・・・・・。あなたは戦いで命を落としても、 十五回まで私が新しい体を作ってさしあげる事ができます・・・・・・」
次で最後だね、と内心で呟きました。お話の途中で話されるのは誰でも嫌でしょうから黙っていました。
「三つ目の力は、この世界の人々と話をするための言葉・・・・・・。この島の話や文字は、 あなたが理解できる言葉として認知できるようになるはずです・・・・・・」
確かに、情報収集できなきゃ無理だもんね、とまた一人で納得していました。
「・・・・・・これらの力を使い、この世界に起ころうとしている災いを見つけ、そしてどうかそれを防いでください・・・・・・。 ・・・・・・。これが身勝手なお願いという事は、分かっています・・・・・。これまでに説明した私のお願い・・・・・・聞いていただけますか?」
「私に、どこまでできるか分からないけど・・・やれる所まで、やってみます」
私にはこれぐらいしかできないし、それに、断ったら可哀想だもん、ね。
「・・・・・・ありがとうございます。意識の海から見つけられたのがあなたで本当に良かった・・・・・・。私は、 あなたの旅の無事を祈っています・・・・・・。これから十五日間・・・・・・どうかあなたにトーテムの加護がありますように・・・・・・」
その言葉を最後に、光と共にリクレールさんは消えていきました。これからどうしようかな、と思い始めました。
【シーナ、我の声が聞こえるか?】
「あ、はい。聞こえてますよ、クロウさん」
【我の名はクロウ、主の手伝いをつかわされたトーテムだ。これから先、様々なことを指摘したりをするので、 そこを理解しておくと良いだろう】
「はい、分かりました」
本当に別世界なんだなぁとまた自覚をしながら足踏みをして、足を慣らそうとします。普通に土でした。
【何はともあれ、まずは此処から移動しよう】
「そうだね、そうしようかな」
足を森の外に向けたときでした。隣の茂みから、急に野犬が跳び出してきたのです。私はその野犬の動きが良く見えました。 野犬の牙が剥き出しになっている口から垂れている唾液、そして私の喉を掻き切ろうとしている鋭い爪。私は出来るだけ早く、 素早くしゃがんでその攻撃を交わしました。野犬は立ち止まる時に滑る様にして止まりました。簡単に言えばドリフトの様な感じですね。
【シーナ!大丈夫か!】
「わ、私は大丈夫!」
直ぐにじゃがんだ状態から体を起こし、野犬と向き合いました。野犬は静かに唸って、その赤い目で此方を見ています。 攻撃する機会を探しているか、それとも恨んでいるのどちらかです。流石に長期戦になると、此方がきつそうです。 何か、武器があれば・・・そう思っていれば手に当たる、冷たい感触がありました。剣です。それ程長くはないですが、 私の腰にささっている剣がありました。私は迷わずに引き抜いて、野犬に向き直ります。エシュター君のを見て覚えた構え。 ただ普通に剣を持っているようですけど、現在の構えは左足を一歩下げ、大股に足を開け、剣は両手で持ちます。 これはエシュター君の構え、私の構えではないのに、少し落ち着く・・・そう思ったのも束の間、野犬が跳び掛かって来ました。 自慢じゃないけど、私は記憶力が良い、剣闘大会の時の、教頭先生の竜王の舞い。竜王の舞いの十連撃は無理かも知れないけど、 三連撃なら私のスタミナでも付いていける筈!まずは教頭先生の構え。剣を頭と同じ位の高さで両手で持ち、 ゆっくりと剣を地面と平行にします。野犬が、剣の範囲内に入りました。まずは、突きで相手の動きを止めて一撃、 剣を右手で剣を持って、そのまま弧を描くように、右斜め三十度くらいで剣を振り下ろしニ撃、振り下ろした時の回転力を利用し、 そのままくるりと一回転して平行に斬り付けて三撃、動きを止めます。野犬は地面に倒れて、動きません。それもその筈です、 ”殺した”のですから。野犬の頭には、大きな穴が開いていました、最初の突きで開いた穴です。野犬の半分は少し離れていました。 ニ撃目でほとんど意識はなかったでしょうけど、恐らく三撃目が止め、基野犬の体が半分離れた結果になったのでした。 野犬の体を半分にしたことで、腸や内蔵など、見たくない物が多数、見えてしまっていました。
「う!・・・・・!」
口を抑えて、堪えていましたが、無理でした。思いっきり地面に降り注がれるそれは、嘔吐でした。 何時もの病気が原因の嘔吐ではなく、気持ち悪い物を見たというものと、私が殺した事による罪悪感によって引き起こされた 嘔吐でした。
【大丈夫か!?、シーナ!】
「ゲホッ!ゲホッ!」
それから私は、クロウさんに返答も出来ず、ずっとずっと咳き込んでいました。三十分ほど経って、やっと落ち着いてきました。
「ケホッ、御免なさい、クロウさん・・・心配掛けて」
私は咳き込みながら、クロウさんを見てそう言いました。急に最初の戦闘から、この調子ではやっぱりクロウさんも、 不安になるのは分かっていました。分かっていましたけど、
【シーナ、別に無理をしなくても良い。最終的に結果が良ければ良いのだ】
クロウさんはそう言って、私の調子の回復を待ってくれました。私が完全に調子を取り戻すまで優二十分を使ってしまいました。 期間が限られている旅なのに、クロウさんは静かに地面に横になって何も言いませんでした。クロウさんの心は凄く広いとこの時、 思っていました。
「ありがとう御座います、クロウさん」
【調子はどうだ、シーナ】
「おかげさまで、凄く楽になりました。ありがとう御座います」
私は恐らく、いやきっと微笑んでいるのでしょう。嬉しいです。クロウさんの言葉に同情などはなく、必要最低限の事と+α、 情報と助言と少しの気遣いが、クロウさんの言葉でした。
【南の方向に多数の人間の臭いがする】
「うん、わかった。まずは其処に行ってみようかな」
【何処を如何行くもシーナ次第、それに我は付いていくだけだ】
私は歩き出します。クロウさんも起き上がって私の隣を歩きます。何も言わずに。 でも心の中では思っていました。ありがとう、クロウさん、と。
私達が居た森の直ぐ側にあったのは、街でした。大きくもなく、小さくもなく、何処も普通の街です。 早速街に入り、入り口の門番さんから貰える薬を全て貰っちゃいました。特に門番さんは何も言わなかったので、 そのまま薬をポケットの中に入れて、ほんの少し進んだ時のことでした。奥から凄いスピードで此方に走ってくる姿、 凄く慌てたような感じの兵士さんでした。
「うおおおおお!其処退いてくれえええぇぇぇ!」
このまま立っていたら、確実に兵士さんとぶつかってしまいます。私の能力が全般的に上がっているのは、 ついさっきの森の戦闘で明らかでした。私はある本の、ある技、そして形を思い出して、構えます。 右足を一歩前に出し、腰を少し落として中腰にして、両手を開き、前の兵士さん相手に手の平が見えるように構えます。 右手の方が少し前に出て、左手の方は右手より少し下がった位置に止めます。兵士さんは走りを止めません。目の前で、 もう直ぐぶつかるという位置で、手を動かしました。右手は、兵士さんの首元にある鎖帷子を掴み、左手は、 兵士さんの鎧と鎖帷子の間に指を滑り込ませて、兵士さんの勢いに乗るように後ろに倒れながら、兵士さんのお腹の辺りに足を当てて、 背中が地面に着いたと同時に手を放しました。
「ヤァ!」
綺麗な半月を描くかのように、兵士さんは私の後ろへと倒れます。柔道の本で見て、少し試してみたいと言う意識があった、 巴投げと言う投げ技です。流石にこの技をまともに、しかも助走が付いた状態での巴投げの威力は凄いです。そして兵士さんは、 白目を向いて、気絶。その様子を吃驚したように見ている門番さん、そして唖然としたクロウさんは、
【シーナ、お前手加減を知らないな】
手加減無し、超記憶少女シーナとして、今日この物語が始まりました。
根性の無い後書き
MADAOだよー。性懲りもなく書いてみました。 今までエシュターが主人公、アルバートがありましたが、 シーナがないです、ホワット?私にはわかりませんが書きました。 暇潰しになれば幸いです。
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