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炎の生贄  プロローグ <カラス> 04/15 (10:44) 7451
  炎の生贄  第1話「黒ローブ」 <カラス> 04/23 (00:16) 7452
  炎の生贄  第2話「隠れ家にて」 <カラス> 04/23 (00:17) 7453
  炎の生贄  第3話「リーリルの騒動」 <カラス> 04/23 (00:18) 7458
  炎の生贄  第4話「青瞳の青年」 <カラス> 04/23 (00:18) 7464
  炎の生贄  第5話「夜、隠れ家」 <カラス> 04/23 (00:19) 7466
  炎の生贄  第6話「同行」 <カラス> 04/23 (00:19) 7467
  炎の生贄  第7話「結界」 <カラス> 04/23 (00:20) 7473
  炎の生贄  第8話「洞窟の怪物」 <カラス> 04/23 (00:27) 7488
  炎の生贄  第9話「白い女性、選ぶ道」 <カラス> 04/23 (00:34) 7497
  炎の生贄  「白い部屋にて」 <カラス> 04/23 (00:39) 7512
  炎の生贄  第10話「数日前の記憶」 <カラス> 04/23 (00:48) 7525
  炎の生贄  第11話「惰眠医者、宿屋にて... <カラス> 04/24 (19:18) 7530
  炎の生贄  第12話「フレイのリーリル孤... <カラス> 04/28 (19:00) 7538
  炎の生贄  第13話「頼みごと」 <カラス> 04/28 (19:05) 7569
  炎の生贄  第14話「サーショへ」 <カラス> 05/06 (15:29) 7577
  炎の生贄  第15話「連れ去られる男」 <カラス> 05/06 (15:33) 7584
  炎の生贄  第16話「森を抜けて」 <カラス> 04/15 (12:27) 7600
  炎の生贄  第17話「トカゲ砦」T <カラス> 04/30 (01:57) 7604
  炎の生贄  第17話「トカゲ砦」U <カラス> 04/30 (02:02) 7624
  炎の生贄  第17話「トカゲ砦」V <カラス> 04/30 (02:07) 7645
  炎の生贄  第17話「トカゲ砦」W <カラス> 05/04 (19:30) 7694
  炎の生贄  第18話「茶色の」 <カラス> 05/22 (16:55) 7736
  炎の生贄  第19話「銀狼」 <カラス> 05/24 (00:28) 7748
  炎の生贄  第20話「薄ぼんやりの黒衣装... <カラス> 06/17 (10:03) 7778
  炎の生贄  第21話「招待状」 <カラス> 07/03 (01:44) 7789
  炎の生贄  第22話「生意気な兵士」 <カラス> 09/05 (19:17) 7842
  感想 <LADEN> 03/22 (13:17) 7459
  かーんーそ〜〜 <マジカルパレス...> 04/03 (09:38) 7513
  かーんーしゃ〜〜 <カラス> 04/03 (17:34) 7519
  感謝! <カラス> 03/22 (13:32) 7461
  感想! <ようすけ> 03/30 (23:35) 7494
  感謝! <カラス> 03/31 (00:02) 7495
  感想ですか? <ようすけ> 03/31 (03:10) 7499
  感謝ですか? <カラス> 03/31 (14:55) 7502
  感想射出 <ようすけ> 04/03 (12:11) 7514
  感謝射出 <カラス> 04/03 (17:53) 7520
  荒れ狂う嵐の中彼は何を思うのか(感想です... <マジカルパレス...> 04/04 (12:52) 7528
  長い!(感謝です) <カラス> 04/04 (13:20) 7529
  感想だからさ <ようすけ> 04/04 (22:49) 7537
  感謝だからさ <カラス> 04/04 (23:43) 7541
  ひとしきりの雨の後の太陽、ソレは彼等を包... <マジカルパレス...> 04/05 (07:52) 7543
  あ、iPodが!!(感謝 <カラス> 04/05 (17:50) 7547
  カン・ソウ <ようすけ> 04/05 (18:51) 7549
  カン・シャ <カラス> 04/05 (20:18) 7555
  落ちし雷、それは何を示すのか・・・(感想... <マジカルパレス...> 04/07 (21:15) 7575
  何を示すんだろう;(感謝) <カラス> 04/07 (22:30) 7576
  感想でしょう? <ようすけ> 04/08 (17:41) 7588
  感謝でしょう? <カラス> 04/08 (18:00) 7589
  巻き起こる烈風、それは全てを飲み込まんか... <マジカルパレス...> 04/08 (19:00) 7591
  唸る烈風の轟音の中、独り弓引く紺色の豪傑... <カラス> 04/08 (21:10) 7595
  『背中』、合わせる事は絆の証。(感想) <マジカルパレス...> 04/16 (19:21) 7605
  感謝! <カラス> 04/21 (19:31) 7610
  その質問、私がお答えしましょう!(←誰だ... <マジカルパレス...> 04/22 (12:49) 7613
  回答ありがとうございますー <カラス> 04/22 (19:03) 7615
  感想っす!!だらっしゃああい!! <マジカルパレス...> 05/01 (20:44) 7683
  感謝ですー <カラス> 05/01 (22:36) 7685
  かっんそーだぁー! <マジカルパレス...> 05/04 (20:43) 7695
  かんっしゃです(何 <カラス> 05/06 (14:32) 7714
  感想しました <もげ> 05/06 (10:47) 7710
  感謝しました <カラス> 05/06 (14:40) 7715
  いまさら感想 <もげ> 06/02 (11:36) 7762
  2日遅れで感謝 <カラス> 06/04 (21:58) 7764
  お久しぶりです、こんばんわ <マジカルパレス...> 06/12 (22:05) 7771
  こちらこそお久しぶりです <カラス> 06/13 (00:38) 7772
  感想っす! <マジカルパレス...> 06/17 (20:26) 7779
  感謝です <カラス> 06/21 (19:28) 7781
  お久しぶりです、感想です <マジカルパレス...> 08/20 (20:52) 7844
  ほんと久しぶりですね、感謝です <カラス> 08/20 (23:26) 7846
  感想だどす! <asd> 12/08 (00:18) 8009
  感謝のような言い訳のような <カラス> 01/19 (00:41) 8033
  カラスさんへ <asd> 01/19 (22:47) 8034

7525
炎の生贄  第10話「数日前の記憶」 by カラス 2007/04/23 (Mon) 00:48
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炎の生贄  第10話「数日前の記憶」










だだっ広い、坦坦とした野原が広がっていた。

陽光を受けて、鮮やかな緑をさらし、時折吹く微風で波打っている。
微風は爽やかで気持ちよかった。
強すぎず、弱すぎず。
汗の滲む肌には心地よい、ちょうどいい風だった。だったのだが……

ルルのほうは、もっと強い風が吹けばいいのに、と思っていた。



「そろそろ休まねえ?」

黒ローブではなく、フレイのような旅人が着る衣服を身に着けたルルは、汗だくになりながら苦しそうにそう言った。
蒼いマントがよく似合っている。
大分前を歩いているフレイは、

「まだ早い。そんなにたくさん荷物を持ってくるからだ」

と言って、前を向いたまま面倒くさそうな顔をした。
対してルルは、

「ちょっとは代わってくれよ……」

と、助けを求めるような顔をしている。

ルルはやけに大きな鞄のような、袋のようなものを背負っていた。
というより、まるでそれに背負われているかのようだった。
中には武器やら服やらがいろいろ入っている。
当の本人も、自分の物がこんなに多いとは思わなかった。
それだけ隠れ家ですごした時間が長かったということだろうか。

「しょうがないな……」

フレイは「代わってくれ」というルルの願いはことごとく受け入れないでいたが、今回は少し同情してしまい、荷物を持つことにした。
しかし、その選択は大きな過ちとなることを彼は知らない。

「さんきゅ。ふぅー、重かったー」

ルルは急に顔全体に笑みを浮かべ、腕やら肩の間接を伸ばしながらそう言った。
フレイは踏ん張って荷物を持ちながら、

「あとちょっとしたらまた持つんだぞ」

と言うのだが、

「えっ、最後まで持ってくれるんだろ?」

ルルはからかうようにそう言うのであった。
もう絶対にこの荷物を持つ気はルルには無い、とフレイは察した。
どうやったらこんなことを昨日知り合った自分に言ってしまえるのか。理解しがたい。
まあ、それはそれで親近感は沸くが……。

(まったく……仕方の無いやつだ)

フレイは大きく吐息を漏らした。






それから数分、何にもない野原を二人は歩いていたが、変わらない景色がつまらなくなったのか、突然ルルはこう切り出した。

「そういえば、フレイって何のために旅してんだ? 目的とかあんのか?」

フレイについてきたはいいが、再びリーリルに行くということしかルルはまだ聞いていなかった。
別に放浪の旅でもいいが、目的ぐらいはあるだろう。

「……なかなか面白い質問だな」

フレイはそう言って、ふっと笑った。

「俺、そんなに面白い質問したか?」

ルルは不思議そうな顔をする。

「いや、いろんな意味で面白いんだ。それにしても『何のため』か」

フレイは立ち止まり、「……何のためなんだろうな」と呟き、腕組みをして考え出した。
ルルも止まって、フレイの次の言葉が出てくるのを待った。
沈黙が数秒続くと、フレイは口をあけた。

「洞窟の奥で会った、リクレールを覚えてるか?」

ルルの頭の中に、白い女性が浮かび上がる。
「覚えてる」とルルは言った。

「俺がこうやってここにいるのは、あいつがいるからだ」

フレイは空を少し仰いで、呟くようにそう言った。

『俺がこうしてここにいるのも、リクレールのおかげだ』
洞窟でフレイがそう言っていたのをルルは思い出した。

「よし、俺の話を少ししてやろう。退屈しのぎにはなるだろう」

フレイは思いついたように言って、その場にあぐらをかき、ルルにも「座れ」という合図を眼で送った。
ルルもあぐらをかき、耳を傾ける。

「信じられないかもしれないが、話すぞ」

いつになく真剣な眼差しをしているフレイに、ルルはこくりと頷いた。

「数日前のことだ……俺が『あいつ』と出会ったのは」

フレイは静かに語り始めた――














「目が覚めましたか」

女性の透き通った声が、不意に届けられた。
思わず目を開けてみる。
が、あまりの眩しさに目を閉じた。

「暗いところにいたのですから、無理もありません」

女性の声はやさしくそう言った。
ゆっくりと青年は目を開けていった。
そこには白い肌に白い髪をして、白い服を着た女性が姿勢よく白い椅子に座っていた。額からは白い角が生えている。
もしかして、この女性が眩しかったのかもしれない、と青年は思った。

青年は部屋を見回した。
部屋は全体が白に統一されていて、椅子が部屋の中央に対置しているようだった。
そして、自分と女性は椅子にすわり、対座しているのだった。
だが、
――いつから?
わからない。気がついたらここにいた。

「あんたは……誰だ」

青年はぎこちなく口を動かして、なんとか声を出した。
女性の口が小さく動く。

「私はリクレール」

『リクレール』……彼には聞いたことの無い名だった。
再び、リクレールと名乗る女性は口を動かした。

「トーテムに呼び覚まされし、全ての生命を導く者です」

『トーテム』……どこかで聞いたことのあるような言葉だった。

「そうか……。なら次はこう訊こう。俺は……誰だ」

そうだ。
俺は一体誰なんだ。
わからない。
なにも思い出せない。
記憶にまるで大穴でも空いたかのように……いや、それだけでは済まない。
それまでの記憶がまったくと言っていいほど無いのだ。

「あなたは、『意識の海』を漂っていました」

リクレールはそう言った。

「『意識の海』……?」
「そうです。それも、他とは違うように」
「他……他がいるのか」
「います。命の旅を終えた、生命の意識です」

命の旅を終えた、生命の意識。
……よくわからない。
死者の魂のようなものだろうか。

「俺が他とは違う、とはどういうことだ」

次なる質問を青年は投げかけた。

「あなたは、全ての意識が変容する『意識の海』で、原形をとどめた意識でした」
「原形をとどめた意識……?」
「はい。あなたは元の形が残っていました。それが今のあなたです」

話を聞くたびに頭がこんがらかる。

「こちらから質問してもいいですか?」

リクレールは顔を近づけてきてそう言った。
あまりに突然だったので、青年は驚き、のけぞるようにして背中を椅子の背につけた。
すると、何故かリクレールもビクッとしてのけぞった。
彼は何故かそれが面白くてふっと笑った。

「あ、す、すいません……慣れていないもので……」

リクレールは恥じらいながらそう言った。

「質問でしたね……。あなたは……えぇと、性別はどちらなのですか?」

真顔でそんなことを聞くリクレール。
青年は見た目でわからないのだろうかと思いつつも「男だ」と答えた。

「次は……名はなんというのですか?」

名前……

「自分が誰なのかわからない俺が、名を持っていると思うか」

青年はそう答えていた。

「あ、そうですよね……それでは私がつけて差し上げましょう」

リクレールは口に少し手を当てて、考える仕草をした。
そして、口を開ける。

「『ゴンベエ』なんてどうですか」
「……」

ゴンベエ。
ふざけているのだろうか。
真剣に彼はそう思っていた。

「あ、ダメでしたか……」

リクレールは困った顔をしてまた考える仕草をする。
そして、今度は何かを思い出したようにはっと目を見開いた。

「そういえばあなたにはトーテムのような『力』がついていましたね」

いきなりそんなことを言われてもわからない。
青年は「わからない」という表情をした。

「私にはわかります。そもそもそれが無ければあなたを呼び出すことは無かったのですから」
「……その『力』はなんだ」

リクレールは一呼吸を置いて、「炎です」と言った。そして、続ける。

「あなたには……『炎』が宿っています。時には優しく包み込み、時には肉を貪る生きた『炎』が」
「炎……」
「そこで、あなたの名前はそこからつけようと思います」

俺の……名前。

「これからあなたは」




――フレイと名乗ってください












「そして俺はこの大陸に降りた。あいつが俺に任せたことは謎の『力』の探知だった」

フレイはそう言うと、空を仰いだ。
そして、しばらく黙っていた。
やがてルルを見て、口を開ける。

「信じられない……よな」
「当たり前だろ、そんなの誰が信じんだよ」

ルルがすかさずそう言った。
そう、誰がこんな話を信じるのか。
それまでの記憶が無い、目を開ければ女と白い部屋にいた、そして最近この大陸に降り立った――
そんなバカな話、誰が……
しかし、視線を少しルルは落とし、すぐに小さくこう付け加えた。

「でも俺は信じる」
「なっ……」

これにはフレイは驚きだった。
まさか信じるとは。
こんな奇天烈な話を信じるやつがいたなんて。
誰に話したって信じてもらえないと思っていたのに。

だが、そんな驚きの反面、フレイは嬉しかった。
今まで、フレイは一人だった。
さびしかった。
たった一人の、先の見えない旅ほどさびしいものは無い。
だが、今は二人だ。
そして、自分を信用してくれている。
いや、信用とはいかないまでも、少なくとも自分がした話を信じてくれているのだ。

「何変な顔してんだよ。俺はフレイについてくんだから当たり前だろ」

ルルは顔を上げ、いかにも当然そうにそう言った。

「お前ってやつは……面白いやつだな」

フレイはそう呟いた。
ルルの言葉がなにかありがたかった。



それから数分して、二人は立ち上がり、リーリルを目指して再び歩き始めた。

ルルは手ぶらで、フレイは荷物。

そんな光景はなんにも変わってはいなかった。

だが、確実に何かは変わったのだろう。

目には見えない何かが、確実に――









あとがき



カ「どうも、カラスです!」
フ「フレイだ」
ル「ルルだよ」
カ「とりあえずここまで読んでくださってありがとうございます!」
フ「感謝する」
ル「感謝感謝」
カ「それにしても疲れた……」
フ「今回はなかなか長めだな」
ル「でも俺は話を聞いてるだけだったよな」
カ「フレイ君の回想だから仕方無いだろう」
ル「しかも全体がフレイ視点ってのはどうなってんだ?」
カ「仕様です。章や区切りによって切り替わるようになってます」
フ「そうなのか。別に何も考えていないと思っていたが」
カ「(ギクッ)」
ル「しっかりしろよ、作者」


カ「ちなみに、フレイ君は『災い』を止めるためにシルフェイドに降りたのではありません。
  あくまで、リクレールが感じだ謎の『力』の探知です。いまのところは、ですけどね。
  とりあえず今後明らかにされていきますので次章ご期待!」
ル「あんま期待しないほうがいいとおもうな」
フ「俺もそう思う」




四月四日 文章一部改訂
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