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君の瞳には何が映る? 君の耳には何が聞こえる? 君の鼻には何が香る?
少しでもいいから教えてほしいんだ。 君のことを。君が住む世界のことを。 それが僕の世界を照らす光だから。
僕の感覚は未だ閉じられてしまってる。 でも恐れない。迷わない。 直に訪れる朝の明るさを僕は知っているから。
君はこれから幾度も困難に立ち向かうだろう。 時に傷つき、時には傷つけ、心が体が痛みを訴えるだろう。 そんな時は思い出して、僕がいつもそばにいるから。
だから迷わず踏み出してごらん。 方角なんて決めなくたって構わない。 どこにたどり着いたとしても、君自身がそれを誇れる旅路にすればいい。
もう一度言うよ。何度でも言うよ。 僕はいつでも君のそばにいる。 だから君は、その一歩を恐れないで。
どうにもならないって思ってた。 何度やり直してみても、敷かれたレールからは逃れられない。 私にできることは、ただただ連結部で適切な判断を下すだけ。
繰り返す日常、変わらない仲間、退屈な日々。 永遠はあるとその頃の私は思っていた。 ただしそれは自由の園ではなく、単なる牢獄として。
でも、最近こう思うようにもなってきた。 たとえレールから逃げ出したとしても『脱輪』なんて笑えない。 くだらない日常だとしても、それで乗客が満足してくれるならいいじゃないか。
運命に従って何が悪い。 どうして道を自分で切り開かなくちゃならない? 誰にでもできると思ったら大違いだ。
要はそれを自分自身が誇れるかどうか。 私は運命の放浪者ですと、胸を張ってそう言えるかどうかだ。 卑屈ではなく、本当に心からそう思えるかどうかだ。
もう一度言おう。何度でも言おう。 私は運命を生きている。 だから私は、何物にも迷わない。
かくして物語の幕は上がる。 演ずるのは僕。君はただそれを見ているだけでいい。 柔らかい客席から、どうか僕の舞を見守っていておくれ。
ただ、もしも君が僕に何かを感じたのなら―― その時は、どうか素直にそれを言葉にしてほしい。 それこそが僕に力を与えてくれるのだから。
さぁ、準備はいいかい? それではそろそろ開演だ。 始まりの言葉は、君もよく知っている言葉だ。
――意識の海に漂う、そこのあなた・・・。 ――私の声が、聞こえますか?
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