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Agitator プロローグ by 桜崎紗綾 2009/03/29 (Sun) 21:15
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    プロローグ




「じゃあ…さよなら」


この一言が、あの子が言った最後の一言だった。
オレの前から背を向けて立ち去って行った彼女の姿は、だんだん薄れていって、すぐに消えてしまった。

妖精さん、だったの?

だったら嬉しいな。
オレは妖精さんに会うことができたんだ。オレが想像していたように、妖精さんはとても綺麗だった。

一緒に旅をしたかったから、少しだけ寂しいけれど、きっと、また会えるよな…。


トカゲ人がもういないらしいから、これからは多少は安心して薪を拾えると思うと、余り悪い気がしない。

さぁ、行こう。
またあの子に会えるかもしれないから。

オレは町で必要な物を買い揃えて、歩き出した。野犬はいるようだからできるだけ森には入らないけど、前ほど怖くない。

町を出て少し歩き始めた頃。

突然、後ろから、黒い影が現れた。戦い馴れてないオレはすぐに剣を引くことができない。その僅かな隙に、オレはその影に殴り倒された。

抵抗する間もなく、オレは殴られ、蹴られ、視界が白く霞み始めた。たぶん複数だな、などと客観的に思いながら。

ちょっと待て、オレの何が悪いんだ。

そんな言葉が頭を過ぎった時には、もはや、痛みすら感じなくなっていた。



   *



辺りは闇に包まれていた。

あぁ、オレ、死んだんだ。何だかよく分からない集団に襲われて。

だったら何故、意識があるんだ。だったら何故、闇が見えるんだ。

いや、むしろ…『死ぬ』って何だ?

人は死を恐れる生き物だ。だけど、それは一度も死んだことがないからで、人は経験のないことには恐怖を感じるものである。だって、何が起こるか分からないから。
死がこの程度のことなら、別に怖くも何ともない。

ただ、感覚は何もない。
温度は、ただ無だ。手を伸ばそうとして、手がないことに気付く。歩こうとして、足がないことに、地面がないことに気付く。


『意識の海を漂うそこのあなた、私の声が聞こえますか?』


え?
何か、声っぽいのが聞こえた?

違うな、これは、『オレ』が、感じてるんだ。


「聞こえ…ます」


オレは声を出そうとしたが、失敗した。それで分かった――身体がないんだ。


『私はリクレールといいます。これから私の言うことを聞いていただけますか?』


返事らしき声が返って来た。テレパシーみたいな感じなのかな?
話している人は、女の人のような細い声をしていた。


「オレでよければ。でも、先に教えてよ。オレは、帰れるの?」

『それは…』


その返事で、オレは帰れないと直感した。きっと初めから答えは出ていたんだ。
確認しなきゃ納得できないなんて、人は馬鹿な上に弱い生き物だな。


「…ごめん、悪いこと聞いた。初めから分かってたのに」

『すみません…。ただ、もう一度だけ、あなたに身体を与えることができます。あなたに、していただきたいことがあるから』

「話は聞くよ」


一瞬、オレを殺したのはこの人なのかと疑った。オレに何かをさせるために殺したのではないか、と。
いや、だとしたらもっと適任がいるに違いない。
オレは単なる通りすがりのようなものだろう。なら、それは「オレにしかできないこと」ではない。むしろ「オレでもできること」だ。


『あなたが住んでいた世界の、100年後の未来にいる、ある人物を守ってほしいのです』


具体的にどうやってかは、聞くだけ無駄な気がして来た。知ってたら、彼女は自分で対処できるから。

でも、それはオレじゃなくてもいいような? 別の人でもできるだろうに。

例えば、そう、ナナシさんとか。

オレは、たぶん、妥協されている。でも、自分が死んだらその後はどうでもいいとか、そんなエゴは、言えない。それが、単なる偽善にすぎないことは、わかっていたけれど。

本当に助けて欲しい時、人は、誰でもいいから手当たり次第救いの手を差し延べてくれる人を探すんだ――リクレールさんみたいに。


「オレ、そんな力ないよ。それでもいいの?」

『ありがとうございます…!』


そんな風にお礼を言われると、照れるな。ただ、悪くはない。言ってよかったって、そう思えるから。


『早速ですが、あなたの名前を聞かせて下さい』

「アーサ」

『アーサさんですね。あなたに力を与えるオーディというトーテムを授けましょう』

「トーテムって?」

『あなたに力を与えるものです。戦う力。水辺を渡る力。そして、普通の人には見えない存在ですが、あなたは彼の言葉を解することすらできます』


難しい。ただ、取りあえずトーテムがいれば強くなって、楽に泳げて、喋ることができる。で、その名前がオーディという。何とか整理できた。

もう大変なことになっている。それでもいい。オレは生きて、(これは妥協だが)気ままじゃなくてもいいから旅をしたい。ナナシさんが、あの子がいた世界を、旅をしたい。

頑張ろう。死んでも自分を必要としてくれる可能性なんて、そうそうないもんな。


『次に、あなたに15個の命を差し上げましょう。あなたは、15回だけ命を落とすことができます。落とさずに済めばその方がいいのですが、何しろ危険ですので』


こちらの意味はすぐにわかった。人を守るのに15回も死ぬって、だいぶ世話ない気がするけど。


『最後に、あなたの身体は本来あなたが持っていた容姿そのままになります。いいですね?』

「いや、むしろ違う方が嫌だな」

『わかりました』


リクレールさんの姿は見えなかったが、何となく微笑んでいるような気がした。そして、きっと、その笑顔はとっても綺麗なんだ。


『さあ、旅立ちの時が来ました。あなたが世界に降り立つ時が――』


その後はもう、感覚がなかった。白い光が溢れ出て来て、オレは、その光に全てを委ねることにした。



   *



降り立った先は、森の中だった。

オレは生きている。大地を踏み締め、呼吸している。当たり前のことだったのに、生きるって本当に素晴らしいことだったんだ。


『アーサさん、聞こえますか?』


リクレールさんの声。オレは振り返り、頷いた。
その女の人は、白い髪にユニコーンの角を持った、とっても綺麗な人だった。そして、周囲に光が溢れている。この人は、やっぱり、『特別』なんだ。


『ここが、あなたが生きた時代より百年後のシルフェイドです。あなたはここから、旅立っていただきます。大丈夫ですか?』

「大丈夫。旅だけは馴れてるから」

『ふふ、心強いお返事ですね』


それが心強いのかはわからないけど? どっちでもいいか。どっちみち、まずはオレが守らなきゃいけない人を探すところから始めたのに。


『それでは、あなたの旅に、幸在らんことを――』


リクレールさんは、静かに告げて、ゆっくりと消えてしまった。


《アーサ殿、拙者の声が聞こえますかな?》


振り返ったら、そこには小さな可愛いカワウソがいた。しっかし、渋い声してんなぁ。


《拙者はそなたのトーテム、オーディなる者でござる》

「うん。これから色々お世話になると思うから、よろしく」


この渋くて可愛いカワウソがトーテムなのか。なんか不思議だ。


《む…。では、参りますぞ。まずは森を抜けねばならぬ、あっちだ、アーサ殿》


オーディはオレに指示を与えて、先に行くように促した。

よし、考えても仕方ない。
出発、進行!







  後書き的なもの




これでよかったのかな…。
とか何とか言いながらこんにちは、桜崎紗綾です。

4月から某夜間大学生になりそうです。ここに来るのも昼ごろになるんでしょうな。

笑える話を書きたいのになかなか書けない。自分を元気にしたくてギャグを書こうと何度も思います。でも、やっぱりシリアスに展開しちゃいます。
誰か気楽なギャグの書き方、知りませんか?

と、冗談はさておいて。

全国のアーサファンの皆さん。殺してしまって申し訳ありません! 私もアーサファンの一員です!

アサナナを書くつもりが、こんなことに。
二つあるアサナナ候補から、より明るい方を選んだらこんなことに。もう一つは、はっきり言って悪質な上に書きづらいんです。

えっ? 書いて?(言ってないよ)…検討します。

さて、これからは気の向くままに更新して行きます。

では、失礼しました〜!
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