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Agitator 第四章 邂逅 by 桜崎紗綾 2009/05/19 (Tue) 11:43
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   第四章 邂逅




午後7時を回った。


「暗くなりましたね。今日の探索は諦めましょう」

「本部に帰る?」

「いえ、明日もこの付近から探索します。二度手間になり兼ねませんから、近くの宿に寄りましょう」


ヴァイオットは森の中に建っている宿に向かうことを提案した。アリスもアーサも断る理由がないので、それに従った。大陸東部において数少ない宿の一つだ。


(…て言う感じで、反乱軍の人達も朝から夕方にかけて探してんじゃないかな…)


アーサは一度振り返って、場所を覚えるために周囲を見回し、二人の後に続いた。



   *



午後10時を回った。

一度も森に入ったことのない時間だが、アーサは細かいことを気にしなかった。


(宿を抜け出すまで喋っちゃ駄目だ、オーディ。あの二人には『聞こえ』ちまうからな)


アーサは静かに宿を抜け出した。アリス達には黙っている。その方が良さそうだからだ。
鷺の団を完全に信頼しているわけではない。何も知らないアーサを騙している可能性を捨てる訳にはいかないのだ。

トーテム能力者は睡眠時間が多少少なくても、さほど問題ないらしい。念のために日付が変わる前に戻ることに決めた。夜風に当たりに行き、戻るくらいの時間にすれば丁度いい。


《アーサ殿、聞こえますかな?》


オーディに言われ、アーサは立ち止まる。草を踏む彼自身の足音で聞こえないのかもしれない。


(…足音。草を踏む音が聞こえる。野犬か…?)


近付いて来ている。アーサは一応剣の柄を掴んで、その気配を待ち構えた。

足音の速度が急激に上がった。すぐに、二種類の何ものかが走っていることが分かった。


《誰かが誰かに追われている構図と思われますぞ》

(まさかの一発ビンゴ?)


アーサは自分の強運ぶりに驚きながらも、足音が聞こえた方向に走った。

足音が止まった。恐らく、追い詰めたところだ。アーサは足を速めて、素早く現場に近付いた。

状況はすぐに分かった。
少女が反乱軍の夜勤兵士に追い詰められている。何があったかは分からないが、アーサは狼藉を赦したくなかった。そして、少女を助けられる程の力が、今の彼にはあった。


(相手は5人。よし、そのくらいなら!)


アーサは急いで彼らの元に駆け込んだ。


「女の子一人相手に、何してんだよ!?」

「誰だ、このガキ!」

「ただの通りすがりだ!」


アーサは剣を抜いた。少女を庇うように割り込んだ。


「おい、男は殺していいが、女は生かして捕らえろよ。あの娘は、探し求めたお姫様だからな」

(お姫様? この子が、例のナフィルカーナ姫…?)


彼は連携して襲い来る兵士を迎え撃った。兵士が切り付けて来る。避けることは不可能ではないが、後ろの少女(王女?)に当たるだろう。アーサは正面から攻撃を受け止めて、一人を袈裟懸けに斬り倒す。


「おい! このガキ、素人じゃないぜ。応援を呼んで来るからな、お前らここを押さえてろ!」

(増援来られたらまずいな)


一人が走り出し、残り三人になった。


《相手の砦の所在は分かりませぬが、後20分で処理せぬとまずいことになるかも知れませんぞ》


アーサは一人を突き倒し、一人を薙ぎ倒し、最後の一人は切り上げた。素早い動作だったので少しの間呼吸を整えてから、彼は剣を戻し、後ろの少女に振り返った。

綺麗な黒髪、黒いタイトドレス。女性としては長身だと思ったが、よく見たらヒールの高い靴を履いている。
束の間、アーサは彼女の顔に引き込まれた。


(ナナシさん…?
 いや、まさか、…)

《アーサ殿》

(あ、うん。分かってる)


彼はどうにか落ち着いてから、少女に声を掛けた。


「もう大丈夫、って言いたいんだけど、反乱軍の奴がまた来るはずだから」

「分かるわ。一人、増援呼びに行ったから」

「(声までそっくりじゃん)オレのこと、信用してくれないかもだけど、少なくとも今は君の敵じゃない。とりあえずここから逃げたいんだけど、いい?」

「今はあなたを信用するわ、通りすがりさん。でも、その前に」


通りすがりさん、という言われようは少し引っ掛かったが、確かに通りすがりだと宣言したのはアーサ本人なので、彼は深く気にしなかった。
少女はアーサに何かのフォースを使ったようだ。彼が受けた傷が全て癒されてゆく。


「『完治』のフォースよ。あたしのために受けてくれた傷だもの、責任は取らなきゃ」

「ありがとう。とりあえずこの森を抜けるまでは走るけど、それでいい?」

「大丈夫よ」


アーサは少女の手を自然に取って、走り出した。
彼女は、高いヒールに馴れた様子で懸命に走った。



   *



予定の0時を過ぎていた。
二人は森を抜けて、シイル南部に辿り着いていた。


「…で、さっきの兵士が君を『お姫様』って呼んでたけど…」

「そうよ」


少女が溜め息をついた。
これまで散々昼夜を問わず、追われていたことへの疲れがあるかもしれない。確かに、王女に生まれただけで追われるようになるというのも、憐れな話である。本人は王女に生まれることを望んでいないのだ。


「あたしはナフィルカーナ・ナディア・シレストジャー・バーンディスト――バーン王女よ。
 護衛と逃げていたのだけど、途中ではぐれてしまったの。彼は強いから、生きてると思うのだけど。
 あなたは?」

「アーサ。成り行きで反乱軍を敵に回しちゃった旅人だよ」

「それは大変ね」


アーサは肩を竦めた。


「で、これもまた成り行きなわけだけど、鷺の団の人達と協力して君を探してたんだ。その人達と取っている宿があってね、ひとまずはそこに…」

「分かったわ。鷺の団は昔から好きじゃないけど、仕方ないわね。案内してくれる?」


好きじゃない? 有名な義の傭兵団が?

アーサには疑問が残ったが、深い詮索をやめてナフィルカーナ姫を案内しようとした――その時。


「その必要はありませんよ」


不気味なほどにゆっくりとした足取りで、アリスとヴァイオットが近付いて来るのが見えた。途端にアーサには全てが読めた。


「最初から、だよな? オレを騙してたのは」

「今更ですか?」


ヴァイオットは冷たい声で呟いた。その柔らかい物言いは決して変わっていない。


「おかしいと思ってたんだよな。
 最初にアリスちゃんが狙われなかったのにも関わらず、『呪縛のアリス』は有名なんだろ? まずそこに矛盾がある。
 二人とも有名なのに、反乱軍が鷺の団の本拠地を攻撃してこないのも引っ掛かった。つまり、あんたら二人は反乱軍の敵ではない。
 反乱軍が南から、あんたらが北から来るなんて、何ともセコい挟み撃ちだよな。雑魚一人ならお姫様強奪も楽勝…ってか?
 大方、彼女を反乱軍に売って報酬をもらう算段だろ? やれやれ、汚い奴等だ」

「何をおっしゃいますか。傭兵は利を求めるもの。明日も見えぬ亡国の姫君よりも、反乱軍と手を組む方が金になる。当然でしょう?」


アーサは左にいるナフィルカーナ姫の左肩を掴んだ。そのまま彼女の首元に剣を突き付けた。彼は小声で「何もしないから」と彼女に囁いた。


「この姫様がどうなってもいいのかい?
 オレに攻撃するなら、とかは言わないけどよ。…少なくともフォースを使うと彼女も巻き込むよな。

 お姫様は生かして捕らえるんだろ? そうじゃなきゃ金にならない。生かして捕まえて、今王国を支持している人達への見せしめで公開処刑をするためには、無傷だとなおいい。

 あんたがオレを殺して彼女を捕まえるのは自由だ――と同時に、オレが彼女を守るのも自由だよな?
 人助けも正当防衛も関係ない。仮にも手を組んでる反乱軍をためらいもなく殺っちまうなんて最ッ低な奴等だ。そんな最ッ低な奴等と手を組むのはごめん被りたい。オレにもプライドはあるからね」










  あとがき


こんにちは、桜崎です。

なんなんだ、この話は、という愚痴は後にしてくださいねw
はじめからこうする方針でしたから。

そうですね…ついに、ついに、ナナシ姫が出て来てくれました。
といっても名称は「ナナシ」ではないのですが。

この物語もなかなか核心に迫ってくれません。
なおかつ作者が遅筆なんだ。いつ終わるかなんてわかりゃしない。

「携帯で書いてPCに転送」が基本スタイルの私は、この章の文字化けにショックを受けてました。
それがしばらく更新しなかった理由、もとい言い訳ということにしてください。

次章はクリードが出て来てくれる予定です。
シュナイダーはその次かそのまた次くらい、かな?

最近は皆勤賞の人(アルバート)を登場させようかちょっと迷ってます。どうでしょう?

最後に、ここまで読んでくださった方に感謝です。
で、もっと先を読んでくださるという方にはもっと感謝です。
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