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7713
春風 by もげ 2008/12/18 (Thu) 01:02
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 まえがき


 他人の世界と自分の世界には目に見えない確かな境界線がある。
 生活環境、趣味嗜好、行動理念、容姿風貌、立ち位置。
 10人がいれば10人の、100人いれば100人の世界がある。
 そして、そこに立ち入ることは出来ない。
 家族という密な共同体であっても個の世界を共有することはない。
 絶海の孤島のように閉じ、隔絶された個人の境界。
 果たしてそれは「孤独」ということなのだろうか……。



 この物語ではこの問いに満足いく答えを提供できると考えています。


 ……嘘です。


                                          2008/12/15 もげ















  春風















 <異世界 ---1--- >



 『我思う、故に我あり』っていうのは、いったい誰の言葉だったっけ?
 ショーペンハウアーか? ビンスワンガーとかヤスパースとかだっけ……解析幾何学の創始者だったよな、確か。
 世の中のあらゆるものは疑えるが、そうして疑い考えている自らの存在は決して疑い得ない。
 懐疑による自己存在の肯定である「考える我」の確実性を表す命題だ。
 ようするに方法的懐疑の末に導き出された「自分は確かに存在します」という哲学の根本原理なわけだが。
 そんな絶対的理論を以てしても、限りなく不確かな俺の存在を肯定することは難しい。何故なら。
 

 身体が存在しないから―――


 試しに手を動かしてみる。感覚は無く、当然のように手は動かない。
 そもそも、動く手も、それを確認するべき眼球すら最初から存在してはいなかった。
 立体的な現実感はそれこそ皆無。
 にもかかわらず周囲が暗く、光の玉のようなものがぼんやりと漂っているのが分かるのだ。
 我ながら訳が分からないのもいいところだったが、あくまで俺は冷静だった。
 不思議なもので、あまりに意味不明な事態を前にパニックとは逆方向の心理が働いていた。
 とりあえず、断片的にもたらされた情報から思考を敷衍させ、解答を類推するしかないだろう。
 可能性として考慮するならば……。

 @これは夢である。
 A知らずに幽体離脱していた。
 B実は死後の世界に来ている。

 我ながら陳腐過ぎると自分自身に呆れるが、思い浮かんだ解答はこの程度だった。
 出来れば@であってほしいが、ここまで意識のハッキリした夢なんて見たことが無い。第一、俺はあまり夢を見ない方だ。
 ならAの幽体離脱か。確かに俺ほどになると魂の一つや二つは知らずに遊離していてもおかしくない気もする。
 Bは…考えたくない。否定したいけれど、根拠もない。可能性がある以上、それは視野に入れてしかるべきだと思う。
 何せ身体が存在していないのだ。これは肉体が既に死滅していることを示唆しているのでは、と不吉な考えがふっと浮かんで。



【意識の海を漂う、そこの貴方。私の声が聞こえますか……?】



{で、出た―――ッ!!}
 もしも身体があったら口から霊的物質(エクトプラズム)でも吐き出していたかもしれない。突如として聞こえてきた謎の声は、俺を震え上がらせるには十分すぎた。
 そのうえ声は女性のもので、それが余計に不気味な想像をかき立てる。
 仮に「一枚足りない」とか言われたら肉体の有る無しとは無関係に卒倒しそうだった。


【出た? 私の存在を認識していたということですか? ―――なるほど、ただ者ではありませんね】


 俺の悲鳴を、果たしてどのように受け取ったのか。
 謎の声は感心したように呟くと、心持ち期待を込めた声でさらに言葉を続けた。


【私はリクレール。トーテムに呼び覚まされし全ての生命を導く者です。
 貴方がこの世界に降り立つ前に、いくつか教えていただきたいことがあります】


{質問してもいいかな―――!?}
 この展開はヤバイと即座に看破し、俺は意識的に疑問を謎の声…リクレールに投げかける。
 『この世界に降り立つ』という言葉も鳥肌ものだが、それ以上にその有無を言わさぬ強制力に焦りを感じた。
 例えるならそう、人民の訴えを無視して独善的な改革を推し進める政治家に似ている気がした。


【ええ、構いませんが……?】


 俺からの質問は予想外だったのか(俺は質問が成立したことに驚いていた)、意外そうに言う。
 しかし、こっちもそれを気にしていられるほど余裕があるわけではなかった。
{自分でも状況把握できてないし、なんて質問すればいいか分からないけど……まず、ここは何処かな?}
 この辺りが妥当な質問だろう。ここがどういった場所なのかが分かれば、後はそこから現状を推察すればいい。
 あぁでも、「死んだ霊魂が集まる場所です。今日から貴方もここの一員ですよ」とか言われたらどうしよう。
 まぁ、気を失えば逆にこっちのものという考えもできなくはないんだけど。


【ここですか? 『意識の海』と呼ばれるところです】


{あ、そうなんだ。なるほどね。イシキノウミ―――}
 もしも身体があったら為す術なく首をカクカクと縦に振ることしかできなかったに違いない。
 とりあえず俺の理解が及ばない場所だということだけは分かった。光が消えた。そんな気がする。
 意気消沈する俺を、リクレールは特に気にしてもいなかった。冷たいのか、感情の機微に鈍感なのか。「質問を続けてもよろしいですか?」という問いに、渋々ながら肯定の意を示す。
 もうヤケだという気もあったし、質問から何か糸口が掴めるかも、という浅はかな楽観もあった。もう何でもどんとこい、だ。


【まず、貴方の性別を教えてください】


 そういえば解析幾何学の創始者はデカルトだったな。
 さらに状況を混迷させる言葉を聞きながら、今さらながらに思い出していた。





 <現実世界 ---1--- >



 檻の中に納められたライオンが、ちらりと眠そうな視線を私に向けた。
 平日の動物園は想像以上に空いていて、園内はしんと静まりかえっていた。時折、自己主張をするような動物たちの鳴き声がどこからか聞こえてくる。
 最初から学校をサボるつもりはなかった。
 ちゃんと制服を着て家を出たし、定刻通りに上りの電車にも乗ったのだ。ただ、何となくそこで学校に行くのが億劫になってしまった。
 二つ先の駅で降り、少し時間を潰して、この動物園に来た。受付の係員はあからさまに迷惑そうな顔をしていたけれど、代金を払うと低い声で「ごゆっくりお楽しみください」と機械的に発音した。
 つまらなそうに大あくびをするライオンに「お互い退屈だね」と心の中で呟く。
 長方形の檻は自分の生活の暗示にも思えて、嫌になる。
 ライオンが小さく首を振った。オマエなんかまだマシだぜ、と言っているようにも見えた。オレを見物するくらいの自由はあるじゃねえかよ、と。
 あんたこそ、何もしないでいる自由があるくせに。私は目線で、言い返す。
 お互い退屈だな。前足に顎を乗せたライオンが、低く唸った。


 ライオンの檻を通り過ぎてからも、順路通りに歩いていった。地方の動物園にしては広い方で、管理も適切に為されているようだった。派手な装飾もサービスもないけれど、その分落ち着いて見回ることが出来る。客入りが少ないせいか、のんびりした雰囲気も快かった。
 一つの柵の向こう側に、もこもことした動物が三匹ほど無邪気に動き回っているのを見つけて、私は思わず足を止めた。説明書きの書かれた看板には『レッサーパンダ』と大きく書かれている。可愛らしいイラストも添えられていた。
 しばらく、見つめていた。ぬいぐるみがそのまま動き出したようなレッサーパンダはどこまでも愛くるしくて、私の表情も自然と緩む。

「ああ、レッサーパンダは本当に可愛い」

 とそこで、いつの間にか私の隣にいた青年がうっとりとした声で言った。掴んだ手摺りから身を乗り出すようにして、無邪気にじゃれ合うレッサーパンダを優しげな表情で見つめている。
 驚くべきはその青年が学生服を着ていたことで、私は反射的に「あ」と声を出した。あ、ここにも暇なやつがいる。
「え?」横からの声に驚いたのだろう。彼は弾かれたようにこちらを振り返った。ちょうどよく、視線が噛み合う。
 背が高い割に肩幅が狭く、細身な体つきだった。くっきりとした目鼻立ちが印象的で、中性的な美しさがある。私は一瞬戸惑ったけれど、すぐに気を取り直して声を掛けた。「高校生?」
「高校生」反復することで肯定したらしかった。「そっちこそ、高校生だろ? どこの高校?」
「県内の」私は適当に答える。
「何高校?」
 私が高校の名前を口にすると、彼は驚いたように目を見開いた。「すごい偶然だ」と笑う。
「まさに、今日から俺が転入した高校じゃないか」
「こんな時期に転入生?」
 少し驚いた。まだゴールデンウィークが開けたばかりで、転入生のシーズンとは言い難い。
「こんな時期に転入生」また反復で肯定する。「詰め襟って初めて着たけど、案外軽いんだな」
 彼は私の反応を楽しむように明るく笑って、よく見れば新品らしい学生服を親指で示した。
「転入生が学校サボっていいわけ?」自分のことを棚に上げて、私は呆れた。「初日なんでしょ、今日」
「転入初日はサボっちゃいけない、なんて法律がどこにある?」
「法律にはないだろうけど、常識にはあるんじゃないの」
「俺は常識に囚われない存在なんだ」おどけた調子で言う。
「じゃあ、法律は守るんだ?」
「冗談だろ」彼はにやりと、意地悪く笑った。「法律と政治家は大嫌いだ」
「不良だね」
「善良だよ。善良だし文化的だ。平日の午前中から動物園を訪れるくらいには」
 どこまで本気なのか、彼は芝居がかった仕草で自分の髪を撫でつけた。自信たっぷりなその表情に、私はまた呆れる。
「そもそも偉そうに言ってるけど、そっちだってサボりじゃないか」思い出したように彼が言った。「言える立場じゃない」
「今さらだね」本当に今さらの指摘だった。
「学校に行きたくない理由でもあるとか?」
「そうじゃない。ただ少しだけ考えてみただけ」
「考えてみたって、何を?」
「自分は学校に行きたいのか、動物園に行きたいのか」私は薄く笑う。「つまり、そういうこと」
「ああ、そういうことか」彼は満面に笑みを浮かべた。目尻に、可愛らしい皺が寄る。
 そんな私たちのやりとりを、3匹のレッサーパンダが興味深そうに見つめていた。




















 あとがき


 はじめましてもげです。はじめましてじゃない人はお久しぶりです。お久しぶりでもない人はチャオ(笑)。
 色々と思うところがあり、また時間もなく更新を無期停止していた「春風」再々始動です。
 理由としては途中で投げて自分的にどうなのよっていうのと、見てみたら案外面白かったからです。
 とにかく時間がかかっても気力が無くなるまでは何とか頑張ろうと思います。5話までは細部修正だけなので楽です。
 
 また、このお話は構成が特殊なので戸惑った方もいるかもしれません。
 基本的にこれは異世界(幻想譚)と現実世界(オリジナル)を交互に描く形で進行していきます。
 それぞれ主観となる主人公が異なっていますので、割り切ってみると案外楽しいかもしれません。
 1話の段階ではどちらも中途半端すぎて分かりづらいでしょうが、仕様なのでご容赦を(笑)。

 こんな文章をここまで読んでいただけて本当に幸せでした。出来れば感想など貰えたら嬉しいです(ぉ)。
 それでは駄文ですがこれにて。もげでした。


8010
春風 ―2 by もげ 2008/12/15 (Mon) 21:51
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 <異世界 ---2--- >



 光を瞼の裏側に感じる。その感覚に後押しされるように、俺は静かに目を開いた。
 広大な森だった。今は朝なのか周囲は薄暗く、肌寒かった。背筋がシンと痺れるような感覚が新鮮で、清々しさに身体が震える。
 澄んだ大気が冷たく心地好かった。深く息を吸い込むと、取り込んだ酸素がそのまま血液に循環されていくような気さえする。それも、新鮮だった。
 二度三度と深呼吸を繰り返す。最後に大きく息を吐いて、前方の空間へと視線を向けた。淡く暗い森。その向こう側に彼女はいるはずだ。

「―――出てこいよ、リクレール」

 唐突に、世界が白んだ。
 それは比喩でも気取った言い回しでもない。一瞬のうちに、まるで全てが消失してしまったかのように、視界から白以外の色彩が褪せた。
 白い世界だった。無機質な空間はどことなく排他的で、なのに不思議な暖かさがある。その中心に佇むようにして、彼女の姿があった。

 白い少女―――。

 壮麗たる角を誇るかのように静かに立ち尽くすその姿は、軽々しく形容してしまうのも惜しまれるほど美しい。
 ともすれば言葉さえ失ってしまいそうになる自分を叱咤し、俺はその場で小さく息を吸い込んだ。深く、吐き出す。
「君がリクレール、だよな」
 確認の意味を込めた問いかけに、少女は「ええ」と頷いた。
『私の姿は見えているようですね?』
「君の姿は見えている」無意味に反復することで肯定した。
『それは、良かったです』
「正直言って、想像と違った。大仏みたいなおばさんが出てくるかと思っていたのに」
 冗談めかして言うと、リクレールは微かに眉をひそめた。『ダイブツ』と外来語のように発音する。
『そういう方がお好みでしたか?』
「どうだろう。面白そうな気もするけど」言いながら大仏顔のおばさんを想像してみた。「いや、やっぱりごめんだな」
 いくら俺でも、唐突に出現した大仏とまともに話をしようという気になれるかどうかは甚だ疑わしい。
『はぁ……?』
 急に顔をしかめた俺を見てリクレールは不思議そうな声を出した。
 曖昧に小首を傾げる仕草は無垢な少女のそれで、独特の愛嬌がある。
「まぁ、そんなことはどうでもいいとして」わざとらしく咳払いをして、俺はリクレールを見た。「訊かせて欲しいことがあるんだ」
 リクレールが静かに頷いた。銀髪が微かに揺れる、ただそれだけの挙動でさえ、幻想的だ。
『知りうる限りのことを、お答えします』
「ありがとう」俺は儀礼的に感謝の言葉を述べる。「それじゃあ、単刀直入に訊くけど」
『この世界に貴方を呼んだ理由、ですか』こっちの質問を先回りしてリクレールが言う。
 俺は頷く。「そうだよ。それだ」
「あの場所……『意識の海』だっけ? あそこで君から訊かれた質問にはすべて答えた。
 その結果がこれってわけなんだろ? 俺に身体をくれた上で、この場所に送った」
 自らを親指で示しながら、俺は言った。生身の肉体だ。ただ、自分のものではない。「何かをさせるために、だ」
『ええ。その通りです』
 リクレールは、問い詰めたこっちが驚くほどあっさりと肯定した。『理由があって、貴方を呼びました』
「その理由っての、教えて貰うぐらいの権利はある?」意識的に冷たく言い放つ。今なお地球上のどこかで事情も分からず面倒事に巻き込まれている全ての人を代表しての、皮肉だった。「そのくらいの人権は俺にもありますか?」
『もちろん。貴方にはその権利があります』
 リクレールは、権利、とことさら強く発音した。その二文字に込められた利己的な響きを嗤っているようにも思える。


『こちらも単刀直入に言わせていただきますが、貴方にはこの世界を救っていただきたいのです』


「この世界を何だって?」
『救っていただきたいのですよ、この世界を。そしてこの世界に生きる全ての人々を』
 リクレールの口調は平坦で、淡々としていた。けして軽々しいわけではなく、その毅然とした態度がむしろ少女の揺るぎない意志を表している。
 それに何と言い返すべきなのか、分からなかった。怒って喚き散らせばいいのか、それとも冷静に糾弾するべきなのか。
 そもそも現実の高校生であるところの俺が、「世界を救え」というあまりにも突飛な願いを受けて、まともな判断力を維持できている方がおかしいような気もした。
 最初から分かっていたことだけど、つくづく「意味不明」な状況に置かれているわけだ―――。
「頼む相手を、間違えている」声が震えないように注意しながら、どうにかそれだけを口にした。
 
 俺には無理だ、と。

『身勝手なお願いだということは、承知しています』
「承知しているなら、好んで言うべきでもない。俺はそう思うけど」
『それだけ状況が逼迫しているということですよ』まるでそれが自分の落ち度であるかのように、自嘲的に言う。『時間がないのです』
「それは、どういう意味で?」
『わかりません』
「ワカリマセン?」
『私に分かることは二つだけです』リクレールはわずかに俯く。『災いが起きることと、それが15日後だということ』
「そんな情報じゃ、興信所だって動かない」皮肉を口にすると、リクレールは『非協力的な機関ですね』と軽口を叩いた。
 非協力的なのはおまえだ、と言い返したいのをぐっとこらえる。ついでに非友好的だというのも、こらえる。
「そもそも、その情報が怪しい。災いだとか15日後だとか、妙に具体的なくせに、出所が曖昧だ」びっ、と指を突き付ける。
 ただ、これは自分でも不思議なことなのだが、俺は情報そのものが嘘だという疑いをまったく持っていなかった。何故だろう。
『それは、あれですよ』リクレールは困ったような笑みを浮かべ、視線を宙に泳がせた。説明する言葉を探しているようだ。『えぇっと』
「予知能力?」冗談半分で言ってやると、『そう、それです』と相好を崩した。
 正解なのかよ、と俺は自分で言ったにも関わらず、こける。
『私は予知能力が使えるんですよ』
「それは、素晴らしい特技をお持ちで」
『信じる信じないは自由ですが』リクレールは薄い笑みを浮かべた。すぐに、真剣な顔つきになる。『災いは起きます』
「信じるよ」
『信じていただけますか』
「今さら疑っても仕方がない」まず自分を指さし、リクレールを指さして、言った。「そうだろう?」
『そうですね』儀礼的に笑う。俺を見つめる瞳は……遠い。
 何故か、胸を締め付けられたような気がした。少女の瞳。責めるようではなく、懇願するようでもない。
 ただ重くて……取り繕うこともできないくらい深く綺麗なだけ。
 誰かの声が聞こえた。告発するような響きで頭の芯を揺らしている。「おまえはそれで良いのか?」と。
 多分、自分の声だ。


「酷いな。狡猾だ」


 しみじみと溜息を吐いたのち、俺はリクレールを睨み付けた。「一つ訊くけど」
『なんでしょうか?』突然睨まれ戸惑った様子ではあったが、リクレールは素直に頷く。
 ……俺はもう一度だけ、深く、溜息を吐いた。
「災いってのが起こったら、具体的にどうなる?」
『この世界の全ての人々に、とても悪いことが起こります』

「じゃあ、やるよ」俺の声は震えてはいなかった。と、思う。

『え?』
「君は災いを止めたいんだろ? そのために俺を呼んだって聞いたぞ」気恥ずかしさに目を逸らしながら、言った。「違ったっけ」
『――――――』
 そのとき、少女に去来した表情を、俺は何と表現すればいいのか。
 単純な喜びや驚きなどとは違う。もっと複雑で曖昧模糊とした感情が千々に混じり合った、何かだ。
『ありがとう、ございます』しばらくして、リクレールが噛みしめるように言った。深々と頭を下げる。
「やめてくれよ。照れる」
『意識の海から見つけられたのが貴方で、本当に良かった。そう思います』
「あまり褒めないでくれ」さすがに辛くなって、少し強めの語調で言った。どうも俺は賞賛されることに耐性がない。
『それでは、この辺でやめておきましょうか』俺の頬は紅くなっていたのかもしれない。リクレールがくすくすと笑った。
「とにかく俺は災いの原因を突きとめて、阻止する。それで良いんだろ?」自然と声が不機嫌になるのは、悔しさのせいだ。
 リクレールは「はい」と頷いた。もう笑ってはいない。『貴方の旅の無事を、祈っています』
「この間、辞書で『祈り』という単語を引いたら、『無意味』とあった」
 俺の心ばかりの軽口に、リクレールはにこりと笑った。花が開いたかのような可憐さにハッとする。
「そうだ、最後に訊きたいことがあったんだ」俺が言うと、リクレールは『なんでしょう?』と首を傾げた。
「君は……神様なのかな?」
 冗談というわけではなかった。目の前の少女を見ていると、そんな気もしてくるのだ。
『貴方は、どう思いますか?』リクレールはおかしそうに笑っている。
「昔の偉い人が言ってたよ。『神は死んだ』らしい」俺も、にこりと笑う。
『なら、私は神様ではありませんね』リクレールの言い方は、その響きを楽しむようだった。『生きていますから』
「そうだな、君は生きている」俺も―――と言いかけて、すぐにやめた。それを言っても仕方がない。「それじゃ、俺はもう行くよ」
 片手を上げると、リクレールはもう一度深く頭を下げた。



『これから15日間、どうか貴方にトーテムの加護がありますように』



 そう願いたいね、という言葉が消えゆく少女に聞こえたかどうかは分からない。





 <現実世界 ---2--- >



「時間はあるんだろ? 残り、一緒に見て回らないか」たっぷりとレッサーパンダを眺めた後、彼が言った。
 まだ園内の三分の一も見回っていない。携帯の時計で時間を確認すると、午前の11時になったばかりだった。
 私は軽く思案する。
 出会ったばかりの男子学生と二人で動物園を見回るというのは、あまり気乗りのする話でもない。
 彼がどうこうと言うつもりは無いけれど、色々と不都合があるに違いないのは分かるからだ。
「別にいいけど、あんまり乗り気にもなれない」
 本心から口にすると、彼は特に残念がる素振りも見せずに「それもそうか」と笑った。そりゃそうだよな、と。
「悪いとは思うけど」
「いや、俺も馴れ馴れしかったな。ごめん」
 彼は言って、すまなそうに頭を下げた。自分の非を潔く認める姿は美徳にも見えて、私は眩しいような思いに駆られる。
 美男子と言って問題のない外見をした青年が、そうした美徳も併せ持っているというのは素直な驚きでもあった。
「ああ、そうだ」彼はそこで重大なことに気付いた、とでも言うように手を叩いた。「名前を訊いてなかった」
「訊く必要もないんじゃない」ぞんざいに答える。というか、その質問は今さらすぎる。
「必要だよ。少なくとも、俺にとっては」彼の口調が意外にも真剣だったので、私は少し驚いた。
「どうして?」
「いや、ほら……」そこで彼はきまりが悪そうに視線を逸らした。「出会いと偶然は、大切にしていきたいだろ?」
「どうして?」
「充実した人生を送るためだ」びっ、と人さし指を立てて言う。
「そんなことで人生は充実しないと思う」
「生きていく上での、糧にはなる」
「出会いが?」
「出会いが」反復する口調には、噛みしめるような響きがあった。
 なんとなく馬鹿馬鹿しくなってきたので、私は適当に肩を竦めてみせた。
 他人の名前を訊く理由が「充実した人生を送るため」というのは、気の利いた冗談としか思えない。
「それで、名前は?」
「人に訊くときは自分からでしょ」呆れ半分で私は言った。そりゃそうだよな、と彼がまた笑う。


 彼は、晶、と名乗った。


「苗字は?」
「苗字は」彼はおどけたように目尻を下げる。「教えられない」
「は?」
「嫌いなんだよ。好んで言いたくないんだ」
「どっちにしても、転校したなら嫌でも分かると思うんだけど」
「だからせめて、サボり仲間ぐらいには黙っていたい」冗談めかしてはいたけど、それは本心に聞こえた。
「苗字は教えないなんて、フェアじゃないよ」
「そっちも名前だけでいいよ。それなら条件は同じだろ?」彼はきっぱりと言った。
 どうしてそんなに私の名前を知りたいんだ、と訊こうと思ったけど、やめた。
 どうせ、人生の充実のために決まってる。
「……奈緒」ぽつりと言った。
「え?」
「私の名前」
「奈緒」彼は味わうように発音した。「いい名前だ」
「それは、どうも」気恥ずかしさに、不親切な声が出た。「お褒めに預かり光栄です」
 何が楽しいのか、彼は憎らしいくらい満面の笑みを浮かべた。
「人生は充実した?」私が皮肉混じりに言うと、「もちろん」と大真面目に答えた。




















 あとがき


 はい、というわけで2話です。文章を見る限り当時の私は楽しく書いていたに違いありません。
 描写はアレですが勢いは伝わってきますね。あ、別に自画自賛じゃありません。自虐です。
 今回は形がいびつすぎて逆に修正し辛かったのでほとんどそのままです。ハッピー!

 物語的に幻想譚サイドは着々と進んでいく感じです。元々こちらが主軸なので当然ですが。
 ただ、オリジナルサイドが短いのでそろそろ長くしたいと思います(感想との整合性)。

 出来れば早いうちに修正分を投稿し、新しく書くところまで行きたいと思います。
 それから感想などありましたらお願いします。お返し文も書きます(あくまで整合性)。
 それでは駄文ですがこれにて。もげでした。


8012
春風 ―3 by もげ 2008/12/18 (Thu) 00:45
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 <異世界 ---3--- >



 困っている誰かを助けられる人間になりたい、と昔はよく思っていた。
 それはすごく単純な『善良さ』で分かり易かったし、事実として俺はそういうものに惹かれる傾向があったように思う。
 だからなんだろうか、小さな頃の夢は警察官か消防士で、ある意味で超が付くほど定型な子供だったわけだけども。
 まぁ、そういう幼年期を過ごしたことが俺の人格形成に少なからぬ影響を及ぼしたのは理解できる。
 電車やバスで年配の方に席を譲るのは昔から当然だったし、拾いものは必ず交番に届けた。
 泣いている小さい子を助けた。重そうな荷物を持っている人を助けた。忙しがっている人を助けた。


 そして、トカゲ人間に襲われている女の人を助けた。


 当たり前のことだ。
 ちなみにこの場合の当たり前は常識的な意味での「当たり前」じゃないから注意が必要だ。
 あくまで「そうすべき」というニュアンスにおいて当たり前だということを理解してほしい。
 そんな何処にも行きつかない思考に及んでしまうほど、今の俺は冷静さを欠いていた。
 目の前には一人の少女。線が細くたおやかで、どこか憂いを秘めた目をしている。灰色がかった黒髪が風に煽られて儚げに揺れる様子は、ユリの花を連想させた。 
 少女は地面にへたり込むように座っていて、剣を持った俺を探るような目で見上げている。

「…………」
「…………」

 というか、割と警戒されているように思えるのは気のせいではないんだろう。
 交錯する視線。場を覆う沈黙は鉛のように重く、お互いに現状を上回るアクションを起こせないでいる。
 牽制し合っていると言っても過言ではない状況は多分、俺に対する少女の不信感が大きいせいだろう。
 剣を持って突然現れた謎の男…文章に直してみると余計にその異様さが際立つ。そりゃ怖がるよ。
 なら俺から恐怖を緩和する動きを見せればいいだけなのだけど、思った以上に隙がなくて動きづらい。
 結果として、助けた相手と膠着状態になるという不可思議な事態が発生したわけである。


『何をやっているのだか―――』


 ため息混じりのクロウの声だった。『助けた相手とにらみ合っていてどうする』
 分かってるよ、そんなことは―――。俺は心の中で呟く。
 限りなく精神体に近いクロウとは実際に話さなくても意志の疎通が可能なのだ。
 クロウは俺がリクレールから授かった「トーテム」という名の実態を持たない神獣(らしい)である。
 ヒトに迫る思考能力・言語感覚を有し、対象者(俺)に憑依することでその身体能力などを高めることが出来るらしい。
 大層な肩書きではあるけど、俺としてはただの喋る犬くらいにしか考えていない。
『分かっているなら早く状況を動かしたらどうだ?』
 言われて出来るならこんな状況にはなってないって―――。
 あくまで客観であるクロウの物言いにげんなりしながら、俺は改めて少女に視線を向ける。
 正面に立つ俺を見つめる瞳は弱々しくも気丈だった。探るような目。しかし敵意は感じない。
「えっと、平気?」覚悟をきめて問いかけた。
 変に刺激しないように気を遣った笑顔を浮かべて、いかにも人畜無害な青年を装いながら。
 ……本当、自分でも笑ってしまうくらいの嘘吐きっぷりだった。
 いきなり均衡を破った俺に面食らったのだろう、少女は目をぱちくりさせた。戸惑いながら微かに頷く。
「そうか、ならよかった」
「あ、ありがとうございます…」少女は細々と言葉を発した。「その、助けてくださって……」
 緊張がほぐれたのか、少女の顔つきは見るからに安心したそれに変わっていた。
 膠着状態の息苦しさはお互いさまだったんだろう。俺も内心でほっとする。
「立てるかな? 手、貸すよ」
「あ……す、すみません」差し出した右手を、少女は申し訳なさそうに掴んだ。
 その手は思っていたよりも小さくて、俺は懐かしいような思いに駆られる。


「私の名前はシズナといいます…」
 挫いていたらしい足首の手当をしてあげていると、思い出したように少女が言った。
 足首の手当を終えて視線を上げる。少女は咄嗟に目線を逸らして顔を伏せた。
 まだ警戒されてるらしい……。それでも名乗ってくれたのは嬉しかった。
「シズナっていうのか」復唱して響きを確かめる。「うん、いい名前だ」
 柔らかく綺麗なその響きは少女の名前にふさわしいように思えた。
「あっ、ありがとうございます…」シズナは静かに微笑む。大きな目が細められて、ハッとするくらいそれは綺麗に映る。

 似た光景を見たことがあった。

 薄くぎこちない笑顔は、けれど世界の光源みたいに眩しくて。
 まるで見る人を無条件で温かい気持ちにしてしまうような。
 そんな光景を、見たことがあったんだ―――。
「…………」
「あの…?」
「あ、ごめん。何の話だったっけ」慌てて泳がせていた視線を彼女に戻す。
「その、貴方の名前をお聞きしたくて…」
「名前か…」ナマエ、と発音したことで瞬間的に意識が現実に立ち返る。「必要だよな」
 シズナは相変わらず目を伏せたまま、それでも穏やかな雰囲気で頷いた。
 それにしても、日常レベルで使用頻度の高い単語を耳にすることで思考が急速に汎用性を持ち始める辺り、俺もなんだかんだ言って現実の高校生なんだという気がして嬉しかった。
「俺の名前は」思わせぶりに咳払いをする。……途端、言いようのない使命感が浮かんできた。

 そう。ここはいっちょ、俺の溢れるユーモアセンスを見せておくべきでは―――。

 何を急に、と人は言うだろう。良識ある諸兄におかれては「馬鹿なことを」と冷笑するに違いない。
 しかし人間とは気分の生き物であり、何かの弾みで突発的な行動に走ってしまうことが希にあるのだ。
 そしてそんな突拍子もない『何か』が人生を豊かにしてくれる、というのが一応の持論でもあった。
 ……何より、彼女との関係改善に繋がるのではないかという浅はかな期待も含有されていて。
 俺は架空のメガネを中指で掛け直した。


「―――マスヲだ」


 ………。
 …………。
 ……………。

 しばらくの間、沈黙。しかし俺の胸には確固たる勝利の予感があった。
 何故なら日本国民なら誰でも抱腹絶倒間違いなしのナイスギャグだったからだ。
「マスヲさん…ですか」シズナはそのリズムを噛み締めるようにぽつりと呟く。
 次の瞬間、彼女は俺の放ったギャグのあまりのハイセンスぶりに耐えきれずツッコミを…入れず。

「よい…お名前ですね」それが本心からの言葉であることを疑わせない笑顔で、そう言った。

「なんてこった」俺は右手を額に押し当てて仰臥する。
「え?」
 シズナは首をかしげた。
 本来の予定では。


『―――マスヲだ』
『って、お婿さんかいっ』


 こんな感じで美しい予定調和が展開されるはずだったんだが。
 よく考えたらここは日本じゃないんだから、このテの冗談が通じるはずもなかったんだ。
 俺は自分の愚かさを呪うと同時に、国民的家族における義兄の名前が単なる発音の連鎖としか認識されない世界にただならぬショックを覚えていた。
 というか初対面の、しかも異世界の相手に対してそんなものを期待してる時点で何かがおかしい気がしたけど、それは考えないことにする。
「あの、マスヲさん……?」
「そんな澄んだ目で俺をみないでくれ…」
 疑うことを知らない無垢な少女を前に本気で落ち込みそうになる。
 やっぱり見ず知らずの人に何かを期待するのは危険なのかもしれない。
「ごめん。実は俺の名前はマスヲじゃないんだ」
「えっ、そうなんですか……?」聞き返す声に戸惑いの色が混じる。
「ちょっとした手違いがあって…本当にごめん」
「はぁ……」
 何か深い事情を想像したのかもしれない。シズナは神妙に頷いた。
 実際は単にギャグを成立させるためだと知ったらどんな顔をするだろう。
「あの、それじゃ…」おずおずと俺に視線を向ける。「本当のお名前をお聞きしても…?」
「アキラっていうんだ」
 心苦しさに俯きながら答える。
 それでも彼女は小さく復唱して、不意に微笑んだ。
「さっきよりも…」まるで花が咲いたように。「私、素敵なお名前だと思います」
「―――」
 気恥ずかしさで、何も言うことが出来なかった。
 呆然と直立する俺の耳元でクロウが何やら文句を言っているのが聞こえる。


『我も知力には自信がないが、オマエには勝てる気がするぞ』


 心配いらない。二秒後には記憶から消した。





 <現実世界 ---3--- >



 これはよく考えれば分かりそうなことなのだけど、たとえ順路の途中で別れても進む道は同じなのだ。歩きだして数分でそれに思い至った私たちは、何となく一緒に見て回ることになった。お互いの名前が分かったせいか不信感も弱まっている。
 しばらく歩くと円形に設けられた広場に出た。中央には猿山が設置されていて、柵の向こうの窪んだ敷地の中に人工の山がある。その上を、大小様々なニホンザル達が好き勝手に動き回っていた。
 示し合わすでもなく立ち止まって、2人一緒に猿山に目をやる。飛び跳ねたり吊るされた縄にぶら下がったり毛繕いをしたり。忙しない猿たちの様子は、見ている私たちをむしろのんびりとした気持ちにさせた。
「最近はニホンザルの生態についても研究が進んでてさ」
 少し経って、彼がゆっくりと口を開いた。
「彼らは人間に近い群構造を持っていることが解明されてきたんだ。何かっていうと」
「順位制と血縁制」
 呟くように答えると彼は意外そうな目を向けてきた。少しだけ嬉しそうでもある。「知ってたんだ?」
「前に、本で読んだことがあるから」私は肩に掛けていた鞄を持ち直しながら言う。「たまたま覚えてただけ」
「そうなのか、すごいな」
 彼が無暗に感心したようなトーンで言うので、私は僅かに苦笑してみせた。
 自分の中途半端な雑学に対して他人の賞賛を得るというのは何とも微妙な気分だ。
「まぁ、高崎山に知り合いもいるし」
「それはないだろ」私の嘘はあっさりと流される。
 彼はにこやかに笑って「でも意外だな」と呟いた。
「意外って、何が」
「本なんて読まないと思った」
「…よく言われるけど」私は軽くため息をついた。
 外見の問題上、他人からそういうイメージを持たれにくいことは分かっている。
 髪は金に染めているし、制服のスカートも丈をギリギリまで短くしている。ピアスもそのうち空けるつもりでいる。
 それだけ見れば確かに私は『読書』という分野から遠そうに思えるのかもしれなかった。納得はしないけれど。
「人を外見で判断するなってよく言われない?」
「うん。それはまったくもってその通りだ」彼は素直に頷いた。「要するに、人と接する時は先入観を捨てるべきだってことだな」
「いや、そこまで言うつもりはないけど」バツが悪いので、私は軽く目線を逸らす。
 矛盾するようだけど、第一印象がその人をある程度決定づけるようなところはあると思う。
「で、奈緒は読書が好きなんだ」
「まぁ、好きな方だと思うけど」答えてから眉をひそめる。「っていうか、呼び捨て?」
「だって名前しか聞いてないし」そんなこと言われても、と困ったように彼が言う。
 実際そのとおりではあったのだけど、私は何か釈然としないものを感じていた。
「もっと何かないの? 『さん』とか」
「俺に『さん』付けで呼ばれたいのか」
「……遠慮しとく」確かに妙な感じがする。寒気に近い。
「だろ?」彼はにこりと笑った。「そっちも俺のこと呼び捨てにして構わないし」
 何を言っても無駄な気がした。降参、とばかりに私は軽く両手を上げる。「好きにすれば」
「ああ。俺、あと半年は好きに生きるって決めてるんだよ」臆面もなくそう言った。
 その顔にどこか悲壮な面影が浮かんでいたような気がしたけれど、私はそれを見なかったことにする。




















 あとがき


 何とか3話までサルベージ出来ました。現行5話なので折り返し地点です。嬉しいです。
 この調子なら年が明ける頃には6話書けそうな気がします。気がします。あくまで。

 今回、異世界パートはシズナさんを助けるところまで。冒険は流れを重視するのでプレイを完全に再現はしません。
 また今まで短かった現実世界パートは中盤以降の関連性から徐々に長くなっていく予定です。予定です。あくまで。

 ところで最近シャーマンキングの完全版が欲しくて仕方ありません。
 それでは感想などありましたら嬉しいのでよろしくお願いします。
 駄文ですがこれにて。もげでした。


8018
春風 ―4 by もげ 2008/12/21 (Sun) 19:59
△up
レス/編集
 

 <異世界 ---4--- >



 硬い石材を張り巡らせた城壁は、堅固さを絵に描いたように城の四方を囲っていた。
 何者をも拒むかのように重く寒々しいその威容から、受ける印象はむしろ牢獄に近い。
 大陸に唯一無二の城塞は、城主の名を冠し「バーン城」と呼ばれている。…らしかった。
 城主、つまり王族は何代も続いた由緒ある血筋で、これが大陸を統べる役割を担っているそうだ。
 特にその居城は立法・司法・行政の全てを取り仕切る大陸の中枢として立派に機能しているという。
 なんともまぁ、驚くほど単純な世界構造だな。笑える。
 それはつまり、取りも直さずこの世界が王制によって統治されていることを意味しているわけで。
 民主主義国家となって久しい我が国から見れば珍しい体制に興味を示した俺が、足を運ぶのも当然と言えば当然だった。
「しかしまた、ネガティヴな場所に城を構えたもんだな」
 山河に囲われるように注意深く屹立する城壁に感心しながら、呟く。
 かつて鎌倉幕府は天然の要害に城を構えたと聞くけど、同じ要領なのだろうか。
『ネガティヴとは小賢しい表現を用いるものだ』クロウが小さく鼻を鳴らす。
「だって、やたら守りやすそうな位置に城があるだろ」
『守りやすいのは結構なことだと思うがな、我は』
「結構なことね…」城の外観を見上げながら、ため息。「敵の存在かぁ……」
 守りを視野に入れるということは、つまり攻められる前提があるということだ。 
 人々をすべからく統治している順風満帆な中央集権国家が防御を考慮せざるを得ない敵。

「トカゲ人間、だろうな…」

 おおよその見当は付いていた。
 人類をあからさまに敵視していた異形のヒトを、俺はこの目で見たのだから。
 強靭な肉体と優れた文化、そして人間と同等の知性を持った人間とは違うもの。
 彼らがこの世界の人々共通の敵であることは想像に難くない。
 他部族との諍いを元に起こった戦争はこちらの歴史上においても何度も顔をのぞかせる。
 闘争の歴史は、かいつまんで見れば相違と不理解の積み重ねが育んだ歴史に他ならない。
 肌の色や言語文化、宗教感の違いでさえ、人はそれを拒絶し争いを続けてきた。
 それが完全な異人ともなれば、もはや言語道断のどころ話じゃない。
 対立は目に見えている。
 そして、それは彼らの側からしても当然の認識に違いなかった。
「なぁ、クロウ?」俺は肩を落とす。「ヒトってのは、ままならないもんだな」
『それがヒトというもの、らしい』
「リクレールの受け売りか?」問いかけると「ああ」と頷く。
 彼女の目から見ても、彼女の力を以てしても、ヒトってのは立ち行かないものなのか。
 むずかしいな……。
 ガラにもなく熟考する俺を嗤うように、陽気な風が辺りを吹き抜ける。


 城を訪れた理由は分かり易く大別して二つあった。
 一つ目は先に述べたとおり、異世界の国家機構に文化的な興味関心を抱いたため。
 そしてもう一つが「エージス」という男の行方を調べるため。そういうお題目だった。
 最初に訪れた町(サーショというらしい。ギャグか)の詰め所に勤めていた兵士たちが話し合っているのを俺は偶然にも聞いていたのだが、それが実にきな臭かった。
 曰く「王様から魔王討伐を依頼された隊長のエージスが不自然なカタチで姿を消した」のだという。具体的には多少の差異があるけど、要約するとこういう内容になる。
「…エージスは詰め所に戻る予定があったにもかかわらず、王城を出た後唐突に姿を消した」呟いて、状況を頭の中に思い描いてみる。
 タイミング的に考えて城を出た直後あたりに何らかの危険に遭遇した可能性が高い。けれど、かと言って魔王討伐を依頼されるほどの人物がそう簡単に事件事故に巻き込まれるとも思えない。考えられる限り最も現実的なのは―――。
「誘拐か暗殺、かな」自分で言って、思わず吹き出してしまう。「いや、この二つがこれほど似合わない世界も珍しいな」
 微量ながら主観的に得たこの世界の印象からして、陰性のドロドロした駆け引きが行われている場面というのは非常に想像しにくい。
 ただ、現実としてエージスって人は姿を消したんだし…うーん。
『単純に詰め所に立ち寄るのを忘れたという可能性もあるのではないか?』クロウが最もらしく言った。
「あのな、軍隊ってのはそんなに甘い世界じゃないんだよ。隊長ともなれば部下への規範も示さなきゃならないし、『忘れた』なんて通用するわけないだろ」ヘタすれば命令不服従とかで銃殺もあり得る。
『む……確かにそうだが』
「ま、とりあえずエージスって人の足跡を追うのが1番だな。城で話を訊いてみようか」
『それはいいが、おまえにしては意外なほどやる気があるのだな?』
「別に。少しだけ気になっただけだ」
 兵士達の話を聞いたとき、違和感というか不信感が頭の隅に浮かぶような感覚があった。
 そういうものを野放しにしておくのは、精神衛生上あまりよくない。それだけの話に過ぎなかった。
 緩やかな風を頬に受けながら、城壁の正門に足を運んだ。
 開け放された門の向こうには守兵と思しき人間が二人、武装した状態で堂々と立ち尽くしている。
 立ち位置と表情からして、歓迎的でないことは一目瞭然だ。
「何か用か?」向かって右側、比較的背が高い方の男がこちらに気付いた。
「いや、少し用事があってさ」俺はやんわりと口を開く。「中に入れて貰いたいんだけど」
「悪いが、王様の命令でな。今は決められた人間しかこの門を通ることはできない」
「その中に俺は含まれてないわけ?」
「残念だが、含まれていないな」
 軽く溜息を吐いた。まぁ、含まれてたら含まれてたでリアクションには困る。
「ただ、城内の誰かへの言付けなら頼まれてやってもいいが」
「え、いいの?」
 反射的に聞き返してしまう。思っていたよりも親切な守兵だ。
「ああ、それでいいなら構わないぞ。大した手間にもならないしな」
「そうか。親切なんだな、アンタ」
「よせよ」ノッポの守兵はむず痒そうに鼻を掻いた。「で、言付けは?」
「いや、言付けを頼むほどの用事じゃないんだ。悪いんだけどな」
 城内の人間に知り合いなんていないし、仮にいたとしても言葉のやり取りだけでは必要な情報は得られない。これに関しては自分で調べなければ意味がないのだ。
「そうか? なら、いいんだけどな」ノッポは少しだけ残念そうだった。
「まぁ、ありがとうな。それじゃ」俺は守兵に礼を言うと踵を返し、その途中ではっと振り返る。「ああそうだ。ちょっと訊いてもいいか?」
「なんだよ?」
「エージスって人、今頃どこにいると思う?」
「サーショのエージス隊長か? 一週間くらい前に魔王討伐の命を受けて旅立ったらしいけど、どうだろうなぁ。今頃はムーかシイル辺りにいるのかもな」
 ノッポは視線を宙に浮かせ、思案する顔つきになった。思ったとおり城の連中にはエージスに関しての情報が伝わっていないらしい。
「ムーかシイルか……それは遠いな」俺はさも知っているかのように呟く。地名だとだいたいの見当はついた。
「だな。ムーなんてここからずーっと南下しなきゃならないし、シイルへは橋が壊れてるから大陸をぐるっと一回りする必要があるし…」
「案外、近場にいたりしてな」
「可能性はあるんじゃないか? 魔王がどこにいるのかはよく分かっていないし、もしかしたらリーリル辺りにいるかもしれない」
「リーリルか。ちょっと南に行った辺りにある街だったな?」
「そうだ。あそこの近くにはトカゲ人間の砦もあるし…」言いかけて、ノッポは気付いた顔になった。「用って、エージス隊長にか?」
「まぁ、近いな」正確には、エージス本人というより周りの情報に用がある。
「それじゃ、もし隊長がここに来たら伝えといてやるけど?」
「いや、自分で会わなきゃ意味がないんだ。ありがとな」俺は苦笑しながら、首を左右に振る。「それじゃ、もう行くから」
「ちょっと待てよ」歩き出した背中に、後ろから声を掛けられた。振り返ると、ノッポが無骨な長方形の塊を持っている。「アンタ、旅人だろ? これやるよ」
 渡されたのは、ずしりと重いチョコレート……だった。非常食だ。
 俺が苦笑しながら礼を言うと、ノッポは「頑張れよ」と白い歯を覗かせた。
 まったく、どこまでも親切な守兵なのだった。





 <現実世界 ---4--- >



 それほど大きな動物園でもなく、サービス精神という現代の商業に欠かせない心遣いも無かったけれど、それでも園内を見終わる頃には、時計の針は午後の2時を示していた。
 順路は時計回りに作られていて、終わりまで歩いていくと出入り口前の広場に出るようになっていた。近くには売店や軽食店などが軒を連ねている。この時間だからか、どの店もそれなりに賑わっているように見える。
「いや、それにしてもアライグマは可愛かったな」
 とりあえず売店に入り、ぬいぐるみなどの商品をぼんやりと眺めていると、彼がうっとりとした表情で言った。
「うん…まぁ、すごく」私はぼんやりと強く肯定する。
 アライグマの飼育場は順路のちょうど中間地点あたりにあった。人の腰より少し上くらいの位置に柵が張り巡らされていて、その向こう側に小さな池と芝生のスペースが設けられていた。
 飼育員から貰った餌を器用に「洗う」アライグマたちは本当に可愛くて、それを見ている間、私はとても優しい気持ちになった。それは彼も同じだったらしい。
「でも、アライグマって元々は夜行性なんだけどな」彼はさっきから同じことを言っている。まだ納得できないらしい。
「訓練されてるんでしょ。夜だけ起きてても意味ないし」
「郷に入っては郷に従えってヤツ?」
「そう、それ」
「納得できない」彼は子供がそうするみたいに、大げさに顔をしかめた。「俺はありのままの動物たちが見たいんだ」
「ありのままって、たとえば?」
「夜行性の動物は当然、寝てる。ライオンは狩りのとき以外は寝てるから、やっぱり寝てる。マンドリルは跳ね回っているべきだし、コンドルは屍肉を食べているべきだ」
「それ、もう動物園じゃないよ」彼の幼い発言に呆れと尊敬を感じながら、私は軽く笑ってみせる。「動物の王国って感じ」
「動物の王国、かぁ」彼は夢見るような表情になった。「行ってみたいな、それ」
 …北海道に実在するよと言ったら、どんな顔をするだろうか。


 そうやってしばらく店内をうろうろと見回っていると、その内に中年の女性店員に捕まり、店を出る頃には私の携帯にレッサーパンダのストラップが、彼の右手にはインスタントカメラがそれぞれ備わってしまっていた。
「近頃の売り子さんっていうのは、みんなああいった感じなのかな」インスタントカメラの包みを解きながら、彼が愉快そうに笑った。「押し売りの一歩手前みたいな印象を受けたけど」
「どうかな。裁判になったら勝てるような気もするけど」
 溜息を吐きながら、ストラップのレッサーパンダを指でつついてみる。ぬいぐるみの手触りはふにゃふにゃしていて、意外と心地いい。
 
 売り子の中年女性の勤労ぶりと言ったらなかった。

 制服姿で商品を眺める私たちを見るなり『あら、あなたたち学生さん?』とすぐに声を掛けてきた。礼儀や気配りを少しも感じさせない、世の中の酸いも甘いも噛み分けたヒト特有の馴れ馴れしさだった。
 女性は彼の顔を見るなり『格好いい』と称賛し、私の顔と恰好を見るなり『可愛い』と睥睨するような目で礼賛した。『平日にデートなんて羨ましいわね』と激しく激しい勘違いを口にして、大きな声で笑った。
 彼は困ったような顔で私を見たけれど、私も困っていたのだからどうしようもない。仕方なく『あの、僕たちは別にそう言う関係では』としどろもどろに弁解したのだけど、女性は『恥ずかしがることないのに』と分かり切ったような顔で(実際には何も分かってないのだけど)目尻に深く皺を寄せた。
 さらに、女性はその敏腕ぶりを発揮する。彼に詰め寄ると『彼女とのデートにプレゼントの1つもしないなんて、男が廃るわよ』とよく分からない理屈を口にして、商品の購入を促し始めたのだ。慣れた言い方だったので、実際に慣れていたのだろうと思う。
 彼は困り果てたような顔をしていたけれど、私はもっと困り果てていた。―――彼女って、なに。
 結局、女性の怒濤の販売口撃(誤字じゃない)に耐えきれず、私は彼にストラップをおごって貰うという苦渋の選択を余儀なくされたのだった。彼の方も『デートの記念に必要』という意味不明な理由でインスタントカメラを買わされていた。
 広場に戻ると、アイスの屋台が目に入った。今ではすっかり珍しくなった、くたびれたソフトクリームのプラスチック模型が脇に設置されていて、独特の歴史と哀愁を感じさせる。
「そういえば、ソフトクリームが食いたいな」
 私の視線の方向に気付いたのか、彼が思い出したように言った。
「そうだね。食べたい、かも」気付かれたことへの恥ずかしさを感じながらも、私は同意する。
「じゃあ、ちょっと行って買ってくるよ」
「いいよ、私が買うから」歩き出そうとした彼の腕を引いて、言った。ストラップに関しては少なからぬ負い目があった。「ソフトクリームくらい、おごるよ」
「そう?」彼は私の反応を楽しんでいるように、にこりと笑う。「優しいなぁ、奈緒は」
 私はむっとしたが、何とか表情だけに留めた。彼はまだ楽しそうに笑っている。
「種類についての希望があるなら聞くけど?」
「普通のがいいな。スタンダードのやつ」同じ意味のことを2回言う。
「分かった。ちょっと待ってて」
 私はバッグの中の財布を確認すると、ソフトクリームの屋台に大股で近づいていった。


 私はすぐに理解した。動物園内という閉塞空間において、あらゆるものは足元を見る料金設定になっている、と。
 一個500円という冗談としか思えない値段のソフトクリーム(無駄に大きい)を両手に持って戻ってきた私を、彼は爆笑という名の歓声で迎えてくれた。殴りたい。
「すごいな、それ。ソフトクリームっていうより」彼は、どう考えても食べ物を形容するものではない単語を口にした。「折り畳み傘みたいだ」
 確かに、コーンから白い尖塔の如く佇立しているソフトクリームは一見して畳んだ状態の傘に見えなくもない。
 怪獣みたいなソフトクリームを彼に渡す。
「ありがたく食べて。500円もしたんだから」
「500円も?」彼は呆気に取られた顔をした。「ストラップは480円しかしなかったのに」
「嘘でしょ」なに、その出鱈目な料金設定。
「すごい動物園だな」彼は言いながら、ソフトクリームに口をつける。「あ、美味い」
 私も自分のチョコソフトを軽く舐めてみた。……うん、悔しいけど、美味しい。
 しばらくの間、お互いに言葉は交わさなかった。ソフトクリームを食べるという単純な行為も、敵がここまで巨大になると一筋縄ではいかない。ひたすらに食べ続ける様子は、もはやソフトクリームとの格闘と言っても過言ではなかった。
 20分という時間をかけて、ようやく2人とも怪獣ソフトを完食した。
「あと3ヶ月はソフトクリームを食べなくていいな」彼が吐き出すように言った。「キツい」
「そっちはまだいいよ。こっちは…」チョコはさすがにこってりとしていた。「限界」
 幸い、広場には長方形のベンチが設置されていた。私たちはそれが暗黙の了解であるかのように、2人並んでそこに座る。
 同時に、歩いているときには感じなかった疲れがどっと押し寄せてきたような気がした。
「今日は楽しかったよ」彼も疲れているらしいけど、私よりは平気そうに見える。「奈緒のおかげだ」
「……あ、そう」面と向かって言われた言葉に、私は慌てて顔を背けた。
 彼の整った顔立ちは、真っ向から直視すると心臓に悪い。
「でも別に、私のおかげでも無いと思うけど」ちらりと横目で彼を見ながら言う。「偶然っていうか、成り行きだったわけだし」
「偶然とか成り行きの方がドラマチックじゃないか」彼は嬉しそうに笑っていた。「嘘じゃない気がする」
「嘘じゃない気がするって?」
「ホントっぽい気がする」
「表面上の意味なんて訊いてない」私はむっとする。
「俺も、口では説明しづらいんだよ」彼は困ったように笑った。「とにかく、俺は奈緒にありがとうと言いたいわけだ」
「それは、どういたしまして」やっぱり目線を逸らしながら、私。「まぁ、私も暇つぶしになったし」
 彼はにこりと笑うと、ベンチから腰を上げた。
「なぁ奈緒。今日の記念に、あれやらないか」何かを指さす。
 指の先に視線を向けると、そこには白いパネルがあった。比較的上の方に丸い穴が穿たれている。
「あれは、なに」答えは分かっていたのだけど、あえてそれを口に出す勇気がなかった。
「記念写真用パネルの裏側だな。あそこから顔を出すと表に描かれたイラストと自分の顔が一緒になって、大変コミカルな写真が撮れるという趣向の代物」
「それで?」私は頼むそれ以上は言わないで、と心の中で念じながら先を促すという離れ業をやってのけた。

「2人で撮ろう」

 彼は淡々と、それを口にした。
「嘘でしょ」まさかこの歳にもなって、記念写真も何もないだろうに。
 そんな私の呟きを無視して、彼は通行人の老婦人に「撮って貰えますか」と手際よくインスタントカメラを渡していた。
 手を引かれて、パネルの後ろへ連れて行かれる。嬉々とした表情で彼が左側の枠に顔を入れた。右手で、私を手招きする。
「嘘でしょ」もう一度言う。
 気が付くと、シャッターが下りる音が鳴っていた。嘘じゃない。彼が幸せそうに笑っていた。




















 あとがき


 時間があることと予定がないことは同じではないと思うんですよ。そんな感じ。もげです。
 というワケで4話目も無事修正完了です。自分でもどこ修正したのか分かりませんが多分大丈夫(何)。

 とりあえず前からの宣言通り今回はオリジナルパートを長めにしてみました。
 どうでしょう風柳さん。これでもまだ自然な文章だと言えるでしょうか(感想との整合性)。
 今回から両パートとも段々と動きを見せていく予定ですのでよろしくお願いします。

 クリスマスなんて干からびればいいと思います。
 それではご意見ご感想お待ちしてます。駄文ですがこれにて。もげでした。


8024
春風 ―5 by もげ 2008/12/23 (Tue) 19:50
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 <異世界 ---5--- >



 かりかりかり。小気味よい音を立てて、鉛筆の先端がノートの上を舞い踊る。
 教室内の空気はまるで背骨でも通されたようにピンと張り詰めていた。けして無音ではなく、静寂の中に身を置いている感覚のせいかひどく居心地が悪い。
 いったい何故、俺はこんなことをしているのだろうか。雑多に黒板を占拠していく数式や文字を無心でノートに書き写しながら、気付かれない程度に肩を竦めた。
 好奇心が第一に働いたんだと思う。
 ほんの些細な感情がまずあって、そこに成り行きやタイミングといった要素が加味された。ようするに偶然だ。
 リーリルの街に到着したとき、日は既に中天に差し掛かっていた。
 吹く風は優しく、整理された街並みは心地好かった。周囲に張り巡らされた水路が絶えず循環していて、独特の清潔感が街全体を包んでいた。
 サーショとはまた違った性質を持った街の様子に、多少なりとも浮かれていたのは否定しない。というか出来ない。
 そうして特に何を考えるでもなく街を歩いていたとき、1つの建物が視界に入った。
 『アナトリア理力学校』と銘打たれたそこは、世界でも数少ない教育機関として成立している…らしかった。
 この世界の教育実態、及びその内容に興味を持った俺は―――あとは多分言わなくても分かると思う。
 "初等理力教育"と呼称される学問の授業は非常に複雑かつ高度であり、周囲の学生が8歳未満であることも相まって、俺はその内容を理解することに必死だった。

A「(たびびとさん、まじめだねー)」
B「(うん、まじめまじめ)」
C「(のーといっぱい、とってるね)」
D「(あんなのかいても、わからないとおもうけど?)」
?「(そうだね。理論と実践の間には齟齬があるから)」
D「(セシルくん、むずかしいこといってるー)」
C「(たびびとさん、ほねおりぞんのくたびれもうけ?)」
B「(てゆか、むだぼね?)」
A「(ほねほね〜♪)」

 ……なんかヒソヒソされてる。限りなくイヤな方向に。
 ノートを書く手は止めず、視線だけをチラリと周囲に投げかけてみる。
 見れば5人の子供達が皆一様に顔を寄せ合い、好奇とも宴安ともつかない顔でこちらの様子を窺っていた。
 その様子を見る限りノートを取るという殊勝かつ勤勉な生徒は俺一人だったことが容易に理解できた。くそう。
 しかし内心の憤りはとりあえず抑えて、たまたま目が合った女の子に、にこりと軽く微笑んでみる。儀礼的に。

A「(〜〜〜〜〜ッ!)」
B「(どーしたの?)」
C「(たびびとさん、わらってたね)」
D「(なんか、さわやかだったー)」
B「(たびびとさん、かっこいー)」
C「(おとなのみりょく)」
A「(けっこんしたーい)」
?「(…………)」

 ……どうやらこの世界の子供達のテンションは非常に希有なものらしい。
 現実に生きるIT小学生たちとは、根幹からしてノリのベクトルが違うように思われた。
 限りなく子供らしい、純粋さと微量の背伸びを感じさせる会話は、微笑ましくて。

D「(たびびとさん、またわらったー)」
?「(思い出し笑いでもしてるのかな?)」
C「(さわやかすぎるかっこよさ)」
B「(あのこのはーともいちころさ)」
A「(けっこんしたーいー)」

 ……ノートを取る気が失せたのだけは、確かだった。
 狙い澄ましたように「本日の授業は終了です」と教師の口が動く。


 ―――そうして、放課後。
 学校の授業は午後6時で終了するが、その後に生徒の自習時間として教室が2時間ほど開放されるらしい。この辺りは世界間を問わず常識のようだった。学校が目と鼻の先にあるため、親が心配して出張るということもまずないという話である。
 けれど、もちろん俺には時間的な余裕というものがあまりない。授業終了と同時に速やかに学校を出る予定だったんだけど。

D「たびびとさん、どこからきたの〜?」
C「なんでりりょくをべんきょうするの?」
B「たびびとさんのまんとかっこいいね」
A「あたしのはーと、ときめいてるのー」

 ズラリと俺の周囲を取り囲む4人の子供達。男女比は5:5。ついでに、やや興奮気味。
 俺を捕まえ次々と楽しげに質問をしてくる様子は、転校生を前にした学生のそれと何ら変わらない。
 それは戸惑いと懐かしさを同時に想起させて……少しだけ、困ってしまう。
 仕方なく、というよりかは積極的に、俺は膝を曲げて子供達と目線を合わせた。
『ほう。優しいな、旅人さんは』クロウがおかしげにくっくっと笑う。少し黙ってろ。
「え〜とね、俺はサーショの方から来たんだ。理力を勉強するのは好奇心からだね」にこりと笑ってみせる。「ちなみに、マントは貰ったものだよ」
 年上の余裕を存分に滲ませた俺の返答に子供達は満足したようだった。ぱああ、と目を輝かせる。
「だれにー? だれにもらったのー?」男の子の1人が興味深げに袖を引いた。
「うん、実はね」俺は笑いながら答える。「女神様に貰ったんだよ」
 ええぇ〜! とどよめきにも似た声が上がった。

D「めがみさまにもらったってー」
C「ほんとに、めがみさま?」
B「こいびとかもしれないよ?」
A「そんなのやーだー!」

 目まぐるしいほどの興奮の伝播。やいのやいのと騒ぎ立てる子供達に、堪らず苦笑する。
 無垢で無邪気で、思想やものの見方に囚われなくて。よく言い換えれば自由なんだろう。
 それを羨ましいと感じる自分が妙に年老いて感じるのも、愉快だと言えばそう言えた。
「恋人じゃないよ。ホントの女神様」身振り手振りで説明する。「こう、角とか生えててさ。美人なんだけど」
 外見の綺麗さに反して、どこかが決定的に抜けている。いい意味で人間的だったという印象が強い。
 小首を傾げるリクレールの姿を思い浮かべて、俺はぷっと吹きだしたい心境に駆られた。
「(ひそひそひそひそ)」
「―――って、あれ?」
 へぇ〜と感心しているかと思いきや、子供達は身を寄せ合って何やらヒソヒソやっていた。
 耳をそばだてると流石にクロウの力なのか、小声の密談も聞き取れた。…何々…?
 
D「(―たびびとさん、もうそうへき?―)」
C「(―もしくはむゆーびょー?―)」
B「(―ゆめみがちな、としごろなのかも?―)」
A「(―でも、そんなところにめろめろ〜♪―)」

「…………」
 馬鹿にされてる。圧倒的に馬鹿にされてる。
 夢見がちな年頃の子どもに、夢見がちな年頃と判断されてしまった。
 時折チラリチラリと向けられる寒々とした視線が胸に痛い。1つだけ妙に熱っぽいが。
『…くくく、くくくく……』
 落ち込む俺とは対照的にクロウは笑いを堪えるので精一杯のようだった。
 もしも許されるのならこの場でサマーソルトの1つでもかましてやりたいところだが、今の俺にはそれより優先すべきことがある。
「みんな、お腹減ってない?」ごそごそと道具袋を漁りながら、密着している子供達に話しかける。「俺いま、スゴいの持ってるんだけど」

D「(―すごいの持ってるって―)」
C「(―それも、もうそうだったり?―)」
B「(―でも、なんかさがしてるよ?―)」
A「(―わたちあての、らぶれたーだったり?―)」

 1つだけ辛辣な意見もあったけど食い付きは上々なようだった。
 袋の中を漁っていた指先が目当てのものに触れて、俺はにやりと笑う。
 ゆっくりとそれを引き出す……途中で、盛大な歓声が上がった。
 子供達は既に密着状態を解除していて、その目は期待にキラキラと輝いている。
 鼻息も荒く俺の握り締めた物体を注視する様子は、完全に無邪気そのもの。
「そ、それは……!?」全員がわなわな震えながら、ごくりと喉を鳴らすちびっ子達。
 その視線の先にあるもの、それは。

 大きな大きなチョコレート―――。

 俺の手の中でずっしりとした存在感を示すそれは、重さ約2.5s(ありえない)。
 重戦車の特殊装甲みたいな分厚さと表面積は、既に魔性と言っていい領域に到達している。
 ちなみに俺の知る限り、現実で市販されている板チョコは大きくても80〜100gがせいぜい。
 それだけでこのチョコカイ(※チョコ塊。チョコ怪でも○)の異様さも分かろうというものだ。
 デカデカと「Chocolate」と書かれたパッケージの裏側には、さり気なく光るバーンの紋章。
 ノッポ氏曰く消化効率がよく手早いエネルギー変換に適したこのお菓子は、携帯食として重宝されるらしい。
 さすがに王侯直属の軍隊に支給されているだけあって、無骨な印象を拭えないのが残念だが。
 しかしそれを差し引いても、子供達にとって爆発的な価値を有したものであることは言うまでもない。
 ぱちぱちと瞬きを繰り返し、お互いの顔を見合わせ、ついでに上目遣いでチラリとこちらを確認する。
 俺がにっこりと笑って頷くと―――

「「「「でっかいちょこーーーー!!!!」」」」

 強行軍を彷彿とさせる、突撃。わらわらと俺の周りに集まって、ぴょんぴょん飛び跳ねるちびっ子達。
「落ち着きなって、いま分けるから」
 苦笑というよりも朗笑だった。動物を相手にするみたいに、どうどうと手で制す。
 俺が分厚い中身を素手で割るのに悪戦苦闘している間も、興奮は冷めないご様子で。

D「ちょこちょこ、ちょこだー♪」
C「あまくっておいしくてでりしゃすなかおり」
B「ちょこはとってもきちょうひんなんだって」
A「たびびとさんのあいがつまったちょこほしい〜」

 やはりお菓子を目前にした子どもの反応っていうのは、世界を問わず一定らしい。
 感極まった言葉の端々には、幼いが故の無垢な愛らしさが見え隠れする。
「よし、出来た」まだ飛び跳ねている子供達をよそ目に、何とか等分が完了した。
 半分に割ったチョコをさらに4等分しても、1つ1つが大人の拳ほども大きい。
 まさにチョコカイの名に恥じない怪獣っぷりである。
「ごくろーさまですー」ぺこり、と行儀よく頭を下げるちびっ子達。
 顔を上げれば、キラキラとした8つの目が俺の手元を熱心に見つめて。
 その頭には、既に『妄想癖』という言葉は微塵も残っていないに違いない。
『ちょっと待て、それが狙いか』あーあー、何も聞こえません。
「それじゃっ」どりゃー、と気合いを入れてチョコを渡す。「食べてよしっ!」
「わ〜〜〜〜い!」子供達は、我先にとみんなでそれを受け取って。
 ぱくりこ。

「「「「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪」」」」

 まったりとした表情を見せたのだった。
 ……贈賄成功(ニヤリ)。





 <現実世界 ---5--- >



 窓の向こうに、視線を放る。明るい店内から暗い外は見えづらくて、そこには憮然とした表情の自分が映り込んでいるだけだった。
 時刻は午後7時30分。駅の東口から少し歩いた場所にある小さな書店。その店内に設置された壁時計を、私はぼうっと覗き込む。
 「晶」と名乗った彼とは、動物園を出てすぐに別れた。
「同じクラスになったらいいな」と去り際に彼は言っていたけれど、無視した。縁起でもないことだ。
 文庫本のコーナーをぼんやりと眺めて、気になった本をいくつか手に取ってみる。すれ違った婦人に、軽い会釈をした。
 この時間が、ほとんど私の日課になっていた。本を眺めて時間を潰す。場合によっては購入した本をどこかで読むこともある。そうすることが必要だから。
 推理ものの本に手を伸ばしかけたとき、ぽん、と不意に肩を叩かれた。次いで「ナーオナオっ♪」と馴れ馴れしい呼び声が耳に届く。

「…………」

 たっぷりと時間を掛けて振り返った先に、ショートカットの女子高生が1人、にへらっとした笑いを浮かべていた。
 高野 四季。高校2年生。元陸上部の現文芸部。よく言えば人懐こい、一般常識的に言えば非常に馴れ馴れしい性格の持ち主。
 高校入学時から今までたまたま同じクラスに編入されたことを理由に、何に付けても私にちょっかいを出してくる厄介な知人の1人だ。
「よ〜っす♪」馬鹿な小学生みたいに指でVサインを作って、笑う。「元気してましたぁ?」
「……シキ」軽い憤りを通り越した先にある呆れが、私の全身に充満しているのを感じた。「何でアンタがここにいるの」
「それはこっちのセリフだっつーの!」
 シキは、耳が隠れる程度にカッティングされた髪を大げさに振り乱した。隣の棚を見ていた先程の婦人がびくっと身体を揺らす。
 感情表現が大きいのは結構だけど、周囲の迷惑になるという思考も持つべきだ。
「ご丁寧に制服まで着といて、学校をサボるとはどういう了見か」
「アンタに、関係ない」
「いーえあります、大アリです」むしろオオアリクイです、とつまらないことを言う。
「何が関係あるって?」
「実はさ、今日、転校生の話が来たんだって!」
「文脈違う気がするんだけど」
「気にしない気にしない」シキは本当に気にしていないようだった。「でね、片方の転校生は何故か学校来なかったらしいよ」
「片方の?」微妙な言い回しが気になった。「転校生って、1人じゃないわけ」
「2人らしいよ。1年に1人と、タメ年に1人」思い返すように指を折る。「サボったのはタメ年の方だって」
「それはそれは」
 適当に返したつもりだったけれど、胸中穏やかではなかった。
 間違いなく私はその『サボった方』と会っていた。ばかりか、行動を共にしていたのだ。
「ナオナオも今日サボりだったよね」
 シキが意味ありげな視線を送ってきた。微妙なところで勘が鋭い。
「で? その、もう片方の転校生はどんな人?」私は無理矢理に話題を転換した。「男とか女とか」
「女の子だったよ。けっこ可愛い。まぁ、ナオナオほどじゃないけど」きっきっき、と低い声で笑う。「お嬢様タイプ」
「ふうん、そうなんだ」適当に返す。
「噂によると、サボった方は男らしいよ。もう片方とはいとこ同士なんだって」
「ふうん」いとこなんていたのか、とぼんやり思う。正直どうでもよかった。「そうなんだ」
「イケメンくんかと思うかね?」
「微妙なんじゃないの」実際に彼は整った顔立ちをしていたけど、私は鼻で笑う。肯定も否定も不自然だと思った。
「夢がないなぁ、ナオナオは」大げさに肩を竦めて、ため息をつくシキ。
「転校生をイケメンだと思うのが夢?」
「ボクにとってはね」
 余談ではあるけれど、シキは去年の夏休みにとある小説の主人公に影響を受けて以来、ずっと自分のことを『ボク』で通している。
 本人によれば『他人と異なった一人称をあえて用いることで、自我の確立を図っている』とのことだけど、私にはよく分からない。
「平和なアタマ」
「そりゃ、平穏無事な毎日よ」
「……はぁ」
 どうして私の周りに集まる人間は、こういう手合いばかりなんだろう。
 いくつかの人物を頭の中に思い浮かべながら、私は深くため息を吐いた。




















 あとがき

 5話目もようやく修正投稿ということで、ストックは完全に使い切りました。バンザーイ。
 今後は新規に書いていくので時間はかかるでしょうが見てくださるといいなぁ(願望)。

 今回はぶっちゃけると両パートとも手抜きです。
 修正で多少マシになりましたが、基本的に手抜きなのでご容赦くださいますよう。

 あとリクエスト小説やります。エログロ意外なら何でも書きます。どうぞリクエストください(感想との整合性)。
(〜※この企画は終了致しました。たくさんのご応募まことにありがとうございます〜)

 クリスマスをやり過ごしても年末年始、一人身には辛すぎるイベント目白押しですね(涙)。
 それでは駄文ですがこれにて。もげでしたご意見ご感想お待ちしておりますHAHAHA。


8030
春風 ―6 by もげ 2009/01/15 (Thu) 23:16
△up
レス/編集
 


 <異世界 ---6--- >



 上段からの斬り落としを右手の剣で受け止める。同時に反転して、体勢を崩した敵の首筋に背後からの手刀。
 脱力したそいつを盾にするかたちで抱え、残りの三人を牽制する。ジリ、と緊張の波が周囲を覆った。
 リーリルの街で一泊した、翌日の午前中だった。
 ぼんやりと街を出て、ぼんやりと当て所なく歩いているうちに、堅固そうな建物をぼんやりと見つけた。
 生来の体質が現在も継承されているのか、寝起きの俺の思考力は水準を大きく下回っていて。
 ぼんやりと入ったそこがトカゲ人間の砦だったということを、俺は彼らの迎撃によって知ったのだった。
 急襲を防げたのは運が良かったとしか言いようがない。それくらい、頭はぼんやりしていたのだ。
「…それにしても」気を失ったトカゲ人間を抱えながら肩をすくめる。「まさか、彼らの施設がこんなところにあるなんてなぁ」
 言語や兵装から文化レベルの高さは予想していたけど、まさか建築の技術まで人類と同水準に到達していようとは。
 交易による技術の伝播か、もしくは真っ当な共存共栄があったのか。ヒトと彼らの相違点は、外見上の違いくらいなものだ。
 そんな種族同士が対立する理由なんて、リアルに想像がつかないんだけど……。
 歴史という年輪の外側から透かし見るには、まだまだ情報も理解も足りないということだろうか。

「調子に乗ってんじゃねえぞ、この野郎……!」

 残った三…三人の中の一人が、低く唸るように言った。仲間が倒されて憤怒の形相だ。
「待ってくれ、俺は襲われた立場じゃないか。正当防衛だろ?」俺は咄嗟に口を開く。
「うるせえ! 先に手を出してきたのは貴様だろ、クソ野郎が!」
 トカゲの人はさらに語気を荒げて捲し立てた。「この野郎」が「クソ野郎」にランクアップしている。いやダウンなのか。
 彼ら的には、どうやら自分たちこそ正当防衛をしている側だという認識があるようだった。
 確かに不法侵入したあげく防衛に出た仲間の一人を倒しちゃったんだから、弁解の余地はない。
 でもこっちの立場的には不可抗力の主張を崩すことは出来ない。
 そもそも材質も造形も人類と同型の建築物を前にして、間違わない方がおかしいじゃないか。
 この場合における問題は不法侵入した事実の一点なわけだけども。
「確かに勝手に入ったのはホント悪かった。謝るよ」その場で静かに頭を下げる。「でも俺は君らとケンカする気、ないんだ」
 ケンカ、とあえて行為を貶めたのは、それがくだらない稚気に過ぎないという皮肉でもあった。
 同時にちょっとした責任転嫁でもあるのだけど、その程度のいたずら心は許されるはずだ。きっと。
「…………?」
 敵である俺が冷静なことに驚いたのか、俺の言い分に呆れたのか。彼らは首をかしげる。
 その仕草には人間らしさも動物としての愛嬌もあって、何となくほっとする。
 ほら、やっぱりケンカなんてしたくない。

「惑わされるな、おまえたち!」

 そんな空気の弛緩を敏感に感じ取ったのだろう。奥に控えた隊長格らしい赤いトカゲ人間が一喝した。
「ヤツは我々の動揺を誘っているだけだ! 早く排除しろ!」
「…ハハッ! 了解しました!」
 上官の叱咤を受けて、兵士たちの目に敵意がギラギラと光った。
 両手に捧げ持った剣をそれぞれに構えなおし、俺を見る目は敵に向けられる類のそれ。
 戦いの気配は、もう揺るぎようがなかった。
「勘弁してほしいんだけどな…」剣の柄を右手で握りしめて、呟く。「キライなんだよ、こういうの」
 暴力がどうとか言うつもりはない。ケンカは時に必要な手段だし、拳で分かり合う友情だって無くはない。
 ただ、相互が望まない暴力は本当にキライだった。暴力の押し付けは、押しつけた時点で理不尽に成り代わる。
 理不尽は、本当にやめて欲しかった。問答無用だけは。
「…ホント、キライなんだよ」
 唇を噛む。強く噛みすぎたせいか、ダラリと垂れた血が顎の輪郭をなぞった。
 フラッシュバックする過去の残滓は、真っ白な病室と泣いている彼女。
 そうさ、孤独だ。

「やれ―――っ!!」上官が声を張り上げる。同時に、三人の兵士が動いた。

 走ってくる。風。空気が擦れる音。剣を握る。薙ぎ払ってきた剣を屈んでかわした。
 同時に足払いをして、倒れかけた兵士の下顎を殴りつけると、ソレは気を失った。一人目。
 その兵士の影からもう一人が飛び出して来る。だが遅い。距離を詰めて側頭部を蹴った。二人目。
 最後に背後から襲ってきた兵士を背負うかたちで投げ飛ばして、優しく丁寧に首を絞めてオとした。三人目。
 時間を圧縮したような体感とは裏腹に、見ている側にとっては一瞬の出来事だったのだろう。
 上官の赤いトカゲ人間は呆然として、気を失った部下たちを見下ろしている。
「さぁ、残っているのはあんた一人なわけだけど」
 俺は不敵にクククと笑いながら、右手に持った剣をチャキリと上官に突き付けた。
 漫画とかでよくある「圧倒的に強いキャラ」みたいなノリを体中で表現する。
 いかにも『俺強いんだぜ。今からお前も一瞬でやっちまうぜ』みたいなオーラ。
「く、くそっ!」赤いトカゲ人間は明らかに狼狽した様子でジリジリと背後の扉に近付くと、素早く中に入り施錠して、一目散に駆け去って行った。「覚えていろっ!」という定型句まで持ち出していたから、たぶん一生の思い出になると思う。
 俺は安堵のため息をホッとついて、その場に座り込んだ。
 久しぶりのケンカは、思いのほか悪い後味でもなかった。


『―――で、結局おまえは何がしたいんだ?』

 倒れた兵士たちを介抱していると、それまで押し黙っていたクロウが唐突に口を開いた。
 言葉の意図が分からないので黙っていると『本当にやる気があるのか?』と続けてくる。
 …そろそろ文句を言ってきそうな雰囲気だったから、別段驚きはなかった。
「やる気はあるよ。やらなきゃいけないっていうのも、分かってるつもりだし」
『なら何故、襲ってきた敵を速やかに排除しない? 何故だらだらと時間をかける? 挙げ句に無用な情けまでかけて…』グウゥ、と獣本来の不満を表す唸り声を上げる。『おまえがしていることは、全て無駄で、蛇足で、時間の浪費だ』
「おまえ、そんな難しい単語ばっかり使いやがって…」
 クロウの言いたいことは、まぁ理解できる。
 自分の障害である敵は早めに排除すべきだし、時間も情けもかけるべきじゃない。
 特に俺には残り二週間ほどしか時間が残されていないのだから、なおさら。
 つまりクロウは、俺に効率を重視しろと言っている。RPGみたいに淡々と無駄のない冒険をしろと。
 理解はするけど、納得は出来ない。世の中にはそういうものが多すぎる気がする。
「時間云々については謝るけど」俺はため息をつく。「ただ、俺の世界だと殺人って重罪なんだよな」
『ここはおまえの世界じゃない』クロウは当たり前のことを言う。『それに、彼らは人ではない』
「いや、ヒトだろ」クロウは当たり前のことが分かっていない。「彼らは何の変哲もないヒトだ」
『人間を敵視しているのにか?』
「言葉と知性と感情があれば、それはヒトだよ」
『話し合いが成立するとでも思うのか』呆れと関心が入り混じった声で言う。『相手は敵だぞ』
「そんな先入観が対立を産むんだよ。そのテの設定の漫画とかでもよく言ってるだろ」
『向かってくる敵を、敵として認識できない者は殺されていくだけだ』

「ああ。15回くらい、殺されてやるよ」

『…………!』
 クロウが、息を呑むような気配があった。
「それで対立が無くなるなら、15回、俺は死んでもいい」
 別に、強がりを言っているわけではなかった。
 リクレールに15個の命を与えられた時から、何となくあった疑問の解答。
 つまり、それくらいの覚悟をして臨めってことなんだと思う。多分きっと。
『おまえ……』
「…俺は理由もなく敵なんか作らない。俺の敵は、俺が定めた敵だけだ」
 自分が心の底から、本当に敵だと思ったもの以外は、絶対に俺の敵じゃない。
 敵であってほしくないんだ。
 それは強がりでも覚悟でも何でもない、単なる願いに過ぎないけれど。
『……おまえは甘い』クロウはぼんやりと言った。『甘すぎる。理解すべきだ』
「何を?」
『生きることは。生き続けることは、おまえが考えている以上に問答無用だ』
「これでも分かってるつもりなんだけどな。そんなことは」俺は苦笑する。
 そんなことはずっと前から知っている。本当に、面白いくらい理解していた。
 ひょっとすると生まれた時から知っていたのかもしれない。それくらいに。
「でもさ……」そう。だから、さっきも言ったように。


「―――キライなんだよ、そういうの」







 <現実世界 ---6--- >



 朝。いつもどおり時間ギリギリに教室に入って、少し驚いた。クラスの半数以上が空席になっていた。
 疑問に思いながら窓際最後尾に確保した自分の席に着く。鞄から荷物を取り出していると、一人の女子高生がけたたましい音を立てて走り寄って来た。ズシャアァと派手にブレーキングをしたかと思うと、私の机をバンと叩いた。
「……シキ」朝から何の用、と続けようとした私を彼女の声が遮る。「ビッグニュース! 号外!」

「イケメンでハンサムで男前な二枚目が1組に転入してきましたーーーーっ!!!」

 いえす、と指を鳴らして、四季は満面の笑顔を私に向けた。
 それは本当に絵に描いたような『満面の笑み』で、少しだけ羨ましい。
 彼女は生きるのが楽しそうで本当にいいな、と真剣に思ってしまう。
「ああ、例の転入生…」それなら、クラスの人数が少ないことも納得できる。「野次馬してきたわけ」
「他にすることもないしねー」あっけらかんと言う。「でも、見る価値はあるよ。確実」
 四季は楽しそうにちろりと唇を舐めた。
 よくよく周囲を観察すると、残っているクラスメイトの何人かはどことなく浮き足立っているように感じる。その全員が女子なのは、野次馬組だったからと考えて間違いなさそうに思えた。
 確かに、彼の外見は人目を引くだろうと思う。均整のとれた顔立ちは作り物めいて無駄がなかった。事実、動物園で彼とすれ違ったほとんどの人がハッとしたように振り返っていたのを私は知っている。
「ナオナオは気になったりしないの? イケメン転校生」
「少しは気になるけど」私は体裁を繕っておく。本当はどうでもいい。「野次馬するほどじゃない」
「それぐらいの価値はあるって、絶対。同じクラスになんなかったのが悔しいくらい」
「…………」
 その何気ない言葉に、思わず鳥肌が立ちそうだった。彼が同じクラスになるなんて考えたくもない。
 携帯に付けたストラップを軽く握る。レッサーパンダの顔が、不自然にクニャリと歪んだ。
 四季がめざとく「ストラップなんか付けてたっけ?」と聞いてきたけど、私は無視をする。


 昼休み。戦場みたいな購買部から何とかパンを購入して、教室に戻る途中で彼を見かけた。
 2階の階段から廊下の左右に伸びる教室群を、端の6組から順に覗き込むようにして観察している。誰かを探している様子だった。
 転校したてで知り合いは少ないはずだけど、もしかしたら他のクラスに顔見知りでもいるのかもしれない。
 とりあえず、私は1階に引き返すことにした。出来るだけ彼と接点は持たないでいようと心に決めていた。
 朝からのクラスの様子を見る限り、彼と必要以上に接点を持つことが面倒くさそうなのは明白だった。

 中庭かグラウンドなら昼食も取れるはずなので、そこに向かうことにする。
 彼の視界に入らないように注意しながら階段まで戻る。彼は4組の教室を覗き始めたばかりのようで、気づかれる気配はない。
 早足で階段を下りる。途中で「奈緒じゃないか?」という声が聞こえた気がしたけど、空耳に間違いない。
 それは聞いたことがあるような、正確には最近聞いたばかりの声だったけれど、きっと気のせいだろう。
 というか、気のせい以外は認めない。
「おーい」空耳は続けて言葉を発した。私は歩みをさらに速める。「奈緒、無視されると傷つくんだけど」
 勘弁して。私はさらに速度を上げながら念じる。空耳は止むどころか、さらに大きくなりつつあった。
 階段を下りる音が軽やかに響く。徐々に音が重なってきているのも、気のせいに違いなかった。
「あのさ、俺、晶だけど」階段を下りきった。追いかける足音も早くなっている。「昨日一緒に動物園―――」

 私はもう走っていた。

 後ろからの制止の声を振り切って、一目散に廊下を駆ける。
 なんだなんだ、と降り掛かる好奇の視線から逃れるように昇降口へ向かう。本当に、逃げ出したい。
 下駄箱で靴を履き替えている途中、奥の廊下が不意にザワついた。どうやら向こうも走り始めたらしい。
 靴を履き替えて昇降口から外に出る。校舎をぐるっと迂回して、中庭のある部室棟に向かって走る。
「ちょっと待てって、奈緒ーっ!」後ろから追ってくる気配。「なんで逃げるんだーっ!?」
 大きな声で人の名前を呼ぶな、と、出来るなら大声で言ってやりたかった。
 とにかく私は走った。全力で走った。しかし向こうも早い。土地勘がないためか追跡にムラはあるけれど、体力的にはどう考えても敵わないのだ。
 校舎をぐるっと半周してグラウンドに出る。フェンスに囲われたグラウンドの脇には申し訳程度の細い道があって、そこを通ると部室棟への近道になる。走り抜けると、昼連のサッカー部や野球部が物珍しげな目を向けてきた。私は踏み込む足にさらに力を込める。出来るならこのまま消えてしまいたかった。
「奈緒! 逃げるな返事しろ、奈緒! 奈緒ー!」そして、そんなことは気にせず大声で追ってくる馬鹿者。
 どうして憑かれたように人の名前を連呼してくるのか、理解できない。したくもない。してたまるか。
 段々と集まってくる視線に耐えながら、私の学校生活はもうダメなんだろうな、と何となく考えていた。


 巡り巡って中庭に着くころには、私の体力はもう完全に尽きていた。
 全力で走り続けた苦しさに、好奇の目に耐えた気疲れが相まって、最低な気分。
「結局、なんだったんだ…?」彼も肩で息をしている。「鬼ごっこって…わけでも…ないだろ」
 質問に答えるだけの余裕はなかった。私はうつむいて、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返す。
 実のところ、自分でもどうしてここまでむきになったのか分からなかった。
「にしてもさ…奈緒って体力あるんだな」彼は芝生の上に乱暴に座り込んで、息を吐いた。「足も速いし…」
「うるさい…っ」
 荒い息を吐きながら、私は悪態をつく。出来るなら殴りつけてやりたいくらいだった。
 中庭には他に人の気配がなかった。中庭と言っても、部室棟と校舎に囲われた隙間のようなスペースに芝生と池を置いただけの簡素なもので、人が訪れることは滅多にない。わざわざ目に留める人も、そういないと思う。
 私もその場に腰を下ろす。そうすると、呼吸も幾分か楽になった。
「…転校って初めてしたけど」彼は私の態度にため息をつきながら、言う。「なんか、動物園みたいだ」
「…動物園みたいって?」
「朝からずっとさ、見せもの扱いだよ」彼は肩をすくめる。
 確かに、他のクラスから彼を見物しに来る生徒が後を絶たない、という話は四季から聞いていた。そう言っていた彼女にしても休み時間の度に彼のクラスに出向いていたのだから、似たようなことをするヒマ人も少なからずいたんだろう。
「おまけに見るくせに誰も話しかけてこないんだ。同じクラスの人も何かよそよそしいし」
「動物園って、そういうものだよ」私は意識的に冷たく言い放つ。「眺めるのが目的。話す必要なんてない」
 そもそも、初対面の相手に馴れ馴れしく話しかけられるような人間は必ず何かがズレている。
 思い当たる節をいくつか考えて、私はげんなりとした。
「で、数少ない知人にはあからさまに逃げられるしさ」彼は不満げな顔をした。どうも皮肉らしい。
 私はあからさまに嫌な顔をして、迷惑げにため息をついて見せた。
 人懐っこい人間は苦手だし、大別すれば間違いなく嫌いな部類に入る。
 どうして人というのは小さな接点を過大に解釈して、他人と必要以上に交流したがるのか。
「馴れ馴れしいのは謝るよ」意外にも彼は苦笑して、頭を下げた。「こういう性格なんだ」
「…何で追いかけてきたわけ」口を開く。何だかひどく毒気を抜かれた。
 一緒に昼食を取ろう、と彼は提案してきた。
「誘おうにもどこのクラスか分からないから、探してたんだ。逃げられたけど」そう言って笑う。
「黙って一人で食べればいいのに。わざわざ探す必要もない」
「何で?」彼は不思議そうに首を傾げた。「知り合いがいるのに、一人で食べても仕方ないだろ?」
 それが至極まっとうな意見であるかのように言って、彼はそそくさと持っていた包みをほどく。
 どうやら高校二年生にもなって、他人と一緒に昼食をとる意味の一般常識的な解釈も出来ないらしい。
 今さら諭すつもりにもならなかったし、昼休みが残り短いこともあって、私は黙ってパンの袋を開けた。
「普段からパンなの?」
「別に。今日は、たまたま」
 購買のパンを珍しそうに眺める彼に振り向きもしないで、私は答える。
 普段は中村さんがお弁当を作ってくれるのだけど、今日は暇がなかったらしい。
 朝起きると、「昼食代に使え」と父の字で書かれたメモの上に千円札が置いてあった。
「パン一個で足りるんだ。燃費が良いんだな」
「…………」
 本当は一個しか買えなかったのだけど、とりあえず無言を通す。
 昼の購買部はまさに戦争で、慣れていないとまともな買い物は出来ない。
 小さなジャムパンを食べ終えてジッとしている私を、彼が横目で見てくる。
「あのさ、良かったら手伝わない?」弁当箱を差し出して、言う。「従妹がさ、作ってくれるんだけど、量が尋常じゃないんだよな」
「うわ……」
 見ると、確かに一人分の量ではなかった。
 通常の弁当箱をゴムバンドで束ね、無理矢理二段重ねにしていたらしい。一段には食べやすく分けられたご飯が詰め込まれ、もう一段には魚の照り焼きやだし巻き卵、ハンバーグにポテトサラダなど、手の掛かりそうなものが山のように入っていた。
「味は良いんだけど多すぎてさ。残すと怒られるし、助けてもらえるとありがたい」
 手際の良いことに、彼は前もって割り箸まで用意していた。渡されるまま、何となくそれを持つ。
 そのときだった。


「晶! こんなところにいたのね!」


 怒声が上げたのは、不機嫌そうに腰に手を当てた長い黒髪の少女だった。
「げっ―――!?」彼は悲鳴のような驚きの声を上げて、やってきた少女を見上げた。
 その顔には驚きの他に微かな不機嫌と憂鬱が見て取れて、私は違和感を覚える。
 少女は怒りを込めた目で彼を睨むと、キッとそのままの視線を私に向けた。

「はじめまして。晶の従妹です」

 とりあえず自分が嫌われてるんだな、ということだけは分かった。




















 あとがき

 6話目です。まさか6話目まで書けるとは思いませんでした。奇跡です。
 最近は突発性のスランプに陥ってまして、文章を形にするのが非常に困難です。
 そんな状況を乗り越えて完成した6話目には計り知れない価値がありますね。ええ。
 
 さて、今回から両パートが活発に動いてます。
 動きのある文章ではありませんが話は動いてます。
 特にオリジナルパートなんて妹キャラまで登場しました。これなんてギャルゲ?
 でもけして楽しくフワフワした話にまとめるつもりはないので安心してください。(何)

 あ、あとあけましておめでとうございます今年もよろしくお願いします。
 それでは駄文ですがこれにて。もげでした。


8042
春風 ―7 by もげ 2009/03/14 (Sat) 15:32
△up
レス/編集
 


 <異世界 ---7--- >



 死にたい、とぼくは呟く。死にたい。何度も呟く。壊れたように。
 呪文らしくそう繰り返すのが、いつの間にか当たり前みたいになっていた。
 真っ白な病室の、神経質なベッドの上。そこがぼくの世界だった。
 その他には何もない。広い部屋にあるのはベッドと古ぼけた本棚と、窓からの景色くらい。
 窓の向こうは眼下に広がる一面の山々と、山をのたくる蛇みたいに舗装されたコンクリートの道路だった。
 あとは…ずっと向こうに、ぼんやりと街のカタチが見えるだけ。
 ぼくが7歳になるまで暮らしていた街。
 あそこに行くことはもう無いって思うと、最初はすごく悲しくて、たくさん泣いた。
 でも、何ヶ月かすると気持ちも落ち着いて、一年も経つとどうでもよくなった。
 どうでもよくなったというより、あきらめたと言った方がわかりやすいのか。
 一日の大半は、本棚から適当に選んだ本を読んで過ごすようになった。
 他にやりたいことも出来ることもないから、仕方がなかった。
 檻なんだって知っていた。
 ここはぼくを閉じ込めてじわじわと殺すための場所で、ぼくはそれを分かっていた。
 訪れるひとなんて、ご飯を持ってくる人と、お風呂やトイレに連れて行ってくれる人くらいだ。
 …いや、あともう一人。
 月に一度くらい、新しい本を持ってきてくれる若い女のひとがいた。
 他の人はぼくと話そうともしないけれど、その人だけはぼくと色んな話をしてくれる。
 この前の本はどうだった、とか、今度はこんな本を持ってきたよ、とか。
 その人と話すのは本当に楽しい。どれくらい楽しいかというと、びっくりするくらい、楽しい。
 残念なのは、とても忙しい人だから話せる時間があまりないということだった。
 この病院はすごく山奥にあるから月に一回しか時間が取れないんだ、とその人は言っていた。
 だから、次にその人が来たときにもっとたくさんのことが話せるように、ぼくはたくさん本を読んでおく。


「―――ぼく、もう死にたいよ」


 あるとき。いつものように本を持ってきてくれたその人に、ぼくは言った。
 ちょうど自殺がテーマの小説の話をしていて、タイミングがいいと思ったのかもしれない。
「毎日、とてもつらいんだ。こうしているときは楽しいけど、それ以外は地獄みたい」
 そう言うと、それまで笑っていたその人は何だかすごく痛そうな顔をした。
 その人のそんな顔を見たのは初めてで、ぼくはなんだかドキッとする。
 本当は、つらいとか苦しいとか、そういうのはもう慣れていたからどうでもよかった。
 死にたいは口癖みたいなもので、それ自体にもう意味なんてなかった。考えるのもいつしかやめていたから。
 ただ、ご飯を持ってくる人も、お風呂やトイレに連れて行ってくれる人も、それを言うとわがままを聞いてくれた。
 だから、その人もぼくのわがままを聞いてくれて、もっと一緒にいてくれるかもしれない。
 …そんな子どもじみた期待は、一瞬で打ち砕かれたけれど。

「そんなに死にたいなら、勝手に死んでしまえばいいわ」

 とても冷たい声で、その人は言った。
「え」
「君はもっと強い子だと思ってたけど、あたしの勘違いだったみたいね」
 見損なったわ、とその人は呟いて。ぼくの頬を強く叩いた。
 ぱしん、と。世界に、乾いた音が白く響いた。
「……え?」
 反射的に頬を手でおさえる。ぶたれた頬はジンジンして、本当に、痛かった。
 その人は、とても怒った顔をして。ぼくを見る目はどうしようもないくらい悲しかった。
「ご、ごめ……な…さ……」少しの間を置いて、ぽろぽろと馬鹿みたいに涙が出てきた。
 あんまりにも痛くて、あんまりにも悲しそうなその人の顔が、とてもつらくて。
 ぼくはやっと、自分がすごく悪いことをしてしまったんだって思い知った。
「その痛みの方が、ましでしょう?」その人は言って、ぼくを優しく抱きしめてくれた。
「簡単に死にたいなんて言ってはダメ。死にたいなんて言葉で、逃げてはダメ。君はそんなに弱くないもの」
「でも―――つらい、よ…くるしいよぉ……だって、ぼく、は……!」
 ぶたれた頬が痛くて、こころが痛くて、ぼくは堪らずしゃくりあげた。
 独り、だから。
 つらいとか苦しいとか、そういうのをぶつける相手もいなくて。
 今みたいに悪いことを悪いことなんだって教えてくれるような人もいなくて。
 これからもずっと独りで生きていなくちゃいけないのは、どうかしそうなくらい、怖い。
「大丈夫、君は負けない。卑屈にならなければ人は何だって出来るのよ。
 確かに今の状況はとても酷いわ。つらさだって苦しさだって分かるつもり。
 でもね、だからって逃げたり、諦めたりしてはダメ。それはとても悲しいことなの。
 君はね…君はこんな狂った世界の中でだって、ちゃんと笑うことが出来る子なんだから」
 その人はぼくの耳元でそう言って、顔を離した。にっこりと笑う。


「―――だから、世界をぶん殴ってやりなさい」


「世界を、ぶん殴る……の?」
「そう。アッパーでもストレートでもエルボーでもいいわ。ぎゃふんと言わせるの」
 しゅっしゅっ、と口で言いながらその人はボクサーみたいに腕を振るう。
「戦いなさい。君は弱虫でも臆病者でもない。自分が生きる世界は、自分が作る世界なんだから」
 その人の言うことは、子どものぼくにはよく分からない。
 でも、「戦え」っていう言葉だけがなんだかひどく胸に落ちた。
 もうどうしようもないんだって、諦めていたけれど。
 その人に言われたことだから、それは絶対に守らなきゃいけないと思った。
「…うん。ぼく、戦うよ。どうしたらいいか分からないけど、戦う」
「ああ、いい顔になった。あたしが見込んだとおり、君はやっぱり強い子だ」
 その人は見ているこっちが恥ずかしくなるくらい、本当に嬉しそうに笑った。



 9年前の朱い病室。ぼくたちは夕焼けに影を二つだけ残して、世界を殴った。



 ……古い。とても古い記憶。
 このカラダでは記憶の継承がおざなりなのか、思い返せる記録はひどく断片的だ。
 俺は確かに「その人」の名前を知っているはずなのに、思い出せない。
 自分の部屋で無くしたハサミがいつまでも見つからないような、もやもやとした不快感。
 世界を殴れと言ってくれた人。
 自分の殻にこもって世を疎んじていたどうしようもない子どもに勇気をくれた唯一つのことば。
 上手く言葉にならない、でもとても深いところに根差していることを実感できる記憶の絵だ。
 確か…あの人は―――

『アキラっ!! 聞いているのか、アキラ!!!』

 不意に耳元からあがった怒鳴り声で、反射的に意識が立ち戻った。
「あ…クロウか」
 目の前には何故か口元を怒らせて威嚇体勢に入っているクロウの姿がある。
 ぼんやりと手を挙げて挨拶をすると、馬鹿者! と愉快な反応が返ってきた。
『敵地で惚けるヤツがあるかっ…! 何のつもりだ!』
「なに言ってるんだ、どうして俺が」笑いながら周囲を見渡す。「敵地…で……?」
 ぎょっとした。
 周囲には大勢のトカゲ人間が倒れていた。軽く見ても10人以上いる彼らは、皆一様に気絶している。
 俺が倒した。その記憶がある。トカゲたちの砦を探索しろというクロウの指示に従って行動していたら、何故か大勢から待ち伏せの奇襲を受けた。突然の事態にテンパりながらも何とか応戦して…という流れだったはずだ。
『敵を撃破したのはいいが、途端に惚けてしまうとはな』皮肉げに唸る。『悪いものでも食べたか?』
「夢…?」
 よく、分からない。俺にあるのは気がついたら記憶に埋没していた認識だけだ。
 その理由に心当たりもなければ、見当なんてつくはずもなかった。
 肉体に発生した何らかの機能障害なのか、もしくは必要に迫られた過去の投影か。
 どちらにせよ、ひどく不安定な気がして背筋が寒くなる。今のは見ていいものだったのか。

「なんだ、今の物音は―――」

 ふ、と。廊下の角から二つの人影が現れた。
 一つは割烹着のようなものを着込んだトカゲ人間で、もう一つは今まで見たことのないタイプだ。
 青い。明らかに他とは質の異なる蒼い鱗。上質な鎧越しでも分かる、戦士として洗練されたカラダ。
 一目でボス格と分かる蒼の戦士は、俺の姿を確認すると同時に剣を構えた。
 おそらくは、俺の周囲に倒れている彼らを見て状況を把握したのだろう。
「これだけの人数を…!?」青いトカゲ人間は驚愕し、もう1人に何やら耳打ちをする。
 割烹着のトカゲ人間は瞬時にその場から立ち去った。逃がしたのか。悪くない判断だった。
 部下が逃げたのを確認して、青いトカゲ人間はこちらを睨み付けた。深く、剣を握る。
「この人数をたった独りで倒すとはな……」
 感嘆に似た呟き。10人以上の兵士。これだけの人数をよく独りで倒したものだ、と。
「―――――――」
 その、独り、という単語に背筋が凍りそうになった。
 暗い病室。誰もいない世界。死にたいと呪いのように繰り返した一年半。
 先ほどまで見ていた記憶が瞬間的にフラッシュバックして、目眩がしそうだった。

 あんなもの。『俺』は、あんなものにずっと耐えていたんだ。

『何をぼけっとしている! 来るぞっ!!』
 クロウが吠え、同時に俺は剣を横に薙いだ。キイィィン、と共鳴音がする。
 人間離れした速度で迫ってきたそいつと鍔迫り合うカタチで、何とか自身の命を拾う。
 ……ッ…。
 だが今までの相手とは比べものにならない。こいつの膂力は圧倒的にどうかしていた。
「―――はっ!」
 迫り合った刃を僅かに逸らして、体勢を崩したそいつの腹を真一文字に蹴り抜いた。
「ぐうっ…!」
 しかしよろけない。鎧ごとではあったにしても、蹴りの衝撃程度では威嚇にもならないらしい。
 仕方なしに後ろに退く。トン、と一足で距離を離して、二足目はそれっぽくバク転してやった。
 ざっと5メートルほどの距離を開けて、向かい合う。
「にしても、まずいな…」無関心そうに腹部をさすっている相手を見て、毒づく。「これは流石に…」
 あの青いトカゲ人間は通常の6.7倍近い能力を持つ個体に違いなかった。
 それこそ、統制の取れていない兵士10人よりよっぽどタチの悪い相手だ。
『どうする? まさかこの期に及んで』よもや情けなどかけまいな、とクロウの目が語っていた。
「……」
 確かに、普通にやって倒せるような相手じゃないんだろう。
 クロウの言葉や振る舞いはいちいち棘を含んでいて正直わずらわしい。
 俺が彼らを殺さないと言ったことをまだ根に持っているらしかった。
『半端な覚悟でだけはやってくれるな。ことはおまえだけの問題ではないのだ』
 少し笑えた。とうとう不特定多数を味方に付けやがった、この犬っころ。
 イライラする。何にイライラしているのかははっきりしなかったが、今はクロウがうるさい。
『今さら容赦などするな。たった独りの敵を相手に―――』


「狗。すこし、だまれ」


 自分で意識しても出せないくらい、冷たい声が出た。
 1人。独り。暗い病室。泣くことさえ擦り切れて枯渇した心と少年。
『……ッ!』クロウは気圧されたようにびくりと跳ねる。『…貴様』
「なんだ、怒ったのか? 愛玩動物風情が調子に乗るなよ」
『アキラ、おまえは……』
 クロウが不安そうな声を上げた。
 自分でも不思議なくらい心がささくれているのが分かる。
 理由は何となく分かるけど、明確化させると余計にイライラしそうなので追求はしない。
 とりあえず。
「ハアァーーーっ!!」
 今は襲いかかってくるやつを、どうにかすることにしよう。





 <現実世界 ---7--- >



「佐藤 律夏と申します。失礼ですが晶とはどういったご関係でしょうか」
 古風な口調で慇懃なお辞儀をして、長い黒髪の少女はもの凄く失礼なことを言ってきた。
 彼の従妹、ということは1学年の方の転入生だったか。四季の話をぼんやりと思い出す。
 四季から「お嬢様風」と聞いてはいたけど、ここまで形態がはっきりしているとは思わなかった。
「律夏。なんでここにいるんだよ、おまえ」
「その台詞は私が言うべきだと思うけど、晶」
 少女は不機嫌そうに眉根を寄せる彼を気にした風もない。
 クセ一つない綺麗な髪を丁寧に撫でつけて、視線を私にスライドさせる。
 頭から爪先までを測るような目で観察したかと思うと、つまらなそうに溜息を吐いた。
「……不良」
 小声でぼそりと呟く。
 一瞬意味が分からなかったけれど、すぐに自分を形容した言葉なのだと分かった。
 謂われのない非難…とまでは言わないけど、随分と失礼な態度には違いない。
「もういいから早く教室に戻れよ。次の授業始まるぞ」
「それは私だけに言えることじゃないと思うけど?」
「はいはい」
 彼が面倒臭そうに言うと、少女はむっとした顔になった。
 背を向けて、ゆったりとした動作で中庭を後にする。その途中で一度振り返り、

「その歳になって鬼ごっこなんて…信じられない」

 侮蔑と苛立ちを込めた言葉を吐いた。
 それは、彼への皮肉というよりは私を攻撃するものに感じられた。
 …釈然としないものを感じながら荷物をまとめていると、彼が覗き込むように話しかけてきた。
「…ごめんな。あいつって人見知りだからさ、初対面の相手には態度悪くなるんだ」
 申し訳なさそうに目を伏せているところを見ると、私は不機嫌が顔に出ていたのかもしれない。
「あぁ、そう」口元だけで笑って、少女が去った方向に視線をやる。「人見知りだったわけ」
「あいつには後で俺がよく言っておくから」不愉快な思いさせてごめん。そう言って頭を下げた。
 どうやら自分の従妹の発言が私に不快感を与えたのではないか、と心配している様子だった。
 まぁ、分からなくはなかった。
 確かに今のはどう考えても友好的な態度ではなかったし、失礼な行為であるのには違いない。
 けれど、私はそれ自体を特に気にしてはいなかった。
 少なくとも感情を正直に出していた点で彼女が素直な人間だという解釈も出来なくはないし、彼女の言行そのものには何一つ間違いはなかったのだから。
 私の不機嫌にはもっと別の要因があって、彼はそれに気が付いていない。

 その歳になって鬼ごっこなんて信じられない―――。

 先程、蔑むようなトーンで言われたことを頭の中で反芻する。
 といって、言葉そのものに対して特別に怒っているわけではなかった。
 見る側にとっては当然の感想だろうし、恐らく私も同じ反応をしていたと思う。
 だからこの場合、憤りや不愉快のはけ口は当事者間でのみ処理されるべきだった。
「一つだけ頼みごとがあるんだけど」私は小さく溜息をついた。「さっきのアレのこと」
 彼は一度小さく首を傾げ、やがて得心が言ったのか「何?」と口を開いた。
 私が従妹のことで怒ってはいないと分かったのだろう。表情に緊張感がない。
「確かに私の方にも責任あると思うけど、大げさにしたのはアンタだし、そのせいで色々とややこしいことになったのも事実だよね。実際にすごく恥ずかしかったわけだし、気持ちの上でも色々と不都合が出てくるのは目に見えてるから」
 そこまで言って、一端言葉を切る。彼の方も私が何を言いたいか分かったらしく、両腕を後ろに組んだ。

「―――けじめ、つけたいんだけど」
「―――覚悟は決まった。どんとこい」

 私の拳が彼の顔面にめり込んだ。



 家に帰って時計を見ると、まだ夕方の5時だった。
 ダイニングのテーブルにビニール袋を置く。今日は中村さんが休みらしいから、コンビニで買っておいたのだ。
 中村さんはホームヘルパー…家政婦として父が雇った。病院の院長を務めている父は普段から近所に借りたマンションで生活していて、家に帰る機会が少ないことを心配していたのだろう。何年か前から、中村さんは家の家事全般をこなしてくれている。
 ただ、私はどうも中村さんが苦手だった。通いで家に来ている中村さんは朝の9時から夜の7時までと働く時間帯が決まっていて、だから私が帰るのは基本的に7時以降だった。放課後になってそのまま家に帰ってきたのはずいぶん久しぶりのことだ。
 鞄を部屋に置いて、シャワーを浴びた。
 買ってきたお弁当はまずかったので、半分ほど捨てた。




















 あとがき

 ようやく7話目も完成です。実は1か月前くらいに完成してましたが忘れてました笑
 今回は両パートともに一つの区切りないし転換期的な意味合いが強いです。
 第1章が7話まで、8話から第2章、みたいにお話の雰囲気が少しずつ変わってきます。
 それに伴って書き方も意識的に大変革します。
 ちなみに現実世界パートものっそ短すぎじゃ流石にアレなのでちょい蛇足エピソード追加しました。
 とりあえずコレを見てくれている方がいると仮定してこれからも頑張ってくのでよろしくお願いします。


7728
感想ですー。 by 風柳 2007/05/07 (Mon) 17:50
△up
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どうも、風柳です。
『春風』、読ませていただきました。

まずは一言、巧いですねー。
台詞回しがとっても素敵です。
特に現実世界の2人の会話での皮肉の投げ合いがものすごく私好みです(笑)

また台詞回しが上手なためか、一人称の地の分がまたいい味出してますよね。
一人称ならではの主観的な世界観も素晴らしいです。
私自身は一人称が苦手なので、読んでて凄いなぁと思いますよ。


何やら褒めちぎってばかりですが、それは続きに対する期待の表れということで(笑)

ではでは。
7716
感想発射! by カラス 2007/05/06 (Sun) 15:35
△up
レス/編集
 
どうも、カラスです。
最近はテキストBBSが賑わってきて大変喜ばしいです。
そしてまた賑わしてくださるお方が……!

それでは感想を!

文章力が酷いだなんて、全然そんなことないです。
というより普通に巧いです。
スラスラと読みやすく、表現力にも驚かされました。

内容については意識の海での、主人公の思考が面白かったです。
特に言えば、リクレールを改革を押し進める政治家のようだ、との例えが個人的にウケました。
まだ、現実世界との関係はよくわかりませんが、勝手に想像(妄想)でも膨らませておきます。

ではではここらで失礼いたします!
カラスでしたー。
7729
感想です by 冬馬 2007/05/08 (Tue) 00:53
△up
レス/編集
 
お疲れ様です。冬馬と申します。

久々のもげさん作品ということで(そのまえにこちらがテキスト板久々というのもありますが)、すごく楽しみに読ませて頂きましたが、一人称の使い方がうまいのと、表現の仕方がきれいですね。

まだまだお話自体は始まったばかりという感じですが、二つのパートとも、すごくうまい位置で区切ったこともあって、続きの方すごく楽しみです。

それではまた。
7733
感謝! by もげ 2007/05/12 (Sat) 12:53
△up
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カラスさん、風柳さん、冬馬さん、感想本当にありがとうございます。
こんなにたくさんの感想をいただけて・・・・・・なんて果報者なんだ、自分よ。(感涙)




>カラスさん

暖かい感想、本当にありがとうございます。
テキストBBSが賑わってきた、というのは俺としても嬉しい話ですね。なんか懐かしいですし。
自分がこの話を書くことでさらに賑わせられるとしたら、やりがいも出てきますよ。

文章力・・・・・・酷くないですか? というより普通に巧いですか!? えぇっ、表現力に驚かされましたかっ!?
そ、そんな風に言って貰えるなんて、本当に嬉しいです。ああ、調子に乗ってしまいそうだ・・・・・・。

主人公の思考については勢いで書いちゃったんで、読み返してみて「あ〜」って感じでした。前後の文が微妙に噛み合ってないところもいくつかあって、かなり反省すべき点だと思っていました。でも、面白いと言っていただけて本当に嬉しいです。
改革を押し進める政治家、というのは考えればかなり特殊なたとえですよね。でも、ああいう独特というか奇特な表現も自分の持ち味なのかなーとも最近は考えています。ええ、調子に乗り始めたというところですか。(笑)

現実世界との接点というか関連については、徐々に明らかにしていく予定です。乞うご期待ください。
こんな自分の話に感想を頂けて本当に嬉しかったです。ありがとうございました。





>風柳さん

感想をいただきまして、誠にありがとうございます。あ、目にゴミが・・・・・・。

巧い、というお言葉は本当に嬉しいです。というか、感動しました。
台詞回しについては自分自身それなりに気を使って書いていることもあって、褒めてくださって本当に踊り狂わんが如き嬉しさでした。
特に現実世界でのような会話は自身ひねくれているせいか書きやすく、また書いていて楽しいものなので、お気に召していただけて良かったです。今後もああいった皮肉っぽい会話がどんどん出てくるので、お楽しみいただければ幸いです。

一人称の文章がいい味出してるとのお言葉、まことにありがとうございます。
一人称の描写は確かに難しくはありますが、臨場感が出やすくなるのが利点ですね。特に、ギャグやコメディーといったジャンルを書く場合は非常に重宝します。
その代わり場の状況を描写するのが難しく(主観的な捉え方なので無理にやろうとすると不自然になるため)、その点においてはかなり厄介なところもあります。
ただ、自分はそもそもがギャグ書きなのでやっぱり一人称の方がしっくりくるんですよね。

褒めて伸びるタイプと自覚している自分としては、褒めちぎられるのはかなりの活力になります!
二話目も書いたので読んでやってください。感想本当にありがとうございました。





>冬馬さん

感想ありがとうございます。嬉しくて仕方ありませんでした。

久々のもげ作品・・・・・・? と、当時を知ってらっしゃる作者さんでしたか! ひゃっほーい!(壊)
久々、ということは『災難』などを読んでいただいた事があるということでしょうか? だとすれば本当に嬉しいです。
蒙古斑の取れていない頃の自分を知ってくださってる方が、今の自分の話を読んで下さって、さらに感想までいただけるなんて、これ以上ないくらい光栄ですよ!

テキスト板を訪れるのは久々だったのですか。ご復帰、おめでとうございます。
一人称の使い方がうまい、表現の仕方がきれい、と言っていただきまことにありがとうございます!
パートの区切り方などに関しても、出来るだけいい感じのところでまとめられたようで、ほっと一安心です。
続きを楽しみにしていただけて光栄です。これからも鋭意努力する所存なので、よろしくお願いします。





お三方とも、本当にありがとうございました。
感想を頂ける、というのは本当に嬉しいことだなぁ、と久しぶりに実感できました。
というか感謝書くのが遅れてすいません。諸々の事情があって土日にしか投稿できない立場にいるものですから。
今後も一、二週間に一回のペースで投稿していく予定なので、気長に待っていてくだされば感激です。
あ、感謝は絶対に書くのでついでに感想もいただけると嬉しいです。(笑)
それでは駄文ですがこれにて。本当に嬉しかったですもげでしたー!





7827
感想でございますー。 by 風柳 2007/07/29 (Sun) 23:15
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春風最新話、待ってましたよー。
というわけでさっそく読ませていただきました。

異世界、トーテムがクロウで風柳の期待度が急上昇(何)
やっぱり時代は犬クロウですよn(殴)

あと、アキラさんごめんなさい。
生まれてこの方日本から足を踏み出したことのない私でもマスヲという単語からそんな気の利いたツッコミはできそうにないです。


それにしても、やっぱり風柳は現実世界の雰囲気がお気に入りなようです。
奈緒と晶のやり取り、本当に自然でさらりと読めてしまいます。
・・・短いからだとか、そういう謙遜は却下しますね?(笑)
本当に自然に文章が流れていると個人的には思いますので。
というわけで、こちらがもっと長くなるとの言葉に今から期待させていただきます。
なんか最後にさらっともの凄い伏線が張られましたけどそれは無視することにして(何)

続きも一日千秋の思いで待たせていただきます。
ではでは。
7833
響け感謝、届けマイソウル by もげ 2007/08/03 (Fri) 11:38
△up
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ネーミングセンスなんて人には必要ないですよね。(泣)

風柳さん、感想本当にありがとうございます。

やはり時代は人クロウより犬クロウですよね。
ヒトクロウだと一苦労みたいでイヤですもんn(蹴)

いや、ツッコミに関しては・・・・・・多分、誰一人としてまともには返せません。
もし返せたとしたらその人はよほど天才な人か奇特な人かのどちらかでしょう。(何)

そうですか、やはり風柳さんは現実世界がお気に入りなのですね。
しかし、奈緒と晶のやり取りがさらりと読めるのは短いかr(殴)
文章が自然と流れているとのお言葉は、大変ありがたいです。あの風柳さんにそう言って貰えるなんて、かなりの光栄ですよ。
まぁ・・・・・・長くなっても文章がさらりと読めるかどうかは、その時にお確かめください。(何)

そして伏線・・・・・・いえ、風柳さんが考えている通りでは・・・・・・いや、否定できない。(汗)
とりあえずこれに関しては無視していただいて本当に助かりました。いや、匂わす文章って難しいなぁ・・・・・・。(遠い目)

い、一日千秋ですか! そんなこと言われたら疾風迅雷の速度で書くしかありませんね!
やる気の出る感想、本当にありがとうございました。本気で救われました。

それでは、駄文ですがこれにて。もげでした。


7843
感想です。 by 風柳 2007/08/19 (Sun) 23:41
△up
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感想のタイトルが浮かばない。でもそんなの関係n(殴)
『おっぱっぴー』とか素面で言えたら少しは私の人生も変わるのかなーとか思ってやまない今日この頃です(何)
ちなみに今はほろ酔い気分(ぁー)

取り合えず、あとがきで名指しされたら書き込みにこざるをえませんね(笑)
まぁ、そうでなくとも今回は書き込まずにはおれませんが。

表現では相変わらず一人称の書き方が秀逸ですね。
今回はとりわけ現実世界でその威力を思い知らされました。
聞かれましたのでお答えしましょう。
今回も、特に現実世界はものすっごく自然な文章に仕上がっていると思いますよ?(笑)

あと私程度の表現力でよければ、世にゴマンといる三人称小説作家の方の作品から何作か読めば自然と手に入ると思います(苦笑)


では内容。

まずは異世界。
ノッポさん・・・なんていい人なんだ。
この先、彼は大きな手柄は上げられなくともその人徳から軍曹くらいの地位を得て、サーショで知り合った妻に息子と娘が一人ずつ生まれ、取り立てた大事もなく退役、その後は慎ましやかながらも幸せな生活を送ることになる、そんなアフタービジョンが浮かんできたのは自分だけでいい(何)


もちろん長くなった現実世界にもうきうきです。
今回はどちらかといえば年齢相応な二人の姿が見れて楽しかったです。
売店のおばちゃんに恋人同士と間違われてタジタジなんて、こういう王道に私はやっぱり弱いのです(笑)

それにしても奈緒ーっ。奈緒がなんかかぁいいよーっ。
これまでは少し格好いい女の子のイメージを受けていたため、
なんだか不意打ちを食らった気分です。

ちなみに、ここまでの現実世界パートを読んでる最中に、ふと伊坂幸太郎氏の某作品を思い出したのはここだけの秘密です。

ではでは、続きも期待してますね。
7848
感謝ですね by もげ 2007/08/26 (Sun) 11:07
△up
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 タイトルめ、いつもいつも悩ませてくれちゃってうふふ。
そんなこんなで感謝の言葉を綴ります、はい。
 うーむ、「おっぱっぴー」とか素でいえたら確かにかなりの猛者ですね。ある意味、退屈な毎日から抜け出すことも可能そうな気がします。悪い方向に。(ぇ)

 いえ、別にそんな意図があって名指ししたわけでは……。
 名指しした甲斐もあったなとか、全然思ってませんからね?(何)

 秀逸だなんて……一人称における表現の仕方もいまだ手探りで、拙いところも色々とあるので、そんなこと言われたら調子に乗ってしまいそうです。しかも現実世界も自然……うおおおぉぉ!(壊)

 いえー、それでも、風柳さんの表現力はやはり逸品だと思います。


 そして内容。

 親切なノッポさんは、その親切さから誰からも愛される兵士さんになるでしょう。
 そしてゆくゆくは風柳さんの想像通りの人生を辿り、「平均的な幸福」を得るのでしょう。
 でも今後は意外と重要キャラになるかも?・・・・・・いえ、ならないかも。

 現実世界は今後やはり高校生としての彼らを描く感じになっていきます。王道というか、形骸化したものはいくらでも出てきそうなので、ご期待あれ!

 4話における奈緒の変化は確かにギャップを感じさせるものかもしれません。
 ただそれは彼女が普通だからではなく、彼がおかしすぎるのが原因です。
 普段の奈緒は冷静に物事を消化する氷のような女だったりします、きっと。

 そして……いやー、やはり分かりますかー。(何)
 実は何を隠そう私は某氏の作品に影響を受けたクチでして。
 最初に某氏の作品を読んだのは高校生の頃(※今もですが)のことで、確かタイトルが「グラビティ道化師」。
 あの鮮烈かつウィットに富んだ文体に、当時の私はただならぬショックを受けたわけであります。
 特に一人称の文章を書く際にかなり積極的に表現をマネました。既にパクリと言って余りある領域です。
 これでもかつては「パクリの帝王」なんて呼ばれていたくらいで。(何)
 で、現実世界パートを書く際、某作品の設定というか世界観というか、その辺りも普通にパクリました。というのも、頭に描いた物語を連結させるためには、あの何とも言えない刹那的な情景が不可欠だったからです。その時点で私は三流なわけですが。(笑)
 ただ、表現そのものは手探りでやっていますので、その辺りは大目に見ていただきたいなぁなんて。(何)
 まぁ、次回以降からは現実世界パートも場面が一変してしまいますけどね。

 とにかく、風柳さんの眼力は流石です! 感動しました!
 今後も頑張るので、読んで下されば幸いと存じます。
 感想本当にありがとうございました。
 それでは駄文ですがこれにて。もげでしたー。

7908
感想です by 風柳 2007/10/28 (Sun) 19:08
△up
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うーん、どうにも気の利くタイトルが思いつかない。
というわけでいつも通り面白みもなく感想いきまーす。

春風第五話、読ませていただきました。

異世界パート、アキラさんがいい感じに変人してますねー。
というか、子供の受ける授業受けとんのかいっ!
しかも非常に複雑かつ高度って・・・!
なんだかアキラさんのおつむが少々不安になってきました(失礼)

あとセシルっ!
確かに理論と実践の間には齟齬があるけどなぁっ、理論なくしては実践はありえねぇんだよっ!
ちょっと感覚で理力使えるからって調子に乗るなよっ!
しかも、何気に『あ、「空を見上げて」にお前出すの忘れてたぁっ!』とか思ってないからな、絶対にっ!

・・・はぁ、はぁ、はぁ。

あと、2.5kgのチョコレートはもはや『携帯食』ではないと思います。
一つの鈍器だよね、きっと。

というわけで異世界パートは風柳のツッコミ心を存分に刺激してくれる内容でした。
作中何度も笑わせていただきましたよー。


現実世界パートはー・・・なんといっても新キャラ四季さんっ。
彼女はアレですよね、生まれてこの方『無駄だから』という理由から文字を一切書いたことがない超天才プログラマーなんですよね、きっと。
そんな彼女は二十億光年の孤独で泣いちゃえばいいんだっ。

うん、意味がまったくわからないっ。

って、しまったっ!これじゃ現実世界パートの感想が異世界パートの感想より短いじゃないかっ。

まぁ、いいか。


というわけでリクエストいきまーっす!
ここでリクエストをするのは始めてなのでちょっとドキドキ。
見てろよ・・・もげさんがドン引きするようなリクエストを繰り出してやるからなっ。

ふっふっふっ・・・決めましたっ!

『シルエットノート、シシト×シィナのシリラブをシィナの一人称で』っ!

うわぁっ・・・!やっちったっ・・・!
画面の前で硬直しているもげさんの姿が目に浮かぶようだぜっ!
でも後悔はしません。それが風柳の生き様だっ!

どんな作品になるか、楽しみにしてますねー。

ではでは。
7911
感謝でござ候 by もげ 2007/11/04 (Sun) 13:14
△up
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気持ち頑張ってまいりますので、風柳さんもタイトルに気を遣われることなく、魂の導きに従ってなすがまま流されていきましょう。
というわけで遅々として終わりというか中盤の山すら見えないこの話、感想をくださってありがとうございます。

今回、どちらかといえば異世界パートに力を入れました。
ちなみにアキラさんはそこまで馬鹿ではありません。ニュアンス的には頭悪い部類ですが。
理力教育は、学習に必要な基礎知識が彼の常識と異なるため、難航していたという設定です。

そして冴え渡る風柳さんのツッコミ! 非常に適確、かつツボを押さえておられます!
しかし甘い、真にツッコんでほしかったのは2.5kgのチョコの8分の1ずつを子供達に分けたとしても、1個が約313gになるという点だったのです!(しるか)
異世界パートはお楽しみメインだったので、笑っていただけて非常に嬉しいですー。

そして現実世界パート。まさかの新キャラ登場。
彼女はきっと、わりかし世を疎み、自己に埋没する傾向の強いキャラクター達のなかに新しい風を吹かしてくれるじゃろう。
と名探偵ばりの鋭い推理を発揮した私は、意気揚々と描いてみたわけですが……拍子抜けというか、正直手ぇ抜き過ぎました。(笑?)
しかし彼女は今後もローテンションにほのぼのと進む現実世界パートに、エッセンスというかアクセントを加えてくれることでしょう。
まぁ、明らかに力のいれ加減が違うので、現実世界パートの感想の方が長くてもそれはそれで複雑かもです。(笑)


そしてリクエストありがとうございました、いえーす!
風柳さんの初リクエストをもらっちまったぜ、はぁはぁ。(何)
まぁ、見事にドン引きさせられたわけですが。(ジョークです)

『シルエットノート、シシト×シィナのシイナ一人称』承りました。

正直コレをはじめて見たとき、画面の前で17秒間硬直姿勢を維持しましたよ。(笑)
ネタ的には全然OK(笑)なんですが、一人称のラブってのをやったことがなかったので。
まぁだからこそ、出来の悪さには目を瞑っていただければ……というかすいませんっ!
ああ、こちらのリクエストにはあんなに凄い作品で答えて貰ったというのに……!

ごめんなさい! それでは駄文ですがこれにて、もげでした!(逃走)


8013
感想でござーる by asd 2008/12/18 (Thu) 00:53
△up
レス/編集
 

ござーる。
……
わ、私は一体何を言っている!?


ま、そんなことはともかく感想です。
もげさんの「春風」は初めて読んだのですが……

……う、上手い!と。かなり感じました。
描写やキャラの台詞の一つ一つが非常に上手く書かれていて素晴らしいなと、素直に思いました。
私の方ではギャグパートで進んでいることもありますが、描写が圧倒的に少ないので、こういう風に書ける人は純粋に尊敬します。
それでは続きを楽しみにしたいと思います!感想、短くてすみません。


あ、あと一つ。アキラに。

マスヲはやめれw それは無理でしょう(色々とw
8014
感謝でおじゃる by もげ 2008/12/18 (Thu) 01:40
△up
レス/編集
 

平安貴族であるところの私としては、まぁ語尾は「おじゃる」一人称は「まろ」なわけで。
まぁ嘘ですけどね(何)。

というわけで感想返しです。まさか感想貰えるなんて思いませんでした。
推敲直後のタイミングだっただけに「うおお!」とか言っちゃいましたよ(ぇ)。

上手いというお言葉をいただけて本当に嬉しいです。
描写やキャラ同士の掛け合いについては未だに手探りの状態ですし、私自身語彙が非常に乏しいこともあって心配だったのですが、そう言ってくださると自信が出ます。
…まぁ、ぶっちゃけ矛盾点や違和感はどうしても拭えませんけどね(笑)。
ちなみにマスヲの部分はどうして書いたのか自分でも分かりません。
多分書いてた当時私の中でマスヲがブームしてたんでしょうね。ナニシテンダヨ。

続きを楽しみにしていただける以上の喜びなんてありません。
それに感想は長さじゃなくて内容ですからねっ!(伏線)

感想ありがとうございました。駄文ですがこれにて。もげでした。


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感想ザマース by asd 2008/12/24 (Wed) 00:27
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こりずに貴族ネタ。今度は西洋貴族ザマース。
ははははは、何がやりたいねーん♪

四話・五話一緒に感想行きまーす!

アキラが国家機構とかに興味を持つとは……現代の日本人とかにはそういう人があまりいないぶん珍しく思いますね。まぁ一都市に完全に権力が集中した中央集権国家なんて今どき珍しいですけど。
まぁ民主主義にも中央集権にも長所・短所があるわけでシルフェイド世界的には大陸の総面積数や人口数からどうしても中央集権にならざるを得な……なんだか脱線した気がするので話を戻します。

良い人!ノッポの守衛さん良い人――!!
まさか守衛さんがこんなにいい人だなんて……そしてこの時のチョコがあんな風に役に立つだなんて……チョコ旨いよね。チョコ。
でかすぎな事を除けばね。
2.5kgも食えるか――!登山家でも携帯しませんよそんな量!!
夏場は地獄だな……バーン城のあちこちからチョコの匂いが……

でもまぁ子供も飛びつくわ……子どもたちかわいいなぁ……
しかしアキラは無駄に爽やかスマイルを使い過ぎ。
キミキミ、ホンキニしている子がいるよ?
そしてキミ、何も知らない子供たちに対して賄賂を渡すな。賄賂を。酷いやつだな、全くぅw



現実世界では新しいキャラが登場してきましたね。
しかも転校生は二名いたとは……しかも従兄?意外な展開にワクワクですw
しかし……どこの世界も食料は大きければいい物ではないでしょう……ソフトクリームもチョコもどうしてそんなにデカイんだw

新キャラクターシキ。
さて彼女の役割は一体どんなものなのでしょうかね。
「自我の確立」とか言っている辺り自分を客観的に見たいのか、それとも自分が不安定だから確立したいのか……あ、小説の影響?じゃさっき私が言ったの関係ないかな(爆
現実世界も遊園地が終わって進み始めてきましたね……これからの展開を楽しみにしたいと思います!

だいぶキャラクター達に焦点を当ててみた感想でした。
では次回も頑張ってください!ツーユー。
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感謝します by もげ 2008/12/24 (Wed) 23:47
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西洋貴族ってザマスって語尾なんでしょうかね。
とどうでもいいところが気になりました。感想どうもです。

治世の法についてはよく分かりませんが、彼は何となく興味があります。
中央集権にならざるを得ないというか、あの程度の人口と土地面積で「クニ」の概念がある時点で何かがおかしい気がしますが、まぁ色々とツッコめるけどツッコまないというのも日本人が美徳の一つだと信じてやめることにします。

ノッポさんは出世こそしませんがそこそこの地位に(以下略)幸せに暮らしましたとさ。
夏場のバーン城は別名チョコレッツ要塞と言われて恐れられます。…無理あるな(笑)。

彼は物語で言うところの主人公属性のため、会う女の子は八割方彼のことを好きになります(嘘)。
でも年下の子から見たら優しいお兄さんで通せるくらいの常識人です。一応。わいろ使いますけどね(笑)。


現実世界の今後の行方にご期待ください!(某少年誌風)
世の中には大きいものはいいものだとする一派があります。

新キャラの人の役回りは友達、です。意味の捉え方は色々あります。
あと「自我の確立」は別に重たい事情とか一切ないのであしからず(笑)。

感想ありがとうございました! やる気出ます!
それでは駄文ですがこれにて。もげでした。

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やーわらかっ感想の心は一つ♪ by asd 2009/01/18 (Sun) 02:12
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感想出したい♪ 感想出したい♪
……いろんな所にゴメンナサイ。悪意はないので勘弁して。

「15回くらい、殺されてやるよ」
……の所は素直にカッケェエエエエエ!!って思いましたね。
でも15回も殺されたら精神崩壊しませんかね……逆に慣れるかな?
まぁ今後彼が「死ぬ」ことになるのかどうかは今後の展開を待つとして、
ここからは私的見解が入ります。

種族の対立なんて外見が違うだけで本当に起こるから怖いですよね……
同じ人間でも宗教が違うことや、住む場所が違うだけで対立するなんて事ザラにありますからね。

戦闘じゃなくてケンカですか。一人も殺さない上に治療までするんですから本気なんでしょうね。
うーん。でも魔王とかに会った時どうするんでしょうか。
15回殺されると言いましたけど、シイルの街の防衛線とかで会った時は殺されると、さらに別の人が殺されるんですよね。
今は自分の問題だけで済むでしょうけど、他人の死も絡んだ時彼がどう動くのか楽しみです。その時こそ彼が「敵」を認識するのでしょうか。
……まぁシイルの街防衛戦に彼が参戦したらの話なんですけど(笑

異世界編においてフラッシュバックしたのは彼の過去なのでしょうね。
問答無用が嫌いなのは抗うことができないからでしょうか。
どれだけ自分の意見を主張しようが、どれだけ抗おうが、それまでの行為が全て無意味になる。
もしくは無意味にしてしまう言葉だからでしょうか。
まぁ彼には彼なりの考えがあるのだから考えても分かりませんね。今後の展開に期待です。



ああ、現実世界もとうとう人間関係が増えてきましたね。
昌の所為で奈緒の学校生活は大変なものになりそうですが。(笑
さぁ昌の従妹。いきなり険悪そうですが、これからどうなることやら……
弁当の量が尋常じゃないのは愛か。そうか君の愛は弁当の量なのか。(決めつけんな
しかしこの世界はパン以外は今のところ量がどれもこれも常識を突破してますね。いやそれが常識なのか。
それとも従妹も大きい物を良いとする一派の一人なの(略

やれやれ妹キャラまで登場したのに今後の展開上フワフワした話にはならないんですね……うーん、仕方ないけどどうなることやら。



かなり遅れましたが明けましておめでとうございます。
今後も楽しみにしたいと思います!頑張って下さい!
それでは今回はこの辺で〜
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感想 by 鳩羽 音路 2009/03/13 (Fri) 18:01
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 こんにちは、音路です。
 前読んだ時からかなり時間が経っていたので、一話からすべて読みました。結構時間がかかりましたが、すらすら読むことができました。

 では感想。
 さすがはもげさん、文章が上手い。登場人物それぞれの細かい心の動きが分かりやすく、情景描写もさることながら、皮肉っぽいセリフが心地良いです。僕ではとても及びそうにない。何読んだらそうなるんですかw
 幻想たん(「たん」が変換されないのでこのままでいっか)のパートは特に構成が上手いと思いました。同盟にいる殆どの人が汁幻のストーリーを知っているために、場面と場面の途中を書いてしまうとぐだぐだになってしまう…………そうならないために途中を抜かし、重要な場面だけを書いておけば、ぐだぐだは解消されスピード感が増し、読者に「読ませる」構成ができあがる。僕には思いつかなかったです。
 そして、アキラの過去が少しずつ明らかにされ……次回ですね。最後微妙にキてるようですが、セタはどうなるのかって感じですね。
 現実世界パートは、オリジナルな話が展開されていて楽しいです。なんか最後に晶の従妹が出て来ましたが、間違いなく僕はこういう立ち位置のキャラ、もしくは妹的キャラを……げふんげふん。
 にしても、奈緒が晶から逃げる場面は僕としても読みながら期待しました。奈緒が転入生と先に会ってるのに、この場面を期待しない人がおかしいと思うんだ僕は。
「これは来るだろう、来る、来る、……キターーーー!」


 短いですが、ここらで終わりたいと思います。
 テキストBBSを盛り上げていきましょう! 音路でした。
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感謝 by もげ 2009/03/14 (Sat) 15:27
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再びまた感謝文を書く日が来ようとはー!
あまりの嬉しさに何だかドキドキしてきました。

>asdさん

まずは遅れて本当に申し訳ありません! 気づきませんでしt(殴
異世界編、彼は結構でかいこと言いましたが実際は怪しいものです。
現状自分の道徳と価値観で行動していますがいざとなったらわりと丸投げするかもしれません。怖い子…!
異世界編と現実世界編は実は少なからず関連性があります。当然ですが。
今後色々と繋がって行けたらいいなと思っていますが、実際はわかりません。(何)
現実世界編は一応は単体で独立させたいので色々とややこしいです。
何事も大きい方がいいということですね。全てはお金がない私の心象投影です。
今後は従妹も絡んでくるようなこないような。そんな感じです。

>鳩羽 音路さん

お時間とらせてしまったようで申し訳ありません。こんな話のために…!
文章が上手いとか言われると調子に乗りそうですフフ。漫画をたくさん読んだ上で映画にもなった某イギリス発の長編ファンタジーを読めばこんな感じの文が書けるようになりますがお勧めはしません。
幻想譚パートは構成を意識したというより、ああいうブツ切りにせざるを得なかったという方が正しいです。
場面場面を繋ぐ文章が書けないという、私の下手さに起因する苦肉の策だったというオチ。
でも褒めてもらえて凄くうれしいです! ありがとうございます。
最後アキラキてますが、どうなってしまうかは私にもわかりませn(殴
従妹は定型にはまりすぎて怖いくらいの妹ツンデ(略)です。偶然の産物。
逃げるシーン、本当はもっと長大だったんですが容量の都合上七話まで伸ばすのは明らかにおかしいので泣く泣く切ったという裏話があります。おかげでかなり違和感残りましたが、お楽しみいただけたようでうれしい限りです。
( ゚∀)キタ!!( ゚∀゚ )キタ━━━

お二人に感想いただけて本当にうれしいです。次も頑張ります。
テキストBBS盛り上がるといいですね!
p.ink