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黒の中に潜む黒・白の中に潜む白 7 by asd 2009/05/07 (Thu) 21:46
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「あふぅん!」

鈍い音が森の中に響き渡る。
殴る音だ。それは低い音で辺りに聞こえた。
右腕が振るわれる。

「ほへぇん!!」

トカゲの顔にクリーンヒットだ。拳には殴った時の感触が残っているだろう。
しかしトカゲは倒れなかった。ふらふらになりながらも殴っている側に向かっていく。
今度は左腕が振るわれる。

「ぐぽ……ぺっ!」

次は腹だった。
下から掬いあげるような、つまりはアッパーのような軌道で左腕はトカゲの腹へと吸い込まれていった。
鳩尾――の辺りだろうか。さすがに鳩尾に入ったのには耐えきれなかったのかトカゲがゆっくりと倒れた。
トカゲが倒れたその時、その場に立つ者は一人。倒れる者は一体。
そして――それを今まで尻もちをついた状態で眺め続けていた者が一人。
彼女は思う。
今まで起こってきていたことを一通り彼女は眺めていた。
その彼女が、今思う事は――

……何が一体どーなってるんでしょうか。

だった。



七 スパープロレスコンボ




とりあえず状況を整理しようと彼女は思った。
@ 自分が薬草を取っていると後ろからトカゲが近づいてきた。
A 逃げていたら追い詰められて絶体絶命になった。
B その時誰かが割り込んできた。女性だった。変な掛け声がしたような気がしたが気のせいだろうか?
……うん。ここまでは特に問題は無い。最後の掛け声はよく分からないけど。
問題はここからだろう。
剣を振り上げられた瞬間恐怖のあまり目を閉じていた。そして次に目を開けた時には――
……打撃音とともに女の人がトカゲ相手にマウントポジションを――
ここで一つおかしいことがある。トカゲたちは人間たちよりもはるかに身体能力が高いはずだ。そのトカゲ相手にマウントポジションをとれるとは、この女性は一体――とかいう真面目な疑問は、

「うふぅん……もっと、もっとぉおん!」

という妙に……喜んでいる声によってどこかに吹き飛んでしまった。

「まだ生きてたか――!」

倒れたトカゲが言葉を発したら妙に強い女性が再びデジャヴの如くマウントポジションを取る。再び打撃音再開です。
そうそうこんな感じの体勢でこんな感じの打撃音を――

「グフッ!ゴフッ!て、的確!入る場所が的確に急所をゴバッ!」
「うるせぇええええええ!あんだけ殴っておけば嫌でもレベルアップするわぁ!」
「や、やった!私が女王様の役に立っている!急所を正確に殴ると言う行為を女王様に伝授することがぁあああちょっとイタイイタイイタイイタイタイ!でもシアワセ――――!」
「黙らんかぁあああああ!!!」

……
……まぁこんな感じでしたね。
しかしあれだけ殴られてあのトカゲはなぜまだ喜ぶのでしょうか。
もういくつも痣や打撲が避けられないはず……
……まぁ。
まぁそれはともかく……あのトカゲは私の命を――確実に狙っていたトカゲです。
別に心配しなくてもいいのかもしれません。
トカゲは人の――敵なのだから。
それが、今の世の中の一般的なあり方なのですから。
……
……
……でも、
彼には意思がある。
……痛みを快楽と感じる変な性癖があるけれど、
それでも彼には意思がある。
もしかしたら何か特別な事情があったのかもしれない。
彼も同じことを考えているのかもしれない。
人間は――竜人の敵なのだから、と。

「おふぅ!へふぅ!くふぅ!こ、超える――!ダメージ限界量を流石に超える――!」
「超えろぉ――!そして死ねぇ――!」
「ひ、酷い!いくら私がMだからってそれでも意志のある人間ですか貴女は!ああでも気持ちいい――!!」
「前世は違うから大丈夫だ!それにテメェも喜んでるだろうがぁあ!」
「否定はしませんよ!私は……Mですからね!!」
「この状況で胸張って言うことがそれか!?」
「YES!!私は竜人であるまえにMなのです!」
「だったら誰かに一生殴られてろよ!」
「その役目を今こそ……貴女に!!」
「脳内会議の結果、大絶賛でお断りだこの屑が!!」
「い、今の良い!屑って言ったところもう一回!頼みます!もっ一回!」
「せめて意識飛べ貴様ぁ――!!その口開くなぁ!!」

……
……全然違うかも。





「ううう〜……ぐすっ、えぐ」
「……そろそろ泣きやんでくださいよノイさん。ほら、外に出ましたよ。まだ明るいですよ〜」
「ヒック……で、でもでも、もう夕方になりそうだよ〜」

泣きじゃくるノイの言うとおり、辺りはまだ明るいものの太陽は沈みかけていた。まもなく夜が訪れるだろう。

「夜が来る前に街に戻ればいいだけですから……ほら。帰りましょうね〜」

まるで中々泣きやまない子供を励ます母親のような口調にスケイルはなっていた。
それもそのはず。ここに辿り着くまでにノイは露結した僅かな水が落ちる音にも、蝙蝠が飛びさる音にさえも敏感に反応し中々前に進んでくれなかったからだ。
そんなノイをどうやって前に進めるか――スケイルは必至に思案した結果、今のように子供を持っている時の親の心境になりきることにしたのだ。

「街もすぐそこですし……もうここからは怖くないですよ〜。街まで戻ればひとまず安全でしょうしね。」
「……で、でもシンクさんいないし……」
「……そーいえばそうですね……どこ行ったんでしょうか……」
「ううう、シンクさんも私を見捨てるし、ゆーれいは出てくるし……今日は約美だぁ――!!」
「ノイさん漢字違う!“約美”じゃなくて“厄日”!」
「うるさ――い!!うわぁぁあん、グレてやるぅ――!!」
「何でそうなるんですかぁ――!」

……私も泣きたくなってきました。ぐすん。






「あ、ああ――!涙が、涙が出てくるぅ――!初めて!こんな快感初めて――!!」
「黙れと言っているだろうが貴様――!!」

……どうしましょう。すごい話しかけたくないです。
この人たちが何をやっているのかだんだん分からなく――というか怖くなってくる勢いです。どうしましょう。
……帰っちゃおうかな。
そんな不遜な考えを何度したことでしょうか。とりあえず彼らは今女性の方がトカゲの方をコブラツイストから即座にバックドロップかけるという離れ業やっています。あ、今四の字固めに……あ、トカゲさんが白目向いてます。

「あ、あのぉ……」

なんだかたまらず話しかけてしまいました。なんというか、その、ええ色々状況が悲惨なので。

「あなた方はいったいさっきから何を――」
「逃げろ!」

えっ?

「いいか、ここは危険だ今すぐここを離れるんだ。危険は私が責任をもって排除するから!」

危険はあなたです、とツッコミ入れるところなのでしょうかここは。

「き、危険ですと!いったいどこに危険が!女王様私にお任せを!女王様の手など汚さずに、危険などこの私がすぐさま排除して――ごばぁ!な、なぜこのタイミングで殴りますか――!」
「危険はお前だ――!!」

いえ貴方もです。
あ、四の字から筋肉ドライバーを……

「…………ゎぁぁぁぁぁん」

あれ、遠くで何か聞こえたような……

「…………ぅぁぁああああん」

なんというか、そう泣き声のような……
あ、すぐ近くからも聞こえますけど近くのほうはちょっと喜びながらですのでちょっと気持ち悪いです。
それとはちょっと違う……なんというか、そう。

「……うわあああああああああああああん!!」

こんな子供みたいな泣き方――って、あれおかしいな目の錯覚かな。マンガとかでありそうな砂煙を生じさせるほどの勢いでこっちに近づいてきている人が――

「じ、じんぐざぁああああああああああん!!!」
「ん!?そ、その声はノイ!?なんでここに――のべッ!!」
「うえあああああああ!ごわがった!ごわがったですよ――!!」
「わ、分かったから離れろ――!鼻水と涙をつけるな――!」

……すごい勢いであの女の人に突進したようです。
よく泣いているあの人は……お知り合いなのでしょうか?ノイとか言われていましたが……あ、女王様が絞め殺されない勢いで抱きつかれています。愛されてるんですね。
と、その隙をぬってトカゲさんが女王様の足に接近をあ、蹴り飛ばされた。
……もう何がどうなってるんでしょーか……



あ、薬草とり忘れてた……





あとがき。
お久しぶりです。超久々に更新しました。
予想ではもう少し進む予定だったのですが展開的に一度ここできったほうがいいだろうという判断でタイトルも変えて投稿しました。時間が多少空いてきたのでその時間を利用して次はすぐに更新する予定です。
そろそろトカゲくんが殴られまくる回も皆さん飽きてきたと思うので次回でトカゲ殴られ偏は終わります。

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