ノベル&テキストBBS

小説やショートストーリーの書き込みなど、長文系の書き込みはこちらへどうぞ!
タイトルの左にある■を押すと、その記事を全て見ることができます。

□BBSトップへ ■書き込み □過去ログ表示 ▲ログ検索
●選択した記事の表示・返信・修正・削除
削除 06/10 (21:24) 8038
  T−1 「噂の男」 <鳩羽 音路> 03/16 (19:39) 8039
  T−2 「KILLER」 <鳩羽 音路> 03/16 (19:42) 8045
  T−3 「森の奥深きにある屋敷」 <鳩羽 音路> 03/20 (13:54) 8053
  T−4 「トカゲの森」(a) <鳩羽 音路> 03/24 (09:06) 8054
  T−4 「トカゲの森」(b) <鳩羽 音路> 03/27 (21:54) 8057
  T−4 「トカゲの森」(c) <鳩羽 音路> 04/01 (22:17) 8066
  T−5 「手紙」 <鳩羽 音路> 04/05 (19:31) 8072
  T−6 「解明」(a) <鳩羽 音路> 04/22 (00:08) 8093
  T−6 「解明」(b) <鳩羽 音路> 05/23 (16:44) 8098
  T−6 「解明」(c) <鳩羽 音路> 05/23 (16:45) 8109
  T−7 「解明2」 <鳩羽 音路> 05/23 (16:44) 8123
  T−8 「真実」 <鳩羽 音路> 06/09 (02:53) 8129
  T−9 「暗黒からの目覚め」 <鳩羽 音路> 06/10 (21:17) 8137
  番外編@「 Ruke=Keynote 」 <鳩羽 音路> 04/10 (17:11) 8076
  感想 <もげ> 03/12 (19:14) 8040
  感謝 <鳩羽 音路> 03/13 (00:50) 8041
  感想U <もげ> 03/18 (12:37) 8049
  感謝U <鳩羽 音路> 03/19 (13:27) 8051
  感想 <もげ> 03/24 (15:58) 8055
  感謝 <鳩羽 音路> 03/25 (01:16) 8056
  かんそ。 <もげ> 03/29 (20:54) 8059
  かんしゃ。 <鳩羽 音路> 04/01 (21:54) 8065
  かんそう <もげ> 04/04 (00:25) 8068
  かんしゃ <鳩羽 音路> 04/05 (19:09) 8071
  感想。 <もげ> 04/06 (19:37) 8073
  感謝。 <鳩羽 音路> 04/07 (23:19) 8075
  感想ですよ <もげ> 04/14 (19:05) 8085
  感謝です; <鳩羽 音路> 04/21 (23:43) 8092
  感想と暴走と <ケトシ> 05/10 (23:25) 8110
  感謝と房総半島(何 <鳩羽 音路> 05/11 (00:20) 8112

8066
T−4 「トカゲの森」(c) by 鳩羽 音路 2009/04/01 (Wed) 22:17
一覧を見る
 
T−4 「トカゲの森」(c)

 それから少し経って、キルとゴンは砦から出た。
 というのも、結局この場所には何の手がかりもなかったのだ。
 骨折り損といえばそこまでだが、誰のせいでもないので次の行動を考えるしかない。
 ふと、まだ例のバツ印を確認していないことに気がつく。
 ここまで何も無いとなると、最後まで何も無いような気がしている2人だったが、少しでも情報が必要になってくるこの依頼において、手を抜くことはあってはならない禁忌だ。
 最後の最後まで調べ尽くす根気がなければ、この仕事は務まらない。
「こっちのほうだぜ…………ほら、あの木の幹だ」
 ゴンの道案内で例の印の場所まで来てみると、たしかに木の幹に「×」印が刻んであった。
 ゴンの言うとおり傷は古くなく、さらにいえば傷が長く伸びていないので、多分、ナイフか何か小型の刃物で傷つけた跡だ。
 そのことからして、意図的なものだという予測がほぼ確実となった。
「他のはどこにあるんだ」
「この近くだ。もう少し行ったところにある」
 さらにゴンのあとに従い、3つのポイントで印の刻まれた木を確認した。
 どれも傷跡が似通っているので、間違いなく同一のものだ。
 しかしキルはまだ同じようなものがあるはずだと考えた。
 もし道しるべとして用意したものなら、もっとたくさんのポイントで印をつけてもおかしくないし、道しるべではないとしてもたった4つだけでは意味を成さないのではないか……?
 その推測は正しかった。
 ゴンが見落としていたのだろうが、周辺で6つのバツ印つきの木を発見した。
「ゴン……おまえ、ちゃんと見てなかっただろう」
「いや俺ちゃんと見てたし? つーかこんな細かい場所、普通気づかねえって」
 確かにそう言われればそうだった。
 新たに見つけた6つは、どれも木の幹ではなく枝や苔に覆われた根元の一部などわかりにくい場所にあったのだ。
 結果、合わせて10のポイントで印を得たことになるが…………。
 そのときキルはふと何かに気がついた。
「おまえはこの印なんだと思う?」
 キルはゴンにそう訊いた。
「道しるべじゃねえの? バツなんてありふれた印だしな」
「そうか……だが俺は、道しるべではないと断言できる」
「お、なんか分かったのかよ」
「ああ。よく印のあったポイントを確かめてみろ。普通に考えれば、分かるはずだ」
「場所か? …………あれがあそこで…………3つ目が…………」
 ゴンは、印を得た場所を頭の中で結んでみると、感覚的だが、直線ではなく、カーブ、特にかなり極端なカーブを描いていた。
「あ、なるほど、こりゃ道しるべにならないってことか」
「そういうことだ。道しるべなら、こんなに極端に曲がるなんてことはないってことだ。それに途中で途絶えている。そして…………これは多分ただ曲がっているだけじゃない」
 キルは紙と羽根ペンを取り出し、何かを描きだした。
 素早く手が動いて、すぐに大まかなトカゲの森の地図ができあがった。
 次に印のあるポイントを地図上に記入していく。
 常人なら森の大きさがわからず、正確に記入することができないが、キルの場合、地図や地形に関しては頭の中にその知識が詰まっており、また常人を凌駕する空間把握能力を有しているために、楽々とやってのける。
 ポイントの記入が終わると、今度は点を結んでいき、結んだ線を整えていく。
 するとある図形が紙の上に現れてきた。
「これは……円じゃねえか」
 ゴンは口をぽかんとあけて、そう言った。地図上にきっちりとした円が描かれていたのだ。
「そう、円だ。これは完全に道しるべなんかじゃない、何か、他のものを表したものだ。ところでゴン、円といえば何を思いつく?」
「…………丸い」
「当たり前だ。他には」
「スイカとかか?」
「もっとまじめに答えろ」
「うー……円だから……」
 ゴンはしばらく悩んでいたが、やがて口を開けた。
「中心、か?」
「そう、中心だ」
 キルはそう繰り返した。
「円には必ず中心がある。そしてこの円の中心は…………ここだ」
 キルは機械的に線を結び、円の中心を割り当てた。
「ぼくの推測では、ここに何かがあるはずだ。何のつもりで誰がやったのかは分からないし、もちろん王とは関係ないかもしれないが……」


 紙の上に記された場所へ行ってみると、そこは木が生えておらず、苔も多くない地面だった。
 キルは支給されていた剣を抜き、剣先でその場所を含めた辺り周辺を掘り始めた。
「理力使えばいいじゃねえか。おまえなら大穴くらい一発で空けられるだろ」
 ゴンがキルの作業をまじまじと見ながらそう言った。
 実際、それは「衝撃」の理力を使えば、キルなら可能だった。
「馬鹿だな、そんなことしたら埋まってる物も粉々になるだろ。何が埋まってるかもわからないのに、無茶はできない」
 ある程度埋まっている物が丈夫なら「衝撃」以外で使えそうな理力もあるが、キルはその性格から、確実に物事を進める方法をとったのだ。
 キルはいつも、石橋を叩いて渡るように自らが直面するであろうことを判断し確認する。
 キルは進むことを恐れた臆病者なのではなく、例えば、獲物を捕らえる確実なタイミングを見計らう獅子である。
 いや、もっとそれ以上に相手の動きまで分析し、地形やその他周囲の状況、そして自らの能力を十分に考慮した上で実行に移す――――それがキルのやり方だ。
 それからしばらく掘り返していると、剣先が土とは違う堅い物に当たった。
 表面の湿った土壌を手で払いのけると、埋まっている物の赤い表面が見えた。
 やはり推測は当たっていたようだが、一体これは……?
 さらに表面が見えている場所の周りを掘っていき、遂に全体を掘り出すことができた。
 埋蔵されていたものは、小さな赤い箱だった。
 かなり頑丈な造りで、鉄製の表面は赤鍍金が施されている。
「箱か…………。もしかして金とか入ってんじゃねえ?」
 ゴンが少し声を弾ませながらそう言ったが、多分それはないとキルは思った。
 箱は確かに重かったが、さらに金まで入っているならもっと重いはずだ。
 キルは静かに箱を開けた。
 もし危険なものが入っているならすぐにでも理力で遠くへ吹き飛ばすつもりだったが、中には意外なものが入っていた。
「……さいころだ」
 入っていたのは一般的な大きさのさいころだった。
 ゴンは中身が金じゃないと分かると、大きく息を吐いて落胆した。
「こういうときはやっぱ金だろ、分かってねえな」
「そう言うな。そこまで世の中は甘くない」
 キルはさいころを手に取ると、ためつすがめつ眺めた。
 表面は標準的なさいころと同じ白色で、何の変哲もないさいころに見える。
 表面を擦ったりしても何の変化もなく、本当に何の仕掛けも無さそうな立方体だ。
 使われている素材も、おそらくは動物の骨の一部だろうが、何の動物のものか分からないのでどれくらいの価値があるのかわからない。
 結局、得るところは何もなく、王の手がかりにはなりそうにない。
 しかし疑問が残る。
 何故このさいころは頑丈な箱に入れられてまで地中に埋められていたのだろうか。
 ただのさいころを、わざわざ場所が特定できるように埋めるだろうか。
 そしてこのさいころを埋めた人物は誰なのだろうか。
「キル、そろそろ時間やばいんじゃねえか?」
 ゴンが僅かに森に入り込んでくる日光を見ながらそう言った。
 確かに森に入ってかなり時間が経っている。
 そろそろ午前の警備が終わる頃かもしれない。
 キルは様々に思案を巡らせながら、一旦サーショに戻るため、さいころを紙及び羽根ペンと一緒にしまった。
 ガサリ。
 その時、近くで何かが動く音がした。
「…………!」
 キルは身構えた。
 確かに先ほど音がした。
 小さな音だったが、確実に聞こえた。
 それに何者かがいる気配がする。
 ゴンも音のした方向を見ていたので気づいているらしい。
 しばらくキルはじっと何者かの出方をうかがった。
 その何者かもじっとこちらの様子を見ているのがキルにははっきりと分かる。
 ぴりぴりと張り詰めた沈黙がこの空間を取り囲む。
 ガサリ。
 また音がした。今度はさっきより離れたところだ。
 そしてそれから数秒が経って、キルは人の気配を感じなくなった。
「おいおい、今のなんだったんだ?」
 ゴンも何者かがいなくなったのを察していた。
「わからない。転移で逃げたようだが…………。俺たちに見つかるとまずい奴らしい」
 キルがそう言うと、ゴンは閃いたような顔をした。
「ならおまえ、捜してる王様じゃねえの」
「その可能性もあるが……」
 確かに可能性はある。
 しかしキルはもう少し深く考えていた。
 一回目の音は近いところで鳴ったが、二回目は遠いところで鳴った。
 ということは移動しなければならないはずで、その間物音一つ立てていないことになる。
 この程度の距離なら、感覚を研ぎ澄ませば一般人の忍び足くらい楽に聞こえるので、特別な訓練を積んだ者でなければそんな挙動は不可能だと予想される。
 それにキルが気配を感じ取れたのは音が鳴ってからなので、気配を消して近づく必要があり、これも訓練が必要になる。
 兵士でもない王様が、気配を消して物音もなく移動できるものなのか。
 だがもういなくなってしまった以上、事実を確認する術は無い。
 キルはゴンにサーショへ戻ることを告げ、転移した。

pass>>


選択した記事にこのフォームで返信します。
name
url
mail
title
mesage
pass

p.ink