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削除 06/10 (21:24) 8038
  T−1 「噂の男」 <鳩羽 音路> 03/16 (19:39) 8039
  T−2 「KILLER」 <鳩羽 音路> 03/16 (19:42) 8045
  T−3 「森の奥深きにある屋敷」 <鳩羽 音路> 03/20 (13:54) 8053
  T−4 「トカゲの森」(a) <鳩羽 音路> 03/24 (09:06) 8054
  T−4 「トカゲの森」(b) <鳩羽 音路> 03/27 (21:54) 8057
  T−4 「トカゲの森」(c) <鳩羽 音路> 04/01 (22:17) 8066
  T−5 「手紙」 <鳩羽 音路> 04/05 (19:31) 8072
  T−6 「解明」(a) <鳩羽 音路> 04/22 (00:08) 8093
  T−6 「解明」(b) <鳩羽 音路> 05/23 (16:44) 8098
  T−6 「解明」(c) <鳩羽 音路> 05/23 (16:45) 8109
  T−7 「解明2」 <鳩羽 音路> 05/23 (16:44) 8123
  T−8 「真実」 <鳩羽 音路> 06/09 (02:53) 8129
  T−9 「暗黒からの目覚め」 <鳩羽 音路> 06/10 (21:17) 8137
  番外編@「 Ruke=Keynote 」 <鳩羽 音路> 04/10 (17:11) 8076
  感想 <もげ> 03/12 (19:14) 8040
  感謝 <鳩羽 音路> 03/13 (00:50) 8041
  感想U <もげ> 03/18 (12:37) 8049
  感謝U <鳩羽 音路> 03/19 (13:27) 8051
  感想 <もげ> 03/24 (15:58) 8055
  感謝 <鳩羽 音路> 03/25 (01:16) 8056
  かんそ。 <もげ> 03/29 (20:54) 8059
  かんしゃ。 <鳩羽 音路> 04/01 (21:54) 8065
  かんそう <もげ> 04/04 (00:25) 8068
  かんしゃ <鳩羽 音路> 04/05 (19:09) 8071
  感想。 <もげ> 04/06 (19:37) 8073
  感謝。 <鳩羽 音路> 04/07 (23:19) 8075
  感想ですよ <もげ> 04/14 (19:05) 8085
  感謝です; <鳩羽 音路> 04/21 (23:43) 8092
  感想と暴走と <ケトシ> 05/10 (23:25) 8110
  感謝と房総半島(何 <鳩羽 音路> 05/11 (00:20) 8112

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T−6 「解明」(b) by 鳩羽 音路 2009/05/23 (Sat) 16:44
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T−6 「解明」(b)


 ある一軒家の前にキルは立っていた。
 やわらかな春風がキルの黒い髪をさらさらと撫でた。
 以外とピムという人物の家は容易に見つかった。
 町の外れは大通りと違って家屋が少なく、人通りも多くないので一つずつ家を見て回るのにそれほど時間がかからない。
 ピムと分かる表記がされた家を見つけ、これだと思った。
 キルは例の庭に目をやった。
 確かにあの二人組の話通り、庭は荒れていた。
 土が無造作に掘り起こされ、小さな花壇でも見るも無惨に花が根を晒して横たわっている。
 これでピムがやったか、「黒衣の男」がやったかの二つに絞られた。
 ドアをノックしようとしたが、寸前に思い直してやめた。
 この家を探している間、他に考えていた可能性――――この家に国王が匿われている可能性があるからだ。
 もしそうならキルが訪ねていけば国王は絶対に身を隠す。
 ピムは居留守を使うか、応対したとしてもただ夜に起きた事を話すだけだろう。
 キルは庭に落ちていた小石を拾い上げ、躊躇うことなく窓に向けて軽く投げた。
 コツッと音が鳴ったことを確認し、身を隠す。
 それからしばらく何も反応が無かったが、辛抱強くキルは待った。
 沈黙が続いていたが、窓を開ける音がそれを破った。
 その瞬間キルは相手に分からないように顔を見た。
 窓を開けた人物は白髪だらけの、老いた男だった。
 老人は窓の外を見ても何もいなかったので、首を傾げて窓を閉めた。
 あれがピムという人物だろうか?
 いや、この際誰がピムであろうと問題はない。
 国王がいるかいないかが分かればそれでいい。
 とにかく家の中に人がいるということは分かった。
 ノックすれば相手側は応対することが必ずできる。
 キルは再びドアの前に立ってノックした。
 ずっとノックしていればいくら居留守を使おうといずれは出るに違いない。
 それでも、もし出ないならば、国王を匿っている可能性が高くなる。
 しかし居留守をすることなく、ドアは開いた。
 さっきの白髪の老人がキルの前に現れた。
 迷うことなく応対したということは、中に国王はいないということか?




 コツッ。
 ピムが椅子に座って物思いに沈んでいた時、突然窓のほうで音がした。
 何か硬い物が窓に当たったような音だ。
 例えば、石が当たったような音…………、石?
 石が独りでに飛んできて窓にぶつかるはずはないだろうから、誰かが投げたのだろう。
 ピムはそう判断して窓のほうに進んだが、途中でその動作を止めて椅子に戻る。
 安易な行動は慎まなければならない。
 彼はある人物から言われていたことを思い出す。
『ルーク=キーノートは頭が良い。だから、3日以内にはおまえ達の家のどれかに行き着くだろう。その時にはできるだけ彼の目を欺き、おまえ達が私とは関係の無い人間のように見せよ』
 あの方は最後にそう言ってこの家から姿を消した。
 しかし、とピムは思う。
 ルーク=キーノートの話を聞いたことはあったが、そのルークと言えども、いくらなんでも家にまでたどり着くことはないのではなかろうか。

 ピムはかつて、現在のバーン王の臣下兼教育係の役割を担っていた。
 そのためか、国王はバーン城から抜け出してくると、真っ先に彼の家にやってきた。
 しばらく滞在してから、国王はピムを含めたかつての臣下達を集め、これからやろうとしていることや、臣下を集めた理由について話した。
 ピムは、国王と長い付き合いだったので、その性格を把握しており、おそらく意味のない暇つぶしか何かをするのだと考えていたが、国王の話は予想を遙かに超えていた。
 思い返しても、とんでもない話だった。
 一つの国としては、あってほしくない、いや、あってはならない事が起こっている、というのだ。
 そしてそれを解決するには、ある方法が望ましいのだと言う。
 そこで持ち出された人物がルーク=キーノートだったが、それは残っている公式記録では、死亡している人間の名前だった。
『彼に解決してもらおうと思っている』
 国王は真剣な面持ちでそう言った。
 しかし現実に死んだ人間に依頼するなど不可能なので、臣下達は当惑を隠せない。
『確かに公式では処刑されたことになっている。しかしそれは南部の流した誤った情報だ。彼は生きている』
 どこから「ルークが生きている」という情報を得たのか、国王は語らなかった。
 国王は続けた。
『彼についての噂は皆聞いているだろうが、私はそれだけでは満足できない。彼を試そうと思う。ルーク=キーノートが、頼るにふさわしいかふさわしくないか…………。既にどう試すかは考えてある。おまえ達は私が指示することをこなせばいい』

 ピムは国王の言うとおりに行動した。
 そうすれば、ルーク=キーノートが臣下達の誰かの所に辿り着く可能性が出てくるのだと言う。
 しかし、どうしてもピムにはそれが限りなく小さな可能性だ、と思わざるを得なかった。
 そもそも、ルーク=キーノートが生存しているという情報自体、証拠を示されていないのでピムにとっては信憑性の薄い情報であるし、ピムの行動…………すなわち、「黒衣の男」についての噂を、自分を含めた臣下の名を絡ませながら広めるということが、それほどのヒントになるとも思えない。
 さらに、他の臣下がトカゲの森に埋めた「国王のさいころ」も見つかるとは思えない。
 結論すると、ルーク=キーノートが国王を見つけられるかどうか、という問いには、見つけられない、と答えるしかない。
 ならば。
 さっきの音は、ルーク=キーノートではなく、それ以外の誰かによるものなのではないか。
 そう考え直すと、さらに踏み込んだ可能性が頭に浮かぶ。
 外に国王がいるのではないか。
 もしいるのなら、早く出なければならない。
 しかしルークだったならば、その後に隠し通すことが難しくなる。
 しばらく悩んだ末、ピムは立ち上がって窓を開けた。
 そもそもこれはルークに対する試験のようなものだ。
 国王の信頼を失うことになるよりは、ルークと対話するほうがいくらかマシだというもの。
 それに、少しそのルークと会ってみたいという気持ちがあった。
 リーリル理力院で唯一無二の天才。
 公式には処刑されたはずの男。
 もし生きているなら、ピムのような身分に身を置いている者なら誰しも会ってみたいと思えるような存在――――それがルーク=キーノートだった。
 ピムは窓の外を見回した。
 荒れ放題の庭が、寒々とした様子で佇んでいる。
 しかし、予想に反してそこには誰もいなかった。
 もしかすると、風で木の小枝が飛んで窓にぶつかったのだろうか。
 ピムは首をかしげた。
 しかし今日は、枝を飛ばすほど強い風が吹いているような様子はない。
 窓を閉める。
 本当はさっきまで誰かがいて、待つのにくたびれて何処かへ行ったのかもしれない。
 本気でそう考え始めた時、玄関のほうでドアをノックする音がした。
 やられた。
 ピムはそう思った。
 おそらく今ドアを叩いているのは、小石を窓に当てた人物。
 そしてこのようなことをする必要があるのは、ルーク=キーノートただ一人だ。
 窓を開けてしまったので、既に中に人がいることは伝わっているはずだ。
 これならば、居留守など使うわけにもいかず、もし使ったならば、いっそう怪しまれることになる。
 そうならないためには、すぐにドアを開けなくてはならない。
 そしてその後は……国王に言われたとおりの行動をするだけだった。




「む、何かね?」
「ピムさんのお宅でしょうか?」
「……わしがピムじゃが」
 相手は怪訝そうにキルを見ながらそう言った。この人物がピム……。
「突然お伺いして申し訳ありません。現在サーショを警備している者ですが、先刻、お宅の庭が昨夜荒らされたということを聞きました。どうやらひどいことになっているようですね……」
 そういうと、ピムの表情は柔らかくなった。
「そうなんじゃよ……気づいたらあんな風になっておってな」
「それは災難でしたね……。では少しお聞きしますが、庭が荒らされる前の状態を見たのはいつ頃ですか?」
「昨日の夕方ころじゃ」
「じゃあ今の状態を発見したのは……?」
「もちろん朝になってからじゃよ。朝起きたらああなっておったわい」
 そうなると夕方から朝までの間に行われたということになるが……聞いた情報は夜中に行われたことになっている。
「私が聞いた情報によると夜中に荒らされたとされているのですが……何故特定されるのです?」
「それは噂の男がやったと思ったからじゃ。最近ある男の噂が流れておってな……あんたは知っとるか?」
「いいえ、知りませんが……」
 キルは嘘をついた。
「まあそうじゃろうな、兵士には届かんじゃろう。届いておればもっと夜の警備が多くなるはずだからの」
 その後にピムがした噂についての話はキルの知っているものとまったく同じだった。それ故に、この老人も庭を荒らしたのは黒衣の男だと思いこんだのだろうか。そしてそれは本当に事実なのか。
「犯人は庭を荒らしただけだったのですか?」
「そうじゃ。他はどこも荒らされておらん」
「金品を盗まれたということは……?」
「それもないのう」
 なら一体なんのためにやったというのか。国王なら意味のないことはしないはず……それではもう一人の黒衣の男は国王ではないただの愚人なのか。
 これではまた何の進展もないままになってしまう。何か手がかりを探り出さなければ…………。
 そう思った時、ピムの肩越しに家の中を見ると、紋章のようなものが飾ってあるのが見えた。よく見るとバーン王国の紋章だった。ということは元々この人は国に仕えていた人物なのだろうか…………。
「あの……噂の男とは関係ないことですが、家の中の紋章、国の紋章でしょう。何故あのようなものを?」
「ん、ああ、あれか」
 ピムはキルの見ていた紋章に振り返ると、言った。
「わしは昔国に仕えておったのじゃ。バーン城には何度も出入りしたことがある」
 思った通りだった。
「それも過去じゃ。妻に先立たれた今は老いぼれ独りで暮らしておるよ」
「そうでしたか……。つまらない質問をして申し訳ありませんでした」
「いや、いいんじゃよ。おまえさんを見ていると孫のことも思い出すしのう」
「お孫さんがいらしたんですね」
「ああ、おったよ。でも今はいない」
 そう言ってピムは悲しそうな顔をした。しかしすぐに穏やかな表情に戻った。
「良かったら中でお茶でも飲んでいかんか? なにせ人付き合いも最近殆どなくての」
 しめた、と思った。何とかして中を調べたかったが、向こうから中へ入れてくれるとは。警備の時間がまだまだあるが、もう既に放棄しているので関係なく、どちらにしろ1日で国王を見つけ出すつもりなのだ。見つければキルの仕事は終了し、兵士の真似事などしなくてすむ。
 キルは渋々誘われるままに家へ入っていくフリをした。
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