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7324
「 」  前書き by hirumi 2008/04/27 (Sun) 00:24
△up
レス/編集
 
中編物を久々に書いてみました。
多分、hirumiさん復活です。

多分ですよ、多分。
不定期更新になるには目に見えてますとも、ええ。




題名は――    「 」


何もありません、
貴方が感じた通りに題名を考えてください。

何だって構いません。


それから私は前書きはあまり書きたくないので
これ以上は余り言いません、そして謝りません。



ていうか、上げても良い代物なのか……?
ここまで読んでくださった方、有難うございました。
そして、









これを偉大なるテキスト界の先人達――今は消えてしまったかもしれない大御所の方々に奉げます。










それでは、どうぞ。
7325
「 」  First volume by hirumi 2006/12/31 (Sun) 19:10
△up
レス/編集
 
焚き火をむさ苦しい男共三人と、

紅一点とかしている綺麗な長髪の緑の髪を流している女性で取り囲む。

何、
男である俺が『むさ苦しい男共』って言ったら
元も子も無くなるって言いたいのか。




へっ。そんなことは無い筈だ。




別に、俺は空しく何か居ないさ。そう、事実を即ち現実を素直に認めた。
唯それだけの話なのさ。

何だと、余計空しくなってる感じがするだと。余計なお世話だっ!



両手を後ろに伸ばしながら、
「んー」という変な声を出した男が居る。
そいつは茶色がかったオレンジ色のショートカットの髪をしていた。

「後少しで天空大陸一周かー。長かったようで短かったなぁ。」

遠くをぼんやりと眺めながら旅人が呟いた。旅愁という奴だろうか。
あえて空気を読まず、俺は間髪入れずに言った。

「とは言え、アーサ。まだ始めてから五日だぞ。五日。」
俺の右手の五本の指は、ほぼ直立不動になっていた。

受け狙いじゃないぞ。
いいか、受け狙いじゃないし、受け狙いでもないのだ。うん。

「受け狙いじゃっ。」

俺の心の声が、ついつい口から出てしまったのだろう。
口から出ているって、ありがとう。

これまた間髪入れずに、
俺の隣に居た緑の髪の女―――ええい、面倒だから名前を書いてしまえ。

スケイルの右手が俺の頭を叩いた。

「その心の声をわざわざ口に出す必要は無いと思いますけれど。」

その上、何度も何度も平然とした顔でスケイルが俺の頭を叩いてくる。
両手で防御しようとしたが案の定、両手の手首を左手で押さえている。

「痛いから。本気で頭が痛くなっているから。」

アーサが口に手を当てている。その手が小刻みに震えている様に見えるのは何故だろう。
スケイルは俺の頭が痛くなったとなると、今度は頭ではなくコメカミに拳が一発。

「もうマジで勘弁してくれ。」

内角をえぐり込む様にして右手の拳が右の頬に一発。
アーサが遂に堪えられなくなって、口から手を離して笑い転げていた。

「本当に済みませんでした。」

俺は両手の掌を合わせて``ゴメンナサイ``のポーズをとろうとしたが、
スケイルの左手に押さえられていた。

アーサ、頼むからそれ以上笑わないでくれ。俺が惨めな気になっているからさ。

「ねぇ、スケイルさん。貴方って本当に理力を司るトーテ」



一発、


そう、それも思いっきり痛い一発の『平手打ち』が


直撃した。俺の左頬に。





俺の意識は――





      *      *      *



次に俺が目覚めて眼中に広がっていたのは白い世界だった。
白い世界の中央に神々しい光を放ちながら、この世界の神であるリクレールさんが居た。

俺は膝を付いて、リクレールさんに俺の頭から背中までを見せるかのように座った。
そして、俺は言った。

――お願いです、お願いです、リクレールさん。
俺の``スケイル``というトーテムを、
今すぐ他のトーテムに変えたいのですけれど、宜しいでしょうか。――


リクレールさんはあっさりと突き放した。

――駄目です。何だか物凄く面倒な事に成りますので。それに、――



リクレールさんの最後の声を聞き取れずに、俺の意識は。



      *      *      *



――夢の中から再び地上に舞い戻ってきた俺の意識。

うん、五体満足である上に肢体の動きもスムーズに出来る。
強いて言うならば、未だに痛みが引かない他、所々に赤くなっている所がある。

後ろでは俺の背中を見て、笑っているアーサとスケイルが居る。

アーサ、それ以上笑ったら翌日に会った時にとある選択を強制的にさせよう。


「首を羽交い絞めさせられるのと剣でばっさり斬り落とす、その二つのどっちが良いか。」


軽い溜息を付いて、俺を人差し指で指を指しながらはしゃいでいる二人と俺以外の『もう一人の人』を見る。


俺たちの騒いでいる光景を見て口元を軽く上げて笑う動作をしている。
肩には男にしては長い紫色の髪がかかっていて、
右目には古びた黒い眼帯をつけている。

格好つけているつもりなのか、知らない。



俺はもっと根本的なことも知らない。

例えば、そいつの名前は知らない。



スケイルだって知らないし、
街に住んでいる人は絶対に知らないだろう。
一緒に旅をしてきているアーサだって名前を知らない。

アーサが今日、俺に尋ねた。

「同行者の名前を知りたいのだけれど。」と、

名前を知らないのなら、
半強制的にそいつから名乗らせれば良いじゃないかと俺は言った。

そうしたら、アーサは答えた。






「他の世界からやってきたので、言葉が通じない。」と。





      *      *      *


この旅人に付いていってから、まだ一日目。
道中には様々な危険生物がいたが、俺が持っていた剣で倒した。

俺が住んでいたシルフェイドの時とは違って、
この世界に来た途端に妙に力が強くなった気がしたが、まさかアソコまで強くなるとは。

もしも二日前の俺が。即ち、森の中に入ったら間違い無く終わるな。

一応、解体式の銃や弾倉一式を念の為に懐に忍ばせてあるが、
弾の補給は確実に無理なので意味は無いだろう。

今、俺の目の前には言葉が分からないので詳細は知らないが、
見ていて面白いことが起きている。

薄汚れた緋色のマントを羽織った男の背中に、
何らかの文字が書かれた紙が付いてあるが当然解読不能。

こういう展開から考えてみると、
恐らく書いてある文字は『私は馬鹿です。』系のだろう。

その男が恐る恐る背中を見て、直ぐに紙を千切りとって怒り出した。


本当に見ていて面白い。





これで言葉が分かればもっと面白いのだろう。





俺は横になって、夜空を見上げた。


手を出せば届きそうな、星達を。




何時しか、俺は寝ていた。



ふと起きたら、
俺の足元には明らかに俺の物ではない焦げ茶色の上着が掛けられてあった。

消えた焚き火を挟んで反対側には、
今日一緒に旅をしてきた青年が
茶色のトランクケースを枕にして何も掛けずに寝ていた。



青年と言えば俺も青年だが。



俺は青年を起こさぬ様に気をつけながら、
上着を青年の首から下に掛けた。




一言だけ、小声で「ありがとう」と言って。



      *      *      *



三又の洞窟を抜けると見渡す限りの草原。



洞窟の手前は森しかなかったのに比べれば凄い差だ。

草原を通るのは楽だ。
視界が広いから魔物、
もとい『障害物』が直ぐに見つけられる上に『対処法』を考える時間が僅かに有る。


『障害物』に『対処法』か。


随分と俺も物騒になってきたものだ。



そもそも、



俺がこの世界に来てから
俺を取り囲む全てが可笑しくなったのではないだろうか。

俺の考え方や俺が極端に強くなったことが最大のポイントだろうな。
強くなったのは嬉しいが、帰るまでの少しの間アイツ等に会えないのが寂しいな。



暫くの間は寂しいが我慢だ。


之も俺を取り囲む内の一つという奴か。




``しかし、``



――俺よりもトーンが高い声が脳内に響いた。



突然、足が止まった。
いや、止めさせられた。


周りが黒く染まっていく。
空が、草が、地面が、【俺】が


黒く染まっていく理由は、何かが下から這い上がって来る。

ゆっくりとじわじわと、そいつは黒に侵食させていく。


そいつを振り払おうとするが、余計に侵食速度を上げただけだった。


``本当にそれだけ?``
「知るか。」

今度は耳から聞こえてきた声を、
低い俺の声で相殺させた。

ふーん、という明らかに感心が無いと伺えられる声が周りに響いて、
空気の波紋を幾つか作った後、消え去って周りは元の色に戻った。


何時の間にか閉じていた瞼を開けて、『さぁ、進もう』とした瞬間。

「何をしているんだ。君は」

知っているさ、言葉が通じないのは。
だが、誰だって言いたくなると俺は思う。

栗毛色の旅人が止まっていて、顎を突き出すようにして俺を見ていた。
何故か、左手が俺の目の前で左右に動いている。


理由か、さぁな。
一応、想像が出来るがあえて俺は言わない。

何、似たような文が之より前にあったと。
そんなものは知るか。唯の目の錯覚だ。目の錯覚。


「■○▲…」

何となくだが、旅人のいっている言葉の予想が付いたので頷いた。

すると、顔の頬を緩めて一笑した。

また、何も無かったのかのように旅人は荷物を持って前進していった。
俺も何も言わずに後についていく。



ちなみに、俺が予想した言葉は当然『大丈夫…』だ。



      *      *      *


日が落ちかける夕暮れ時、
遠くから見えていた何らかの建造物郡の近くで休んだ。


辺りを見回す旅人の様子から、
今日は此処で野宿をするのだろう。

俺を手招きして、
旅人は人差し指で丘の先にある小さな森を指した。


焚き火で必要な木を取りに行くのだと考え、
俺は右手の人差し指と親指で円を作った。


俺の予想通りに、旅人は良さそうな薪を周りから集めて山を作った。
俺も旅人に習って程よく燃えそうな薪を選び、旅人が作った山の上に乗せていった。

三十分後には、
昨日の焚き火で使った薪の倍の量が山となっていた。

山の約四分の三を俺が、残りが旅人が俺たちの寝床に運んだ。

薪を全部置いて、汗を手で拭いている旅人を背にして俺はテントの杭を打っていた。



手伝うよ、という言葉が可能性として高い音を耳にした。

旅人の足音が途中まで聞こえた。

綺麗に足音が止んだので、怪訝に思って首だけ後ろに動かした。



すると、旅人の手と足が凍ったように止まったと頭で認識した直後に、
息を呑んでおろおろしていた。




凄まじいスピードでやってきて俺の隣にあった丁寧に畳まれたテントの布を広げてみたり、
開けたままのトランクケースの中から荷物を周りに広げて只管出しまくる。



それから十分程度の間、
旅人は様々な行動をしたが最後は草原に座って口を中開きにしている。




その時の旅人の状態を簡潔に言い表す言葉といえば『心此処にあらず』



俺は旅人が放心状態になっている理由を思いつき、
右手の拳を小指側を接触面として、
左手の掌に垂直に立てて言った。


「ああ、さっきの森の中に
邪魔だから上着を置いてきたのか。」


昨日の深夜に俺に掛けてくれた焦げ茶色の上着が俺の視界には無い。


旅人は何も言わずに、虚ろな眼で空を睨んでいた。


暗黙のルールもとい暗黙の了解で旅の間は、
俺は基本的に『障害物』の『対処』をする役割の為に荷物は全然持たない。
即ち、この世界に来た時の状態と全く変わらない。

一方、旅人は俺が『障害物』を『対処』している間は木の陰に荷物を持って隠れている。
その代わり、簡易テントや毛布に炊飯道具を全て持っている。

簡易テントは思っていた以上に細かく分解できることから、
ズボンや洋服のポケットに収まる位の大きさの物は運んでいる。


重たい物と軽い物を二人の人が運ぶ時、
どちらが早く目的地に着くかと子供が大人に対して凄く常識的な質問をしよう。

『当たり前だ』とはあえて言わずに胸を張りながら、
「重たい物を運ぶのには時間が掛かるので、
軽い物を運んだ人が先に目的地に着く」
と大人は言う。



だけど、子供はニヤニヤと笑って次の様に正解を述べるかもしれない。

「重たいといっても少しの差かもしれないよ。」

と。
その後、大人が口を噤んで俯いている姿が想像できる。


それと似た理屈だ。

俺は息を潜めて周りを注意しながら歩いている、
旅人は周りを注意せずに息を荒げながら重たい荷物を持って歩いていく。

少しの差はあるが、プラスマイナス0。

そこら辺は別に良い。
とにかく俺が言いたいことは基本的に旅人は何も注意しなくて良い。


だから、その……
旅人は『俺が後から持ってくる』と、
無意識の内に何処かの切り株の上に上着を置いてきたのだろう。


「魂が口から抜けていってしまった」
とも言える程の放心状態になっている旅人の肩に手を乗せた。

「取ってきてやる。」
と言って。



何故だか知らないが、俺が歩き出してから数秒後に旅人の元気の無い声が聞こえてきた。


      *      *      *


随分あっさりと、上着は見つかった。

切り株の上に焦げ茶色の上着が寂しげに置かれてあったので良く分かった。


旅人は俺が帰ってくるのは遅くなるだろうと考えている、に違いない。

『別に少しの間くらい、寄り道したって構わないさ。だろう、なっ?』
と悪魔が右耳から囁いた。

しかし、天使は左耳から
『急いで返さないと、旅人が何時までも放心状態になったまま餓死してしまうかもしれない。』
と囁く。




俺は迷いに迷って、
オーバーすぎる天使の言葉を信じて急ぎ足で旅人の元へ行った。


一ミリたりとも動かずに、旅人は座っていた。
さっきよりも酷い状態だった。




目には生気が宿っていない。

手足は重力に無抵抗だった。

顔だけは未だに上を向いていたが、動かそうとしても石如く動かない。




俺は左手を旅人の目の前で振り子運動させた。


体内時計で三分やっても反応が無い。
馬鹿らしくなったので『手』は止めた。


今度はさっき持ってきた上着を左右に振り子運動させた。


「さぁ、今度は一体どのような反応をするのだろか。」
と俺は明らかに怪しげな独り言を言った。


十往復した時に、旅人の目に微かな光が宿った。
十数往復目に、旅人の目は以前と同じ色になった。


そう、俺はわざわざ指で上着を往復させた回数を数えている。
別に良いだろ、往復させた回数を数えるのは。

二十往復目には手足が小さく動いた。


この分だと次はどうなるのか見当がついたので、
数歩だけ後退して上着をゆっくりと動かしてみる。


そして、三十往復目に大きく前進して上着を引っ手繰ってきた。
俺は横に受け流して、旅人の首に手刀を入れた。


「落ち着いたか。」

焦点が半ば俺に合っていないが、
少なくともさっきの放心状態よりは幾分とマシだ。


「☆、☆и□∠。」
俺は旅人に焦げ茶色の上着を放り投げて、
例の建物郡を指差して足踏みをした。

旅人は俺が投げた上着に顔を埋めて喜んでいる。



この分だと平気だろう。
それに、今の俺は何人たりとも行動を禁じられる義務は無い。


俺は散歩がてら、その建造物郡に行ってみた。







丘を超えた時に何故だか、急に寂しくなった。







誰かがいないから、

今からする目的が誰かの為になるものではないから。


俺がする目的を誰かが認めてくれないから。

いや、認めてくれた。そうさ、旅人が認めてくれた。



そもそも何で、俺はこんな変な考えをしているのだろうか。
俺でも分からない、自分自身で何を考えているのか分からない。


自分自身が恐ろしくなってくる。




矢継ぎ早に俺の頭が俺を問い詰める。

――ダガ、ソレハチャント言葉トナッテ伝ワッテ来タカ?――


響き渡る``高いトーン``

再び、周りが黒くなっていく。

【俺以外】の全てが何もかもが黒に侵される。
だが、「黒」といえども純粋な黒では無い。

高いトーンを俺に言い放った奴の姿が始めて浮かび上がる。

「言葉ではないが、そう言ってくれたには違いない!」


``そいつ``は純粋な黒い形をしている。


『本当にそうか?』

``そいつ``は一歩一歩、嫌らしい音を立てながら俺に近付いてくる。

粘着性が俺への悪意が感じられる音だ。


『お前はこの世界に来てから誰とも喋っていない。
それがどういうことだと思うか、えぇ?』

確実に俺に近付いてくる``そいつ``

俺は何も言えない。


口を動かせない。怖くて、恐ろしくて。

首に鋭利な刃物を付きつけられた気がする。



口を動かしたら、  ヤラレル。


しかし、何も応答しなくても  ヤラレル。



『お前をお前として誰も認めてくれていないんだよ。
アルバート=ウェスタリス』


``そいつ``――は言った。




      *      *      *



瓦礫の山


崩れた壁


散らばった人骨


むせ返る血の臭い



そこは廃墟の街。

誰もが見た瞬間に無言となる街。



――二日前までは人々の声がいき交っていた街の周辺で。



周りから誰も認めてもらえずに一人だけ居る隻眼の青年。



笑みを浮かべながらも仮面の下は常に孤独の戦士。



孤独の戦士を静かに見守る麗しき麟類。



旅をし続けて何かを探し出す、さすらいの旅人。



今、闇に閉ざされし悲しき現実が浮かびあがる。――





To Be Continued……



『中』書き

出来たら続きは今日の夜か明日中には書き上げたいです。はい。
7327
「 」  Second volume by hirumi 2007/05/13 (Sun) 23:05
△up
レス/編集
 

空は灰色の雲に覆われていた。
時々、遠くで稲妻が幾筋にも渡って落ちていく。

そんな空の光景を見て、独り言。

「もう直ぐ、降ってくるか。」


広げた手の上に一滴の滴が降ってきた。


早く旅人の元へ行かなければ、
という考えは不思議と浮かばなかった。


むしろ、雨が土砂降りになったとしても俺は此処に居るだろう。


理由は俺も判らない。
本能が『此処に待機しろ。』と命令を下して、
身体が街から出させてくれない。


理性で本能を抑えきれない。



仕方が無く、本能のままにぶらぶらと歩く。

雨宿りで原型は宿屋だと思われる廃屋に残っていた本――帳記を、
パラパラと捲ってみる。


当然、読めないだろうと、
腹を括ってみたが

「ん。」



実は読めた。




「この帳記には、つい最近学院でやった古文で書かれてあるのか。
というよりも、」

そう言いながら、蝶番の片方が壊れてあるドアを蹴破って出る。
ドアが水溜りに落ちて周りの泥水が跳ねる。


その泥水の一部が靴に掛かったが気にせずに、看板を見る。


「この世界は全てこの文字で書いてあるんだろうな。」


「宿屋」と

看板からは確かにそう読めた。
そもそも、『宿屋だと思われる』とさっき俺は思っていた。

そこから、既に無意識の内に読めていたのか。
読めるとは言えとも、何とかゆっくりとなら読めるという程度だが。


「ならば、あの図書館に所蔵してある本も読めるかもしれないか。」

鳥肌が立っている。
雨に濡れたせいとしか考えられんが、
少々寒くなってきてクシャミが出てきそうだ。


図書館に向かうために、十字路を右に曲がる。


「寒いから、早く図書館に行きたいな」
と、本来なら急いでテントに戻れば良いのに図書館に向かう俺は変人だ。


その道の突き当りには誰かが座っていた。


横に四つ並んだ墓の前で緋色のマントを着た人が佇み、
隣に反対側を見ている緑髪の女性が居た。

恐らく昨夜、旅人と喋っていた二人だろう。

当初は何をしているのか気になったので、
覗いてすれ違うだけで無視しようとした。


けれど、覗いた瞬間に無視が出来なくなった。



何故かといえば、簡単だ。


その男の胸元に、
男の右手が持っていた短剣が刺さっていたからだ。




口元からは血が一筋流れていた。

急いで隣の女性の肩を力任せに掴んでみる。

手を払われて、
恐らく『何の用事があるのよ』という言葉を俺に言った。

しぶしぶという感じで、濡れた後ろ髪を綺麗に半回転させて体ごと動いた。

俺は緋色のマントの男を右手の人差し指で指差した。


女性は悲鳴も上げず、立ち尽くしていただけだった。




俺は旅人が待っている所へ戻った。



今度は周りが黒くなる怪奇現象は起きなかった。



      *      *      *



濡れたマントを脱ぎ捨てて、
テントの中へ何も言わずに潜り込む。

昨日は寝る前に川で身体を洗っていたが、
今日は雨が降っている上にあの建造物郡に近付くと気分が悪くなりそうだ。

面倒だという理由もあるが、
ともかく身体を洗うのは明日の朝にする。


テントの端で横になり、
睡魔に襲われるがままに寝る。



お休みなさい、俺。



      *      *      *


夢の中、俺は懐かしき故郷のノーザニア島に居た。

村の中で走っている子供は、
俺が住んでいた頃の友達や親友達だった。


全てが俺の思い出の中と同じだった。



違う点は二つ、
一つ目は、
俺の姿が今――即ち現実と全く同じである位だ。

二つ目は、
俺が村人から空気の様に扱われている。
俺の存在を皆が無視して、通り過ぎていく。


声を掛けても誰も返事を返してくれない。


夢の中なのに、眠くなった。
視界が徐々に小さくなっていく。

はしたないが、俺はその場で横になって寝た。





夢の中で、寝た。






      *      *      *

夢の中での『俺』が寝た直後に、現実世界の『俺』は起きた。

テントの中には俺以外は誰も居ない。
テントの入り口を少し上げて、外を見る。


月が夜空に昇っていた。
雨は既に止んでいて、
水溜りがあちらこちらにあっただけだった。

この分だと、明日はまた夜空の下で寝ることになりそうだ。


焚き火を囲んで、旅人とさっきの緋色のマントの男が喋っている。
緋色のマントの男の胸に包帯が巻きつけられて無かった。

之には驚いたが、驚きは泡となって消えていった。



三人は和やかに談笑していたのを見たら。






俺はもやもやした感じを心に残しながら再び寝た。





      *      *      *


夢の中は、さっきと違う所は変わらない。
俺が現実世界の状態と同じだったり、
周りの人々が俺に気付かないことも変わらない。


場所や日付は当然違っている。

「幾らなんでも、之は無いんじゃないか。」




『北の戦争』が起きていた頃のことだった。




敵側の兵が俺の近くの家に火を放つ。
また、その周りの家にも次から次へと火を放っていく。

その家では予め荷物を用意してあったのか、
見えにくい場所においてあるリヤカーに必要最低限の荷物を積んであった。


男性がリヤカーを引き、
母親と子供が手を繋いで家から出てくる。

子供は何かを思い出して、
母親の手を離して家に戻る。


両親は慌てて近くに居た『俺』にリヤカーを置いて頼んだ。
両親の顔はどこかで見たことがある気がした。


「え、だけど俺は。」


――空気の様に扱われているんじゃないのか、
という言葉が喉から出てこなかった。


「頼みます、ほんの少しで良いので。」

俺の返事を待たずに、両親は走り去った。


俺はその両親の後姿に声を掛けた。

「待った、待ってくれ!」

声は届かなかった。


俺の両親は既に家の中へ入っていったから。





      *      *      *



母親が幼い頃の『俺』を抱いて出て来た。
母親の背中は見るも無残なほどの火傷だった。




呼吸音は聞こえなかった。




俺は罪悪感と悲しみを抱きながら、
母親の両手から『俺』を開放して抱いた。



「何で、夢の中なのに複雑な行動を取れるんだろうな。」


そう呟きながら泣きじゃくっている『俺』の頭を撫でた。




現実世界の『俺』が起きるまでの間ずっと。





      *      *      *


翌日の朝は思っていた通りに雨が止んでいた。

隣に居る旅人がまだ寝ているかどうか確かめてから外に出た。
あの男女達は居なかった。

隣においてあったマントを持って川に向かった。

途中で魔物が出てくることも有り得るので念の為、
長剣を持ってきた。


ゆっくりと川に向かって歩いていく途中、後ろから声を掛けられた。


「○■。」と

ああ、もう何度も言っているが俺は言葉が分からない。

挨拶の言葉なのだろうか、俺は適当に言葉を返す。

「ああ、おはよう。」

後ろを向こうとしたその時――




ぷに。





「……」

俺か。
俺は黙っていたが少し怒りたくなっていた。
右手を拳にして、緋色のマントの『野朗』の鳩尾にアッパーを入れようとした。


頭を掻いて、俺の右手の異変に気付くと掌を広げて奴は両手とも左右に振った。

「*∩■☆○↓△、*∩■☆○↓△。」
と口を大袈裟にパクパクさせながら、
何度も同じ言葉を言った。

音の高低から大体七文字の言葉か。

あくまでも古語であるから、
大体の言葉の意味は同じだろう。

頑張って聞けば凄く遅いが、意味は分かるかもしれない。


えーと、最初の四文字は俺がいた時代だと『話す、言う』という意味だったから、
やはりその系統だろうか。
最後の三文字は『分ける』だったな。


二つの言葉を繋げてみると、『話すと分ける』。

『話せば分ける』か、
最後の三文字が「分ける」だと文法上可笑しくなっている。

「分ける」は一つの物を幾つかの個数にした上で、
一つの物を小さくするという意味だな。

ということは、『話すと何かを幾つかに分ける』。
ここから、一番正解に近い可能性のある俺の時代での言葉は、





ハナセバコロス?




いや、「分ける」モノとして、
一番適切なのは異世界から突然現れた俺かもしれないがまさかそんなことは。


なら何故、この前の夜に俺が寝てからあの三人は話していたんだ。

俺は言葉が通じていないから、
俺抜きで和やかに談笑しても結果は変わらないだろう。


――それ、本当か。――

脳内で高いトーンの声が、以下略。


(また、お前か。)



――可能性としては、ありえなくはないだろう。――

(何がだ、一体何の可能性があるとでも言いたいんだ。)

――あの一見和やかな談笑の中身は血塗れの殺人会議だった、という可能性が。――

(んな、理由は幾らなんでもないだろう。)


その時、緋色のマントの男が緑色の髪をした女の顔を見ながら言った。

「■―、○△лЖ。『○↓△』、『○↓△』。」


        また、あの『分ける』だ。しかも、今度は二回も使った。



緋色のマントの男に対して、緑色の髪の女は頷いた。


        俺をワケルのを承知したのか。


俺をバラバラにワケル気が満々なのか。
となると、戦うか逃げるかの二択だ。

俺は長剣を持っているが、
この二人は気迫というか気配というか雰囲気というか、
兎に角俺が下手に動いたらヤル。

ならば、今すぐ。

――そう、今すぐ逃げないと。――


だけど、それでも俺は旅人にこの男や女を信じたい。

いや、今でも信じている。




――逃げないと、ワケラレルゾ。――





俺は緋色のマントの男の左頬に平手打ちをして、
電光石火の勢いで建造物郡へ逃げた。



      *      *      *



「おい、アーサ。起きろ。」

狼煙はとっくのとうに燃え尽きてしまった焚き火の炭の尖った所で、
アーサの頬を何度も突く。

それでも起きないので、
人工的に寝返りをさせる。詳しく言えば、背中を押してアーサの体と地面を垂直にさせた。

スケイルに向かって一言。

「ちょっとほんの僅かだけ<<雨癒>>をしてくれないか。」

最初は戸惑った顔をしていた。
けれど、直ぐに左眉をピクリと上げてから、
軽い深呼吸をスケイルはした。

「怒られても知りませんよ。」
と小さな声で言ってから、
お碗上にさせた俺の両手の中に少しの水を降らせた。

アーサの左耳の中に水を何滴か入れる。
良い子も悪い子も、即ち皆さんこんな真似を絶対にしないで下さい。
俺は責任を取りません。各自の責任でお願いします。

当然、直ぐにアーサは起きました。
今度はグーで右頬をやられました、あべし。

      *      *      *

「で、一体今日は何の用。」
寝癖があって寝ぼけ眼でアーサが聞いた。
少し不機嫌そうに見えるのは、気のせいじゃないが。

『やはり、もう少し寝かしてあげれば良かったんじゃないですか。』
スケイルが俺に耳打ちをした。

意図的に無視をする。

あっ、だからといって背中を抓らないでよスケイルさん。
地味に痛いんだから。


「あの、アーサと五日目から一緒に旅をしていた長髪の男が居ただろう。」

あー、と間抜けた声を出してアーサが反応した。
俺は続けてあぐらを掻きながら言う。

「アイツがヤバイな。
誰とも喋っていないからか、可笑しくなっている。」

で、頭の上で右手の人差し指をくるくると可愛らしげに回転させる。
アーサは焦げ茶色の上着に手を通していた所だった。

「で、挨拶をしたら右手の拳で殴られ」
「アレをしたら、まず誰でも怒りますって。」

一度、スケイルに言葉を遮られたが気にしなーい気にしなーい。

ちなみに、アーサはまだ目の焦点が合っていない。

「それで、一旦どうするんだ。」

『目の状況』とは裏腹に言葉の口調は確りしていた。
旅生活やっているものな、そりゃ伊達じゃない。

「俺がコイツで何とかしようかとしたが。」

そう言いながら、剣を鞘から数センチ抜いた。
歯切れの良い金属音がした。

はい、パス。
と俺は右手を正座しているスケイルの左足に乗せる。

俺はニヤリとスケイルに笑った。
スケイルは俺を一瞥する目を少しの間した。

「流石にそれをやると、如何考えたって余計可笑しくなってしまう。」


スケイルは真剣な表情で次の文句をアーサに言った。




「なので、今から三人で解決策を考えましょう。」




      *      *      *


人は逃げてばかりじゃ何の出来事も解決しない。

生きていれば何時かは壁が出来る。

壁には鍵付きのドアがある。

脳を振り絞って考えて、壁を一つずつ通り過ぎていくごとに人は成長を重ねていく。

ドアの鍵を探しても良いし、

ドアを蹴破っても良い。

挙句の果てには壁を壊したとしても良い。

兎に角、経過も影響するが壁を通過できれば良いのである。

しかし、何もせずに逃げているばかりでは意味が無い。

それ所か、




壁に囲まれてしまうのだから。







To Be Continued……



『中』の『中』書き

取り合えず、次で終わる予定です。はい。
頑張ります、はい。

初版(?)  1/1 (19:53)
7330
「 」  Third volume by hirumi 2007/01/13 (Sat) 23:39
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■Home
レス/編集
 


夜空は澄み渡っているのに雨が降っている。


満月が見えるのに、雨が――。




冷たい、寒い、凍える。
歯の根はまだ合っている。
ここの建造物郡から出て、
丘を降りたら俺はワケラレル。


だから、俺は此処に居ないといけない。
此処はまだ安全地帯だから、
誰も居ないから安心出来る。


薬と食器が収めてあった棚が置かれてある家のベッドに体育座りをする。
この家は他と比べて余り壊れていない。

正直言うと、外見上壊れていたのはドアだけだった。
しかし、中は凄かった。

テーブルが引っ繰り返されて、四本の脚が全部折られてある。
椅子は背凭れに幾つかの刃物による傷が付けられてある。
棚は刃物による損傷は無い代わりに中の陶器の食器が粉々になっている。


ベッドには夥しい箇所に血痕が飛び散っていた。

静かに黙祷をしてから体育座りを俺はした。


近くにはガラスは割れて周囲に破片が飛び散り、
枠が歪んだ窓がある。

そこから僅かに星を眺められる。

俺の居た時の星空も綺麗だったが、
この時代の星空にはまず圧巻された。

よく、
小説でやたらロマンチックに言うシーンで次のような台詞が多いだろう。

『星空は万遍に散りばめられた宝石のようだった。』と。

読んで「まさか、そんな星空はこの世に存在するか。」と馬鹿にしてしまう人が多い。


そいつ等に向かって叫びたい、
この星空を見て二の句も告げるかと。


星空に対して灯りを灯したらどうなるのか、気になる。
案ずるより生むが易し、と実践もしたい。
そうさ、したいのさ。

野朗と思えばいつでも出来るが、
今の俺の状況を以下の文に簡潔に記す。



『外に出ると俺はワケラレテシマウから今は出来ない。』




そう、アソコから帰られたらやってみても良いかもしれない。

シスターに駄目出し……はされないか。
喜んで手伝ってくれるに違いない。



待てよ、俺。
アソコはあの村の中央にある。

今まで通ってきた道から考えると、
途轍もなく遠い場所に位置している。

人目を憚らず行くとすれば俺の場合数時間は掛かるだろう。

深夜にコッソリ行こうか、いや駄目だ。

俺が来た時、村人が手厚く歓迎してくれた。
そこから俺の帰還を待っている村人も居るかもしれない。
交替制で俺が何時帰ってくるか楽しみにしている。


あの歓迎も恐らく緋色のマントの男が関与したかもしれない。
いや、関与しているに違いない。



何故って、俺がやってきた時にはっ、アイツはあの村に居た!



なら、俺は元の時代へ帰られないじゃないか。



帰ろうとすればワケラレル。
帰らなければ何時かは餓死してしまう。


「くっ、畜生。」

ベッドに対して殴る。
マットのスプリングが弱かったのか、凹んだ跡が残っている。


俺が俯きかけていた時、何かの気配を体が感じ取った。




人は極限状態になると神経が過敏になる。




あの時もそうだった。


北の戦争の時にやったエシュターとの競争で、
どうしても戦場を潜りぬけねばならなかったことがあった。

俺は唾を飲んでから、
一心不乱になって一気に駆け抜けたのを覚えている。


あの時は、襲ってくる弾が遅く見えて次から次へと避けられた。
そのお蔭で、今日まで俺は五体満足のまま生きている。



「同じだ、あの時と。」


口ではそう言いながら、
第六感は『建造物郡の入り口に一人の男がやってきた』とけたたましく俺に伝える。



手強い人が来たと瞬時に悟った。



ベットの近くに立てかけておいた剣を手にとって、
俺はベッドから降りる。


どうせ、俺を探しているに決まっている。
なら、探している間に奇襲を掛けてヤレば良い。

奇襲が汚い手段だという人も言うが、
真剣勝負では潔い勝ち方も汚い勝ち方も関係無い。



生きた人が勝ちなのだから。



後ろめたい気もするけれども、
命に比べれば軽いものだ。


直ぐに空の彼方へと消し飛んでしまうさ。



「俺は絶対に此処で死なない。」

自分に勇気付けるように言って、
窓ガラスの破片で身体を切らないように慎重に外へと出た。



夜空は尚も輝いていた。



      *      *      *


水溜りで足音を立てずに急ぎ足で進む。
息を殺して進む。
俺が剣を持っていることバレないように、と祈りながら――進む。

図書館の後ろの壁まで辿り着いて、
ゆっくりと顔を壁から外に出す。


予想通りよりも、
俺が作った脚本通りに墓の近くで居た。


緋色のマントの男が。


俺の作った脚本と、
一箇所だけ間違いがあった。


緋色のマントの男は墓の前で何もせずに、
仁王立ちしていただけだった。


遠くにある井戸を睨みながら仁王立ちしていた。


(之だと、奇襲攻撃を掛けると逆にヤラレルな。)


こういう場合、今の俺と同じく周りに神経を集中させている。
微かな物音を見逃さないという堅固な意志で。


従って、背後から仕掛けても既に心の準備は整っている。
故にヤラレル。


(なら、表から正々堂々と行くか)


俺だって男だ。


――本当に良いのか、後悔しないのか。――

と例の声が聞こえて俺は答える。


「あぁ、後悔は先に起たない物だろう。」

揚げ足を取って淀みなく返答した。



――確かにそう言われると反論できないな。――

漫画ならば『ニヤリ』という擬音語が、
例の声が出てくるコマに書かれてあるに違いない。



今度は水溜りでも足音を立てさせて進む。
呼吸を普通にしながら進む。
普通に剣を出しながら進む。





満月は南中した。




      *      *      *



雨は降り続ける。



廃墟の街を癒している雨かもしれない。



もしくは、廃墟の街を壊す雨かもしれない。



廃墟の街をただ濡らすだけの雨かもしれない。



分からない、


分からない。


この雨の意味が分からない。


如何したら、この雨の意味は分かるのか。


もしも貴方は知っているのなら、是非とも教えて下さい。



彼等と私に。



      *      *      *
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以後の戦闘シーンはhirumiからの推奨BGMがあります。


「アイ アム 暇人ー!」でこの作品を読んでくださった(=物好きな)人は、


先ず以下のヘッポコ文章を読んでから曲を聴くなり、曲を流しながら読むなりして下さい。
まぁ、強制的というわけではありませんので後自由に。

「アルファナッツのファンで『女神の涙TRUE』を買ってクリアした人」
(少ないと思いますが) は、『激闘の彼方に』を。

「上記のゲームを持っていない方、もしくはまだクリアしていない方」は

煉獄小僧氏の『彷徨いの言葉は天に導かれ』をお勧めします。


尚、私の知っている限りでは、
『彷徨いの言葉は天に導かれ』はフリーゲームの「Muspell」の『ラストバトル』に、
「ひぐらしのなく頃に 解」の『罪滅ぼし編』の本編での一番最後のシーンにて使用されています。


「ループが良いんだー!」という人はそちらをどうぞ。
「くっ、上記のゲームをやっていないぜ」という人は、「投稿ページのURL」から直接クリックしてください。


どちらも良い曲です、普段は何の曲も聞かずに書く私ですが、
今回は上のBGMを流しながら書いていました。もちろん、片方ですけれども。

これよりも良い曲があれば、そちらをどうぞ。

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壁から堂々と出る。

遠くに居る緋色のマントの男は、
口端を上げてニヤリと笑い、右手の親指以外の四本指を前後に動かして何かを言った。

雨音で五月蝿くて聞こえないが、
大体の言葉の見当は付いた。


――全力で掛かって来いよ。相手にしてやるからさ。――



俺は首を縦に振り、

「そっちがその気なら相手になってやろう。」
と大声で言った。

どうせ相手に何かは意味なぞ通じないから、
自分の威勢を強める為にしかならない。

それでも良い。


せめて、そうせめて、
戦っている時だけは『死』への恐れを脳内から完全に無くしたい。


俺は石畳の上を走りながら右手に持っていた剣を正面に出す。
相手も俺と同じ様に石畳の上を走りながら、剣を出す。


俺は男を上下に真っ二つに切断しようと、
大きく上に振り被り始めた。


服が雨を吸い込んで動きにくく、妙な接着感がする。

だが、奴だって同じ状況下に居るから、
そういう点で言えばハンデは一緒か。


――怖くないのか、本当にお前は。――





声と男を一緒に纏めて――縦に斬る。




剣が綺麗に十字を伴って重なる。
雨で金属音は余り聞こえなかった。


俺は縦に、奴は横へと重ならせた。


暫くの間、お互いに力の牽制をしあう。


俺は歯を食いしばり、
奴の剣を出来るだけ押そうとしている。

奴は目を上目遣いにして、
俺を下から睨みつけながら俺の剣を押し返している。

雨が降っているからか、
柄の部分が濡れて滑り掛けている。
余計な方向へ力を掛けずに、奴の剣を押しす方向にだけ精一杯の力を加える。


お互いに左足を同時に一歩下げる。



「はっ!」
「おりゃぁあぁあぁ!」



お互いが身体を数歩後退してから、
剣を一斉に横に振る。

検索と剣先が衝突して
鈍い金属音ではなく、鋭い金属音が響く。


力の反動で十歩前後さがった。


滑ってこけたら終わりだ。
出来るだけ、靴と床の摩擦を減らすように努力する。


尚、上記の前者のは俺が言い放った声。
後者のは俺の耳が瞬間的に拾った音だ。


奴と俺の目線が合ったと目が見て、脳が確認してから動く。

今度は石畳の外側に出てみる。
罅が入っていたり所々崩れている壁沿いに進む。
俺の泥に残った足跡が楕円の弧を描いていく。


同時に、俺と同じ行動を奴もしていた。


俺と奴の距離が最短距離になった。


―― 一体、奴は何者なんだろうな。――

例の声は奴と俺の距離が最短距離になった時に、
手から放ってきた衝撃波で掻き消された。


すぐさま、右へスライディングする。
刹那、俺が居た所の壁が粉砕されて穴が開いた。

髪が重たいが、顔を少し上げて奴の表情を伺う。


見る者の目を射抜く感じがした。奴の目から。


目を瞑り、何かの詠唱を始める『奴』

(もしや奴は、
俺の時代では無くなったと言われる「理力」の使い手か。)

厄介だなと、
心の中で呟いてから急いで遠くへ行った。

石畳が消えて、
先が消えた所まで進んだ。
身体を石畳のある方向へ向けて、体勢を整えた。


奴の両目が大きく開いて、
突き出した右手の手首を左手で押さえている。

大声で何かを叫ぶ『奴』。



「∠●!」



当然、聞き取れない。
いや、聞き取る気がそもそも起きない。


右手の掌から真紅の炎が飛び出し、
俺に真正面に襲い掛かってくる。

早くないので避けるの容易い。


――右に避けろ。――

普通なら『避ける』という手段を取るだろう。
どうやら、声も同じだった。

しかし、俺は天邪鬼、アマノジャクだった。

「嫌だっ!」

剣を正面に構え、
深呼吸を何度もする。


視界が赤に染まった。


剣を斜めに振る。




巨大な炎が二つに分かれ、崩れていく。



炎が揺れながら小さくなっていき、
最後には粒子となる。



俺の周りには崩れた炎が粒子となって上空を舞う。
炎の霧が俺の辺りを覆い尽くす。

幾ら何でも、この霧の中から飛び出したら火傷するだろう。

(流石に、アイツでも動かないだろうな。)

そう、安易に考えていた。


――だが、現実はそんなに甘いものじゃないぜ。――






炎の霧の中から一人の男が飛び出してくる。






マントには炎の粒子が纏い、




服の一部は微かに焦げていて、




髪は少しくすんでいて、




露出している肌には、明らかに火傷の痕と思われる箇所が幾つもあった。





一瞬、驚いたが今の状況は『ヤルかヤラレルか』。


直ぐに俺は理性を取り戻した。


「来い。」


思わず声を漏らしてしまった。
戦闘中で声を漏らしてはいけないのは鉄則。
瞬時に人が居ると気付かれて、そのままお陀仏だ。

奴は剣を両手で持って直進する。
奴は只管直進するだけなので避けるのは簡単だった。



俺は油断していた。

心の隙というのかもしれない。
其処を突かれた。


背中に奴の剣先が触れた感触。

そのまま、剣先は俺の奥に。




今度は肉が裂かれる感触がした。
剣が手から滑り落ちた。




剣が奥まで刺さった。
背中の神経まで入っていない筈だ。

まだ、痛みを感じる。




突然、脳の中で何かが吹っ切れた。




諦めた、諦めかけた。
何かを俺は諦めた。



―― ……おい、聞け。――


また、声が――。


――諦めんじゃねぇよ、死ぬぞ。


モウ、ニドト友達ニハアエナイゾ?――





本当に魔の言葉だ。

二度と会えない、


二度と大切な人とは会えない、
という言葉は。



だから、だから、





俺は。





背中に刺さった奴の剣を右手で引き抜こうとする。

奴は剣を持っていたが、
全く力を入れていなかった。


意図も容易く手を払って、
奴の剣の柄を俺は力強く握る。


剣を一気に引き抜く。


肘鉄砲で奴の胸板を叩く。
呻き声が聞こえた。


炎の舞は終わっていた。
何も言わずに、俺は奴の剣を振りかざしていた。


一言言った。

「死ね。」
、と。



言葉が通じるはずがないのに、つい言っていた。



それから俺は――





To Be Continued……
7418
「 」  Fourth volume by hirumi 2007/03/22 (Thu) 21:02
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レス/編集
 
倒れかけた例の奴に、奴が使っていた剣を振りかざす。

口元が震えていた奴の顔目掛けて、目を瞑って振りかざす。



剣で切り裂く感触は俺の手まで届かなかった。
代わりに届いてきたのは金属によって生まれた小刻みな震え。



目を開いて見ると、
奴は俺の剣で対抗していた。

刃こぼれし掛けの刃同士の衝突。



成る程、


倒れこみながらも俺に対抗するのか。



――精々、――
『精々、』



俺の心の中の声と、例の声が上手い具合に重なった。



俺は剣を僅かに、大体数センチ上げる。

奴が持っている剣を地上と、
そう仮定しよう。

その仮定に従ってみると、
『俺は自らで操っている剣を、右手へ動かしてみる。』のは、
『俺は自らで操っている剣を低空飛行のまま、右側に動かしてみる。』となる訳だ。



即ち、俺の剣と奴の剣の間の高さは数センチ。
数センチの高さを保ちながら動かした、ということだ。



――お前はもうすぐ――
『お前はもうすぐ』



さっきと同じだ。
また、上手い具合に重なった。



剣の鍔で奴の右手を当てる。


奴の左目は一瞬細めになっていた。

奴の口は歯を食いしばっていた。



俺は軽めに深呼吸をしてから、
自分の右手に力を込める。

元々は俺の所有物だった剣が奴の右手から外れて落ちた。



――死んじまうんだから――
『死んでしまうのだから』


右手に持っていた剣で、奴の左手首を切り裂こうとする。

フィクション、即ち人が作った物語上では簡単に切り裂けるようになっている。
簡単に体が裂けられる様になっている。


人の体は俺達が想像している以上に頑丈でもあるが、
その半面に脆い。


肉のみならば、骨と比べて斬り易い。
料理の過程で、動物の肉を包丁で切り裂いていく。
料理の達人ならばさほど苦労はしないだろう。


流石にそれよりも苦難するが、
多少の力があれば一般人でも可能なのだろうか。
いや、断言しよう可能だ。

『肉』までならばな。



俺の時代では殺人事件は滅多に起きない。



逆に考えてみると、ほんの僅かにだがあるとも言い換えられる。

面白いことに、
それら全てがバラバラ殺人だ。




その、何というのか、俺も面白いとは思わないが。
あえて、このような表現をすべきだと思ったんだ。うん。




その『ほんの僅かの殺人事件』の被害者の死因では斬殺は結構少ない。
尚、刺殺・撲殺・銃殺は多い。


刺殺と斬殺は違う意味だと予め言おう。


刺殺は短剣や槍で刺し貫いたのが主な原因による死因。
斬殺は剣で一気に『斬った』のが主な原因による死因。


俺は専門家ではないので良く判らないが、
一応このような区分ではないかと思う。


昔は繁栄を誇っていた鍛冶屋は今では少ない。
剣に代わって、重火器が戦争に使われるようになった。








例えば、北の戦争。とかな。


……


…………


………………


話を戻そう。

遺体をバラバラ遺棄する時には刃物を使わないといけない。
刃物を使って手首を切り落とす。

息を荒げながら一生懸命に刃物で切り落とす。
『肉』まで切り裂くのは楽だろう。
だが、骨は如何だ。

骨折の原因は奇跡的に『骨折で済んだ』という物から
誰の目から見ても『間抜けだ』としか考えられない物まで多種多様、十人十色だ。



俺の知っている中で一番間抜けな例を上げてみよう。
学校の階段は一段一段が低い、よな。



その学校の階段の三段からこけて、
床に落ちてしまって足を骨折という例だ。

三段と言っても上から三段目ではなくて、
下から三段目だ。


この話を始めて聞いた時、
そいつに対して同情や哀れみを通り越して俺は呆れてしまった。
正直、此処まで間抜けな例があるとは知らなかったからな。


本来、骨は硬くてアッサリとは折れない。
落下によるものは別としてな。
重たい身体を支えてくれる物だ。

青年の時で骨に関する病気に掛かっていなければ、
常識的に骨は丈夫である。


今までの人生の中で色々と無茶をしているが、
骨を折った経験は無い。



今までのように考えてみると、
人を骨まで一気に、
かつ簡単に切り裂くのは難しいものだ。


その上に、切り落とすのは時間が掛かる。


なのに、あっさりと奴の左手首を『斬り』落とせた。



悲鳴や嗚咽は一切聞こえなかった。
奴は俺を冷淡な目で見ているだけだった。



奴が落とした剣を血塗れの左手で拾い上げる。
持っていた剣は、
服で拭ってから鞘の中に収めた。

確りと収めるのに、
何回もやり直さないと、
いけなかった。


俺の息切れが激しくなっている。
何でだろうか。


俺の余裕は。
あぁそうさ、余裕はまだあるに決まっている。

そう信じたいさ。

あぁ、そうさ俺の余裕は……

――「余裕は」って何だろうな。――

もしも、『奴の声』が実体となって実在しているのなら、
不気味な笑いをしているに違いない。


剣を持っていない上に倒れかけている緋色のマントの男は、
直ぐに理力を撃って来る確率が高いと思われる。

ならば、どうするか。


『三十六計逃げるが勝ち』ということわざと同じだ。
今回の死合では、勝ち方が汚いとか醜いとか言われても勝てば良い。


死ななければ、どんな手を使ってでも良いのだから。


如何にして、あの村まで逃げるか。
それを考えなければ。

さっきは、あの村までは到底たどり着けないと考えていた。
だが、あの緋色のマントの男を退けられた。
旅人の道中で知ったのだが、
意外なことに緋色のマントの男より強い奴は居なかった。

となると、
この世界ではトーテム能力者はまだ少ないという事実になる。


闇の間を縫って逃げよう。
上手に行けば無事にあの村まで着ける。

五体満足で無事に到着できる確立としては、九十%だと信じたい。

いや、あの緋色のマントの男が後から追ってくるに違いない。

となると、確立としては八十%までは下がるのではないか。



そうだと、俺は信じたい。
信じなければ、膝がすぐに竦んでしまう。




そういえば、奴は片手を失っているが倒れているだけだ。
致命傷までは達していない。
何で奴は理力を打たなかったんだ。



俺を本気で殺す気ならば、
理力を打つのではないのか。





―― …… ――





『例の声』は何も答えなかった。

俺を気遣って無言になっているよりも、
俺を馬鹿にしている感じがした。






雨は尚も降り続いていた。



星は見えるのに。 

満月を仰ぎ見れるのに。

もしかしたら、
天国も見るかもしれない。

星は瞬いていない。

星が瞬ている理由は、
空気が汚れているから。


空気が汚れていない所では、
星は純粋に存在しているだけだ。



雨は、雨は、より一層強くなった気がした。


体もより一層冷たくなった気がした。




      *      *      *




俺は黙って、長髪の男が逃げるのを目で追う。

俺は倒れこんでいるだけで、何もしなかった。

「さーてっと。」
そう言って、身体を起こそうとする。


バランス良く起きなかった。
左手に上手に力が入らない。


左手に目を落とす前に思い出した。
引き千切られた


「そうだ、そうだ。
さっき、左手首をばっさりと斬られちゃったんだっけ。
ふっ、俺って奴はこうも馬鹿なんだから。」

と、言ってみる。

その声が空に空しく響き渡ったのは至極当然。
誰かが反応してくれるとでも期待していたが、
まぁ当たり前といえば当たり前だよな。



独り言というのは、なんだろうか。
『一人』『独り』は誰もが知っているように大きく意味が違う。

一人はその場所に、
現実世界では自分自身しか存在しないという意味。
独りは現実世界で、
自分の周りに大勢の人が居ても心の中で許せる人が居ないという意味。



……だと、俺は信じたいさ。



独り言というのは、
言った言葉が他の人宛じゃなくて自分宛ということかな、かな。

あっ、語尾が変になった。
以後はちゃんと気をつけないと。





即ち、俺は今『一人』でもあり『独り』でもあるのか。



――『一人』でも『独り』でもねぇ、雨や星空があるじゃねぇか。――

とでも言えば、格好良いのだろう。
生憎だが俺はそんなキャラではない。

格好良くないどころか、身の程知らずだと。
唯、ナルシストとか気取っているとか……ともかく、そういうことだと。
はい、はい、判りましたよ。


雨が刺すような、いや刺してきている。
そんな痛みがジンジンとする。


大きな傷口に数多くの水滴が入り込む。
滲みて、痛い。


痛い、いたい、イタイ。


痛いけれども、
俺は本能でさっきは無視していたのか?

んな、訳は無いさ。


意外と俺は強がり――だったら、恐ろしい。
背中に寒気がするぜ、うー寒い寒い。


というより、ねぇ。
寒いんだよね、このまま雨に打たれ続けるのって。

それに俺の服が結構赤くなっていたり、
赤い水溜りが広がっている。

おいおい、やばいぞ、コレは。
そして、危ないことを呑気に言っている俺の頭もやばいぞ、コレは。



「あー、ここで回復理力を使えればよいのになー。くそー。」

片手と両足でジタバタとする。
水が数十センチも撥ねていく。
水音も中々凄いのを作ってくれる。

――イタイ、イタイ。イタイ、カラ、ヤメロ。――
と体が脳にわざわざ伝えてくれたが、完全無視。


無視をしているとは言っても、
人間の形状をしている限りは痛い。


雨に打たれていながらも俺は何も出来ない。
消毒用品なんか持って居ない。
持っていたとしても、
片手だけだと治療するのに時間が掛かるだろう。



俺は、このたびの中で回復理力を一度も覚えた経験が無い。



「男に回復理力はいらないさ。包帯と薬さえあれば良いんだぁああぁぁ。」
と、変な自己主張をして、一度も回復理力を覚えなかったんだよ。

馬鹿だと思っているさ、自分を。
直ぐにこの持論を捨ててみたいと思うさ。
だけど、心が許さないのさ。あー、畜生。

ここまで言えば判るがスケイルが人間姿になり、
初めて回復理力の有り難さを知った俺である。






しかし、今後も回復理力だけは覚えない。
之だけは誓おう。





えーと、誰に誓おうかな。
取り合えず、スケイ……じゃなくてリクレールさんに誓おう。


そして、この痛みを如何するか考える。
血は未だに止まらない。


右手で押さえたら余計に出るだけだから、
雨に晒したままだ。


「いっそ、左手を切るか?」

いや、それは難しい。
片手でもう片方の手を切る事なんかは、
剣豪でも辛いと思うさ。

どう考えても、
人間業じゃない。

生憎といわなくとも判ってると思うさ。
俺は唯の一般人。







俺ハ、唯ノ一般人ナンダ。


ソウダヨ、俺ハ一般人ナンダヨ。







雨に全身を打たれながら、
ふと初日にリクレールさんが俺に対して言ったことを思い出す。


視界はもう雨に覆いつくされていた。
別に構わないさ。
雨で物凄く濡れたってさ。

濡れただけで、
死んでしまうんじゃないし。

いや、あれだ。
濡れたせいで風邪を引いちゃうんだ。
それは如何考えても間抜けだ。


俺は俺の体から半径一メートル位ならば大体だけど、
というより凡そだな。凡そ。
何所に何があるのかの見当がつく。


起き上がって雨宿りしたいんだよ、俺だって。


何か、ちょっと眠い。
ちらっと左手の切断面を見たら、


「わぁーお。結構止まりかけているけれど大量出血だね。」

ぼやけた視線で空をもう一度見る。



快晴。




だが、雨。



見事に相殺されていると思うよ。
何と何が相殺かって聞いたら駄目だぜ。


「手が濡れているから剣が落ちやすいけれど、
やらないとだめかなぁ。」


右手で周りに剣が無いか探る。
無いとは判っているが、自然と体が動いていた。

さっきもそうだ、自然と口が動いていた。



周りには誰にも居ない。
俺が言っている事は独り言にしか過ぎない。



独り言だけど、
口を動かさないと俺が『俺』であるという気がしない。





「奴もそうだったのかな。」




``今更?``とは言わないでくれ。
まだ、間に合うと俺は思っているんだ。




何時の間に荒くなっていた息を整えて、
右手を左胸に当てる。



――サムイ、サムイ、サムイ。――
(んなもん、判っているんだよ。)

自分に対して怒っている自分自身が、
痛い人としか思えない。


手足が、かじかんで来ている。
感覚がしない。




何って、俺が今『ココ』に居ると言う感覚が。

右手に全神経を集中させる。

冷静に、冷静に。
そうだ、クールになるんだ。

クールになるんだぁあぁァァア、俺。
クールになっていないって、あっ、そう。


別に、最期位さぁ良いじゃないか。
変な事を言ったって。


だけど、最期の最期は真面目な事を言おう。






「俺はやり直しが出来る。」


雨が口の中に入る。
左手はもう痛くない。

痛みを感じないけれども、
手首から上の感覚が無い。


恐ろしいな、恐ろしいな。


確かに俺はやり直しが出来る。









――だけど、やり直しは何度も起こるものじゃない。――






――『やり直し……コンテニューは一度きり』だ。

       真面目に考えるんだな。――






夜空に赤い飛沫が高く、


低く飛んだ。



赤い月はまだ昇っていた。




      *      *      *


――昔、ある奴がこう考えたんだ。
  その考えを此処に記しておこうか。
  俺がこの記憶を忘れない内に。――


 俺は今、命の危機に晒されている。




 ならば、
 逃げよう。





 逃げよう。


 早く逃げよう、


 早くかつ急いで逃げよう。


 俺は早くかつ急いで逃げないといけない。


 死にたくないから、俺は早くかつ急いで逃げないといけない。


 こんな所で死にたくないから、俺は早くかつ急いで逃げないといけない。


 俺はこんな所で死にたくないから、俺は早くかつ急いで逃げないといけない。


 俺はこんな所で死にたくないから、俺は此処から早くかつ急いで逃げないといけない。


 俺はこんな所で死にたくないから、俺は此処から急いで逃げないといけない。


 俺はこんな所で死にたくないから、俺は此処から逃げないといけない。


 俺はこんな所で死にたくないから、俺は此処から逃げる。


 俺はこんな所で死にたくないから、俺は逃げる。


 俺はこんな所で死にたくない。


 俺は死にたくない。






 『俺は死にたくない。』





 オレハ、シニタクナイ。







 ダカラ、俺ハ逃ゲテミセル。






『何所までも、何処までも、俺は逃げてみせる。』


 死にたくないから、俺は逃げてみせる。



 ドコマデモ、ドコマデモ、オレハニゲテミセル。





――とな、そいつは思っていたんだ。

  馬鹿らしいよな。

  む、何故かって。

  理由は簡単だろう。――



      *      *      *



荒い息をしながらも、
俺は走る。

膝が笑っていながらも、
俺は走る。

俺は走らないといけないから、
俺は走る。


命ある限り、
例の村にたどり着くまで俺は逃げるさ。



何所までも、何所までも、俺は逃げてみせる。




この前来た時は狭いかった平原が、
妙に広く感じる。


ちなみにさっきの話だが、
(数百メートル走った)と思って、
後ろを振り返ってみると実はまだ数十メートルしか動いていなかった。


昨日の夕方、俺はあの街に行った。
その時は、随分と狭く感じたぞ……?



気分によって、
ここまで物事の感じ方が違うのか。



川が遠くに見える。
その代わり、小さな滝が視界の端に見える。

確か、
あの滝から先の川に沿って進めば、
この川に唯一ある橋までいけるはずだ。


其処まで行ったら、安心だ。
殆ど、そうだろう。
安心できるだろう。

後は三つ叉の洞窟に、大きな湖の近くを通って……。




――ちょっと、待て。――


例の声が脳内にて再び聞こえた。


――それは可笑しいんじゃないのか。――


その声に従って、
もう一度考え直してみる。




「あ。」






一本道しかない。
簡潔に言えば、
待ち伏せが可能であるじゃないか。




帰ろうとしたけれども、時は既にもう遅し。





背後には例の街しかない。
飛び降りるのも良いかもしれないが、
死んでしまうか複雑骨折。




何れにせよ、道はとざれてしまう。






その上に、
遠く先には緑の髪をした女が立っていた。






俺を食い入るように見つめながら。





      *      *      *


――理由に関してはあえて、今は何も言わない。
  
  そいつのもう一つの考えも、ここに書いておこう。




『俺が生き延びられるという、確かな証拠をこの手で掴みとるまで俺は逃げてみせる。


 俺が生き延びられるという、確かな証拠を掴めるまで俺は逃げてみせる。


 俺が生き延びられるという、証拠をつかめるまで俺は逃げてみせる。


 俺が生き延びられるまで、俺は逃げてみせる。


 俺が生き延びられるまで、俺は逃げる。




 何処までも、何処までも、俺は逃げる。』


――この文法は無茶苦茶だと思わないか。

  俺は思う。

  何故って、簡単な話だ。







 逃げているだけじゃ何も解決出来ない、だろう?







To Be Continued……





後書き

この話も後わずか。戦闘は後2回で終わらせる予定です。


遅れた理由→   済みません、B.Bライダーに凄まじくはまってしまいました。

ラストは号泣しすぎてティッシュ14枚の消費です。
……EDの後の会話シーンでやられました。

関係ないですが、B.Bライダーの最後はバッド、良くてもノーマルという人が大勢居ます。
しかし、私にとって見ればハッピーエンドでトゥルーエンドでした。


ネタバレはしそうな上に、ここは「シルフェイド」同盟なのでこれ以上は言いません。
唯、最後に一つの感想を。




「結果が良くとも悪くとも、
 ゲームやテキスト、その他の創作関連の最後はトゥルーエンドなのだと。」




真実は全て書き終えているのですから、ね?
7503
「 」  Fifth volume-1 by hirumi 2007/04/01 (Sun) 00:07
△up
レス/編集
 

目の前には何時も絶えずに青年の傍に居た女性が立っていた。

彼女の眼は俺ではない何かを見ていた。
しかし、俺を食い入るようにも見ていた。


彼女の震える唇から一つの単語が発せられた。




「殺したッ!」





体全体が小刻みに震えた。
雨による寒さのせいではない、
恐ろしさなのだろうか。

ふっと思う。

この言葉は俺の顔の両側に付いている耳では理解できなかった。
のに、俺は何故か判らないはずの言葉を脳内にて瞬時で変換できた。


理由は判らない、
今までそんなことは一度たりとも出来なかった。

偶然かそれとも奇跡か、
それとも俺の耳が進化したのか。

もう此処まで来ると良く判らなくなる。


取り合えず、言葉の口調から判断できたということにする。

否、
その様に信じないと俺がより変になってしまうというのが真実。

心にあるどこかが折れそうな気がしてたまらない。



頭から湯気が立っているかし
頭のネジが何本も外れているだろうし、
頭の回線がオーバーヒートして融けているだろうし、
頭から変な声は聞こえてくるし。


即ち、俺の脳が変だということか。

自分で認めるのも何だが、
俺は変だ。

だが、此処までは凄い経験は一度も無かった。


そう、

この良く判らない世界に来るまでは。









……っと……





……んとう……





本当にっ……、









本当にこの世界は何なんだっ!












その言葉と共に俺の視界に有った物の全てが、
ことごとく変化していった。











『俺はその時、
 突如して世界の全てが
 黒系統の色に変化していったのを覚えている。

 あくまでも、黒系統の色だ。
 純色の黒は一つもなかった。


 空にしろ、

平野にしろ、

 雨にしろ、

 地上にしろ、

 さらに俺の前に居た女性にしろ、    

 兎に角、俺の視界の全部がそうなっていた。

 あー、そういえば全部ではない。

 俺――自分自身は元の色だった筈だ。
 曖昧な記憶ではあるがな。

 何故か、
 その時は気付いていなかったが。』







何で、
   俺がこの世界にやってきた時、あの村は異様な程盛り上がったんだ。


何で、
   言葉が通じないが上に素性が全くわからない俺をあの旅人は快くっ!
何で、快く受け入れてくれたんだっ。


何でだ、
   普通の人間は素性がわからん人と関わりたくない筈だ。



なのに、

何故 だ。
何故 なんだ。



何で、
   この世界は俺が居た世界の過去の時と言葉が同じなんだ。






何で、


何故、


何で、何故、



何で ……だ。



何で   何だ……?




確かに、この世界の文字はノーマ学院で習った『古語』と殆ど同じだった。
しかし全部が全部、あの宿帳から見る限り同じではなかった。
文字や省略の仕方、ついでに言うなら文字が斜めになっていて読み辛かった。


――つーことは、
  この世界と俺も居た世界は違う時間軸に存在しているんじゃねーか。――

脳内の『声』に俺は賛同して、焦って言う。

(そうだろうな、
恐らくこの世界は俺が居た世界の過去じゃない。
恐らくそうじゃない、断言してみせる。)

――だと良いな。――

『声』は俺をはぐらかしつつ冷淡に答えた。
何というか、
『俺の考えが間違いだと事前から知っている』



まるで、
天才が無知である愚民共の考えを見下すかのように。




      *      *      *

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7504
「 」  Fifth volume-2 by hirumi 2007/07/26 (Thu) 20:32
△up
レス/編集
 
未だに目の前の景色は黒系統の色で覆い尽くされている。
全く、目に悪い背景だ。



彼女はブツブツと何かを呟いている。

念の為に、
剣を鞘から抜いておく。



さっき、奴の手首を斬り落とした血塗れた剣を。



彼女が変な、そう怪しげな呪文を呟くのを止めた、と目が捉えた。
直後に彼女は両手をクロスさせた。


第六感……いや第六「勘」?、
が即座に働いて反射的にバックステップ。


バックステップをしたことに後から気付いて、
俺は軽く舌打ちをした。反射的に。


――後退は許されない。そうだろ、俺。――

『声』が五月蝿い、
けれども唯一の救いにもなっているのは事実だ。




後退したら、駄目だ。
後退したら、そこで終わり。




前進しか出来ないんだ。






そうだろう、アルバート=ウェスタリス。






――だが、その考えは直ぐに破られた。


さっきまで俺が立っていた位置に、
強く輝く光が空を一閃して落ちてきた。

濡れた地面の内、
光が落ちた点が黒く焦げて小さな音と共に煙を上げている。




「くっっ!」


喉の奥から変な声が出た。




声と共に再び第六勘がして。
今度は斜め後ろへ。



以前よりも強い光が落ちた。
さっと、
彼女を見ると無表情のまま片手を前に突き出していた。




激しい気迫を俺に向けている。
彼女はまた小さな声で呟く。





最初に言っていたのと同じ言葉を。




空で何かが光ったと思ったら、
音と共に『それ』は落ちてきた。

いや、『それ』は既に光と言う段階やレベルじゃない。


雷と言うのが一番正しいだろう。




落雷、そして大雨。
落ち着いて良く考えてみるんだ。


水は純水以外なら電気を非常に通しやすい、
よって感電しやすい。
逆に純水は全然電気を通さないが。

金属も電気を通しやすいから、
感電の原因になりやすい。



うむ、その通りだ。
ちょっと待った、そうしたら




                      今俺は、非常に感電しやすい環境に身をおいているのではないか?








「……落ち着くんだ、俺。」
思わず膝を付きそうになったが、
途切れそうな理性で頑張って両足を地に付けたままにする。

例によって、
背景が黒系統の色になっている。

さっきと大きく違う点は、
彼女が全く動いていないところだろうか。

彼女どころか、
転がっている小石や砂さえも動いていない。



それにしても、絹糸かのような理性が途切れたら、
次の瞬間の俺は一体どうなるんだ。





……


…………


想像しただけでも恐ろしい。








――だから、さっきも考えていたじゃねーかよ。
   本当に馬鹿ですか、馬鹿なんですか。お前さんは。――

『声』が俺の頭を小突きながら言う。
遂に、幻の感触まで感じるようになったのか。

(『逃げ』しか無いと言うのか。お前は。)

――んー、まともに戦って勝つ気があるなら別に良いけどさ。
  そんな可能性って、あるとお前は信じているのか。――


俺は小さく口を開けて言った。











「無い。」











――そうかー、そうかー。
   お前の考えがよーく分かったぞ。
    んじゃ好い加減、止まった時を戻すぞ。――


『声』が一言俺にそう言った。

ふと思った二つ疑問の内の片方を率直に『声』にぶつけて見る。

「それにしてもどうやって、
お前は時間を止めていたんだ。」

んー、
と『声』は力を抜けたような声を出してから答えた。




――そこら辺はねー
   まっ、企業秘密って事で。これ以外に質問はないよな。――


もしも、この世に『声』が形となって存在していたら、
片目を瞑りながら右手の人差し指と中指だけを伸ばしていたのではないか、
と俺は考えた。



俺はその考えを直ぐに取り払って、
真剣な顔をしてもう一つの質問を切り出そうとした。






何所に目があるのかは知らんが、
『声』は俺の顔色を察して逆に質問してきた。



――まだ、質問があるってことですか。アルバートさんよ。――



ああ、と俺は低い声で言ってから顔を結構上げて答えた。

無論、
そこには誰にも居ない。






漆黒の闇しか、無い。






だが、俺は其処に『声』の持ち主が居るとでも、
何所かで考えているのかずっと見ている。


尚、もう少し遠くを見れば、彼女が見えるだろう。





はっきり大きくと口を開けて訊いた。




「お前の口調が最初と随分変わっているぞ。
そんな、最初は今のような変な喋り方ではなかったはずだ。」




―― ……。 ――


声は俺の質問を聞いていなかったのかと、
考えらえる反応は無反応だった。

暫く時間が経ってから返事が返ってきた。




――んー、何時かは気づくんじゃねーの。
   それに、口調を変化させる位は別にどーだっていいじゃん。――




その言葉の裏には、

(口調を変化させた事には、ちゃんとした理由がある)


という意味が隠されているのではないかと俺は本能で感じていた。
あえて、口には出さなかったが。





      *      *      *



さて、時が再び動き出してから、
俺が即座にした行動は前進あるのみ。



前へ、前へ。

この両足が使い物にならなくなったら、
両手を使えばよい。

両手も使えなくなったら、
顎でも肩でも何でも使おう。


意地になってでも、俺は前に進むんだ。





【――それしか、おみゃーは思いつかないんだね。――】



(それにしても、俺は一体何をしているんだ。)




『声』は全く聞こえない。
微かな声で何かを言っているようだが、聞き取れないから完全無視をする。



剣を大きく振りかぶり、
全身の力を両足に集めて只管走った。




【――まだまだ、幾らだって方法はあるのにさぁ。
    気付かないなんて、本当に馬鹿だ。あはははは……――】




(何で、俺はこんな事をしているんだ。)





何時の間にか遠くに離れた彼女が空ろな眼をしながら一言、
俺に言い放った。


その言葉の節々には、
俺に対する嫌悪感がこもっている気がしてたまらない。


彼女が口から発した波紋の一つ一つに、
思いが籠められているのだろう。




何への思いを彼女が発しているかは直ぐに分かった。





十メートル位、
後ろの斜め左に雷が落ちた。


左足を前に出した。


【――気付けよ、気付けよ。早く気付けよ。
    こうやって一人で言っている俺が、
     ものすんごく痛々しい人にしか見えないからさぁ。――】





(俺  はワカっている、
理屈ではワカっている、
 頭 ではワカっている、
 体 ではワカっていない。
 じゃぁ、本当に俺はワカっているのだろうか。
 なら一体、何を俺はワカっているんだ。)





凡そ八メートル前後で、
前方に雷が落ちた。


急いで右足を地上へ下ろした。




【――そっかぁ、お前は『それ』に気付こうと努力しているんだな。
    だけどな、この状況じゃ流石に気付けないと俺は思うぜ。あっはっはっ。――】




(俺は、

 オレは、

 おれは、

 オレハ……。




 イッタイ、ドウナッタンダ。)





後ろからなら、五メートル。
左からなら、参メートルの位置に雷が落ちた。


慌てて左足を泥に降ろした。







 (俺は、本当に俺の意志でこの行動をしているのか。




  如何して俺は、こうしているんだ。
  



  俺自身の。



  俺自身の事なのに、





  全く分からん。)








彼女が居る場所までほんの少しとなった。



既に泥塗れになった靴の先で地を蹴り、
所々に茶色い斑点がついてある長剣を横へ。








『こういう時に限って人は、
 考えが堂々巡りになるものだ。

 考えが纏まらず、
 何時の間にか最初と同じ考えに至っている。


 人間と言うのは不完全だ。
 特に俺のような人はな。』






彼女の頭目掛けて長剣を振り上げる。
振り上げるとはいえ、
普通の人間が考えて大袈裟ではない。


せめてもの気持ち程度だ。
言葉の用法は違っていると分かっている。
分かっているが、それ以外の言葉が思いつかん。
だが、
今の俺が置かれている状況を考えれば、
まだ錯乱していないだけ上等か。






 『 「錯乱」というのは他人から特定の人物を見た時の印象や状態だ。
  だから、決して自分が認めるものではない。

  「錯乱」とは、
  俺の考えでは人から見てその行為が「異常」だという意味だ。
  
  ここで派生して俺は考えた。
  
  自分自身を錯乱と認めるというのは、
  自分自身の行動や考え方を「異常」だと認識しているという事ではないのか……?』
 
 







彼女は咄嗟に反応し、身構えた。
そして、短剣を何所からともなく取り出した。



短剣の側面を濡れた顔に軽く当てて、
目を瞑った。
彼女が軽く深呼吸するのが見えた。




今度は長剣を出来る限り高く振り上げた。
刀身を俺の右側に寄せる。



後は重力の法則に俺は従うだけ、







だった。








【――戦闘中の咆哮って、小説とか「ごっこ遊び」とか喧嘩で使うと格好良く見えるよなー。
    まぁ、少なくとも俺はそう思うわけよ。何か、戦いをちゃーんとしているって気がするしさぁ。
     だけど、戦場とかで反射的にっつーか自然に咆哮を出す奴っているじゃないか。
      あれってお偉い人の話だと、ちゃんとした意味があるらしいんだよなー。
       確か、『自分をより興奮させて、より実力を引き出す』とかそんなんだったっけな。
        そういやぁ、こいつは全く咆哮を出していないよな。たったの一度しか出してやがらない。
         本当にやる気があるんですかぃ、こいつは。――】






突然、周りが遅くなりそれと同時に、
雨が瞬時に凍って氷となった。

俺の落下地点近くに居る、
さっきの彼女の虚ろな眼や無表情。
簡単に言えば鉄仮面だがそれを口に出したら流石に怒られる。
普段の状況下においてならな。





彼女の顔が俺に向けられた。

彼女の顔はさっきとは全く違い大きく崩れていた。








今の彼女の変化を表す言葉ならば、
『破顔の一笑』がこの上なく合っている。









ただ、恐ろしい点は、
本来の用法と正反対であることだ。









俺が落ちてきてからは再び以前の鉄火面に戻り、
彼女は俯いていた。

【――それにしてもさー、こいつはどー考え立って万有引力の法則を無視してるよな。
    二十秒もジャンプし続けているなんてあり得ないさ。
     まー、あり得ない事柄を『一パーセントでも打ち破ってみせる』とかいう何所ぞの主人公たちは別だが。
      人がジャンプしていられる時間って、
       たったの一秒にさえ満たないのは誰もが知っているお約束に決まっているはずなのにさぁ。
        おいおい、もしかしてもしかして、
         実は怪しげな特殊なフィールドでも張っていて落ちながら戦っているのかよ、こいつは。――】






しかも、異様にこお……氷柱の先端が尖っている。
彼女が発している俺への殺意は肌が確りと感じ取っている。

何か寒気がするな、と考えていた。
――何時の間にか鳥肌が立っていた。

良く考えれば、
俺は雨に打たれ続けていたのだ。
即ち、寒気がしたっておかしく無い筈だ。


もしや、殺意もその寒気に雑じっているのか。
幾らなんでもそれは無い。

あの北の戦争を潜り抜けられた俺だ。
修羅場をたった独りだけで体験した回数なんぞ、
同世代の人々と比べれば圧倒的に多いに違いない。







「死にたくない。」



不意に口が勝手に動いて、
脳が今まで考えるのを止めていた事柄を波紋として作ってしまった。

波紋は夥しい数の氷の落ちる音と共に俺の両耳に入った。
耳から神経で脳に伝わって、
脳が無意識に言った俺の言葉を認識した。

その言葉を、


俺が認識すると、



同時に、




俺にある





何かが、






あっさりと、







簡単に、








切れた。









剣を持っている手により力が入った。
俺が脳内にて予想している落下の軌跡に存在している氷を全て薙ぎ払うように、
徹底して考える。

余計な行動はしない、考えもしない。
有限にしかない時間をいかに効率よく、
かつ使い分けるかのみを考える。

一番優先すべき考えは、
俺が死を避けるために出来ることだ。





膝を曲げて、
落下地点を彼女の前に変更する。

面食らった時が好機だ。




理由は知らないが氷が雨に戻った。
その瞬間俺は剣で彼女の右腕を一気に――――っ!?






「……ふふっ。」






それは、誰がどう考えても不敵な笑いだ。
背筋に気持ち悪い何かが、それこそ不気味にゆっくりと走った。



剣に目を落とすと、
彼女の濡れた体と俺の剣の間に火花が散っていた。

彼女は服の下に何も来ていないのは分かった。
良く見ると、その火花はさっき見たものであった。

「あっ。」
という俺の情けない声と共に
剣をさっと引いた。



「うふふふふ……。」



彼女に目を向けながら、そのままの状態で俺は後退りする。
否、していた。




「お前は一体何者だ。」



潰れてしまった喉から出てしまった物は、
さっきより情けない俺の声。


彼女は、首をかしげて可愛らしげな天使の微笑を浮かべた。
それなのに、悪魔を連れている魔王の笑顔だと思ってしまったのは何故だ。


柔らかな右頬に右手の人差し指を軽く当てた。
そして、直ぐに軽く離したと思ったらまた軽く当てた。

それを四回、彼女は繰り返していた。
人差し指がつくごとに、
口が動いていた。





率直に言おう。
俺はこの女性、いや天使の皮を被った悪魔が物凄く怖い。

歯の根が上手く噛みあわない。







再び脳にある何かが切れた。




プツンという、俺にしか聞こえない音を立てて。





すぐさま、近くにある岩に向けて一目散に彼女に背中を向けて逃げた。



岩に膝を折り曲げて隠れると、
焦りながら自分の身体状況を確認する。

一つ、体が小刻みに震えている。
二つ、膝が竦んでいる。
三つ……俺は彼女に対して目を向けられない。



鋭い雷が空をさっきよりも分かりやすく、
二つに分けた。


第六『勘』で立ち上がり、前進する。






岩が砕け散ったことによって生まれた轟音が響いた。







力が抜けた手から、
剣が滑り落ちて空しい音が響いた。




目の前に雷が落ちたが、
俺の体はまったく動かなかった。




雷が落ちてから十秒立った頃に剣を拾い上げた。


俺は何も考えずに、特攻した。



『俺があの時、何の策も考えずに特攻した理由は次だろう。



 死にたくない



 死にたくないなら、その原因を排除すれば良い。


 排除するなら、今自分が手元に持っているものを使えばよい。


 剣が手元にあるなら、それを使えばよい。


 剣を使うなら、どうするか。





 原因を剣で切り裂けば良い。






 本当に、安直な考えだな。』





それからと言うものの俺は只管、
彼女に対して剣を振り続けていた。


どれも、全部掠っていた。





どんなに剣を振っても切れるものは空気のみ。





彼女は笑いながら避けるだけだ。
もう何も手から繰り出さない。


嘲るようにして俺の攻撃を全部避けている。





体が満身創痍の如く痛くなってきた。
少し眩暈がする。
息が荒くなってきた。

意識はまだあるが、時間の問題かもしれん。
意識が切れたら、終わりだ。





そこで、俺の人生そのものが終わってしまう。

ゆっくりと視界が狭くなり、
届かない何かを捕まえようと手を伸ばして……。






「嫌だ、それだけは勘弁だぁあァァぁあぁぁああっっっ!」


剣先を背中に回して、
遠心力の勢いを保ったまま彼女に剣を向ける。


彼女は短剣を構えて、
俺に反撃をした。




そこからは剣同士の戦いだ。





時には剣の舞を、

時には剣のぶつかり合いを、

時には剣のせめぎ合いを。






『あの時の俺の意識はもう剣にしか回っていなかった。

 だから、俺が足元に合った石に気づかなかったのもそれかもしれない。』






俺の体が傾いたと思ったら、
顔面が泥に覆われて剣がどこかに飛んでいってしまった。。

自分が石に躓いてしまったのに気付くには時間を幾秒か必要とした。









大問題なのは、俺が彼女に対して背中を向けている事だ。







顔を上げて、剣を取ろうとしたが遠い場所にある。





( 嫌だ、
  俺はまだ死にたくない。

   嫌だ、
  いやだ、
   嫌ダ、
  イヤダ、
   嫌だ! )





俺は泥の中、
必死でもがいていた。



足が思うように動かないので、
匍匐前進していた。



剣が近い所にあるのに、遠い場所にある。
こんな気持ちをこの前も感じていた。

彼女の足音がゆっくりと聞こえてくる。
あの短剣ならば、心臓には届かないが致命傷を俺に与えられるに違いない。

俺だってトーテムを持っているが、
負傷した場所を雨に晒していたら当然、
治癒能力なんか駄目だ。





(こんな所で野ざらしで死にたくない、俺はまだ死にたくないんだぁあ!)




彼女が俺に迫ってくる、確実にだがゆっくりと。





彼女が『何か』を振り上げた――音が聞こえた。






怖い、怖くて仕方が無い。
いっそ開き直ろうかと考えているが、理性と『声』の存在がそれを止める。







その時だった。







「……○■▽ー。△□∀л◎ー、゜ヾーノ乍◇。」






緋色のマントの男の声が響いたのは。



To Be Continued……




後書き


まず、一つ宣言します。




私こと――hirumiは『「 」』を書き終えたら暫しの間、テキストプチ引退をします。





完全な引退ではないので、何時かはまた復活するでしょうが数ヶ月間は恐らく来ないでしょう。

理由としては、自分が納得出来るようなネタが全く思いつかないのです。
それからネタを詰めるのに時間が掛かるので、軽く数ヶ月は掛かりそうです……。


私のテキストを読んでくださる物好きな方がもしかしたらいるかもしれない。⇒それなのに、自分が出来る限りの文章を作らない。

少なくとも之だけは私は嫌です。
自分が納得出来るようなネタを見つけて作れるまでの休息期間とも言い換えられますかね。


……私はどこぞの古参である上に大御所のLADEN氏の様に長編が終わっても直ぐにかけるような人ではないです。


ここまで読んでくれた人なんか居ないと思いますが、
せめて宣言としてでも書き残しておきます。

それでは、また何時か。


ありがとうございました。
7662
「 」 Blank ――Zero volume―― by hirumi 2007/04/30 (Mon) 20:30
△up
レス/編集
 
You're welcome to "「 」 world"!

Why……?


It isn't Genuine story?


――Yes,it isn't Genuine story.
  But,it's Genuine story.


Well……I don't it unberstand,too.

Please feel it as you thought.



……It is a Extra volume.


Are you ready?




……OK?







 Let's   start.







      *      *      *







独りぼっちの二人は同じ壁を挟んで背中合わせ。





同時に溜息をして、


同時に独り言を呟き、


同時に愚痴を言って、


同時に上空を見上げて、


同時に地面に落書きをする。






二人は同じ、されど違う。






人生において歩みの速度は違う。
されど同じ。


人生において出会った友人は違う。
されど同じ。


人生においてぶつかった壁は違う。
されど同じ。


人生において挫折した経験は違う。
されど同じ。


人生において歩いた道は違う。
されど同じ。








二人は同じ――されど違う。










  「 」 Blank ――Zero volume――









――丘の上、男が佇んでいる。
  剣を持って虚ろな眼をしながら男は佇んでいる。
  打ち付けられる雨なんか気にもせずに、男は佇んでいる。――




  雨粒が、痛い。
  

  
  彼是何日間もずっと、
  俺は丘の上に立っている。

  近くの町へ行って――衝動をしたくなるが、
  剣で足に何度も深い傷を負わせることで抑える。

  本来なら行くべきなのだろうが、
  行ってはいけない事情がある。





  俺はおもむろに口を開く。
  小さく口を開く。





  その声は俺以外誰にも届かなかった筈だ。




  
  俺の周りの地面には大量の斬った跡がある。




  そう。
  何時の間にか、なっていた。




  俺は今から十分前の記憶が無い。
  十分前の俺がやっていた事といえば、
  真っ白い光景しか頭に浮かばない。




  曇天の空を見上げる。

  今は夜。
  本来ならば素晴らしき星空が見えるんだ。


  だけど、今日は何も見えない。





  愚痴を一つ、空に向かって言った。
  雨粒が何滴か口の中に吸い込まれていった。








  「あー、せめて死ぬ前くらいは綺麗な星空を見たかったなー。」






   


      *      *      *






とある場所にて、
角を生やした女性が浮かんでいた。
  
その女性の周りには三匹の動物が居た。


女性が蒼白い光の珠……
否、霊に両手で触れながらブツブツと怪しげな呪文を呟く。


蒼白い光が女性の両手を覆うが、
直ぐに消えてしまった。


肩を落として女性が溜息を呟く。



(今回もですかー。)
(何時、目覚めてくれるものが出るのだ。)
同時に鳥と犬が『喋った』。
いや、彼等は動物ではない。


トーテム、
限られた人にのみ力をもたらす動物の霊、みたいなものだ。



(このままだと、
災いを止めるのに必要な時間が『十五日』から『十四日』ですよ。)


すっと呼吸をした。

それから、




        のだ!
(一体、どうするんですかー!
        んですか! 




トーテムトリオが一斉に女性に対して突っ込みを入れる。


慌てながら寝癖が立っている女性が言う。

「いっ、今まではあれですよ。
 目覚められるんですが、どうやら確実に『トーテム副作用』が起きそうなので止めたんですよ。」
湿っぽい目でトーテムたちは女性を見つめる。悪い意味で。


目じりを少し下げて犬……の形をしたトーテムが言う。
彼の名前は言うまでも無いだろう。



(まぁ、副作用ならば仕方ないな。)



「だから、今度は生前はトーテムを持っていた人にでも挑戦を――」






激しい突っ込み、
いや文句が響いた。





      *      *      *



女性が蒼い霊に触れて文句を言う。






――意識の海に漂う、そこの貴方。私の声が聞こえますか?
  私はトーテムに呼び覚まされ、生命を導く者、リクレール。
  貴方がに降り立つ前に、幾つか教えて頂きたい事があります。



   貴 方 の 性 別 は 何 で す か ? ――







蒼い霊は答えた。




      *      *      *








    ――さてさて、ここから先は名も無き戦士の物語の始まり、始まり――









To Be Continued……


---------------------------------------------------


之は「 」の番外編……もとい主な視点が『男主人公』の物語のプロローグのプロローグ。
短くてすいません。それから昔書いたものを引用してすみません。orz

まぁ、昔書いたものは之を書くときのプロローグとして書いていたのですがね。
(まさか、物凄く下に落ちていたから急遽書いていたなんていえないよ!)

主な視点が『(ヘタレ)アルバート』の方では経歴やら年齢やら、
挙句の果てには名前が明かされない、
そんな彼にせまっていく物語といえるかもしれません。


先に本編を読むことを激しくお勧めします。


尚、上記の英語は雰囲気を出すために『エキサイト翻訳』に99.999999%頼った物です。
ですので、上記の細かい突っ込みに関しては

「いや、だって『エキサイト翻訳』だし。」と言い返しますので、ご了承を。



まぁ所詮、
之を読んでくださった方は精々一人でしょうがね。
7734
「 」 Blank ――Zero volume――  ver……3.23〜4.06+α by hirumi 2007/05/20 (Sun) 22:11
△up
レス/編集
 





私は覚えています。







私は、
はっきりと覚えています。








私は、
今でもあの口調を真似て言う事が出来ます。





男の成人へと実体化した霊が、
リクレール様に対して挨拶をした後、
一番最初に発した言葉を――









私は覚えています。









「俺なんぞに名前なんて要らないさ。」










という何所か物悲しげな声で言った彼の言葉を。





ですが、





今ではあの言葉が『物悲しかった』だったなんて私は信じておりません。








何故ならば――







「そんじゃぁ、スケールさーん。
そろそろ、いーかげんにムーの村へレッツラゴーしますかぁ。」



にこやかに笑いながら、
そう言う彼の身体はもうボロボロ。
私の脳が彼に対して眼を当てることを勝手に拒否しています。



えーっと、
頼みますから少しは状況を考えて発言をして下さいよ。



「好い加減、
回復理力を確りと覚えたらどうですか。
貴方の知力と意志なら治癒だけでも完全回復できますよ。」

彼の顔色を片目で伺いつつ、
口元に拳にした右手を当てて軽く咳払いする。

それから、
矢継ぎ早に説教を私は始めた。

「分かっていますよね。
私が最初の魔王さんの願いを有効活用したお蔭で、
今の貴方は一度も死なずに確りとこの地に両足で立っていられるんですよ。
それから、体の彼方此方に包帯を巻いている勇者。
即ち、『包帯だらけのままで魔王を倒した勇者』って格好良いと思いますか。
如何思うんですか、返事をしてください。」


急いで口を動かして言ったので、
言い終わったら呼吸が激しくなりました。


所で私が説教をしている間の彼は、
両耳を両手で塞いで顔をぶるんぶるんと振り回していたのです。

これに関しては、
一体如何すれば良いのでしょうか、リクレール様。



「あぁぁあぁー、もぅー、分かったよ。分かりましたよ、スケイル様。
回復理力がものっそい大切なのも良く分かりましたよ。
心底分かりましたよ、はい。」

と、やれやれという口調で彼が言いました。
何故か、両手が両肩の近くにあって小刻みに動いていましたが。

「でぇ、すぅ、がぁ、
男には男にしか理解できないものがあると俺は信じているんだっ!」

軽く曲げた右手の人差し指を私へ向けてきました。

いや、貴方は分かりませんか。
その格好では、どんなに格好良い行動を逆に無様に見えてしまうんですよ。

あぁ、こんな人の近くに居る私が恥ずかしい。


「従ってー、回復理力を俺が使わないのもその内の一つなんだ。
俺はこれを貫きたいと思っている。」

と、今度は人差し指をクネクネと動かす彼。

いや、貴方は分かりませんか。
その格好では、変な行動をするとより変に見えてしまうんですよ。


「まぁ、要はあれだよ、あれ。
 俺は回復理力を使いたく無いんだ。なんつーか、気分的にも性格的にも。」



「えーっと、
 貴方はそれだけを言いたかったんですか。変な行動を何度もしてまで。」

「うん。」






      *      *      *






リクレールさんが折角、
何時間もの時間を費やして選んだ結果が之ですよ。

性格は之ですが。

腕が強いのは確かなんですよ。
それは自他共に誰もが認めると思います。




唯、先が不安なのは事実です。
一体、今後も行く先にてどんなトラブルを起こすのかが不安で仕方がありません。

彼は一言で言うなら『雲』なんですよ。
手を伸ばしても掴めない、そんな人だと思うんです。


未だに彼の言動の理由が全く察せません。
少なくとも、彼よりは人生経験豊富な私ですが之だけはどうも分かりません。
……恐らく、彼の行動の理由の内の殆どが『その場のテンションのノリと勢い』何でしょうがね。



「彼が『災い』の原因を倒して、『災い』を止めてくれるのを期待しているか?」という質問があったとしましょう。

その質問への私の答えは、








``期待しています。``








という一文のみです。




彼はこういう性格でも意外と、
そう本当に戦果は上げているんですよ。


まぁ、私が出来る事といえば彼のサポートだけですがね。




      *      *      *

―― 尚、暫く経ってから
空を切り裂いた光がとある緋色のマントの旅人の頭上に落ちたのはあえて書くべきなのか書かないべきなのか。
我には分からないのだが。



――別にどっちでも良いんじゃないですかねー。
クロウが思う通りで良いと思いますよー。
そこまで考えるのならば、
後でリクレール様にでも聞いたら如何でしょうかね。



――聞く前に、スケイルに大変な目に遭うかもしれないがな。



――ですねぇ。


とある歴史書を書き途中の会話より抜粋。

      *      *      *











「 」 Blank    ――Zero volume――    ver……3.23〜4.06+α











      *      *      *




「で、スケイルさん。遂に四日目の夜明け前になりましたねー。」

と、能天気な声で言う彼。
全く、
ほんの僅かでも私の気持ちを考えてもらいたいものです。

結局、彼のボロボロの状態は余りにも危険なので、
わざわざ近くの山小屋に行って泊めて貰いました。

「分かっていますよね。
貴方が小屋の番人もとい【あの女の人】に何度も迷惑を掛けているのを。
今日だって、わざわざ夜中で急なのに泊めてくれたんですよ。」

私が声に力を籠めて言いました。





が、




「へいへーい、ちゃーんと分かってますよー。」


見事に受け流しして、
取り付く島が何処にもありません。

本当に、
この彼の性格はどうすれば真面目な方向へ転換出来るのか分かりません。

奇跡でも起きて変わるのなら、
私はその奇跡を祈りましょう。


「所で所でスケールさん。」
「私の名前はスケイルですよ。」

ピシャリと言い切ったものの効果は全然ありません。

彼は『真面目』という言葉とは、
無縁の位置に立っている人でしょう。


以前、私は『彼=雲』といいましたが正確に言えばこうでしょうか。

『一般人から真面目さを無くしてテンションだけを異様に高くした性格。』

今までの内、
彼が真面目になったこと何て一度もありません。





訂正します。





リクレールさんが意識の海で言い放ったあの言葉だけは真剣さを帯びていました。


「あのトーテム説明の時は今とは裏腹に随分と柔らかな口調だったのに、
今ではなんっつーか……こう堅苦しくて何か、
『取り付く島が無いというより、引っ込ませている。』という口調だと俺は思う。
そこら辺の詳細についてを簡潔に言ってくれませんかねー、スケールさん?」


綺麗な軌跡を描きながら、私は百八十度回転しました。
要は、私と彼は今背中合わせになっているんです。


振り向いたとき丁度、彼が何らかの声を上げましたが無視をします。




そのまま数分が経過しました。
彼はさっきの声から何一つ物を言いません。



『呆然・驚愕・衝撃』
この内の何れかに陥っているのでしょう。
……陥っている、
という言葉は変ですがね。



彼の質問に胸を張って言えることが一つだけ。

『必ず彼――貴方の脳内の辞書の中に『真面目』という言葉があれば、私の口調はここまで変化しませんよ。』


其れを何度も心の中で呟いて確認しました。

その間、何度も彼が私の肩を指で突いてくるのが非常に嫌らしく思えました。
仕方が無いので、ため息をしつつ振り向きました。



「いい加減、止めてくださ…………あっ。」



ため息が止まって、
脳がそれ以外を思考させてくれない。




「こいつぁ、凄いな。」




山脈の内、
最高峰の山の頂上から昇ってくる太陽。

山々の間から射し込む光が平原を覆いつくす。

草の色が薄暗い緑色から金色へと変化していく。




光と共に徐々に『それら』は目覚めていく。





全てが、





そう、全てが短いが長くて
長いが短い時より目覚めて、
再び動き出す――。






空気が大きく私達へと動いていく。





空気は私達に迫ってきて、
髪を大きく揺らさせた。


空気は半開きにしていた口に入って、
気管を通って肺まで抜けていく。




無言の時も同時に流れていく。




「一つ聞きたいことがあります。何で貴方は名前を名乗りたくないのですか。」




――私の声は彼の耳まで空気と共に流れたのか、流れなかったのか結局の所は分かりませんでした。



      *      *      *


風景に見惚れていた二人は知らない。


小さな村に一筋の光が落ちたことを。

光の中から背の高い一人の男が出てきて、一言呟いた。



「何処だ、此処は。」



その男の声は空気には全く乗らなかった。
声の波長、もとい言語が全く違っていたからだ。




      *      *      *


(意識の海の書庫に保存されてある『シルフェイド録……バーン暦五百年』より以下、引用。
 全てが手書きであり所々に落書きがしてあるのは、まぁ仕方が無いだろう。)



意識の海の片隅に作られた休憩所にて、
リクレールが険しい顔をしながら椅子の上で一つの小さな資料を読んでいた。


資料の右端に止められた金具が外れないように丁重に扱いながらも、
リクレールは短い間に何度も読み直している。


やがて、読むのを止めて目を瞑りながらリクレールは言う。





「何てことが。」


リクレールは唯でさえ疲れている。
運命の線の上では、
即ち予定上ならば生まれない筈の「ヒト」を地上に召喚させたからだ。

神ならば簡単だろう、
と言う人が居るだろうがそれは間違いである。
『世界』に存在する原子の量は決して変わらないように最初からなっている……筈だ。





そう、普通ならばリクレールでさえやらない。

だが、緊急事態が発生したからには仕方が無い。
そもそも、リクレール自身が降臨して『災い』の元凶を潰せば良い。

が、
本人曰くトラウマがあるらしく地上へはもう行きたくないということ。





その話は五百年前に遡る上に異様に長くなってしまうので、
此処では割愛しよう。





それ以外の大事な理由と言えば、
リクレールの容姿は地上にある「リクレール伝承記」という本に記してある点と全く同じであるということか。

人々が五百年前の伝説の『少女』が再び降臨したと知り、
良い意味でも悪い意味でも大騒ぎになる。
その上にリクレールに付いて行く者が多いだろう。




となると、『災い』の元凶を排除するまでに幾人の人が死に逝くのか分からない。




そうなると、
『災い』から人々を救う為に地上に降りた意味が無くなってしまう。

``人々を救う``というのが目的であるのに、
目的を達成する前に大勢の人が逝ってしまう。
それだと、大きな矛盾が起きてしまう。
従って、
自分の代わりとなる「ヒト」を派遣させたという手段へとなったのである。



さて、話を元に戻そう。



急いで、リクレールは休憩所を出て行った。
その時、金具から一番上の紙がとれて落ちていった。



その紙が之である。


【リクレール様への緊急報告書 その一          報告者:フェザー


 バーン暦五百年、×月○日。天気は晴れ。午前六時(夜明け) ムーの村。

 今まで起動していなかった『タイムマシン【旅の扉】』が起動。
 当時は村人はほぼ起床していなかった。
 朝早くから【旅の扉】を掃除していた老人一名は除く。
 起動と共に別の時代から人がやってき、同時にまばゆい光を【旅の扉】は放った。
 尚、男の体型は次の報告書を参照。



 追伸:所で、何時になったら休ませてくれるんですかー?、リクレール様。】


尚、その二からは現時点では入手していない。




――それはそうと、我も何時になったら休ませてくれるのだ?


      *      *      *






何時もと変わらぬ平凡な日常という透明な純水が入った水槽の中に、
一滴、二滴とインクが零れ落ちる。






普通ならばインクは素早く広がってしまう。
しかし、今回はどうなる事か。


私が出来るのはインクを私の両手で出来る限り堰き止めるだけ。
しかし、インクは私の手をすり抜けてしまうから出来ない。


がむしゃらに水槽の中を『彼』という新たなインクで掻き回してはいけない。
最終的には、
混合したインクの海となってしまうかもしれないから。
しかし、もしかしたら大丈夫かもしれない。


私は彼がインクを止めてくれると、インクを堰き止めて最終的には元の純水へと戻してくれると、期待しています。
しかし、本当に彼で良いのか今でも悩む。



インクの成分を分解して大気中に戻して純水に出来るのでしょうか。
しかし、私は彼がやってくれると信じている。






ここで私はふと思う。何で、このような考えをしているのだろうか。
行動すれば良いのでは無いかと思う。





しかし――私が出来ることは唯、祈るだけ。非常に歯痒くて仕方が無い。







To Be Continued……


---------------------------------------------------
(何時もより長すぎるあとがき)



はい、途轍もなく遅筆なhirumiです。



唯でさえ、ヘタレ底辺なテキヌト書きなのに遅くては取り柄がありませんね!
文章力レベルが「−」で、量も遅い割りには少なすぎですね!

昨日、無事に誕生日を迎えました。今年の誕生日プレゼントに『文章力』が欲しかったですが、誰もくれませんでした。クリスマスにサンタクロースから奪いたいです。

本当は誕生日に投稿したかったんですが駄目でしたね!
流石自分というか、なんというのか。
もう、どうしようもありません。

が、今後は一週間に一度は投稿する……してみせる……出来るようにしたいです。
あー、もう駄目ですね。

(ここから先は殆ど愚痴が入っています。注意してください。)

★  ☆  ★


所で、新たなチャットと新テキスト掲示板が出来ましたね。
正直言って、テキヌトよりチャットのほうが百倍『いろんな意味で』有名な自分です。


いやー、多目的チャットは色々と懐かしかったです。チャット開設して間もない当時を思いださせるような雰囲気でした。

それはさておき、新テキスト掲示板。





自分にとって見ればコッチのほうが使い易いです、というより使い易過ぎです。





10kbごとに次のページで区切りが分かりにくいって何ですか!?
文字が大きすぎて一気に読めないって何ですか!?


何よりログが落ちないって何ですか!?
唯でさえ遅筆の自分が更に遅筆になりますよぉぉお!?


ここら辺で暴走は止めておきましょう。



コッチのテキスト掲示板は慣れれば物凄く使いやすい、逆に慣れなければ苦戦。
向こうのテキスト掲示板はタグが使える上に感想を書く場所が分かりやすい。ただ、コッチで慣れた人にはキツイかも知れない。


というのが私の見解です。



兎に角、私はコッチのテキスト掲示板に慣れた上に物凄い愛着を持っているので、ここで隅っこでチミチミとこのシリーズは投稿します。




さて、この辺で今回は終わりにします。
呼んでくださり、有難うございました。
それではまた何時か。
7826
「 」 Blank    ――Zero volume――    ver……5.04〜5.08+10.16〜10.24+β by hirumi 2007/07/29 (Sun) 20:44
△up
レス/編集
 
私は音を立てないように気を配りながら少しだけ部屋の扉を開けた。

出来た間に首を突っ込んで辺りを伺う。

「誰も、というより彼は居ませんよね。」
と、小声で言ってから首を引っ込める。

自分の体が通り抜けられる分の隙間を作って、
体を上手く使いこなして潜り抜ける。

無事に廊下に出られたと安心して、胸を撫で下ろす……のも束の間、下手したら彼に見つかる恐れがある。
より一層に緊張しなければいけないと言い聞かせて、私は息を殺し始める。


抜き足、差し足、忍び足で廊下を静かにある一定方向に歩いていく。


(それにしても、どんな仕事を引き受けたのでしょうか。
 全く、私を除け者にしてさっさと話を進めるんですから。
 
 まぁ、彼がわざと私を除け者にしていると気付いていたのに、
 気付かない振りをしたさっきの私も私ですが。)

と、心で呟きながら。



そう、私がこうしているこの目的が彼が一体どんな仕事をやっているのかを知ること。
それに、彼がどんな騒動を巻き起こすのか判りませんし。




廊下の奥に着いて、引き戸に耳を当てる。
中からは喧騒が聞こえてくる。




息を大きく呑む。




私は廊下の奥にある引き戸を丁寧に開ける。


そこはこのサーショの街で一番大きな酒場。
しかも、今は夜の真っ盛りと一番酒場が繁盛する時間帯。
故に、店内は予想通りながら騒々しいこと。


酒場の中に入り込んで、壁にもたれかける。


私が僅かな異変に気付いたのは数十秒経ってからのこと。

普段は各々が卓について思い思いの話をしていて店内では店員さんが慌しくしています。





が、今日は全く違う。





誰もが何かに向かって称賛の言葉を飛ばしている。
それに、今日は満席御礼と言った所でしょうか。


その言葉の間から、聞こえてくるのは――、









「ピアノの、旋律。」








酒場の隅に置かれてあるピアノから次から次へと生まれていくのは、整った音の群れ。




音の群れが一つの旋律を紡ぎ、
旋律が更に群れていくことで一種の芸術をも生み出していく。


全ての音が自らを主張しあっているのでは無く、
他の音を補いながら突き進んでいく。


音が凄まじい勢いで私の耳を通過する。
この酒場で、テンポが異様に速い曲が演奏されている。

唯、聞き流しているだけの人には気付かない。
そんな目立たない間違いも何一つ無い。




正直言って、私は彼が現時点において演奏している曲は全然わかりません。
何かに引き込まれていくという感じだけはする。






このピアニストはかなりの腕前を持つ方でしょう。








激しく疾走感に溢れる軽快なその曲は、
息をつく暇も無く終わってしまった。


私の口は何時しか半開きになっていた。
が、そんなことはお構いなく私は拍手をし続けていた。


何としてでも、私はそのピアニストの顔を是非とも拝見したかった。
遠くから演奏を見る限りだと凡そ二十歳前後の活発な青年と思われます。


彼とは大違いですよ。
彼もああいうような人だったら良かったんです。

そうしたら私も手を焼かずに気楽にいけたんですが、はぁーっ。




ピアニストが壇上から降りて、挨拶をする。




「えー、ゴホン。皆様。
すさまじーく下手糞な俺の演奏を聞いて下さって誠に有難うございました。」







私は卓の間をすり抜けて、彼に向かって歩いていきました。





      *      *      *












「 」 Blank    ――Zero volume――    ver……5.04〜5.08+10.16〜10.24+β












      *      *      *


【以下、とある人の冒険日誌より原文のまま抜粋。】


世界一周の旅  4日目・夜〜5日目・朝
とある日の早朝にの広大な湖の周りのほとりにて。



それにしても、今日は色々と大変だった。
もしも一人だけで例の場所へ特攻したら、死んでいたかもしれない。
想像するだけであーコワいコワい。




その森は存在感を見せ付けるかの様に聳えていた。
正直言って、オレは初めてこの森に入る。
親父からは何度も聞かされていたが、まさかあそこまで凄かったとは。

ひえー、思い出すだけで鳥肌が立つ。


オレの様な『自称』冒険者達の間では、
悪い意味での愛称が数多く付けられてある森だとは知っていた。

愛称としての例は、
「心臓破りの森」とか「モンスターハウス」とか「生と死の境界線」等々。

まさかまさか、あそこまで恐ろしかったとは。

そん所そこらじゃお目に掛かれない火を吹く蛇や巨大な鳥、
何か特別変異で変わったとしか思えない狼やら何やらが大集合と如何考えても、
魔物のオールスター大集合で俺は荷物を持ったままずっと逃げるだけだった。



それにしても、オレは運が強いというのか何というか。
例の森を抜ける前に、ムーの村で食料調達をしようと行って良かったな。

アイツに会えてお陰で、今オレはこうして少なくとも冒険日誌を書けている。





生きていてこうやって書けていられる。
それだけでも十分に凄いとオレは思う。







『生きていられるって、素晴らしい。』







この旅でオレが学んだ一番重要なのはそれだろう。
旅を始める前も脳内では理解していたつもりだけどさ、
やっぱりこうやって身をもって知ることって大事なんだなぁ。




最初、この旅を計画した時は今のオレでは無茶だと思っていたが、
意外と大丈夫かもしれない。
いや、大丈夫だと信じる。

それはそうと、昨日の夜も緋色のマントの人と『スケイルさん』が焚き火をあたりにきた。
うんうん、之はちゃんと毎日書かないとな。



そういえば緋色のマントを何時も羽織っている人の名前って一体、





何なんだ。





結局、一度も名乗ってくれていない。
そこまで名前を名乗ることが嫌いなんだろうか。
とりあえず、考えても分からないんで放置しておくか。


あっー、それにしても今までずっと大事なことを書くのを忘れていた。



だけど、このページの行数が後五、六行しかない上に丁度区切りが良いから、
次のページへ書くことにするか。




【以下の空白の数行に渡って薄い文字が書かれてある。
 読み取れた部分のみ抜粋。

 『よ  く、5 目。
   日目 は ー   へ着け  ?
  後 し、
   少 で   無 もはら るだ う。』

所々ノートの下部は水滴が垂れた跡が残っており、
滲んでいる為に薄く書かれた文字の半分以上が読めなくなっている。
尚、次のページが何者かによって乱暴に破かれた為に解読不能。】






――それにしても、このノートは何処から入手したものなんですかねー。


――それは、気にしてはいけないお約束ですよ。(ブチブチ)



(抜粋……『シルフェイド録……バーン暦五百年』より。)



      *      *      *





「眠いっ。」



と、大声で叫びながら、
俺の上に掛けられてあった毛布を蹴っ飛ばした。

足に全ての力をこめて吹っ飛ばした毛布は、
見事に壁に当たって崩れ落ちた。

拾うのが面倒ので、
気付いていない振りをしてみる。
うん、振りをしている時点で気付いているんだけどね。


今の俺の体の状態を簡潔に言うならば、「眠い」。
「眠い」という言葉の以上でも以下でも無い。


口を開けたら、
欠伸が五回連続で出てきそうだぜ、コンチクショー。


『トーテム所持者は眠らなくたって大丈夫。
だって、トーテム所持者だもん。』


と、以前そうやって力説していた俺自身が恥ずかしく思える。

しかし、何だ。
起きた時の第一声が「眠いっ」って一体何ですか。
見事に矛盾していますよ、俺。

そういやぁ、
以前は昼飯を食い終わった直後なのに
「あー、お腹空いた。」って大きな声で叫んだなー。

その後に頭をはたかれたな、スケイルに。


このまま、二度寝でもしようかと思ったが流石にそれは不味い。
恐らくスケイルが短剣を振るいながら俺を追いかける羽目になりそうだ。
よし、二度寝は止めよう。
偉いぞ、俺。



何やら外から雨音が聞こえたので
軋んだベッドの上から寝ぼけた眼で枠付きの窓越しに外を眺めてみる。









降っていたのは、やはり雨だった。









「今日もまた雨、か。」






胸の奥から全部の空気を吐き出した。




俺は何時まで経っても部屋もといベッドの上から出て起き上がらなかった。


だから、スケイルが俺の客室に突然入り込み『祈りの短剣』を振りまくるまでの間。





何故なら、外の景色をずっと見ていたからだ。







      *      *      *





「あー、スケールさんが俺をもう少し早く起こしてくれれば、
大切な大切なシルバが俺の元から消えていかなかったのに。」

と文句を呟き、
尚且つふら付くながら歩いて行く彼。

「全ては二日目に貴方が
『トーテム所持者は眠らなくたって大丈夫!』って言ったからですよ。
私はその言葉を信じたんですよ。」


彼はぼんやりと遥か空の彼方を見ている。
心成しか、彼の眼に光が宿っていない。

眼に光が僅かしか宿っていないのは何時ものことですが、
今日は光その物が宿っていません。


やはり、昨日のことがトラウマとなっているのでしょうか。

アレが原因で、
起きていても布団の中にずっと潜っていた……と考えるのが。
それなら、本当に彼には悪いことをしましたね。



「いやー、昨日さー、布団に入ってからさー、ずーっと羊を数えていたんだよ。
何処までさー、数えたらさー、眠くなるのかってさー、幼い頃からずーっと気になっていてさー。
結局さー、三万九千七百五十二まで数えた時にさー、
突然さー、スケールさんがさー、怪しげな物体Iをさー、振りながらさー、突入してさーきたからさー、
目標のさー、五万のさー、達成がさー、
出来なかったんだよ。」



前言撤回。
この人は悩みなんか抱えていないでしょう。



今までも、これからも。









「……というのは冗談だ。」










―― その普段よりも半オクターブ低い彼の言葉は


        空耳だったのか、

    風の気まぐれだったのか、

   単なる思い込みだったのか、

    それとも真実だったのか。




      私にはさっぱり分かりません。




そう。
彼が一番最初に発した




「俺なんぞに名前なんて要らないさ。」




という言葉と同様に。――






彼は目を地面に向けながら私の方向を向いた。
その状態のまま彼は片手を柄に伸ばし、半分だけ剣を抜いていた。




私を貫き、射抜き、噛み殺す眼。

普段の死んだ魚の眼は何処にも存在せず、
そこには戦士の眼しか無かった。



驚きの声が、



喉に詰まって出てこない。





いや、呼吸が出来ない故に発声できないかもしれません。


銀色の何かが私の近くを弧を描いて飛んでいくのを目で追う。
それを剣だと認識したのは数秒後のこと。



重低音をたてて、
銀色の剣が胸に刺さったトカゲの兵士の死体が地面に落ちる。

トカゲの兵士の胸が、
ちっとも上下に運動していないことから死んでいるのは明らかです。


祈りの短剣を服についてある大きな胸ポケットから取り出して、
彼に顔だけ向けました。


彼の眼は普段の眼に戻っていて。

「敵襲っぽいですぜ。スケールさん。」


間の抜けた声でそう言いました。


私は胸を撫で下ろして、
ようやく呼吸をして体勢を整えました。




      *      *      *





たかだか、五日。





されど、五日。




五日とは何だろうか。
日が昇り降りした回数が合計五回終わった日のことではないか。

それはさておき、
漠然とした五日間という物を電卓を用いて目に映る物にして表してみよう。


五日を時間に直すと、百二十時間。
五日を分に直すと、七千二百分。
五日を秒に直すと、四十三万二千秒。


数字で表してみると、
五日は意外と短くて意外と長いのだ。

今、この時でさえ刻々と一秒が刻まれていく。
一秒の差は日常的に気にしないことが多い。
否、日常でも試験中とか大切な〆切の前日とかで、
切羽詰った時では大いに気にするだろう。


一秒を六十回数えると一分になり
一分を六十回数えると一時間になる。





やがて、何時しか時計の短針が二回転して日付が変わってしまう。




その五日の内、
大体の場合は四分の一から三分の一を睡眠に費やしてしまうのが、
欠陥を多く持っている我々人間だ。

それに、生存の為に食事だってしなくてはならない。

更に技術が発達している地域に住んでいる人間だと、
洗顔、歯磨き、洋服選び、掃除、洗濯、料理など等
様々なことをする。


五日分の【睡眠時間】と【その人にとっての最小限度の行動】の和をもとめ、
五日から引いて残った時間がその人の自由時間だ。

それに、
自由時間の半数以上が前々から決まっていた予定だろう。

しかも、自由時間にやらなければいけないことや、
計画を立てていることを思い出して行動したりもする。


それらを考慮してみると、
手元に残る実際の自由時間は雀の涙程度だ。

だが、その雀の涙程度の時間を手に入れようと、
必死になるのも人間だ。


そうして手に入れた自由時間は十人十色の用途に使われる。
その時間はその人にとって大きな厚みを持つだろう。





五日間とは誰にとっても大切なのだ。





今更であるが、此処で考えの方針を変えてみよう。

人間という種族は大抵の者が二十数年以上は生きる。
では、一人の人生においての五日間は一体どの位を占めるのか。

ともすると、今度はかけていくのではなくて、
割っていくことになる。

では、実際にやってみよう。
一週間に占める五日間は約七分の五.

一ヶ月間に占める五日間は約六分の一。


三ヶ月間に占める五日間は約一八分の一。



半年間に占める五日間は約七十三分の二。




一年間に占める五日間は約七十三分の一。





五年間に占める五日間は約三百六十五分の一。






十年間に占める五日間は約七百三十分の一。







二十年間に占める五日間は約千四百六十一分の一。








一人の人間という個体が、
一般的に大人として認められる期間は大抵二十年間だ。

その二十年間に占める五日間は約千四百六十一分の一しか占めない。
之を百分率で表すと、約六,八十四パーセントといった所か。






五日間は、人生においてほんの少ししか影響を与えないのだ。





まぁ塵も積もれば山となると言う。


が。


その五日間を過ごしている時は
「この五日間は後の自分の人生に影響を与えるだろう」
等とはほんの僅かも考えないだろう。

以前も言ったが、
受験や試験・結婚及び離婚に出産、それに家族や知人の死去
等と『道』の大きな分岐点は除く。










たかだが、五日。






されど、五日。










故に、








五日間を決して舐めることなかれ。






      *      *      *




湿った木の扉を勢い良く開けて、
衣服から滴る雨水やら宿屋の酒場の状況を気にしないでずかすかと入る彼。

その上に、足を少し折り曲げながら
「つー、かー、れー、たー。」
木で出来たカウンターの所に顎を乗せる彼。

金を支払ってサービスを受ける側としてでも、
幾ら何でもそれは無いと思います。

それに宿屋の受付の方だって困惑していますし。
行動をする際に時と場合を考えるのが普通ですが、
何故この人はそれを考えないのでしょう。


全く。既に呆れていますが更に呆れてしまいますよ。


「此処の場所、分かってますよね。」

少し気の抜けた声で彼は答えた。

「あったりめーだろ、サーショの町の宿屋に決まってんだろ。」

その彼の頭を片手で押しのけるようにして、
受付の方と話し始めました。

後ろで彼が何か文句を言っているようです。
ええ、それは何時もの様に無視をします。

引き攣っている営業スマイルをした受付の女性に目をあわせる。

「この人は存在そのものを放置、寧ろ無視して下さい。之が普通なんで。
えーっと、一人部屋を二つで一泊したいのですが、どの位でしょうか。」

そう聞くと、彼女は唐突に笑い始めて私たちの顔を交互に見ました。
それから、笑いながら一言を発した。

「ダブルの一部屋じゃなくて良いんですか。」

キョトンとしている私に対して、
彼は何かに気付いたかのように目を少し上げて、
おもむろに言いました。

「あぁ、あれだ。俺達は恋人同士なんかじゃない。
あれだな、寧ろ好敵手……スケールしゃーん。
一体、俺たちにはどういう言葉がドンピシャになりますかねぇ。」

答えてみる前に彼の頭を数度ほど叩いてみる。
叩いていく内に彼の不機嫌な独り言が耳に不協和音として入ってくる。


ああ、この不協和音は耳に障る。


「私に振らずに、自分でそんなことは考えて下さいよ。
それより、お金を出してください。
お金の管理は貴方なんですから。」


渋々と立ち上がって彼は懐から小さな布袋を出した。

それを乱暴な手つきで片結びされた紐を空中でほどき、
その中に静かに右手を突っ込んで銀貨を探し始める。

彼は最初、間抜けている普段の顔で探していました。
しかし、見る見る内に彼は焦って行く。

妙なことに、銀貨同士がぶつかり合う音が全然聞こえてこない。
所謂、金属音と言うものでしょうか。
そうそう、あの歯切れが良い音がさっぱりと。

となると、考えられる原因は一つのみ。





えっ、ちょっと待って下さいよ。
私の思考回路は絶対に可笑しい。
いや、そうとしか考えられない。
ともすると、彼は。






まっ、まさか。







「スケールさん。それに、宿屋のねーちゃん。」

と彼は空笑いをし始めた。
間を数秒ほど空けてから、彼は布袋を逆さにした。
あっ、当然カウンターの上にですよ。


常識的に考えれば、
中から少なくとも手足の指では数え切れない程の銀貨、ことシルバが出てきます。
倒したトカゲ兵から奪った金品を売っていましたから。
一つの金品は結構な値段で売れるんですよ。

ですから、本来なら大量のシルバが中から出てくるんですよ。
ええ、本来ならばそれこそ大量の。





――布袋の中から落ちて来たのは一枚の何か。
  小さく虚しい音が落ちた瞬間に響き渡った。
  木製のカウンターにそれは目に見えないへこみを作った。
  私はそれを右手の人差し指と親指で、ひょいっと摘み上げた。





「いっ、一シルバ硬貨。」





という私の言葉を境にして私達の間に沈黙が訪れる。
実質的には彼が一人で空笑いをしているので沈黙ではありません。

彼の笑い方は今にも死にそうで呼吸のみで笑っているんですよ。
気味悪くて背筋が震えています。



兎に角、今日は此処で寝泊りできません。
たかだか一シルバで寝泊りできる場所なんか存在しないでしょうし。

となると、久々に野宿になりますね。
寝ている間に、野犬の襲撃に遭わなければ幸いなんですが。

「済みませんが、この通り何処かの誰かさんのせいでお金が無いので。」
「あー、ねーちゃんに話があるけど。ちょっち良いかな。」

彼が割り込んできて、私の顔を暫し見つめた。
唐突に私の額に指差して、そのままトイレを指差した。


「スケイル、額に塵が付いているぞ。」


その言葉の裏には、

「あー、スケイル。ちょっと邪魔だから退いてくれないか。」

というのは明らかに目に見えています。


私を除け者にして怪しげな会話を行うのでしょう。
仕方がありません、腑に落ちませんがトイレに行きましょう。



廊下の引き戸に手をかける際に、私は何回か後ろに振り向いた。

仲良く話している二人を少し羨ましげに思いながら。



      *      *      *



「それにしても、俺があん時にピアノを弾いていることがバレルとは。
最後の締め位、ちゃんとやりたかったのによ。乱入して必要は無いと思うんだ。」


等と、傍目から見るとものすんげぇ痛々しい独り言を呟きながら暗闇の洞窟の中を駆ける。
そうでもしないと、何かに押し潰されそうな気がしちゃうんだよ、どうしても。
って、之も独り言じゃねーかコノヤロー。

この洞窟を通ったのは二回目だから今回はセタさんと戦わずに済んだのは良かった。
前回は散々迷った挙句に最後の最後でキツイ戦い。


あれは、どう考えてもナイぜ。
きっと何者かが俺を精神的にも肉体的にも殺そうと企んだに違いない。

って、これもナイな。
それから、やっぱり之も之で痛々しいな。はぁ、何で俺は痛々しいのでしょうか神様。


それと、神様。俺がちゃんと己を知っているのならそれを直せば良いと言わないで下さい。
もう、この性格だけはどーしよーも無いんで。



「それに、お前らもいい加減に襲ってくるんじゃねーよ。」

と、目の前に現れた数体の骨の塊で出来たトカゲの亡霊に言い放つ。


一体目は骨の繋ぎ目の間を真横に力を入れずに斬った。
んで結構高く前に飛んで、さり気なく集中し始める。


自由落下の地点に二体目が居たので、
落下の速度を利用して頭に突っ込――まずに頭だけを蹴って再び空へ舞い上がる。


いや、天井があるからそこら辺は考えているけどね。
俺が下降し始めた時に、体を半回転捻って両手を突き出す。




「くらえー、渾身のぉー衝撃のぉー。」
やっぱ、俺の頭は異常が多いな。既に、『衝撃』って言ってやがる。



両手から衝撃が発射されてから、
コンマ数秒後に華麗に着地して再び駆けて行く。



わざわざ確認しないのは、全部倒れているはずだからだ。
多分。



(あー、時間がちゃんと間に合うのだろーか。
日付が変わるまでには奴さんにご対面出来るか不安だ。)




ちなみに、
階段を通り過ぎたのに気付かずに俺が再びループにはまってしまったのを秘密にするのは、
お兄さんとの約束だぞ。



      *      *      *



「着いたな。」

バーンと聳え立っている封印のウンチャラにようやく着いた。
あぁ、俺はようやく判ったよ。そう、星空がこんなに美しかったなんて。


「さてと、俺は急いでいるからさっさと要件を済ませちゃいますか。」
と、封印の石版とかいうブツを無視して階段を下りる。

扉の封印は最初に来た時に解いているから、
単純に扉を開けていくだけだ。


ちなみに、リーリルの近くにある砦からも行けるけれど、
俺はあえてやらなかった。



だってさっ、
単身で洞窟を抜けていくってなーんか格好良いだろ。


俺がやると別に格好良くないと、
それが当たり前だと『彼方』はおっしゃるのですね。

あっそう、別に良いさ。


別に良いさ。



別に、良いさっ。



洞穴の奥にあったもう一つの階段を下りて行く。
この階段は結構長いな。

最初に来た時は砦との通路を切り開いたのと、
奉られている武器や防具を奪っただけだったからな。
之を下りるのは生まれて初めてだ。



階段を最後まで下りた瞬間に、悪寒がした。



剣をおもむろに取り出してみる。
尚、剣先は地面と接触しているんで一本の半直線を画いております。



それから、俺はそれこそ久々にご対面した。魔王さんと。











「お久しぶりだな、魔王さん。じゃなくて、サリムと呼んだほうが良いか。」






剣を確りと握り締める。
今や魔王となったサリムは俺に激しい敵意が宿った目を向けてきた。






何故か、悲しかった。




「そうか、もう其処まで進んじまったのか。
ははっ。サリム、お前なら今でも大丈夫だと信じていたのにな。」


俺は剣をサリムの目に向ける。



「悪く思うなよ、サリム。もう時間がねぇんだ。
さっさと事を片付けて、ある用事を済ませないといけないんだ。」




何故か、両手両足が小刻みに震えている。
駄目だぞ、俺。
脳内を全て戦いにシフトしなければ行けないんだ。

そうだ。
俺はクールに、冷静にならなければいけない。




絶対零度の如く冷血になり、
この戦闘限定で残虐にならなければならん。









――         私は剣なりき。         ――








――         私の存在価値はそれ以上でも、
         それ以下でもなくて剣そのものである。         ――
――       私は氷の矢を通さない氷の盾をかざし
        氷の剣を持ちて、相手の熱き心を射ぬかん。         ――









――                  そう。                  ――




















――             私は全てを断ち斬って無へと返す為にあるのだ。           ――



















「いざ、尋常に参ろうではないか。サリム。」


私は、その一言を言い終わると同時に呪文を詠唱し始めた。





そして――






      *      *      *




さてさて、此処で名も無き戦士のお話は終わり。


というのは、実は嘘だけど本当だったりする。
うん、この矛盾を正当化する為にちょっと屁理屈を言ってみる。


まず、「嘘」というのは
「あくまでも、付添い人から見た場面が多いので実質的には『名も無き戦士のお話』とは限らないこと。
 それと、実はまだ『名も無き戦士』についての大事な部分が明かされていない。」


「本当」というのは
「内容のまんま、『名も無き戦士』のお話だから。」


この言葉をどう受け取るのかも、全ては彼方次第ね。




私は、やっぱり「嘘」でもあるし「本当」だと思う。
そうじゃないと、面白くないでしょう。



      *      *      *



「百害あって一利なし。」ということわざがある。


意味は言葉通り。
利益は何も無くて、大きな損害を被ること。

故に、人はそれを無意識の内に嫌がっている。


逆に、もしも「百利あって一害なし。」ということわざが現実に存在していると仮定してみる。
そうすると、損害は何も無くて、大きな利益を得られるので人は大喜びするだろう。




現実は物語っている。
ことわざの中で「百害あって一利なし。」があるのに対して「百利あって一害なし。」は無い。

そこから、
``どんなに完璧な物や事柄でも必ず目には見えぬ小さな欠陥が生じている。``
等と読み取るのは容易でしょう。



ええ、『使用』者に様々なる恩恵をもたらしてくれるトーテムもそうなのです。
良い事尽くしに見えるトーテムも一つだけ欠陥があるのです。

トーテムにある欠陥は薬でいうならば副作用でしょう。
その副作用は薬とは違って無作為に起こるものではなくて、
ある条件化によって起こるもの。



ちなみに、その条件は二つあります。
ただ、如何考えても両方とも稀にしか条件に当てはまらない。
ので、今まで私は知らない振りをしていました。






運命とは恐ろしいものです。
女神である私ですら把握出来ない。



そう、その条件を満たしてしまった人が最近になって突如して一人現れたのです。
しかも、両方の条件を満たしてしまっている。





何らかの対処を打たなくてはいけないと、「私」は告げている。
しかし、今の私は何も出来ない傍観者にしか過ぎない。






歯痒いというレベルを通り越して、苦しい。
胸が苦しい。







ごめんなさい。

ごめんなさい、ごめんなさい。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……。







空気に向かって謝ることしか出来ない。
そんな私はそこら辺に居る無力な人間よりも格が下に違いないでしょう。


To Be Continued……


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おそがき


遂にやりました。二ヵ月振りの投稿です。
前回に「一週間おきで〜」云々と言ってた自分は馬鹿ですね。
此処まで遅筆だともう立場がありませんね。

そして、今回は今までの中で一番長いでしょう。多分、恐らく。
二十三,四kbで行数が千四百弱です。


というより、異様に長いので見難いですね。
しかし、分けて投稿すると微妙なところで分かれるので面倒臭い。
どうしようもありませんね。


そして、之をもって再びアルバ編に突入していきます。
尚、アルバ編が終わり=「 」が終わりとは現時点では限らなかったりします。
色々と書きたい所が多くなったのでアルバ編でエンディングにならない可能性が強いです。
まぁ、「 」シリーズとして投稿し続けるのでしょう。

下手したら、「 」全体の容量が三百kbを超えそうで怖いです。
(今は百八kb弱)

まぁ、気ままにポチポチとやっていくので暇人な方はこれから宜しくお願い致します。
7991
「 」  Sixth volume by hirumi 2008/04/26 (Sat) 23:59
△up
レス/編集
 

彼女が剣を落とした音が耳に届いた。

それから、彼女は突然現れた奴に向かって大声を張り上げた。




震えて力が入らぬ手に僅かだけ残っている意識を注いで、俺は立ち上がろうとする。


その頑張りの成果が現れて、上半身だけは地面と接触しなくなった。
しかし、掌に力が回っているせいで足にまで力が入らない。




故に、俺は立ち上がれない。





――よっ、お久しぶりぃー。おみゃーさんは元気ですかー。――



少しは頼むから俺の状況を察してはくれないか。
何処からどう見ても俺は全然元気ではない。

もしも喋る気力があるのならば、
その気力全てを使ってでも立ち上がり、
此処から直ぐにでも逃げるだろう。



顔だけ上げると目の前には、
黒くて実体が無く陽炎の様に揺らめいている何かがあった。



俺は直感によってそれが『声』であると体で判断して、
無意識の内に細い声で



「今の俺を見れば分かるだろ。」


と乱暴な口調で言い放った。

だが、
実は頭では未だに判断出来ていなかった。



難易度が高い知恵の輪を解いているのと同じ位、いやそれ以上だろう。
その位、今の俺は頭の整理がついていない。



冷静に物事を整理したり考えようとしても、
直ぐに頭に血が上ってしまう。

そもそも、俺はさっきまでの様に「何かに対して熱血になるタイプ」では無いと、
自らをそう認識している。


此処は精神を整えて、
来るべき二人の敵に立ち向かうべきではないのだろうか。


ならば、俺は冷静になれと自らに念じ続けよう。





(冷静になれ、冷静になるんだ。)
『冷静になっている暇なんぞあるか。
 そんな暇があったら全力で此処から逃げる方が良いだろ。』

(落ち着け、落ち着いて状況を把握するのが先決だ。)


『もしもだ。
 その把握をしている時に二人組が俺を襲ったらどうするんだ。
 いや、最早もしもじゃなくて確実と言い換ればよいな。』



(黙れ。今の俺はどのタイミングで逃げるかを場の雰囲気から読まなければならない。
 もっとも、あの二人が話している内容は理解できないがな。)




『今更、空気を読まなければならない理由はあるのか。
 空気を読んでいられる程、心にゆとりがあったのな。』





(五月蝿い。何故、俺が落ち着こうと決心したその時にお前はそう言うんだ。
 いや、どうしてお前は俺の心を揺さ振って冷静にさせてくれないんだ。)
 





『よく考えるんだな。どっちが正論を述べているか。』







(その前に、お前は何者だ。例の『声』とは全然違うな。
 また、新たな『声』なのか。
 答えろ、返事をしろ。
 返事を今すぐにしろっ。)








『俺はお前さんが言っている「声」とは別物だ。
 それこそ頭を冷やせば直ぐに分かるだろうな。』





      *      *      *





何度、謝れば貴方にその声が届きますか。                    何度、謝ればお前にその声が届くんだ。



どうして、私は気づかなかったのでしょうか。                  どうして、俺は気づかなかったんだ。



もし気づいたとしても、私は一体どうしたんだろう。               もしもだ。俺が気づいたとしても、俺は一体何をしたんだろうな。



「何をするのか想像がつきません。」                      「何をするのか想像がつかん。」



と、最初は思いました。                            と、俺も最初は考えた。



しかし、そうとは違う気がしてきました。                    だが、どうやらそうとは違うと思い始めている。



あくまでも、何と無くですが。                         所詮、憶測にしか過ぎんが。





      *      *      *





頭を冷やそうとしても全く頭が冷えないばかりか、
もっと血が上った俺自身に俺は呆れた。


馬鹿馬鹿しい、
冷静になるほうがどうみても先決だ。本来ならば。
深呼吸を何度もしてみる。




よし、心の準備は大丈夫だ。
さぁ、何処からでもかかって来い。


俺は剣を構えて、鞭を打って立ち上がった。













プッツン。













ついさっき聞いたばかりの効果音が再び聞こえた瞬間、
俺が把握している全ての世界が光と闇の渦だけになった。

全てが混沌の渦となって幾何学模様を生み出していく。



唐突に俺は何かを悟った気がした。



「それ」が何かと具体的に聞かれたら俺は何も答えられん。

俺が「それ」を悟りきれたのか、
と更に聞かれたら俺は俯くしかほか無い。

「それ」が俺自身が今までに会得してきた語彙で表現できないという意味ではない。



言葉で表現するとしたら、至って簡単で単純明快なのだ。
唯、それを口に出したら俺が恐れていることが現実に起きてしまう気がしてならないのだ。











俺はこの見知らぬ地で見知らぬ者によって殺されてしまう運命なのだと。
だから、幾ら抗っても意味が無いのだと。










【――なぁ、アルバートさんよ。あんたは一体その言葉を何度口に出して考えたんだ。
    いい加減、聞いている俺としてはくどい、くどすぎる。
     男ならそろそろ肝を据えて立ち向かうべきだ。
      まっ、人間に限らず全ての生物が持つ本能だから仕方がねーけどな。――】







      *      *      *








「くっ。      あっ。」









そんな怪しげな嗚咽を漏らしながら、フラフラと立っていた俺はうつ伏せ状態で倒れた。


あぁ、俺の五感で感知できる範囲内での世界が歪んでいく。




俺の体が地に埋まって暗闇の世界へ落ちていく。




落ちる。



落ちる。




落ちる。





落ちていく。






暗闇の世界から伸びてくる無数の腕が、俺を手招きしている。



(お久し振りね。さぁ、こっちに来なさいよ。)

そんな若い女の声が頭に直接響いてくる。



「断る。」
耳を両手で塞いであらん限りの声を振り絞って、
目に見えぬ何かに向かって叫んだ。



(あらあら、もうそろそろ貴方は殺されるというのに。
 過程は違っているけど、結果は同じでしょ。
 何れにせよ貴方の人生に終止符が打たれるのだから。)



その言葉が聞こえてきた時、
途端に俺の体は落ちなくなってその場で止まった。

之が空中浮遊って奴か。



「そうだろうな。だが、俺はほんの少しの時間でも生きていたいんだ。」



無反応。
そんなことはお構いなしに俺は続ける。


「傍目から見たら俺は滑稽なんだろうが、生きて元の世界に帰りたい。それだけだ。」


言い終えた後、妙に脱力した。
心成しか、額が熱い気がする。風邪でも引いているのか、俺は。



(そう。)


あっさりと無数の腕はこっちに伸ばして来るのを止めた。



(それじゃぁ、また再び会えるのを楽しみにしているわね。)


艶やかな声が徐々に消えていった。


もう、何も考えられない。






考える気力が、無い。








そして、俺は更に下へ。






更に下へ







下へ








――








      *      *      *





「ようやく、落ち着いてくれましたか。スケイルさん。」

彼はそう言うと、小刻みに震えている私の右肩にポンと手を乗せてくれた。
実は私は全く落ち着いていない、心臓の鼓動が寧ろ増していく感じもする。

何度も深呼吸しても落ち着かない。


「えぇ、何とか。」

私は作り笑いを浮かべながら、彼に振り向きました。
そんな私を見ると、彼はしかめっ面をしながら悲しげに言った。


「まぁ、無茶は止せよ。」






やはり。
こういう所を分かっている、この人は。





「唯でさえブスな顔が更にブスになっちまうしな。」

にっ、と嫌らしい笑顔を浮かべながら私の頭をポンポンと叩く。
いじけてわざとそっぽを向いてみる。

私を慰めようとしているのか、それとも唯単純にからかっているだけなのか。

恐らく、前者でしょう。そうだと信じたいものです。


「俺の格好良さに今更気づいて照れてるのか。
 ハハハ、なら照れろ照れろ。もっと照れろ。」







私は彼の鳩尾に一発アッパーを。






      *      *      *


「さて、真面目にいきますか、スケイルさん。」

彼は私に冷たい視線を向けながら、鳩尾の辺りを擦っている。
仕方ありませんよね、自業自得ですから。


(なら最初からさっさとそうすればよかったじゃないですか。)
と言い出すと、絶対に言い訳を始める彼の姿が思い浮かぶので無言のままにしておきます。

鳩尾を擦るのを止めたと思ったら、
頭を左右に振って真剣な表情でこっちを見てきました。

「まず、ぐったり倒れこんでいる名も無き救世主様の身体を運ばないとな。
 よし、スケイル。先ず奴さんの回復を頼む。
 その間、俺はアーサの居場所を探してくるからここに居てくれよ。」


私は一瞬唖然として、口がポカリと開いたまま突っ立っていました。

「どうしたんだ、スケイル。おい。
 おーい、ぅおぉぉおぉぉぉおーーい、スケーールさーーん。
 起きてますかぁああぁあ。」


そんな返事を内心では期待していました。






ですが、





現実はそうではありませんでした。







「何、唖然としているんだ。唖然としている余裕があったら、さっさと行動しようぜ。」



と、いそいそと支度を始める彼。
何もしないままでいる私に向かって顔を向け、


「悪いがな、スケイル。俺はやるときゃやる男なんだよ。」


そう遠い目をしながら言い放った。



その彼の目の焦点は何処に向けられているのか分かりません。
少なくとも私ではない。


かといって、さっき私が倒した人でもない。

これ以上、詮索するのは止めましょう。
出口なき迷宮に入り込むのと同じ臭いが漂って来ました。



私は無言で一度だけコクリ頷いて答えました。


「分かりました。で、一体何を私はすればよいんでしょうか。」




彼は鳩尾を再び摩りながら呆れつつ、指差し説明を始めました。


「時間がないから要約して言うぞ。
俺はアーサを探しに行く、スケイルは回復を頼む。」




私は二つ返事をして、直ぐに回復作業に取り掛かるために彼の右脇を通り過ぎました。

彼も二つ返事をして、直ぐアーサの助けを要請するために私の左脇を通り過ぎました。




お互いが通り過ぎる際に、視線と視線を交わしながら。




      *      *      *





それは何年前の話だっただろうか。




――おい、そっちに逃げたぞ。お前がやれ。――




俺が十一歳の頃だから、今から八年前の話か。



――くっ、こいつ足が速いな。流石、ノーザニア系の血を引いている子というべきか。――






俺の両親が火事の中に飛び込んで以降行方不明となり、






――おい、子供とは俺らの敵だ。その敵を褒めるようなことを言うんじゃないぞ。――







俺の姉は旅に出ているので行方知らず、






――へっ、そうだな。さっさとこの隻眼君の首を討ち取って帰るか。温かい飯も食いたいしな。――








親友であったエシュターとは別れ、




(何で、どっちに逃げても奴らは追ってくるんだ。)






俺が一人で戦場を逃げ回っていた頃のことか。







To Be Continued……

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超絶おそがき

へへっ、やっちゃいましたよ。
何と九ヶ月振りの投稿です、正直自分自身も忘れてました。


覚えてくれた人何か居ないですよね。居たら奇蹟ですよね。
何かもう色々とグダグダですが今後は出来るだけハイスピード。そうですね、週間で10kbの割合で投稿できるように心がけたいです。


1kb書くのに三ヵ月も掛かったり、三十分で2kb仕上がったり。
何か文体が変わっていたり、レベルアップどころか寧ろダウンしていたり。


……取り合えず今後もがんばっていくので、暇な方はこれからも冷たい目で見下してやってください。
7421
Re1:「 」  Fourth volume by 月下の根無し草 2007/02/18 (Sun) 19:30
△up
レス/編集
 



初感想失礼します
感想書くのも苦手な奴隷作家です。
↑に描いたとおり、感想を書くのは苦手ですが、それでも精一杯書いてみようと思います。

……なんというか、心情の機微と一行一行の使い方が上手いですね。アルバートの余裕がだんだんと無くなっていくところとか、俺は死にたくないのくだりで文の形が山になっていくところとか。
詰め詰めとした文章しか書けない自分とはえらい違いです。視点の変換点も分りやすく、すらすらと読み進めることができました。

毒にも薬にもならないような感想ですが、これにて失礼……

7422
感想返し 〜涙と暴走と変人コンビ〜 by hirumi 2007/02/18 (Sun) 22:38
△up
レス/編集
 
hirumi(以下 h)
「イーィィィ、ヤッホォォオォーー!(hirumiは あやしげな おどりを している。)」

シル幻の男主人公(以下 主)「何つーか、お前は何時も変人だが、今日は輪を掛けたように変だな。」

h「あぁ、そうさ。私は変人さ。イェーーイ!(hirumiは あやしげな ジャンプを くりかえしている)

主「……あのなぁ。お前の存在意義って、『変人』しかないけどさぁ……何つーかもう痛々しすぎるんだよ。」

『ざんねん、 hirumiの みみには まったく ことばが とどいていない』

主「取り合えず、之をやるから収まるんだ。 い ま す ぐ に だ。(しゅじんこうは hirumiようの アルバートのえを とりだした)」

h「了解。」

主「……。」

>初感想失礼します

h「来たよ、来たよ、遂に予想外の『感想』が来たよ――!
『感想なんかこなくて当たり前。』とずっと考えていたから本当に嬉しいよ――!」

主「落ち着くんだァァああ、貶(けな)される可能性が如何考えても高いんだからぁああ!」

h「それでも、わざわざ時間を割いてまで書いてくれたんだ。感謝はしないといけないだろう。」

主「それはそうだが、お前が言うとその
h「判った、今後からはお前は出さずにアルバートだけを出そう。」

主「ゴメンナサイ。オレガ、ワルカッタデス。スミマセン。」


>感想書くのも苦手な奴隷作家です。

h「奴隷作家……ならば、私は一体何作家なんだろうか。」

主「お前は永遠に『ヘッポコ底辺テキスト書き』じゃねーのか?」


>↑に描いたとおり、感想を書くのは苦手ですが、それでも精一杯書いてみようと思います。

主「『精一杯に書いてみよう』か。こりゃ、どっかの誰かが興奮して涙を流しながら暴走する理由も判るな。
ところで、奴は?」

h「あはははは〜、お花畑が見えるよ。あっ、リクレールさんだ。私をシルフェイドに連れて行ってー(現実逃避)」

主「目を覚めせー、そうさ目を覚ますんだ。(そこら辺にあったdファーでhirumiの頭を殴る)
目を覚まして書き始めなかったら、俺の出番が遂に無くなるからなぁあああ!」

h「はっ、此処は何所。私は誰?」

主「……もう良いか。」

>……なんというか、心情の機微と一行一行の使い方が上手いですね。

両方「なっ、何だってー!(響き渡る爆発音)」

主「こっ、コイツの文章力が褒められただと!そして、今度のhirumiはどうしている!?」

h「(hirumiは ほうしん している ようだ。 うわごとのように つぎのことばを くちにしている)
ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ。」

主「褒められた経験が少ないから、逆に↑の要になるのか。

アルバートの余裕がだんだんと無くなっていくところとか、俺は死にたくないのくだりで文の形が山になっていくところとか。

h「『余裕が段々と無くなる』ところか、アソコは頑張ったなー。」

主「んー、今度は現実逃避しないのか?」

h「うん、之は夢だと信じているから。大丈夫さ。」

主(既に現実逃避していると凄まじい勢いでツッコミたいが、あえてガマンしよう。あぁ、ガマンしよう)

h「だけど気分的に、某サウンドノベルの第一話目にかなり似ている部分があると思ったんだ。書いていく内に。」

主「まぁ、そりゃー、何か内容が似ているからな。うむ。
つーより、お前あのゲームのファンだしな。結構、影響を受けているんじゃないか?」

h「それを言われると辛いなぁ……。
取り合えず、あの山の部分には力を籠めました。いっつ、あ はんどぱわーー。」

主「アソコを書くときに時間かかったよーな記憶が。何時もの1/3のスピードで書いていたよな。随分と頑張っていたと判った。
『アソコ』は。」

>詰め詰めとした文章しか書けない自分とはえらい違いです。視点の変換点も分りやすく、すらすらと読み進めることができました。

両(視点の転換って判り易かったか?)

h「そもそも、空白の量が尋常じゃないほど多いからね。私のテキストは。」

主「その分、パッと見は読みやすそうだが、うーむ。
ずっとこの感じで書いているから、俺にゃぁ良く判らないな。」

h「取り合えず、読みやすいという人が一人でも居るから今後は之で書いていきますかねー。」

主「……視点の変換点もか?」

h「其処はアレ。やっぱり、キリの良い所で分ける。そのまま書き進めても内容が要らない物なら、いっそ他の人にスポットを当てるという体制だからさ。」

主「お前、本当にhirumiか。試してみよう。ほーら、こっちにおいでー。(しゅじんこうは あらたな hirumiたいしょようの あるばーとのえを とりだした)」

h「それをよこせぇえええ!」

主「本物だが、命が、命が。
うぎゃぁああぁぁぁあ。」


―悲鳴が響き渡った――


>毒にも薬にもならないような感想ですが、これにて失礼……



はい、ちゃんとした文体に戻しましょう。
本当に有難うございます。
今、モニターがかすんで見えます。あれ、何で涙が出るんだろう。


毒にも薬にもならないどころか、特効薬になりました。
今後も頑張っていきますので、どうかよろしくお願いします。
7585
感想でござる(何 by カラス 2007/04/08 (Sun) 14:42
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どうも、番外編から読んだカラスです。
っていうかその番外編の感想です。
でもそれから読んでよかったのか……。
少し不安です。

とりあえず感想を……。

なんか緊張感のある始まりかただな〜とか思ってなぜか緊張。
でもリク様とトーテム達の場面になると和らぎました。

それにしても剣で足を傷つけて自分を抑えるとは……恐ろしい。
でもそこまでして何故丘の上にたっているんだろう……興味深いです(もしかしてこれって本編に入ってる? まだ読んでないので……(汗)

短いですが、ここらで。
次回楽しみにしてます。
カラスでしたー

※本編読んだらそっちの感想も書きます!
7594
食らえー、秘技『感想返し』ー by hirumi 2007/04/08 (Sun) 19:38
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hirumi(以下hi)「ひゃっほー、今日届いたゲームの追加パッチが凄く面白いぜ。いぃぃいぃぃーやっほー!(カチャカチャ)」

男主「おーい、そこのお前。テキストBBS見たかー?」

hi「あー、後で見るよ。LADEN氏や月下氏を初めとする多くのテキストの続きが物凄く気になるし。うおー、左の人差し指が攣るー。(カチャカチャ)」

男主「いや、そうじゃなくて、おめーに感想が……」

hi「な、何だってー!(タイプが止まる)」


的なことが起きたに違いないんだ、うん。恐らく。


>どうも、番外編から読んだカラスです。

どうも、こんばんはー。
テキスト界のヘタレヘッポコ底辺ことhirumiです。

>っていうかその番外編の感想です。

何だって掛かってこーい。
どんな指摘や叩きにだって対応しますよー。

>でもそれから読んでよかったのか……。

まぁ、推奨であって強制じゃないから良いです。
唯、こっちから読んだら『面白くない』と言うだけです。

>少し不安です。

そういう、俺こそが不安です。ガクガクブルブル。
寒いと思ったら、ストーブがついていなかった。


>とりあえず感想を……。

ゴクリ


>なんか緊張感のある始まりかただな〜とか思ってなぜか緊張。

緊張なんか最初だけですよ、きっと。
所詮、俺と同じテンションの男主人公なので、
道中は確実に間抜けでしょうが。


>でもリク様とトーテム達の場面になると和らぎました。

そこは狙いましたから。ゴメンナサイ、嘘です。orz
緊張したものを書くのも好きですが、
書き続けるのは流石にうぐぉーなのです。
うぐぉーなんです、うぐぉー。

>それにしても剣で足を傷つけて自分を抑えるとは……恐ろしい。

ヒント:……いったらネタバレに成りますね。
はい、此処はふk(鳴り響く銃声

>でもそこまでして何故丘の上にたっているんだろう……興味深いです(もしかしてこれって本編に入ってる? まだ読んでないので……(汗)

安心して下さい、本編には出ていません。
作者も何で丘の上に立たせたのか分からないですk……あっ、頼むから銃をコメカミに当てないで。


ちなみに、本編の方は『ヘタレ』アルバート君が主人公(もどき)でs、あっ別にアルバートなら良いって……


って、うわーなにをするきさまr……(マシンガンの音)


>短いですが、ここらで。

アルバート「うむ、随分と長かったな。hirumiに代わって礼を言おう」

男主(以下アル)「所でノリと勢いアンド例の人の恨みの代わりにヤッちゃったあの死体どうするー、あの死体。」

アル「流石に可燃ゴミは色々と後が大変だからな、取り合えず崖から投げればバレないと俺は思うぞ。」

男主「よし、それじゃぁ。グッバイ、hirumi。永久(とこしえ)にーー!」

>次回楽しみにしてます。

幽霊hi「それはありがとうございます。」

アル&男主「幽霊になって復活してきただと!?」
       「               のか!?」

幽霊hi「さーて、男主……覚悟は出来ているわね。」

男主「あわわわ……って、何で俺限定何だぁああぁ!?」


(此処から先は放送禁止です)


>カラスでしたー
>※本編読んだらそっちの感想も書きます!

アル「うむ、カラス殿。本当にありがとうな。」
7622
感想です by 冬馬 2007/04/23 (Mon) 23:39
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テキスト板はかなり久々ですが・・・。
とりあえず読ませて頂きました。
まず、以前の作品読んだ時も思ったのですが、すごく表現がきれい、というと若干語弊があるのでしょうが、呼んだ瞬間にぱっと場面が出てくる感じがしてて、その辺はさすがかな、と思いました。
また、アルバート視点のこの設定・・・、実際右も左も解らん状態で異国の地(異国どころか全くの異世界ですが)に放り込まれて、しかも、内戦という過去も、と考えると、重いといえば重いのですけど、いい設定だと思います。

続きの方、楽しみにしておりますが、無理のないようお願いいたします。

それではまた・・・。僕もまた再開しようかな・・・?
7625
感想レスがえ…うわー、やめろー何をするんだキサマラー by hirumi 2007/04/24 (Tue) 22:44
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あー、ゴホン。こんばんは。
どうもhirumiです。

之は夢ですよね、そうですよね。夢ですよね!

なのに、幾ら頬を抓っても夢から覚めません。
何故でしょうかね。

>テキスト板はかなり久々ですが・・・。

冬馬氏が来るのは確かに久々ですね。
>とりあえず読ませて頂きました。

どっ、どうもありがっとっうございます!

>まず、以前の作品読んだ時も思ったのですが、すごく表現がきれい、

表現が綺麗……ですが、冬馬氏に褒めてもらえるとは光栄です。
ですが、心の中は真っ黒ですがね!

>というと若干語弊があるのでしょうが、呼んだ瞬間にぱっと場面が出てくる感じがしてて、その辺はさすがかな、と思いました。

そうなるように、できるだけ試行錯誤したつもりです。
読者側で考えて楽しむようなテキスト…テキヌトを書こうとするとどうしても伏線が張りにくい人なので出来るだけ想像しやすいように頑張りました。

特に、山の文章は。

>また、アルバート視点のこの設定・・・、実際右も左も解らん状態で異国の地(異国どころか全くの異世界ですが)に放り込まれて、しかも、内戦という過去も、と考えると、重いといえば重いのですけど、いい設定だと思います。

思ったんですよ、シルフェイド幻想譚の48周目の時に。
『それにしても、このアルバートは人が良すぎる。というより、よく精神が持つな』と思ったんですよ。
そして、ほらアルバートって基本的に二次創作においては『格好良く』なっていますよね。
ならば、私はあえて『ヘタレ』なアルバートを書こうと決意したんです。(実話)


ヘタレにする為には、精神的なショックやダメージ……精神的に追い込まれる事が必要だと私は思います。

もしも、アルバートを囲む状況が軽ければ、この世界(『「 」』)においてももしかしたら彼は普通のシルフェイド幻想譚通りの行動を取ったかもしれません。

しかし、現実はそう甘くなかった――。


そういう感じで書いてきました。



(実は、せーあーでー氏のアルバート君の異常な格好良さを見て、『なら、俺はせーあーでー氏とは対照的なアルバート君を書いてみせる!』と決意したと言う部分が多いとは誰にも言いません。)


>続きの方、楽しみにしておりますが、無理のないようお願いいたします。

はい、一生懸命に頑張ります。
ただ現実の都合上、無理をしないと早く書けないでしょうが。

>それではまた・・・。

さようなら、有難うございました。

>僕もまた再開しようかな・・・?

再開するのならば大歓迎です、あれ涙が。
冬馬氏は『向こう』で頑張って下さい。


それでは、また何時か。
7689
感想ですっ。 by 風柳 2007/05/03 (Thu) 23:24
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どうも、風柳です。
「 」シリーズ(でいいのでしょうか?)、読ませていただきました。
なるほどこれがテキスト板の底辺ですか。
となるとこの板は私なんかじゃ場違いなほどレベルが高いということなのですねっ。

まずは表現部についての感想ですが、思考部分での『間』の取り方がとっても上手だなぁと思いました。
そのおかげで読んでいて非常に感情移入がしやすかったです。

戦闘部の描写も詳細に書く所とばっさり捨てる所の選択が的確で、緊迫した空気を保ちながらも情景がすごくイメージしやすかったです。


次に内容についての感想を。
うん、アルバートがシリアスしてますねぇ(笑)
やっぱりhirumiさんのアルバートはとっても素敵です。
自分、基本的にシルノの二次創作は拝見していないので、シリアスなアルバートにはほんと他ではお目にかかれない感じです。
ひたすら生に執着しようとするアルバートの心情も切に迫るものがあって、画面の前で圧倒されっぱなしでした。
一見すると正常なようで、しかし決定的にどこかズレてしまっているアルバートの思考が本当に素晴らしいと思いました。

えーと、『「 」Blank ――Zero volume――』の方は続くのでしょうか?
現状どちらとも取れそうな雰囲気ですけど・・・。
あ、いえ、hirumiさんのテキストがしばらく読めなくなるのは残念だな、と思ったものですから。

ではでは、この辺りで失礼させていただきますね。
7696
感想返しDEATH by hirumi 2007/05/04 (Fri) 22:24
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>どうも、風柳です。

どうもhirumiです。

>「 」シリーズ(でいいのでしょうか?)、読ませていただきました。

有難うございました、ぺこぺこ(土下座)

>なるほどこれがテキスト板の底辺ですか。

ええ、そうですよ。私はテキストの底辺です!
私――底辺は何時まで経っても一番下に位置して、
掲示板に寄生しているのです!

寄生せずに確りと自立できるようなテキストを書きたいです。



>となるとこの板は私なんかじゃ場違いなほどレベルが高いということなのですねっ。

いや、風柳氏は残っていてくださいぃぃいいぃ!
もしもそうするのなら、俺が一足先に荷物を片付けて崖から飛び降ります。


>まずは表現部についての感想ですが、思考部分での『間』の取り方がとっても上手だなぁと思いました。

スペース使いになってから彼是一年半。
文章力は伸びにくくなりましたが、逆にスペースの使い方に慣れが出てきて……あれ、テキストの定義を完全無視しているんじゃないかな、之。


>そのおかげで読んでいて非常に感情移入がしやすかったです。

建前:感情移入出来やすくように頑張っているから投稿が遅くなるんです。

本音:うぎゃー、また設定を書き直さないとー、ぎゃぁぁああ今度はこっちの辻褄が合わねぇええ! どうしよう、どうしようよ俺ぇええ!?


本当に、
本音と建前って素晴らしいですね。

>戦闘部の描写も詳細に書く所とばっさり捨てる所の選択が的確で、緊迫した空気を保ちながらも情景がすごくイメージしやすかったです。

アルバートは脳内にて複雑な攻撃と単調な攻撃を仕分けしているんですよ、きっと。
後、追い込まれているから攻撃力が通常の150%増しで見えるんでしょう、恐らく。

よって、一番書きたかったバトルシーンの文を大幅に削除している部分があります。
あぁ、もう少しアルバートをヘタレじゃなくすれば……っ。


というのは、全て事実ですがおいておいて。
五感にうったえて来る様な攻撃を如何に表現するか、
と言うわけで、無駄な部分をばっさりと切り捨てて重要な攻撃を細かく書くという風にしました。


>次に内容についての感想を。

どきどきわくわく。

>うん、アルバートがシリアスしてますねぇ(笑)

確かにシリアスしていますね、
設定上はヘタレの癖して、このこの!

LADEN氏とせーあーでー氏(SEAD氏)の格好良いアルバートに触発されて、
ヘタレなアルバートを書こうと決意したのですよ。

【俺は徹底的にヘタレなアルバートを書いてみせる!】という宣言を11月にしたのでした、まる

>やっぱりhirumiさんのアルバートはとっても素敵です。

そこまで言われると、照れます。



アルバートに力を入れましたからね!
一番好きなキャラクターと言えばアルバートと言う変な人です。
何か、アルバートを神と同じようにあがめている時点で既に頭が可笑しすぎますね。




所デ、「ヤッパリ」ッテ何デスカ?




>自分、基本的にシルノの二次創作は拝見していないので、シリアスなアルバートにはほんと他ではお目にかかれない感じです。

汁帳だと意外と多いものです。
SEAD氏とか、夢老い氏とか、えすいーえーでー氏とか、せーあーでーさんとか(略

唯、シリアスと言うよりも【格好良い】というのが事実ですね。

彼らのアルバートは上を向いて正面を向き光が宿った目でいて武器をしまってあるのに対して、
私のアルバートは下を向いて背中を向いて光が無い空ろな目で居て武器を出してある。

すなわち、正反対に位置しているアルバートと言えるでしょうか。


>ひたすら生に執着しようとするアルバートの心情も切に迫るものがあって、
>画面の前で圧倒されっぱなしでした。


それは有難うございます!!


誰もが持っている本能をより剥き出しにしたのがこのアルバートかと。
剥き出しってなんだか卑猥n(銃声


死が迫ってくるから怖くてたまらない。
今の彼なら川で溺れたら藁さえもすがるでしょう。


>一見すると正常なようで、
>しかし決定的にどこかズレてしまっているアルバートの思考が本当に素晴らしいと思いました。

結構、ひぐらしの影響も受けているかもしれません。
アルバートの思考が、かなりとある編の圭一とそっくりなので。

【狂気に駆られて我を忘れて、人にあるまじき行動する人って実は余り怖くない。
 それよりも、意志や理性を確りと持っていて人にあるまじき行動をする人の方が怖い。】と思う私です。変ですね。


>えーと、『「 」Blank ――Zero volume――』の方は続くのでしょうか?
>現状どちらとも取れそうな雰囲気ですけど・・・。

続きますね、無印がアルバートを主人公とする物語なら、
Blankは謎多し男主人公に迫っていくと共に、この物語の設定を少しずつ明らかにしていく物語とでも言いますかね。

>あ、いえ、hirumiさんのテキストがしばらく読めなくなるのは残念だな、と思ったものですから。

之が終わったら暫く所ではなく半年程、
水面下にて潜伏する予定です。

新たなネタが出来るまで!

>ではでは、この辺りで失礼させていただきますね。

有難うございました。


追伸:それにしても、アルバートと言う単語が多すぎる感想返しだ。
7828
感想ですー。 by 風柳 2007/07/29 (Sun) 23:45
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なんかもういい加減伏せっているのが面倒になってきました風柳です(何)
以前面識?のあった人にはオープンになろうなとか思ってます。
というわけで正体はかつてテキスト板の底辺の座をつけ狙った、元アルファベット二文字なHNの角馬鹿でしたとさ。
改めましてどうもお久しぶりでございます。
『え?誰?』とか言われると私の駄文書きっぷりが露呈されてそれはそれでいい感じでありますが(何)

さてさて、そんなどうでもいいことは置いておきまして。

「」シリーズ新作、読ませていただきました。
焦らされ過ぎたせいで期待が膨らみまくっていましたが。

・・・あれ、期待ってなんでしたっけ。

と思ってしまうくらいの読後感でした。
実は新話だけでなく『Blank』シリーズをもう一度通読させていただいたのですが、長さなんてもう微塵も感じさせませんでしたよ。

交錯する場面展開に中盤ちょっと置いていかれそうになりましたが、頑張ってしがみついていたらそこには素晴らしい景色が広がっていました。

景色、そう、景色なんですよね。
hirumiさんの文章って、本当にすぅっと頭に入ってくる。
それでいて時折不意に問いかけるような一節を提示してくるものですから、読んでいて本当にダレない。
その緻密な構成力にまた一つ脱帽です。

テキスト板の底辺には澄み切った清流が流れている、それを改めて感じさせていただきましたよー。
思えば、底辺っていわば土台だから実は一番重要なポイントなんですよね?


少し長くなりました。
アルバ編も期待しています。

ではでは。
7830
渾身のファイナル感想返し by hirumi 2007/07/30 (Mon) 10:38
△up
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>なんかもういい加減伏せっているのが面倒になってきました風柳です(何)

おはこんばんは、hirumiです。
面倒になったらいっそ、吐き出してしまえというのが私のモットーです。
(嘔吐的な意味で)

>以前面識?のあった人にはオープンになろうなとか思ってます。

成る程、面識(?)のあった人限定ですか。
尚、私は予想していたんですが結構あたっているんじゃないかなーと。

>というわけで正体はかつてテキスト板の底辺の座をつけ狙った、元アルファベット二文字なHNの角馬鹿でしたとさ。

あぁ、やはりテキスト界の大御所の「○×」氏でしたか。って、コレだけじゃ普通の人には判りませんね。
取り合えず、「リクレール様格好良いよー」と馬鹿みたいな発言をモニターの前でしていた人です。

尚、私は「○×」氏になら年齢をさらす勇気があるってどんな勇気なんでしょうか。
勇気って大事ですよね。


>改めましてどうもお久しぶりでございます。

お久しぶりでございます。
「二月に復活〜」云々と書かれてあったので、「恐らく」と思ってました。

>『え?誰?』とか言われると私の駄文書きっぷりが露呈されてそれはそれでいい感じでありますが(何)

なら、あえて言ってみよう。
『えー、誰?そんなの私にはちっとも分からなーい。』

あっ、書いていて痛々しい。


>さてさて、そんなどうでもいいことは置いておきまして。

どうでもよくないと思ったのは私だけでしょうか。


>「」シリーズ新作、読ませていただきました。
>焦らされ過ぎたせいで期待が膨らみまくっていましたが。

では、今後は遅筆王ではなくて焦らしプレイの師匠ということで。
あぁ、どんどんと嫌な通り名が増えていく。

之も日頃の行いが悪いからでしょうね。


>・・・あれ、期待ってなんでしたっけ。

期待というのは、私に対しては無いほうがよいんですよ。

ちなみに、「期待せずに待ってるよ!」と私が言うと
「hirumi=ツンデレキャラ」という恐ろしい等式が成り立つので言いませんが。

>と思ってしまうくらいの読後感でした。

「燃えつけたぜ、真っ白のようにな」というように期待そのものが無くなるでしょう。

あれ、前の奴は要らなかったですね。
だけど、無視を徹底します。

>実は新話だけでなく『Blank』シリーズをもう一度通読させていただいたのですが、長さなんてもう微塵も感じさせませんでしたよ。

というより、長さだけでいうとアルバ編の半分以上超えていたりします。
長さなんて唯の飾りなんですよ。

なら、内容が大事となりますが私は内容がスッカラカンなのでそっちも駄目。
結局、長さに頼るしかないと。


しかし、今回のは分けて投稿すべきだったと後悔中。


>交錯する場面展開に中盤ちょっと置いていかれそうになりましたが、頑張ってしがみついていたらそこには素晴らしい景色が広がっていました。


正直いうと、自分でも何処がどうなっているのか収拾がつき難くなったことが何回も。
読み直した結果、書く予定だった箇所が一箇所抜けていたものの別に無くていいやという結論に。


要はこんな感じでしょうか、「トンネルを抜けたら其処は雪国だった。」
意味は元の本で使われたのと違いますが、何かしこりが無くなったらすっきりしたと。


>景色、そう、景色なんですよね。

空気を相変わらず読めなくてすいません。
景色はその周辺の生活環境の鏡であると思っています。

それと同じように、自分そのものも映しているんじゃないかなーと。

>hirumiさんの文章って、本当にすぅっと頭に入ってくる。
>それでいて時折不意に問いかけるような一節を提示してくるものですから、読んでいて本当にダレない。

読み易く、ダレにくく。
それを重視して書いているんです。

どんなに面白い内容が書かれてある本でも、読み難くかったらその本の面白さに気付けるまでに時間がかかる。

時間がかからずにアッサリと読める(けれども、どうせ技量がアレだから内容は薄くなる)ようにしたいなー、
と考えて思いついたのが今の文のスタイルです。

>その緻密な構成力にまた一つ脱帽です。

ちなみに初期構成から今の構成が確立するまでの間、設定はコロコロ変わっています。特に男主人公関連の設定が。
全ては自分が書いて面白いかということだけに信念を持って構成を立てているので、何とも言いがたいです。

>テキスト板の底辺には澄み切った清流が流れている、それを改めて感じさせていただきましたよー。

澄み切った清流と見せかけて、
もうそろそろ俺様設定が怒涛にやってきて一気に濁流に変化するのでご注意です。


>思えば、底辺っていわば土台だから実は一番重要なポイントなんですよね?

確かにそうですね。
土台がちゃんとしていなかったら家はすぐに倒れてしまう。
逆に確りとしていたらどんな災害でも家はビクともしない。

しかし、その土台が駄目なのでどうしようもないですね。

>少し長くなりました。

そういう、私の感想返しは「○×」氏の二倍前後になってしまいました。
気にしない気にしない。

>アルバ編も期待しています。

「期待しないで待っていなさいね!」というと、私=……って之はもうやったか。
一つ言うなら、アルバ編はあっけなく終わります。色んな意味で。

>ではでは。

それでは。
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