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7330
「 」  Third volume by hirumi 2007/01/13 (Sat) 23:39
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夜空は澄み渡っているのに雨が降っている。


満月が見えるのに、雨が――。




冷たい、寒い、凍える。
歯の根はまだ合っている。
ここの建造物郡から出て、
丘を降りたら俺はワケラレル。


だから、俺は此処に居ないといけない。
此処はまだ安全地帯だから、
誰も居ないから安心出来る。


薬と食器が収めてあった棚が置かれてある家のベッドに体育座りをする。
この家は他と比べて余り壊れていない。

正直言うと、外見上壊れていたのはドアだけだった。
しかし、中は凄かった。

テーブルが引っ繰り返されて、四本の脚が全部折られてある。
椅子は背凭れに幾つかの刃物による傷が付けられてある。
棚は刃物による損傷は無い代わりに中の陶器の食器が粉々になっている。


ベッドには夥しい箇所に血痕が飛び散っていた。

静かに黙祷をしてから体育座りを俺はした。


近くにはガラスは割れて周囲に破片が飛び散り、
枠が歪んだ窓がある。

そこから僅かに星を眺められる。

俺の居た時の星空も綺麗だったが、
この時代の星空にはまず圧巻された。

よく、
小説でやたらロマンチックに言うシーンで次のような台詞が多いだろう。

『星空は万遍に散りばめられた宝石のようだった。』と。

読んで「まさか、そんな星空はこの世に存在するか。」と馬鹿にしてしまう人が多い。


そいつ等に向かって叫びたい、
この星空を見て二の句も告げるかと。


星空に対して灯りを灯したらどうなるのか、気になる。
案ずるより生むが易し、と実践もしたい。
そうさ、したいのさ。

野朗と思えばいつでも出来るが、
今の俺の状況を以下の文に簡潔に記す。



『外に出ると俺はワケラレテシマウから今は出来ない。』




そう、アソコから帰られたらやってみても良いかもしれない。

シスターに駄目出し……はされないか。
喜んで手伝ってくれるに違いない。



待てよ、俺。
アソコはあの村の中央にある。

今まで通ってきた道から考えると、
途轍もなく遠い場所に位置している。

人目を憚らず行くとすれば俺の場合数時間は掛かるだろう。

深夜にコッソリ行こうか、いや駄目だ。

俺が来た時、村人が手厚く歓迎してくれた。
そこから俺の帰還を待っている村人も居るかもしれない。
交替制で俺が何時帰ってくるか楽しみにしている。


あの歓迎も恐らく緋色のマントの男が関与したかもしれない。
いや、関与しているに違いない。



何故って、俺がやってきた時にはっ、アイツはあの村に居た!



なら、俺は元の時代へ帰られないじゃないか。



帰ろうとすればワケラレル。
帰らなければ何時かは餓死してしまう。


「くっ、畜生。」

ベッドに対して殴る。
マットのスプリングが弱かったのか、凹んだ跡が残っている。


俺が俯きかけていた時、何かの気配を体が感じ取った。




人は極限状態になると神経が過敏になる。




あの時もそうだった。


北の戦争の時にやったエシュターとの競争で、
どうしても戦場を潜りぬけねばならなかったことがあった。

俺は唾を飲んでから、
一心不乱になって一気に駆け抜けたのを覚えている。


あの時は、襲ってくる弾が遅く見えて次から次へと避けられた。
そのお蔭で、今日まで俺は五体満足のまま生きている。



「同じだ、あの時と。」


口ではそう言いながら、
第六感は『建造物郡の入り口に一人の男がやってきた』とけたたましく俺に伝える。



手強い人が来たと瞬時に悟った。



ベットの近くに立てかけておいた剣を手にとって、
俺はベッドから降りる。


どうせ、俺を探しているに決まっている。
なら、探している間に奇襲を掛けてヤレば良い。

奇襲が汚い手段だという人も言うが、
真剣勝負では潔い勝ち方も汚い勝ち方も関係無い。



生きた人が勝ちなのだから。



後ろめたい気もするけれども、
命に比べれば軽いものだ。


直ぐに空の彼方へと消し飛んでしまうさ。



「俺は絶対に此処で死なない。」

自分に勇気付けるように言って、
窓ガラスの破片で身体を切らないように慎重に外へと出た。



夜空は尚も輝いていた。



      *      *      *


水溜りで足音を立てずに急ぎ足で進む。
息を殺して進む。
俺が剣を持っていることバレないように、と祈りながら――進む。

図書館の後ろの壁まで辿り着いて、
ゆっくりと顔を壁から外に出す。


予想通りよりも、
俺が作った脚本通りに墓の近くで居た。


緋色のマントの男が。


俺の作った脚本と、
一箇所だけ間違いがあった。


緋色のマントの男は墓の前で何もせずに、
仁王立ちしていただけだった。


遠くにある井戸を睨みながら仁王立ちしていた。


(之だと、奇襲攻撃を掛けると逆にヤラレルな。)


こういう場合、今の俺と同じく周りに神経を集中させている。
微かな物音を見逃さないという堅固な意志で。


従って、背後から仕掛けても既に心の準備は整っている。
故にヤラレル。


(なら、表から正々堂々と行くか)


俺だって男だ。


――本当に良いのか、後悔しないのか。――

と例の声が聞こえて俺は答える。


「あぁ、後悔は先に起たない物だろう。」

揚げ足を取って淀みなく返答した。



――確かにそう言われると反論できないな。――

漫画ならば『ニヤリ』という擬音語が、
例の声が出てくるコマに書かれてあるに違いない。



今度は水溜りでも足音を立てさせて進む。
呼吸を普通にしながら進む。
普通に剣を出しながら進む。





満月は南中した。




      *      *      *



雨は降り続ける。



廃墟の街を癒している雨かもしれない。



もしくは、廃墟の街を壊す雨かもしれない。



廃墟の街をただ濡らすだけの雨かもしれない。



分からない、


分からない。


この雨の意味が分からない。


如何したら、この雨の意味は分かるのか。


もしも貴方は知っているのなら、是非とも教えて下さい。



彼等と私に。



      *      *      *
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以後の戦闘シーンはhirumiからの推奨BGMがあります。


「アイ アム 暇人ー!」でこの作品を読んでくださった(=物好きな)人は、


先ず以下のヘッポコ文章を読んでから曲を聴くなり、曲を流しながら読むなりして下さい。
まぁ、強制的というわけではありませんので後自由に。

「アルファナッツのファンで『女神の涙TRUE』を買ってクリアした人」
(少ないと思いますが) は、『激闘の彼方に』を。

「上記のゲームを持っていない方、もしくはまだクリアしていない方」は

煉獄小僧氏の『彷徨いの言葉は天に導かれ』をお勧めします。


尚、私の知っている限りでは、
『彷徨いの言葉は天に導かれ』はフリーゲームの「Muspell」の『ラストバトル』に、
「ひぐらしのなく頃に 解」の『罪滅ぼし編』の本編での一番最後のシーンにて使用されています。


「ループが良いんだー!」という人はそちらをどうぞ。
「くっ、上記のゲームをやっていないぜ」という人は、「投稿ページのURL」から直接クリックしてください。


どちらも良い曲です、普段は何の曲も聞かずに書く私ですが、
今回は上のBGMを流しながら書いていました。もちろん、片方ですけれども。

これよりも良い曲があれば、そちらをどうぞ。

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壁から堂々と出る。

遠くに居る緋色のマントの男は、
口端を上げてニヤリと笑い、右手の親指以外の四本指を前後に動かして何かを言った。

雨音で五月蝿くて聞こえないが、
大体の言葉の見当は付いた。


――全力で掛かって来いよ。相手にしてやるからさ。――



俺は首を縦に振り、

「そっちがその気なら相手になってやろう。」
と大声で言った。

どうせ相手に何かは意味なぞ通じないから、
自分の威勢を強める為にしかならない。

それでも良い。


せめて、そうせめて、
戦っている時だけは『死』への恐れを脳内から完全に無くしたい。


俺は石畳の上を走りながら右手に持っていた剣を正面に出す。
相手も俺と同じ様に石畳の上を走りながら、剣を出す。


俺は男を上下に真っ二つに切断しようと、
大きく上に振り被り始めた。


服が雨を吸い込んで動きにくく、妙な接着感がする。

だが、奴だって同じ状況下に居るから、
そういう点で言えばハンデは一緒か。


――怖くないのか、本当にお前は。――





声と男を一緒に纏めて――縦に斬る。




剣が綺麗に十字を伴って重なる。
雨で金属音は余り聞こえなかった。


俺は縦に、奴は横へと重ならせた。


暫くの間、お互いに力の牽制をしあう。


俺は歯を食いしばり、
奴の剣を出来るだけ押そうとしている。

奴は目を上目遣いにして、
俺を下から睨みつけながら俺の剣を押し返している。

雨が降っているからか、
柄の部分が濡れて滑り掛けている。
余計な方向へ力を掛けずに、奴の剣を押しす方向にだけ精一杯の力を加える。


お互いに左足を同時に一歩下げる。



「はっ!」
「おりゃぁあぁあぁ!」



お互いが身体を数歩後退してから、
剣を一斉に横に振る。

検索と剣先が衝突して
鈍い金属音ではなく、鋭い金属音が響く。


力の反動で十歩前後さがった。


滑ってこけたら終わりだ。
出来るだけ、靴と床の摩擦を減らすように努力する。


尚、上記の前者のは俺が言い放った声。
後者のは俺の耳が瞬間的に拾った音だ。


奴と俺の目線が合ったと目が見て、脳が確認してから動く。

今度は石畳の外側に出てみる。
罅が入っていたり所々崩れている壁沿いに進む。
俺の泥に残った足跡が楕円の弧を描いていく。


同時に、俺と同じ行動を奴もしていた。


俺と奴の距離が最短距離になった。


―― 一体、奴は何者なんだろうな。――

例の声は奴と俺の距離が最短距離になった時に、
手から放ってきた衝撃波で掻き消された。


すぐさま、右へスライディングする。
刹那、俺が居た所の壁が粉砕されて穴が開いた。

髪が重たいが、顔を少し上げて奴の表情を伺う。


見る者の目を射抜く感じがした。奴の目から。


目を瞑り、何かの詠唱を始める『奴』

(もしや奴は、
俺の時代では無くなったと言われる「理力」の使い手か。)

厄介だなと、
心の中で呟いてから急いで遠くへ行った。

石畳が消えて、
先が消えた所まで進んだ。
身体を石畳のある方向へ向けて、体勢を整えた。


奴の両目が大きく開いて、
突き出した右手の手首を左手で押さえている。

大声で何かを叫ぶ『奴』。



「∠●!」



当然、聞き取れない。
いや、聞き取る気がそもそも起きない。


右手の掌から真紅の炎が飛び出し、
俺に真正面に襲い掛かってくる。

早くないので避けるの容易い。


――右に避けろ。――

普通なら『避ける』という手段を取るだろう。
どうやら、声も同じだった。

しかし、俺は天邪鬼、アマノジャクだった。

「嫌だっ!」

剣を正面に構え、
深呼吸を何度もする。


視界が赤に染まった。


剣を斜めに振る。




巨大な炎が二つに分かれ、崩れていく。



炎が揺れながら小さくなっていき、
最後には粒子となる。



俺の周りには崩れた炎が粒子となって上空を舞う。
炎の霧が俺の辺りを覆い尽くす。

幾ら何でも、この霧の中から飛び出したら火傷するだろう。

(流石に、アイツでも動かないだろうな。)

そう、安易に考えていた。


――だが、現実はそんなに甘いものじゃないぜ。――






炎の霧の中から一人の男が飛び出してくる。






マントには炎の粒子が纏い、




服の一部は微かに焦げていて、




髪は少しくすんでいて、




露出している肌には、明らかに火傷の痕と思われる箇所が幾つもあった。





一瞬、驚いたが今の状況は『ヤルかヤラレルか』。


直ぐに俺は理性を取り戻した。


「来い。」


思わず声を漏らしてしまった。
戦闘中で声を漏らしてはいけないのは鉄則。
瞬時に人が居ると気付かれて、そのままお陀仏だ。

奴は剣を両手で持って直進する。
奴は只管直進するだけなので避けるのは簡単だった。



俺は油断していた。

心の隙というのかもしれない。
其処を突かれた。


背中に奴の剣先が触れた感触。

そのまま、剣先は俺の奥に。




今度は肉が裂かれる感触がした。
剣が手から滑り落ちた。




剣が奥まで刺さった。
背中の神経まで入っていない筈だ。

まだ、痛みを感じる。




突然、脳の中で何かが吹っ切れた。




諦めた、諦めかけた。
何かを俺は諦めた。



―― ……おい、聞け。――


また、声が――。


――諦めんじゃねぇよ、死ぬぞ。


モウ、ニドト友達ニハアエナイゾ?――





本当に魔の言葉だ。

二度と会えない、


二度と大切な人とは会えない、
という言葉は。



だから、だから、





俺は。





背中に刺さった奴の剣を右手で引き抜こうとする。

奴は剣を持っていたが、
全く力を入れていなかった。


意図も容易く手を払って、
奴の剣の柄を俺は力強く握る。


剣を一気に引き抜く。


肘鉄砲で奴の胸板を叩く。
呻き声が聞こえた。


炎の舞は終わっていた。
何も言わずに、俺は奴の剣を振りかざしていた。


一言言った。

「死ね。」
、と。



言葉が通じるはずがないのに、つい言っていた。



それから俺は――





To Be Continued……
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