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7325
「 」  First volume by hirumi 2006/12/31 (Sun) 19:10
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焚き火をむさ苦しい男共三人と、

紅一点とかしている綺麗な長髪の緑の髪を流している女性で取り囲む。

何、
男である俺が『むさ苦しい男共』って言ったら
元も子も無くなるって言いたいのか。




へっ。そんなことは無い筈だ。




別に、俺は空しく何か居ないさ。そう、事実を即ち現実を素直に認めた。
唯それだけの話なのさ。

何だと、余計空しくなってる感じがするだと。余計なお世話だっ!



両手を後ろに伸ばしながら、
「んー」という変な声を出した男が居る。
そいつは茶色がかったオレンジ色のショートカットの髪をしていた。

「後少しで天空大陸一周かー。長かったようで短かったなぁ。」

遠くをぼんやりと眺めながら旅人が呟いた。旅愁という奴だろうか。
あえて空気を読まず、俺は間髪入れずに言った。

「とは言え、アーサ。まだ始めてから五日だぞ。五日。」
俺の右手の五本の指は、ほぼ直立不動になっていた。

受け狙いじゃないぞ。
いいか、受け狙いじゃないし、受け狙いでもないのだ。うん。

「受け狙いじゃっ。」

俺の心の声が、ついつい口から出てしまったのだろう。
口から出ているって、ありがとう。

これまた間髪入れずに、
俺の隣に居た緑の髪の女―――ええい、面倒だから名前を書いてしまえ。

スケイルの右手が俺の頭を叩いた。

「その心の声をわざわざ口に出す必要は無いと思いますけれど。」

その上、何度も何度も平然とした顔でスケイルが俺の頭を叩いてくる。
両手で防御しようとしたが案の定、両手の手首を左手で押さえている。

「痛いから。本気で頭が痛くなっているから。」

アーサが口に手を当てている。その手が小刻みに震えている様に見えるのは何故だろう。
スケイルは俺の頭が痛くなったとなると、今度は頭ではなくコメカミに拳が一発。

「もうマジで勘弁してくれ。」

内角をえぐり込む様にして右手の拳が右の頬に一発。
アーサが遂に堪えられなくなって、口から手を離して笑い転げていた。

「本当に済みませんでした。」

俺は両手の掌を合わせて``ゴメンナサイ``のポーズをとろうとしたが、
スケイルの左手に押さえられていた。

アーサ、頼むからそれ以上笑わないでくれ。俺が惨めな気になっているからさ。

「ねぇ、スケイルさん。貴方って本当に理力を司るトーテ」



一発、


そう、それも思いっきり痛い一発の『平手打ち』が


直撃した。俺の左頬に。





俺の意識は――





      *      *      *



次に俺が目覚めて眼中に広がっていたのは白い世界だった。
白い世界の中央に神々しい光を放ちながら、この世界の神であるリクレールさんが居た。

俺は膝を付いて、リクレールさんに俺の頭から背中までを見せるかのように座った。
そして、俺は言った。

――お願いです、お願いです、リクレールさん。
俺の``スケイル``というトーテムを、
今すぐ他のトーテムに変えたいのですけれど、宜しいでしょうか。――


リクレールさんはあっさりと突き放した。

――駄目です。何だか物凄く面倒な事に成りますので。それに、――



リクレールさんの最後の声を聞き取れずに、俺の意識は。



      *      *      *



――夢の中から再び地上に舞い戻ってきた俺の意識。

うん、五体満足である上に肢体の動きもスムーズに出来る。
強いて言うならば、未だに痛みが引かない他、所々に赤くなっている所がある。

後ろでは俺の背中を見て、笑っているアーサとスケイルが居る。

アーサ、それ以上笑ったら翌日に会った時にとある選択を強制的にさせよう。


「首を羽交い絞めさせられるのと剣でばっさり斬り落とす、その二つのどっちが良いか。」


軽い溜息を付いて、俺を人差し指で指を指しながらはしゃいでいる二人と俺以外の『もう一人の人』を見る。


俺たちの騒いでいる光景を見て口元を軽く上げて笑う動作をしている。
肩には男にしては長い紫色の髪がかかっていて、
右目には古びた黒い眼帯をつけている。

格好つけているつもりなのか、知らない。



俺はもっと根本的なことも知らない。

例えば、そいつの名前は知らない。



スケイルだって知らないし、
街に住んでいる人は絶対に知らないだろう。
一緒に旅をしてきているアーサだって名前を知らない。

アーサが今日、俺に尋ねた。

「同行者の名前を知りたいのだけれど。」と、

名前を知らないのなら、
半強制的にそいつから名乗らせれば良いじゃないかと俺は言った。

そうしたら、アーサは答えた。






「他の世界からやってきたので、言葉が通じない。」と。





      *      *      *


この旅人に付いていってから、まだ一日目。
道中には様々な危険生物がいたが、俺が持っていた剣で倒した。

俺が住んでいたシルフェイドの時とは違って、
この世界に来た途端に妙に力が強くなった気がしたが、まさかアソコまで強くなるとは。

もしも二日前の俺が。即ち、森の中に入ったら間違い無く終わるな。

一応、解体式の銃や弾倉一式を念の為に懐に忍ばせてあるが、
弾の補給は確実に無理なので意味は無いだろう。

今、俺の目の前には言葉が分からないので詳細は知らないが、
見ていて面白いことが起きている。

薄汚れた緋色のマントを羽織った男の背中に、
何らかの文字が書かれた紙が付いてあるが当然解読不能。

こういう展開から考えてみると、
恐らく書いてある文字は『私は馬鹿です。』系のだろう。

その男が恐る恐る背中を見て、直ぐに紙を千切りとって怒り出した。


本当に見ていて面白い。





これで言葉が分かればもっと面白いのだろう。





俺は横になって、夜空を見上げた。


手を出せば届きそうな、星達を。




何時しか、俺は寝ていた。



ふと起きたら、
俺の足元には明らかに俺の物ではない焦げ茶色の上着が掛けられてあった。

消えた焚き火を挟んで反対側には、
今日一緒に旅をしてきた青年が
茶色のトランクケースを枕にして何も掛けずに寝ていた。



青年と言えば俺も青年だが。



俺は青年を起こさぬ様に気をつけながら、
上着を青年の首から下に掛けた。




一言だけ、小声で「ありがとう」と言って。



      *      *      *



三又の洞窟を抜けると見渡す限りの草原。



洞窟の手前は森しかなかったのに比べれば凄い差だ。

草原を通るのは楽だ。
視界が広いから魔物、
もとい『障害物』が直ぐに見つけられる上に『対処法』を考える時間が僅かに有る。


『障害物』に『対処法』か。


随分と俺も物騒になってきたものだ。



そもそも、



俺がこの世界に来てから
俺を取り囲む全てが可笑しくなったのではないだろうか。

俺の考え方や俺が極端に強くなったことが最大のポイントだろうな。
強くなったのは嬉しいが、帰るまでの少しの間アイツ等に会えないのが寂しいな。



暫くの間は寂しいが我慢だ。


之も俺を取り囲む内の一つという奴か。




``しかし、``



――俺よりもトーンが高い声が脳内に響いた。



突然、足が止まった。
いや、止めさせられた。


周りが黒く染まっていく。
空が、草が、地面が、【俺】が


黒く染まっていく理由は、何かが下から這い上がって来る。

ゆっくりとじわじわと、そいつは黒に侵食させていく。


そいつを振り払おうとするが、余計に侵食速度を上げただけだった。


``本当にそれだけ?``
「知るか。」

今度は耳から聞こえてきた声を、
低い俺の声で相殺させた。

ふーん、という明らかに感心が無いと伺えられる声が周りに響いて、
空気の波紋を幾つか作った後、消え去って周りは元の色に戻った。


何時の間にか閉じていた瞼を開けて、『さぁ、進もう』とした瞬間。

「何をしているんだ。君は」

知っているさ、言葉が通じないのは。
だが、誰だって言いたくなると俺は思う。

栗毛色の旅人が止まっていて、顎を突き出すようにして俺を見ていた。
何故か、左手が俺の目の前で左右に動いている。


理由か、さぁな。
一応、想像が出来るがあえて俺は言わない。

何、似たような文が之より前にあったと。
そんなものは知るか。唯の目の錯覚だ。目の錯覚。


「■○▲…」

何となくだが、旅人のいっている言葉の予想が付いたので頷いた。

すると、顔の頬を緩めて一笑した。

また、何も無かったのかのように旅人は荷物を持って前進していった。
俺も何も言わずに後についていく。



ちなみに、俺が予想した言葉は当然『大丈夫…』だ。



      *      *      *


日が落ちかける夕暮れ時、
遠くから見えていた何らかの建造物郡の近くで休んだ。


辺りを見回す旅人の様子から、
今日は此処で野宿をするのだろう。

俺を手招きして、
旅人は人差し指で丘の先にある小さな森を指した。


焚き火で必要な木を取りに行くのだと考え、
俺は右手の人差し指と親指で円を作った。


俺の予想通りに、旅人は良さそうな薪を周りから集めて山を作った。
俺も旅人に習って程よく燃えそうな薪を選び、旅人が作った山の上に乗せていった。

三十分後には、
昨日の焚き火で使った薪の倍の量が山となっていた。

山の約四分の三を俺が、残りが旅人が俺たちの寝床に運んだ。

薪を全部置いて、汗を手で拭いている旅人を背にして俺はテントの杭を打っていた。



手伝うよ、という言葉が可能性として高い音を耳にした。

旅人の足音が途中まで聞こえた。

綺麗に足音が止んだので、怪訝に思って首だけ後ろに動かした。



すると、旅人の手と足が凍ったように止まったと頭で認識した直後に、
息を呑んでおろおろしていた。




凄まじいスピードでやってきて俺の隣にあった丁寧に畳まれたテントの布を広げてみたり、
開けたままのトランクケースの中から荷物を周りに広げて只管出しまくる。



それから十分程度の間、
旅人は様々な行動をしたが最後は草原に座って口を中開きにしている。




その時の旅人の状態を簡潔に言い表す言葉といえば『心此処にあらず』



俺は旅人が放心状態になっている理由を思いつき、
右手の拳を小指側を接触面として、
左手の掌に垂直に立てて言った。


「ああ、さっきの森の中に
邪魔だから上着を置いてきたのか。」


昨日の深夜に俺に掛けてくれた焦げ茶色の上着が俺の視界には無い。


旅人は何も言わずに、虚ろな眼で空を睨んでいた。


暗黙のルールもとい暗黙の了解で旅の間は、
俺は基本的に『障害物』の『対処』をする役割の為に荷物は全然持たない。
即ち、この世界に来た時の状態と全く変わらない。

一方、旅人は俺が『障害物』を『対処』している間は木の陰に荷物を持って隠れている。
その代わり、簡易テントや毛布に炊飯道具を全て持っている。

簡易テントは思っていた以上に細かく分解できることから、
ズボンや洋服のポケットに収まる位の大きさの物は運んでいる。


重たい物と軽い物を二人の人が運ぶ時、
どちらが早く目的地に着くかと子供が大人に対して凄く常識的な質問をしよう。

『当たり前だ』とはあえて言わずに胸を張りながら、
「重たい物を運ぶのには時間が掛かるので、
軽い物を運んだ人が先に目的地に着く」
と大人は言う。



だけど、子供はニヤニヤと笑って次の様に正解を述べるかもしれない。

「重たいといっても少しの差かもしれないよ。」

と。
その後、大人が口を噤んで俯いている姿が想像できる。


それと似た理屈だ。

俺は息を潜めて周りを注意しながら歩いている、
旅人は周りを注意せずに息を荒げながら重たい荷物を持って歩いていく。

少しの差はあるが、プラスマイナス0。

そこら辺は別に良い。
とにかく俺が言いたいことは基本的に旅人は何も注意しなくて良い。


だから、その……
旅人は『俺が後から持ってくる』と、
無意識の内に何処かの切り株の上に上着を置いてきたのだろう。


「魂が口から抜けていってしまった」
とも言える程の放心状態になっている旅人の肩に手を乗せた。

「取ってきてやる。」
と言って。



何故だか知らないが、俺が歩き出してから数秒後に旅人の元気の無い声が聞こえてきた。


      *      *      *


随分あっさりと、上着は見つかった。

切り株の上に焦げ茶色の上着が寂しげに置かれてあったので良く分かった。


旅人は俺が帰ってくるのは遅くなるだろうと考えている、に違いない。

『別に少しの間くらい、寄り道したって構わないさ。だろう、なっ?』
と悪魔が右耳から囁いた。

しかし、天使は左耳から
『急いで返さないと、旅人が何時までも放心状態になったまま餓死してしまうかもしれない。』
と囁く。




俺は迷いに迷って、
オーバーすぎる天使の言葉を信じて急ぎ足で旅人の元へ行った。


一ミリたりとも動かずに、旅人は座っていた。
さっきよりも酷い状態だった。




目には生気が宿っていない。

手足は重力に無抵抗だった。

顔だけは未だに上を向いていたが、動かそうとしても石如く動かない。




俺は左手を旅人の目の前で振り子運動させた。


体内時計で三分やっても反応が無い。
馬鹿らしくなったので『手』は止めた。


今度はさっき持ってきた上着を左右に振り子運動させた。


「さぁ、今度は一体どのような反応をするのだろか。」
と俺は明らかに怪しげな独り言を言った。


十往復した時に、旅人の目に微かな光が宿った。
十数往復目に、旅人の目は以前と同じ色になった。


そう、俺はわざわざ指で上着を往復させた回数を数えている。
別に良いだろ、往復させた回数を数えるのは。

二十往復目には手足が小さく動いた。


この分だと次はどうなるのか見当がついたので、
数歩だけ後退して上着をゆっくりと動かしてみる。


そして、三十往復目に大きく前進して上着を引っ手繰ってきた。
俺は横に受け流して、旅人の首に手刀を入れた。


「落ち着いたか。」

焦点が半ば俺に合っていないが、
少なくともさっきの放心状態よりは幾分とマシだ。


「☆、☆и□∠。」
俺は旅人に焦げ茶色の上着を放り投げて、
例の建物郡を指差して足踏みをした。

旅人は俺が投げた上着に顔を埋めて喜んでいる。



この分だと平気だろう。
それに、今の俺は何人たりとも行動を禁じられる義務は無い。


俺は散歩がてら、その建造物郡に行ってみた。







丘を超えた時に何故だか、急に寂しくなった。







誰かがいないから、

今からする目的が誰かの為になるものではないから。


俺がする目的を誰かが認めてくれないから。

いや、認めてくれた。そうさ、旅人が認めてくれた。



そもそも何で、俺はこんな変な考えをしているのだろうか。
俺でも分からない、自分自身で何を考えているのか分からない。


自分自身が恐ろしくなってくる。




矢継ぎ早に俺の頭が俺を問い詰める。

――ダガ、ソレハチャント言葉トナッテ伝ワッテ来タカ?――


響き渡る``高いトーン``

再び、周りが黒くなっていく。

【俺以外】の全てが何もかもが黒に侵される。
だが、「黒」といえども純粋な黒では無い。

高いトーンを俺に言い放った奴の姿が始めて浮かび上がる。

「言葉ではないが、そう言ってくれたには違いない!」


``そいつ``は純粋な黒い形をしている。


『本当にそうか?』

``そいつ``は一歩一歩、嫌らしい音を立てながら俺に近付いてくる。

粘着性が俺への悪意が感じられる音だ。


『お前はこの世界に来てから誰とも喋っていない。
それがどういうことだと思うか、えぇ?』

確実に俺に近付いてくる``そいつ``

俺は何も言えない。


口を動かせない。怖くて、恐ろしくて。

首に鋭利な刃物を付きつけられた気がする。



口を動かしたら、  ヤラレル。


しかし、何も応答しなくても  ヤラレル。



『お前をお前として誰も認めてくれていないんだよ。
アルバート=ウェスタリス』


``そいつ``――は言った。




      *      *      *



瓦礫の山


崩れた壁


散らばった人骨


むせ返る血の臭い



そこは廃墟の街。

誰もが見た瞬間に無言となる街。



――二日前までは人々の声がいき交っていた街の周辺で。



周りから誰も認めてもらえずに一人だけ居る隻眼の青年。



笑みを浮かべながらも仮面の下は常に孤独の戦士。



孤独の戦士を静かに見守る麗しき麟類。



旅をし続けて何かを探し出す、さすらいの旅人。



今、闇に閉ざされし悲しき現実が浮かびあがる。――





To Be Continued……



『中』書き

出来たら続きは今日の夜か明日中には書き上げたいです。はい。
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