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7327
「 」  Second volume by hirumi 2007/05/13 (Sun) 23:05
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空は灰色の雲に覆われていた。
時々、遠くで稲妻が幾筋にも渡って落ちていく。

そんな空の光景を見て、独り言。

「もう直ぐ、降ってくるか。」


広げた手の上に一滴の滴が降ってきた。


早く旅人の元へ行かなければ、
という考えは不思議と浮かばなかった。


むしろ、雨が土砂降りになったとしても俺は此処に居るだろう。


理由は俺も判らない。
本能が『此処に待機しろ。』と命令を下して、
身体が街から出させてくれない。


理性で本能を抑えきれない。



仕方が無く、本能のままにぶらぶらと歩く。

雨宿りで原型は宿屋だと思われる廃屋に残っていた本――帳記を、
パラパラと捲ってみる。


当然、読めないだろうと、
腹を括ってみたが

「ん。」



実は読めた。




「この帳記には、つい最近学院でやった古文で書かれてあるのか。
というよりも、」

そう言いながら、蝶番の片方が壊れてあるドアを蹴破って出る。
ドアが水溜りに落ちて周りの泥水が跳ねる。


その泥水の一部が靴に掛かったが気にせずに、看板を見る。


「この世界は全てこの文字で書いてあるんだろうな。」


「宿屋」と

看板からは確かにそう読めた。
そもそも、『宿屋だと思われる』とさっき俺は思っていた。

そこから、既に無意識の内に読めていたのか。
読めるとは言えとも、何とかゆっくりとなら読めるという程度だが。


「ならば、あの図書館に所蔵してある本も読めるかもしれないか。」

鳥肌が立っている。
雨に濡れたせいとしか考えられんが、
少々寒くなってきてクシャミが出てきそうだ。


図書館に向かうために、十字路を右に曲がる。


「寒いから、早く図書館に行きたいな」
と、本来なら急いでテントに戻れば良いのに図書館に向かう俺は変人だ。


その道の突き当りには誰かが座っていた。


横に四つ並んだ墓の前で緋色のマントを着た人が佇み、
隣に反対側を見ている緑髪の女性が居た。

恐らく昨夜、旅人と喋っていた二人だろう。

当初は何をしているのか気になったので、
覗いてすれ違うだけで無視しようとした。


けれど、覗いた瞬間に無視が出来なくなった。



何故かといえば、簡単だ。


その男の胸元に、
男の右手が持っていた短剣が刺さっていたからだ。




口元からは血が一筋流れていた。

急いで隣の女性の肩を力任せに掴んでみる。

手を払われて、
恐らく『何の用事があるのよ』という言葉を俺に言った。

しぶしぶという感じで、濡れた後ろ髪を綺麗に半回転させて体ごと動いた。

俺は緋色のマントの男を右手の人差し指で指差した。


女性は悲鳴も上げず、立ち尽くしていただけだった。




俺は旅人が待っている所へ戻った。



今度は周りが黒くなる怪奇現象は起きなかった。



      *      *      *



濡れたマントを脱ぎ捨てて、
テントの中へ何も言わずに潜り込む。

昨日は寝る前に川で身体を洗っていたが、
今日は雨が降っている上にあの建造物郡に近付くと気分が悪くなりそうだ。

面倒だという理由もあるが、
ともかく身体を洗うのは明日の朝にする。


テントの端で横になり、
睡魔に襲われるがままに寝る。



お休みなさい、俺。



      *      *      *


夢の中、俺は懐かしき故郷のノーザニア島に居た。

村の中で走っている子供は、
俺が住んでいた頃の友達や親友達だった。


全てが俺の思い出の中と同じだった。



違う点は二つ、
一つ目は、
俺の姿が今――即ち現実と全く同じである位だ。

二つ目は、
俺が村人から空気の様に扱われている。
俺の存在を皆が無視して、通り過ぎていく。


声を掛けても誰も返事を返してくれない。


夢の中なのに、眠くなった。
視界が徐々に小さくなっていく。

はしたないが、俺はその場で横になって寝た。





夢の中で、寝た。






      *      *      *

夢の中での『俺』が寝た直後に、現実世界の『俺』は起きた。

テントの中には俺以外は誰も居ない。
テントの入り口を少し上げて、外を見る。


月が夜空に昇っていた。
雨は既に止んでいて、
水溜りがあちらこちらにあっただけだった。

この分だと、明日はまた夜空の下で寝ることになりそうだ。


焚き火を囲んで、旅人とさっきの緋色のマントの男が喋っている。
緋色のマントの男の胸に包帯が巻きつけられて無かった。

之には驚いたが、驚きは泡となって消えていった。



三人は和やかに談笑していたのを見たら。






俺はもやもやした感じを心に残しながら再び寝た。





      *      *      *


夢の中は、さっきと違う所は変わらない。
俺が現実世界の状態と同じだったり、
周りの人々が俺に気付かないことも変わらない。


場所や日付は当然違っている。

「幾らなんでも、之は無いんじゃないか。」




『北の戦争』が起きていた頃のことだった。




敵側の兵が俺の近くの家に火を放つ。
また、その周りの家にも次から次へと火を放っていく。

その家では予め荷物を用意してあったのか、
見えにくい場所においてあるリヤカーに必要最低限の荷物を積んであった。


男性がリヤカーを引き、
母親と子供が手を繋いで家から出てくる。

子供は何かを思い出して、
母親の手を離して家に戻る。


両親は慌てて近くに居た『俺』にリヤカーを置いて頼んだ。
両親の顔はどこかで見たことがある気がした。


「え、だけど俺は。」


――空気の様に扱われているんじゃないのか、
という言葉が喉から出てこなかった。


「頼みます、ほんの少しで良いので。」

俺の返事を待たずに、両親は走り去った。


俺はその両親の後姿に声を掛けた。

「待った、待ってくれ!」

声は届かなかった。


俺の両親は既に家の中へ入っていったから。





      *      *      *



母親が幼い頃の『俺』を抱いて出て来た。
母親の背中は見るも無残なほどの火傷だった。




呼吸音は聞こえなかった。




俺は罪悪感と悲しみを抱きながら、
母親の両手から『俺』を開放して抱いた。



「何で、夢の中なのに複雑な行動を取れるんだろうな。」


そう呟きながら泣きじゃくっている『俺』の頭を撫でた。




現実世界の『俺』が起きるまでの間ずっと。





      *      *      *


翌日の朝は思っていた通りに雨が止んでいた。

隣に居る旅人がまだ寝ているかどうか確かめてから外に出た。
あの男女達は居なかった。

隣においてあったマントを持って川に向かった。

途中で魔物が出てくることも有り得るので念の為、
長剣を持ってきた。


ゆっくりと川に向かって歩いていく途中、後ろから声を掛けられた。


「○■。」と

ああ、もう何度も言っているが俺は言葉が分からない。

挨拶の言葉なのだろうか、俺は適当に言葉を返す。

「ああ、おはよう。」

後ろを向こうとしたその時――




ぷに。





「……」

俺か。
俺は黙っていたが少し怒りたくなっていた。
右手を拳にして、緋色のマントの『野朗』の鳩尾にアッパーを入れようとした。


頭を掻いて、俺の右手の異変に気付くと掌を広げて奴は両手とも左右に振った。

「*∩■☆○↓△、*∩■☆○↓△。」
と口を大袈裟にパクパクさせながら、
何度も同じ言葉を言った。

音の高低から大体七文字の言葉か。

あくまでも古語であるから、
大体の言葉の意味は同じだろう。

頑張って聞けば凄く遅いが、意味は分かるかもしれない。


えーと、最初の四文字は俺がいた時代だと『話す、言う』という意味だったから、
やはりその系統だろうか。
最後の三文字は『分ける』だったな。


二つの言葉を繋げてみると、『話すと分ける』。

『話せば分ける』か、
最後の三文字が「分ける」だと文法上可笑しくなっている。

「分ける」は一つの物を幾つかの個数にした上で、
一つの物を小さくするという意味だな。

ということは、『話すと何かを幾つかに分ける』。
ここから、一番正解に近い可能性のある俺の時代での言葉は、





ハナセバコロス?




いや、「分ける」モノとして、
一番適切なのは異世界から突然現れた俺かもしれないがまさかそんなことは。


なら何故、この前の夜に俺が寝てからあの三人は話していたんだ。

俺は言葉が通じていないから、
俺抜きで和やかに談笑しても結果は変わらないだろう。


――それ、本当か。――

脳内で高いトーンの声が、以下略。


(また、お前か。)



――可能性としては、ありえなくはないだろう。――

(何がだ、一体何の可能性があるとでも言いたいんだ。)

――あの一見和やかな談笑の中身は血塗れの殺人会議だった、という可能性が。――

(んな、理由は幾らなんでもないだろう。)


その時、緋色のマントの男が緑色の髪をした女の顔を見ながら言った。

「■―、○△лЖ。『○↓△』、『○↓△』。」


        また、あの『分ける』だ。しかも、今度は二回も使った。



緋色のマントの男に対して、緑色の髪の女は頷いた。


        俺をワケルのを承知したのか。


俺をバラバラにワケル気が満々なのか。
となると、戦うか逃げるかの二択だ。

俺は長剣を持っているが、
この二人は気迫というか気配というか雰囲気というか、
兎に角俺が下手に動いたらヤル。

ならば、今すぐ。

――そう、今すぐ逃げないと。――


だけど、それでも俺は旅人にこの男や女を信じたい。

いや、今でも信じている。




――逃げないと、ワケラレルゾ。――





俺は緋色のマントの男の左頬に平手打ちをして、
電光石火の勢いで建造物郡へ逃げた。



      *      *      *



「おい、アーサ。起きろ。」

狼煙はとっくのとうに燃え尽きてしまった焚き火の炭の尖った所で、
アーサの頬を何度も突く。

それでも起きないので、
人工的に寝返りをさせる。詳しく言えば、背中を押してアーサの体と地面を垂直にさせた。

スケイルに向かって一言。

「ちょっとほんの僅かだけ<<雨癒>>をしてくれないか。」

最初は戸惑った顔をしていた。
けれど、直ぐに左眉をピクリと上げてから、
軽い深呼吸をスケイルはした。

「怒られても知りませんよ。」
と小さな声で言ってから、
お碗上にさせた俺の両手の中に少しの水を降らせた。

アーサの左耳の中に水を何滴か入れる。
良い子も悪い子も、即ち皆さんこんな真似を絶対にしないで下さい。
俺は責任を取りません。各自の責任でお願いします。

当然、直ぐにアーサは起きました。
今度はグーで右頬をやられました、あべし。

      *      *      *

「で、一体今日は何の用。」
寝癖があって寝ぼけ眼でアーサが聞いた。
少し不機嫌そうに見えるのは、気のせいじゃないが。

『やはり、もう少し寝かしてあげれば良かったんじゃないですか。』
スケイルが俺に耳打ちをした。

意図的に無視をする。

あっ、だからといって背中を抓らないでよスケイルさん。
地味に痛いんだから。


「あの、アーサと五日目から一緒に旅をしていた長髪の男が居ただろう。」

あー、と間抜けた声を出してアーサが反応した。
俺は続けてあぐらを掻きながら言う。

「アイツがヤバイな。
誰とも喋っていないからか、可笑しくなっている。」

で、頭の上で右手の人差し指をくるくると可愛らしげに回転させる。
アーサは焦げ茶色の上着に手を通していた所だった。

「で、挨拶をしたら右手の拳で殴られ」
「アレをしたら、まず誰でも怒りますって。」

一度、スケイルに言葉を遮られたが気にしなーい気にしなーい。

ちなみに、アーサはまだ目の焦点が合っていない。

「それで、一旦どうするんだ。」

『目の状況』とは裏腹に言葉の口調は確りしていた。
旅生活やっているものな、そりゃ伊達じゃない。

「俺がコイツで何とかしようかとしたが。」

そう言いながら、剣を鞘から数センチ抜いた。
歯切れの良い金属音がした。

はい、パス。
と俺は右手を正座しているスケイルの左足に乗せる。

俺はニヤリとスケイルに笑った。
スケイルは俺を一瞥する目を少しの間した。

「流石にそれをやると、如何考えたって余計可笑しくなってしまう。」


スケイルは真剣な表情で次の文句をアーサに言った。




「なので、今から三人で解決策を考えましょう。」




      *      *      *


人は逃げてばかりじゃ何の出来事も解決しない。

生きていれば何時かは壁が出来る。

壁には鍵付きのドアがある。

脳を振り絞って考えて、壁を一つずつ通り過ぎていくごとに人は成長を重ねていく。

ドアの鍵を探しても良いし、

ドアを蹴破っても良い。

挙句の果てには壁を壊したとしても良い。

兎に角、経過も影響するが壁を通過できれば良いのである。

しかし、何もせずに逃げているばかりでは意味が無い。

それ所か、




壁に囲まれてしまうのだから。







To Be Continued……



『中』の『中』書き

取り合えず、次で終わる予定です。はい。
頑張ります、はい。

初版(?)  1/1 (19:53)
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